「ムシャムシャ・・・午後からは聞き込み調査っすよね、鉄枷先輩?俺、頑張りますよ!」
「バクバク・・・気合入ってんな、湖后腹」
「ゴクッ!そりゃ、2日半休んでいましたし!」
「頑張るのはいいが、無茶だけはするなよ?」
「わかってますって!地が気弱な破輩先輩をオドオドさせるようなマズイ真似はしませんよ!」
「ブッ!!・・・リンリン?鉄枷?」
「「(知らんぷり、知らんぷり)」」

今は太陽が垂直に位置している頃合い。つまりは、正午である。破輩・一厘・鉄枷・湖后腹は、影の差す路地裏でハンバーガーとジュースを片手に軽い昼食を取っていた。

「・・・まぁ、いい。もしかしたら、聞き込み調査をしている段階で『ブラックウィザード』の連中と接触する可能性もある。気を抜くなよ」
「構成員、もしくは“手駒達”・・・か。まぁ、“手駒達”の場合は俺の能力でアンテナに送信している電磁波を混乱させてやりますよ!」
「アンテナの引っ付き具合によっては、私の『物質操作』で頭から引き離すことも可能かもしれないしね。
そもそも“手駒達”はある意味被害者だし、できるなら乱暴な手段を使いたくないな・・・」
「だよな。ぶっちゃけ、俺も“手駒達”に同情する部分はあるぜ?人間の尊厳ってヤツを薬物で踏み躙る行為を行ってんのは『ブラックウィザード』の連中だからな!!」

湖后腹・一厘・鉄枷に共通する思いは、薬物により人間の尊厳を踏み躙られている“手駒達”への同情である。
元凶は『ブラックウィザード』。彼等に“手駒達”は利用されているだけなのだ。ならば、風紀委員としては“手駒達”の解放にも全力を注がねばならないのではないか。

「薬物・・・か。ハァ・・・」
「・・・“お友達”のことを考えているのか、リンリン?」
「・・・・・・はい」
「リンリンさん・・・“彼女”は今も?」
「うん。毎日病院へ通っているみたい。面会は今もできていないみたいだけど。本当は謹慎してないといけないんだけど、やっぱり我慢できないみたい・・・」
「・・・今も精神安定剤や麻酔が要るみたいだかんな。ぶっちゃけ、今でも信じられねぇよ。あいつが自殺って道を選択したことを」
「白高城ちゃんも言ってたモンね。『黒丹羽が自殺なんて手段を選ぶ筈が無い』って」

それは、風輪で起きた大騒動の結末である。首謀者の1人である風輪学園第6位の黒丹羽千責が、最終的に自殺未遂に及んだこと、
彼のパートナー的位置に居た少女―加えて一厘の友達である―白高城天理が、今も病院の一室に隔離収容されている彼へ見舞いを続けていること。

「黒丹羽先輩が発見された場所付近って監視カメラが無かったんですよね。もし、誰かの関与があっても証拠が見付からない。それが、能力によるものだったら尚更」
「湖后腹の言う通りだぜ。騒動に関わった奴に対する処分も甘々だったしよ。まぁ、その処分にホッとしたのも事実だけどよ・・・」
「真相は闇の中・・・か。私としても、あの結末には若干の疑念は残っているよ」
「怒りで我を忘れてあいつを吹っ飛ばしたのは誰だって話だけどな~。後で、厳原先輩の説明を聞いて思ったぜ。『何だそれ!!?』ってさ。
幾ら吹っ飛ばした後に気流を操作して助けるつもりだったって言われても、あの怒り狂い様を見てたら本当にそれができてたかなんてわかんねぇよ・・・」
「うっ!!!・・・す、すまん。あれは、私のミスだ。もし私が奴の嘘を見抜いていれば・・・冷静な思考を保っていれば・・・」

鉄枷の愚痴に破輩は己が非を認める他無い。確かに、黒丹羽達が行ったことは到底許されるモノでは無い。連中のせいで、多くの人間が傷付けられた。それは事実。
だが、怒りに身を任せた行動をリーダーである人間が取っていいかと問われればNoである。これは、己に対する戒めである。

「ま、まぁ、状況が状況ですし破輩先輩が勘違いしたのも仕方無かったと思いますよ?元はと言えば黒丹羽先輩が嘘を付いたのが原因ですし、これは自業自得ってヤツ・・・」
「おい!・・・ぶっちゃけ、お前まであの“変人”みたいなこと言ってんじゃ無ぇよ。俺は、自業自得って言葉だけで終わらせたく無ぇんだよ」
「す、すみません・・・」

あの騒動は、159支部の面々にも様々な傷跡(きょうくん)を与えた。その中でも、鉄枷は黒丹羽の末路を自業自得という言葉だけで終わらせたくは無かった。
学園の屋上で見た彼の姿―この世界に居場所を求めていた―は、今でも鉄枷の瞼の裏に焼き付いているのだから。






「・・・・・・あれは、自殺未遂じゃ無いよ?結果は自殺未遂だけど」
「「「!!?」」」

そんな時に一厘の口から飛び出した衝撃的発言に、破輩・鉄枷・湖后腹は驚愕する。彼女達の反応を見た一厘は、静かに語り始める。今まで胸の奥に秘めていた事実を。

「・・・一昨日さ・・・あの人から聞いたんだよ。『マリンウォール』で」
「一昨日・・・・・・まさか・・・!!」
「・・・私が部屋に忘れてた携帯電話に鉄枷が電話を掛けた時にさ、ルームメイトが電話に出たでしょ?あれ・・・形製さんなんだ。今まで言わなかったけど」
「形製って・・・『シンボル』の!!」
「形製?・・・どっかで聞いたような・・・誰でしたっけ、鉄枷先輩?」
「ぶっちゃけ、『シンボル』に所属している精神系能力者だ。隠れメンバーらしくて、俺も最近まで知らなかったんだよ」
「湖后腹君。それも含めて、今から話すのはオフレコでお願い。いいね?」
「わ、わかりました・・・」

鉄枷は3日前に“変人”の部屋に居た金髪の常盤台生を思い出す。あの時に初めて知った、『シンボル』の“参謀”。
名前だけなら、以前のバイキングで『シンボル』の面々と食事した際に“変人”及び一厘が漏らしていたが、生憎そこまで細かい記憶は残っていなかった。

「・・・それでね、形製さんが念のためって言うことで界刺さんに連絡を入れたみたいなんだ」
「・・・つまり、あの“詐欺師”が騒動の場になった風輪学園の近くに居たってことですか!?」
「正確には、界刺さんと仮屋さんの2人だね。『念動飛翔』で飛ぶ仮屋さんに乗った界刺さんが、『光学装飾』で姿を隠しながら空中で見物してたみたい」
「見物って・・・」
「仮屋さんは助けに向かいたかったみたいだけど、界刺さんが引き止めていたんだって。『これは、俺達の関わる問題じゃ無い』って。
さすがに、黒丹羽先輩が吹っ飛ばされた時は少し心が揺れたみたいですけど、白高城ちゃんの『座標回帰』が発動したから」
「私の醜態も見られていたのか・・・。悪趣味な奴め。・・・ということは・・・」
「えぇ。私のために動いてくれたわけじゃ無かったんです。てか、私が血塗れになって戦っていることもお得意の『光学装飾』で知ってましたから。
『騒動を見物したかったから』の1点張りでしたね。・・・見てたんなら少しくらい助けてくれたっていいのに(ボソッ)」
「あの野郎・・・!!風輪(ウチ)の第1位みたいなこと言ってんじゃ無ぇよ!!ったく、強い連中ってのは揃って自己中の塊かよ!!」
「そういえば、吹間先輩とあの人って何処か似てますよね。冷めてるというか達観してるっていうか・・・」

鉄枷と湖后腹が思い浮かべているのは、風輪学園第1位の学生・・・吹間羊助。ここに居る者達は知らないが、彼は件の騒動に関わらなかった“唯一”のレベル4である。
順位が示すように、吹間は風輪学園の頂点に君臨する高位能力者であった。対象を一瞬で眠らせる『快眠誘導』という精神系能力を持つが故に。
だが、彼はその強大な能力を他者のために使うことがまず無い。何かあっても見てるだけ。それは、風輪の騒動でも貫かれた。あの“詐欺師”が取った行動のように。

「・・・で?奴等は黒丹羽が“自殺未遂するように仕向けた”人間を見ているのか?」

一方、破輩は核心について一厘に断定口調で質問する。一厘の口調から察するに、精神系能力で黒丹羽が自殺未遂に及ばされたと推察したが故に。

「・・・見たのは、『光学装飾』で広範囲を感知できる界刺さんだけです。仮屋さんは見ていません」
「・・・誰だ?」
「・・・教えてくれませんでした」
「・・・だと思った。そうでなければ、お前の性格なら真っ先に元凶へ突っ込んで行きそうだしな」

破輩は後輩が見せる予想通りの反応に溜息を吐く。薄々感付いていたことではあったのだが。

「・・・リンリンさん。予想できるんですけど、界刺先輩は教えない理由を何て言ってましたか?」
「・・・『自業自得。因果応報。黒丹羽が自分の意思で行動して得たのが、その末路ってだけの話さ。俺は自殺ってヤツが嫌いだけど、あいつは自殺未遂なんかしていない。
完全な殺人未遂さ。学園都市特有のね。そうなった原因が「いわれなき暴力」なら助けようとは思ったけど、あいつの場合は「いわれある暴力」だからね。
黒丹羽は悪い意味で目立ち過ぎた。後ろ盾が居るわけでも無ぇだろうに。俺も気を付けないとな。反面教師、反面教師。経験は無駄にしない。んふっ!
言っとくけど、俺は彼に同情もしないし哀れにも思わない。馬鹿が馬鹿やって、馬鹿な目を見た。それは、自殺や精神障害を仕向けた側にも言えることだけど。
もし、仕向けた側の本当の理由が「いわれなき暴力」だったとしても、俺は何とも思わない。だって、その時の俺は「いわれある暴力」だと判断したからね。
それだけの行いを黒丹羽はした。してしまった。だから、彼は世界に叩き潰された。もし、仕向けた側が「いわれなき暴力」を用いたのなら、いずれ世界に潰される。
ということで、俺には関係無いことさ。そして、俺が見たことを君に教える義理も義務も無い。
まぁ、ちょっと気になることもあるから後々調べようかなとは思ってるけど。あの場に居た人間としての最低限のケリも着けたしね。
悔しかったら、君も「ブラックウィザード」の捜査が終わってから調べてごらんよ・・・風紀委員の一厘鈴音
学園の・・・チェスが好きそうなオッサンの圧力を掻い潜って何処までできるか・・・楽しみだね?』と。一言一句覚えちゃうくらいに衝撃が強かったなぁ・・・」
「「・・・!!!」」

一厘の口から発せられた“詐欺師”の言葉に、鉄枷と湖后腹は甚大な衝撃を受けた。
どういう意思と価値観を抱けば、そんな非情な判断を軽く口に出せるのか。彼等には理解できなかった。

「・・・成程。そういうことか・・・」
「破輩先輩も・・・気付きました?」
「あぁ」

対して、159支部リーダー破輩は“詐欺師”の言葉に含まれた手掛かりに気付いていた。それは、一厘も衝撃を受けた後に考えて気付いたこと。

「破輩先輩?」
「・・・界刺の言葉からわかるのは、『黒丹羽に精神障害を負わせた人間と自殺に追い込もうとした人間は別』だということ。
次に、『仕向けた側は精神系能力者・・・しかも風輪学園の生徒である可能性が高い』こと。
そして、『この件にも風輪学園の上層部が関わっている』こと。最後に・・・『複数居る犯人の内の誰かを界刺は知っている可能性がある』ことだ」
「マ、マジっすか!?」

湖后腹の大声が路地裏に響き渡る。破輩は興奮している湖后腹を宥めるように、静かに説明する。

「大声を出すな。・・・界刺は『自殺や精神障害を仕向けた側』と言った。『自殺や精神障害を仕向けた人間』とは言っていない。
何故『側』という言葉を選んだのか。あいつは、無意味な言葉遊びはしないタチだろう。そこには、何かしらの意味がある・・・筈だ」
「『側』という言葉を選んだ理由・・・それは単独では無く複数だから・・・という解釈も有り得ますね」
「『学園の・・・チェスが好きそうなオッサンの圧力を掻い潜って』か・・・。リンリン。あの野郎は・・・」
「・・・私と春咲先輩が少し前に事後報告に言った時に、『処分が甘いのは学園が一枚噛んでいるかもしれないです』って私が言ってたんだよね。
あの人なら、処分内容を聞いた時点で現場を見て無くてもそこら辺の推測は付いてるんじゃない?もっとも、その報告をするまでも無く事前に予測していたみたいだけど」
「・・・確かにな。・・・あの騒動の後始末もさっさと終わったっていうか終わらされたっていうか・・・だもんな。こりゃまた、ゲスい一面ってヤツを見ちまった気分だぜ」
「『チェスが好きそうなオッサン』・・・それが学園の上層部の人間と見て間違い無いだろうな。『光学装飾』で見付けたとすると・・・あの時その人間は学園内に居たことになる。
上層部の圧力を考えると・・・私達風紀委員にさえ知らされていない事柄が幾つも有りそうだ。・・・『闇』はまだまだ底を見せていない・・・か」

議論は進む。休憩時間は残り僅か。それでも、159支部はその僅かな時間をも使って話し続ける。

「『仕向けた側は精神系能力者・・・しかも風輪学園の生徒である可能性が高い』、それと『複数居る犯人の内の誰かを界刺さんは知っている可能性がある』・・・。
あの人が『いわれある暴力』だと判断した理由・・・それは、界刺さん自身が知っている人間だったから・・・という可能性もあるんですよね」
「あぁ。学園の上層部がもし黒丹羽の末路まで関知しているのなら、そこに関わった風輪の生徒についても黙認している可能性がある。
黒丹羽達が起こした騒動で奴を憎む人間も居た筈だ。その人間は、風輪の生徒である可能性が高いのは言うまでもないだろう?」
「被害者の殆どが記憶を奪われていたとは言え、彼等に関係する人間の中に黒丹羽先輩の存在に気付いていた生徒が居なかったとは断言できませんモンね。
そして、その中に界刺先輩が知る人間が居る可能性がある。その人間を知っていたからこそ、黒丹羽先輩への行為を認めた可能性も・・・」
「湖后腹君・・・。でも、界刺さんは界刺さんなりにケジメを着けてると思うんだ。だって、『あの場に居た人間としての最低限のケリも着けた』って言ったから」

歯噛みするのを止められない湖后腹に、一厘は自身の推測を述べる。彼女が知るあの“変人”は、唯の冷血人間では無い。吹間のように、完全無視を決め込む“詐欺師”では無い。
自分が恋する男は、己が行動に後悔の念を抱かせぬように、彼なりの信念に基づいた“線引き”を定める・・・とても残酷で・・・そして・・・とても優しい人間だ。

「最初は、159支部の私に伝えることが『最低限のケリ』だと思ってたんだ。
でも、よくよく考えてみたらさ・・・その知っている犯人に対してケリを着けたって思えてならないの。だとしたら、相変わらずのスピードよね。全く・・・全く・・・」

一厘の脳裏には、ある救済委員の姿が思い浮かんでいた。その人間も風輪学園の生徒であり、しかも精神系能力者であることも知っていた。
精神障害もしくは自殺に追い込むのどちらに有効な能力かと問われれば、明らかに後者である。そして、救済委員の意味・・・。
その上、『マリンウォール』へ赴く当日に啄達救済委員が登場したタイミングを考えれば・・・ある予測が付く。
つまり・・・あの日の深夜から未明に掛けて、碧髪の男は己が知っている人間―つまりは犯人の1人―に対して彼なりのケジメを着けたのではないか。
だから、自分が情報を求めて(というか、『もしかしたら、情報の欠片くらいは知っているかな?』程度の気持ちで)質問した際に、あぁもペラペラと語れたのではないか。
午後から再びプールに突入する前に、偶然2人きりになれた時間を利用して会話を繰り広げた。自分がどんな顔色をしていたのかはわからなかった。
実は、春咲と共に報告した際に彼に白高城のことも打ち明けていた。あの時は、特段質問はしなかった。春咲の去就問題の方に頭を取られてしまったから。
あの時点に既にわかっていたことを、何故今頃になって話すのか。文句は幾らでもあった。でも、結局は言えなかった。何故なら、これは自分の問題だったから。
彼の真意を想像してからは、もっと情けなくなった。彼は、既に彼なりのケジメを終えている可能性がある。
それに引き換え、自分はまだケジメを着けられていない。着けられる可能性さえ見出せていない。だから、一厘は決断した。自分が抱えていた思いを、仲間に打ち明けることを。

「・・・その推測に至った過程について色々質問したい所だが、それは止めておこうか。その代わり・・・一厘。これだけは答えろ。
精神障害と自殺未遂。界刺がケリを着けたとして、どちらを行った人間に対してだ?」
「・・・・・・後者だと思います」
「そうか・・・。幸い、黒丹羽は死に至っていない。それを言い出したら、私だって殺人に手を染めていた可能性も否定できない。
界刺がケリを着けたのなら・・・残るもう一方を見つけ出さないとな。黒丹羽は、その精神障害で今も苦しんでいる。私も・・・私なりのケリを着けないと。
それに、奴が言う『仕向けた側』の・・・いや、あの騒動の大元に風輪学園の上層部が関わっている可能性が・・・ある!!これは・・・私達の責任だ・・・!!」
「(鉄枷先輩・・・これって・・・)」
「(あぁ。一厘には複数居る犯人のうちの1人に目星が付いてんだ。それが当たっているかどうかはわかんねぇけど。後、学園を相手取る可能性も出て来やがったな・・・!!)」

破輩・鉄枷・湖后腹は、一厘の態度から大体のことを察する。だが、それ故に彼女の気持ちを汲むことを決意する。きっと、この中で彼女が一番辛いだろうから。






「でも・・・ぶっちゃけた話、再捜査ってできるんすかね?証人になりそうな、あの“変人”が協力しないってのに」
「鉄枷先輩の言う通りですね。学園側から圧力が掛からないとも言い切れませんし」
「・・・困難であることには違いない。フム・・・」
「それについては、私が何とかします。絶対に」
「・・・どういうことだ?」

強い意志を込めた言葉を吐く一厘に、皆の注目が集まる。

「界刺さんは言っていました。『ちょっと気になることもあるから後々調べようかなとは思ってる』って。きっと、この件に関してのことだと思います。
だから、あの人の調査に私が“勝手に”同行します。頼るんじゃ無くて、あの人を利用します。たとえ、あの人が実力で私を排除しようとしても、命懸けで絶対に付いて行きます。
風紀委員である私に何かあれば、159支部は動かざるを得ない。それこそ、学園の圧力なんて撥ね退けて。違いますか?」
「リンリン・・・お前、自分を囮にするつもりかよ!?」
「私が白高城ちゃんのためにできることは限られている。これは、その1つ。おそらくだけど、界刺さんも深入りするつもりは無いと思うんだ。
それこそ、風輪の騒動を見物していたようにあくまで情報を得るってだけの話だと思う」
「リンリンさん・・・」
「でも、私にとってはそれで十分。これは、私の仕事。風紀委員の仕事。あの騒動で取り零してしまったモノ。私も自分の身を差し出すような真似はするつもりは無いよ?
あくまで、口実みたいなモノだから。だから・・・皆の力を貸して欲しいんだ。私1人じゃできないことを、皆の力でやり遂げたいの!!」

一厘鈴音という少女は、他の面々から見ると危なっかしい人間であった。何時も1人で何かを抱え込んで、それを打ち明けずに悩み続け、結果として失敗を重ねる。
それは、他の面々にも言えることだが。しかし、今の彼女はその面影を見せない。確かに1人で抱え込む癖は健在のようだが、それでも人を頼ろうとし始めた。本当の意味で。
それは、風輪の騒動や碧髪の男と共に経験した数々の現実から学び取りつつあるということ。

「・・・何水臭ぇこと言ってんだよ!俺だって、あいつをあんな目に合わせた人間が野放しになっている現状ってヤツに、思いっ切り文句をぶち込んでやりたいんだぜ!?」
「そうですよ!俺も、このまま終わるってのは納得いきませんし!この『ブラックウィウザード』の捜査が終わったら、皆で色々対策を立てましょう!」
「『大覇星祭』も後1ヶ月程で開催だからな。色んな意味で忙しいったらないな。だが・・・取り零してしまったモノをこの手で掴み直さなければならないな・・・!!」
「皆・・・ありがとう・・・!!」

そうして、159支部の面々は新たなる決意の下昼休みを終える。今は、『ブラックウィザード』の捜査が最優先。それは、決して履き違えない。
だから・・・一刻も早くこの事件を解決する。誰もが笑い合えるハッピーエンドをこの手で掴むために。

「これで、今度はボロボロにならずに済む・・・かも」
「「「ボロボロ?」」」
「・・・界刺さんに言われたんだ。『君って、俺と出会ってから事ある毎にボロボロになっているね。
重徳の時は勇路先輩の全裸を拝んで精神的ショックを受けて、桜の時はズタボロになって、風輪の騒動では血塗れになって、常盤台の“講習”じゃあ俺にボコボコにされて・・・。
しかも、大概君が自分の意思で突っ込んでんだよな・・・もしかして、君ってマゾ?』って。わ、私ってマゾなんかじゃ無いよね!?至極普通の性格だよね!!?」
「「「・・・・・・」」」
「何で皆黙るの!!?だ、誰か否定してよ!!!い、嫌!!絶対に認めない!!私は普通よ!!普通の女の子よ!!!マゾなんて性癖、一切合切持って無いんだから!!!」

マゾかどうかはともかく、あの“変人”に惚れた時点で普通じゃ無いことに少女は気付いていない。一方、それに気付いている仲間達は生暖かい視線を哀れな少女に送っていた。






「それにしても、ひっさしぶりの外回りね~。ここ最近は、ずっと債鬼の奴に事務仕事を押し付けられてたからイケメン探しも碌に・・・ハッ!!い、今のは冗談よ!!」
「冗談・・・?」
「う~ん。・・・。何時何時もイケメン探しに没頭してる風にしか見えないんですけど?」
「うっ!!う、浮草さんは私の言葉を信じてくれますよね!?」
「・・・・・・スマン」
「ガーン!!」

昼食を終え捜査を再開しようとしているのは、178支部の浮草・秋雪・真面・殻衣の4名。事務仕事は他支部(=176支部)に押し付けて来たので、秋雪や殻衣も外回りに参加している。

「あっ、そうだ。・・・。午後から使用する冷却パックです」
「おっ。いいタイミング。さすがは、萎履。気が利くわねぇ」
「サンキュ、殻衣ちゃん」
「・・・気持ちいい。毎度のことだが、捜査中は熱中症にも気を付けないとな」

殻衣が手持ちの保冷バッグから取り出した冷却パックを首筋に着ける面々。炎天下の中において、熱中症にならないように己が体を冷やす術を持つことは自己管理の一環でもある。

「いえ。・・・。私は昔から気が利かない人間でしたから。・・・。もし気が利くようになったのだとしたら、それは固地先輩の地獄の扱きを身に受けたおかげだと思います」
「・・・言葉の最後の方に、何か怨念めいた怨み節が込められていたような・・・」
「固地先輩のおかげって言ってるのに、殻衣ちゃんの目が据わっているのは何故なんだ!?」
「感謝してる部分はあるが、ムカつく部分も同じくらいあるから・・・と見るべきか?」

笑みを浮かべているのに目が据わり、感謝の言葉を吐いているのに怨念めいた何かを感じる、そんな殻衣の矛盾した態度に他の面々は引いてしまう。

「そうです。・・・。そうよ。・・・。あの“女心がわからない唐変木鬼畜野郎”のせいで、私の性格は変わった!!変わる程の地獄のような扱きを平然とぶっ掛けてきた!!」
「うおっ!?殻衣ちゃんが“ツッコミモード”になった!!」

殻衣は、普段は妙な間を空けた喋り方をするのだが、ツッコミを入れる時は一変する。

「なのに、それが私の望んでいた方向に変わっちゃった部分もあるんだから殊更ムカつく!!
本当はあの人のような人間を認めたくないのに!!あの人の下で働けるのを嬉しくなんか思いたくないのに!!」
「殻衣ちゃんが望んでいた方向・・・?」
「・・・。私は変わりたかった。・・・。変わりたくて・・・風紀委員を目指したの」
「あっ、戻った」






殻衣は元から気弱な性格であった。そのせいか、何事にも自信が無かった。
その中で結果を出せた勉学や能力だけが取り柄と考え、そればかり磨いてきた。 とは言っても地が出てしまうのか、試験でもトチる事がある。
例えば、風紀委員の適正試験に2度失敗しているし、能力戦闘でも自分が戦闘の前面に出ず、専ら人形による消極的戦闘に終始している。
そんな彼女が風紀委員を目指した動機は、何を隠そう自分を変える為であった。



「『風紀委員のように学園都市に住む人達の平和を守る事が出来たなら自分もきっと変われる』。・・・。そんな期待を胸に、私は風紀委員になった。・・・。だけど・・・」



配置されたのが、よりにもよって178支部だったのが運の尽き。ここには、あの男が居た。同僚からも恐れられる“風紀委員の『悪鬼』”が棲んでいたのだ。


『俺の名は固地債鬼だ!!今日から俺がお前を指導する!!どんな困難が待ち受けていても、負けずに付いて来い!!!
そうすれば、お前は「本物の風紀委員」になれる!!この俺が保証する!!さぁ、いくぞ!!!』


そう言って、着任初日から自分を外回りに連れ出した。本当は事務系希望であったが、固地は完全に自分の意見を無視した。
自身が持つ能力が実戦向きと判断され、日々外回りに連れ出されてた。地獄のようなトレーニングも課され、毎日泣いた。
178支部に配属された運命を呪ったこともある。最近は色んな意味で逞しくなりつつあるが、当人としては心底心外であった。
こんな風になりたかったわけじゃ無い。自分は、こんな風に変わりたかったわけじゃ無い。そう考えて・・・ある事実に気付いた。気付いてしまった。



「私は風紀委員になることで変わりたかった。・・・。でも、それだけだったの。・・・。
“どうやって”変わるのか。・・・。“何に”なりたいのか。・・・。具体的なビジョン・・・つまり目的意識や手段についてこれっぽっちも考えていなかったことに気付いたの」



能力についてもそう。消極的な余りに、己が能力の有効活用について頭を悩ませたことは殆ど無かった。精々、自分の身を守る程度。そこから先は無かった。
『自分を変える』というのもそう。確たる目的意識が無い状態で、どうやって自分が望む方向に変われるというのか。
『学園都市に住む人達の平和を守る事』・・・これは、あくまで結果でしか無い。そこに至るまでの過程を、殻衣は何も考えていなかった。
ましてや、その結果でさえ抽象的なモノであった。そんな人間が、どうすれば変われるというのか。



「だから・・・自分が望む結果を手に入れるための過程を無理矢理教えてくれた固地先輩には・・・感謝もしているしムカついてもいるんだ。・・・。
今も自分をちゃんと見てくれていること・・・でも酷いことばっかり言うこと・・・色々あるね」



人間としては、自分はあんな性格の持ち主とは気が合わない。できるなら、お近付きになりたくない。でも、心の何処かで認めている。感謝している。
自分にあの男に負けないくらいの信念のようなモノがあれば、もしかしたら対抗できたのかもしれないが、残念ながらそんなモノは無かった。
故に、目的意識、自分で物事を考えること、過程と結果の関連性等色んなことを叩き込まれた。その苛烈さに泣いてしまったが、それでもあの指導は自分の血となり肉となった。
全ては、殻衣萎履が一人前の風紀委員になるための指導。それを、今の彼女は理解している。やり方には山程の文句を言いたいと今でも思っているが。






「固地先輩は『本物の風紀委員』になれるって言ったわ。・・・。『本物の風紀委員』にするとは言わなかった。・・・。つまり・・・」
「最終的には殻衣ちゃん自身の意思次第ってこと・・・か。固地先輩の考えを唯押し付けられるんじゃ無くて、そこからどんな自分の考えや信念を見出すかってこと・・・か」
「焔火さんには『必ずお前を本物の風紀委員にするための教育を叩き込む』って言ってたけどね。・・・。でも、あれだって結局は『教育』でしか無いんだよね」
「固地に受けた教育で、焔火自身がどういう成長を遂げるのか・・・それもまた当人の意思次第か・・・。固地らしいな。だが、裏を返せば・・・」
「責任逃れ・・・とも言い換えられますね。でも、当人の責任というのもごもっともですし・・・」
「一概には否定できない・・・か。矛盾。表裏一体。ハァ・・・世の中ってのは、二分にできないことが多くあり過ぎるな」
「固地先輩みたいに。・・・。ですね?」
「でも、債鬼の奴が性格最悪なのは紛れもない真実よね?」
「「「それは言えてる」」」
「仕事だって、あいつが居たんじゃ何時も胃が痛くなってしょうがないわよね?」
「「「確かに」」」

捜査の最中であるというのに、何故かここにはいない“『悪鬼』”のことが話題になる。それは、彼等が抱いている矛盾に関係がある。

「やっぱり、私としてはあいつが居ない今の方が断然好きだなぁ。だって、ガミガミ言われないし。こちとら、自分のペースでやってるんだっての!」
「確かに。・・・。私も、固地先輩が居ない方がストレスは全然溜まらないですね。・・・。浮草先輩は?」
「俺だって、あいつが居ない方が気が楽だ。それに・・・固地が『本物の風紀委員』?
俺はそうは思わない。そう思うなら、全ての風紀委員があいつだったらって考えてみろよ。・・・・・・それだと、誰も風紀委員なんか信じなくなるよ」
「ブルッ!・・・。確かに、あんな人ばっかりなんてのは絶対嫌ですね」
「まぁ、今は居ない人間のことなんか言ってもしょうがないですよ。捜査に集中しましょ!
今回は、監視カメラとか警備ロボットが居るルート付近の捜査ですから、あの殺人鬼とも会うことは無いと思いますよ!」

178支部の人間は、殆どが固地のことが嫌いor好きでは無い者達である。幾らあの“『悪鬼』”が支部No.1の検挙結果を出すと言っても、人にはそれぞれ好き嫌いというモノが存在する。
だから、こうして陰口や嫌味が発生する。『気に入らない』・『嫌い』・『一緒に仕事をしたくない』。全ては、固地の自業自得である。

「わ、私はそんな危険な奴と戦う気は無いからね!!い、いざって時は浮草さんに守って貰おうっと!!」
「む、無理言うな!!俺だって、あんな奴と戦いたく無いぜ!!というか、レベルなら俺よりお前の方が上だろ!?」
「そんなこと言ったら、萎履の方がレベルは高いですよ!!」
「私!!?む、無茶言わないで下さい!!私だって逃げますからね!!『ブラックウィザード』の捜査をしてるのに、そんな所で道草を食ってる場合じゃ無いです!!」
「でも、昨日のようにバッタリ会って戦闘になったら・・・逃げ切れるかな?」
「・・・無理だろうな」
「なっ!?わ、私ってそんなにヤバイ状態にある外回りに出ていたの!?こ、これなら事務仕事をしていた方が・・・」
「秋雪先輩!?さっきと言ってることが全然違うんですけど!?そ、そうだ!その殺人鬼がイケメンだったらどうするんです!?」
「イケメン・・・イケメン・・・う、う~ん・・・やっぱ止めとくわ。最近は高すぎる理想(イケメン)を追い続けるより、分相応な相手でもいいかなって思うようになったし」
「し、秋雪が成長した!!?こ、これは大事件だぞ!!お前のイケメン食いの性格は、ある意味固地の性格を矯正させるくらいに難しいと思ってたのに!!」
「ひ、酷い!!私を債鬼と同レベルに見ないで下さい!!」
「ス、スマン。ま、まぁ、真面の言う通りあの殺し屋と会う可能性は低いだろう。とりあえずは、任務に集中しようぜ」
「(・・・無理なら無理で、それに至らない方法や無理臭くても何とか逃げるくらいの方法をパッと思い付けないんだよな・・・浮草先輩って。
俺も思い付けていないけど・・・同じだけど・・・・やっぱり何処か頼りないよな。一応リーダーなのに・・・こんな人だったんだ。いっつも固地先輩と一緒だったからわかんなかった。
今回のルートだって、俺と固地先輩が前に作成していたモノを使ってるし。こんなんじゃあ、固地先輩を出し抜くのって何時まで経っても無理だぞ?)」

だが、固地が特に捜査・検挙方面で結果を出していることは事実である。それは、つまり他の支部員が固地に及ばない部分があることを意味している。
結果とは、すなわち成し遂げて来たことである。固地が生み出したのは、有事の際にその者の判断に己が身を預けることができる“信頼”。
彼等彼女等は、無意識的に心の何処かで思ってしまっているのだ。固地が不在であることに対する“不安”を。
何時如何なる時も的確な判断を下す人間が居なくなった時に、その人間に意識的・無意識的に頼っていた者達は大小の差こそあれ動揺し、不安になり、恐怖を覚える。
その点においては、浮草は固地には及ばない。最年長という理由でリーダーにさせられた者と、自ら望んでリーダー格になった者の違い。経験の差。密度の差。本気度の差。
後輩の才覚を目の当たりにしたことで不貞腐れ、対抗する気概さえ持てなかった先輩。彼は、リーダーとしての努力を怠った・・・『本物』では無いリーダー。“お飾りリーダー”。
年長者として叱りはしても、反論され続ければその口は止まってしまう。諦めてしまう。それは、『唯の力不足』・『生意気な後輩のせい』という言葉だけで片付けられるモノなのか。
風紀委員として過ごした時間は、浮草の方が長い。だが、不貞腐れて以降は己が力を研磨する努力を怠っていた。時間が過ぎるのを唯待つ身と化していた。
つまり・・・自身を錆びらせていた。向上心に欠ける者が、向上心を抱く者に抜かれるのは自明の道理。その速度は、想定を遥かに超えたモノになるのも少なくは無い。
1つだけハッキリしているのは、向上心を持って人の数倍仕事をこなして来た人間と、向上心に欠け、努力を怠っていた人間との差はどうしても埋め切ることができないということ。
これ等が、“弊害”。固地自身も十二分に理解していること。だが、それをここに居る面々は完全に自覚できていない。否、完全に自覚することを拒否しているのだ。
人間的にあの“『悪鬼』”を完全に認めたくないために。これは、公私の“混同”。私情で認められないのならば、まだいい。だが、それを公の判断にまで持ち込むのは愚行である。
その辺りの厳格な“線引き”が、今の178支部には無意識の内に欠けてしまっていた。固地が離脱したために発生した気の緩み。それは・・・戦場では命取りになる過ち。






一方、“ヒーロー戦隊”の方はというと・・・






「我輩は“ゲルマ”である!!愛おしい幼子達を守るために、今日も往かん!!!」
「僕は“ゲオウ”だよ?さぁ、皆でマッスル・オン・ザ・ステージを開くとしようじゃないか!!」
「僕は“ゲコイラル”だよ、皆?さぁ、僕の必殺技を見せてあげる!“ゲコイラルラッシュ”!!」
ドカーン!!
「・・・という風に、後先考えずに突進しちゃ駄目っすよ?ちなみに、俺は“ゲダテン”っす。よろしく」

『ゲコ太マンと愉快なカエル達』の追加メンバーが、各自のやり方で幼子達に挨拶をしていた。以下が詳細な設定。



No.12“ゲダテン”(押花熊蜂。カエルに色んな食物が着色されたような姿をしている“パシリヒーロー”)
No.13“ゲコイラル”(速見翔。『止まれ』の標識が着ぐるみの至る所に着色された“暴走ヒーロー”)
No.14“ゲオウ”(勇路映護。褌一丁のカエルの姿をしている“裸王ヒーロー”)
No.15“ゲルマ”(寒村赤燈。カエルにダルマが着色されたような姿をしている“ダルマヒーロー”)



「あっ!僕が作った砂のお城が・・・」
「あ~、ゴメンゴメン」
「・・・本当に“ピョン子”って“ヒーロー”なの?“ヒーロー”なら、もっと真剣に謝るんじゃないの?」
「・・・ゴメンナサイ」
「・・・それだけ?」
「・・・あ~ん?何か文句でもあんのか・・・」
「こ、恐い!!勇君~!!“ピョン子”が恐いよ~!!」
「あっ!!テメェ・・・待ちやが・・・」
ドカーン!!
「ぐへっ!!?」

他にも、“ピョン子”が幼子との接し方に苦労してたり・・・

「は~い!!良い子の皆さんには、私が集めたキラキラピカピカ感溢れるこの素晴らしい石をプレゼントしちゃいます!!」
「“ゲコっち”先輩が集めた秘蔵コレクションですよ~」
「・・・何これ?要らないや(ポイッ)」
「「あっ!!」」
「それよりさ~、あっちの鉄棒で逆上がり大会しようぜ~!!なぁ、皆?」
「そうだね!!それじゃあ、能力を使わずに逆上がりな~!!」
「「「おおおぉぉっ!!!」」」
「「へっ!!?」」

“ゲコっち”と“ゲコゲコ”が自分達の思う通りに事が運ばないどころか、急遽始まった逆上がり大会に参加させられる羽目になったり・・・

「どのスナック菓子が一番美味しいか、食べ比べをしてみない?」
「・・・いいね。・・・“2号”はどう思う?」
「いいんじゃないかな~。“ゴリアテ”さんが一杯持って来てるみたいだしさ~」
「俺達だって、一杯持ってるぜ!!」
「私だって!!」
「よ~し!!昼ご飯が終わって少ししか経ってないけど、“ヒーロー”の人達と一緒に食べ比べるぞ!!1人だけ唯のカエルだけど」
「「「おおおおおぉぉぉっっ!!!」」」

“ゴリアテ”、“ケロヨン1号”、“ケロヨン2号”達が、所狭しと並べられたスナック菓子の中からどれが一番美味しいかを決めようとしたり・・・

「は~い、皆!俺は“詐欺師ヒーロー”の“カワ・・・」
ドン!!ボーン!!バリバリ!!
「グハッ!!?」
「お前等ー!!連絡網で回って来た偽者の“ヒーロー”がここに来たぞー!!わかってんなー!!」
「わかってるよ、勇君!!“カワズ”・・・ゲコラーであるボク達が絶対に認められない“ヒーロー”・・・!!」
「早く風紀委員か警備員の人達に連絡を・・・」
「待つんだ!!前途有望な幼子達よ!!」
「「「“ゲコ太マン”!!!??」」」
「確かに、“カワズ”は偽者の“ヒーロー”なのかもしれん。ならば、いや、なればこそ俺達の手で本物の“ヒーロー”に育て上げるというのもアリではないか!?」
「ボク達の手で・・・」
「“ヒーロー”にしてあげる・・・」
「そうだ。例えば、こうだ!!」
ドゴッ!!
「ガハッ!!」
「“ゲコ太マスク”!“ゲコ太”!“ゲロゲロ”!俺に続け!!」
「御意!!」
「おう!!」
「・・・いいのかよ?(ボソッ)」
ベキッ!バキッ!グキッ!
「さぁ、幼子達よ!!己が拳で“カワズ”に語り掛けるのだ!!“カワズ”が本物の“ヒーロー”になれることを信じるのだ!!
俺も、以前この拳である男を目覚めさせてやったことがある!!暴力を用いることは、本来であれば望ましくない!!
だが、いざという時は己が信念を拳に込めて解き放つのだ!!そして、叫べ!!『暗黒時空』と!!!」
「グハッ・・・そ、それって、単にお前の妄想技をガキ共に伝授したいだけじゃあ・・・」
「この拳で・・・。お前等ー!!“ゲコ太マン”の言う通りだー!!」
「そうだね!!超能力じゃ無くて、ボク達の拳で“カワズ”を偽者の“ヒーロー”から本物の“ヒーロー”にしてあげよう!!」
「それじゃあ、風紀委員や警備員の人達への通報は無しね!!私達の思いを・・・」
「この拳に・・・」
「込める!!せ~の!!」
「「「『暗黒時空』!!!!!」」」
「グアッ!!!」
「ハーハッハッハ!!!」


“ゲコ太マン”の指導の下、“ゲコ太マスク”・“ゲコ太”・“ゲロゲロ”に幼子達を加えて“カワズ”の矯正(鉄拳制裁)に勤しんでみたり・・・。
本当にこいつ等と来たら・・・・・・心の底から愛してやまない極め付けのバカ共である。

continue!!

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最終更新:2012年10月15日 01:05