【金果玉壌 下】

(承前)

「馬兄、ダメですよ」
 思慮深げに眉をひそめた鹿が、手の中で金果を弄いながら言った。
「俺たち、これを取りに来たんですよ」
「そうだよ?」
「だから、もって帰らないといけないでしょ」
「そうなの?」
「そうですよ。だからおい、お前、酒にするのはなしだ」
「――左様ですか。それはなんとも残念」
 失望を押し殺して道人は平伏した。打開策を探すべく馬の顔色を伺うと、不思議な事に馬もなにやら不満げである。
「もって帰れなんて言ってたかなあ」
「言いましたよ。『黒亜酒を造ってるところのそばに森があるからそこに生ってる実を取って来い』って言ってたじゃないですか」
「ああ、言ってた言ってた。『終わったらお酒好きなだけ飲んできていい』って言ってたなあ」
「馬兄はそれしか覚えてないんですか。とにかく、取って帰らないといけないんですよ」
「どの実とは言われてなかったけどなあ。この実じゃなくて他の実だったのかも」
「他の実は全部溶けちまったじゃないですか。残ってるのがこれだけなんだからこれ持って帰りゃいいんですよ」
「そうかなあ。取ったらそこでおしまいってわけには行かないかなあ」
 言い募りながら、馬はちらちらと茶碗に目をやっている。道人の心に閃くものがあった。
「ひょっとして馬さまはお酒がお好きなのでは?」
「うん、そうだよ。俺はお酒が大好きなんだ」
 満面の笑顔である。すかさず道人は付け込んだ。
「ははあ、それは残念。この果実を酒にしたならば、他の酒など酒のうちに入らなくなってしまうような美酒が作れたでしょうに。全く残念至極でございますなあ」
「そうかあ。そうだよなあ。残念だなあ。なあ鹿弟、やっぱり持って帰らなくてもいいんじゃないかな」
「でも馬兄、母上の言いつけ守らなかったらきっとお仕置きですぜ」
 苦々しげに言う鹿の言葉に、馬の顔から能天気な笑顔がさっと消えうせた。
「お仕置きされるかな?」
「きっと飯抜きですぜ」
「めしぬき!?」
「あと掃除もさせられるかも」
「そうじ!?」
「その程度ですみゃいいですよね。母上の言いつけを守らなかったら、母上だって虫の居所が悪くなりますよ。そんで虫の居所がものすごーく悪かったら――」
「悪かったら?」
 唾を飲み込んだ馬に、鹿がさも恐ろしげな調子で言葉を継いだ。
「――寝る前のお話抜きになるかもしれないですねえ」
 馬の顎ががくんと落ちた。そのまま膝まで崩れ落ち、許しを請うように両腕を掲げ、口をぱくぱくと開閉させるその振る舞いは、道人をして一世一代の賭けに敗北して文無しになった博徒を想像させた。鹿のほうに目を転じてみれば、鹿は鹿で己の口を押さえている。あたかも正気では口に出すのがはばかられるようなおぞましいことを口走ってしまったといわんばかりである。果たして、鹿は深々と頭を垂れて、がくがくと震えている馬の肩にゆっくりと手を置いた。
「馬兄、すまねえ言い過ぎた」
「お話抜きってさあ」
「馬兄、気を確かに持ってくださいよ。俺が適当言ってるだけなんだから」
「でも、お話抜きって」
「そうなるかもってだけですよ、馬兄。言いつけちゃんと守ったら大丈夫だから」
「――母上はちゃんとお話してくれるのか?」
「間違いないですよ、馬兄」
「本当かなあ。俺たちを放って寝たりしないかなあ」
「どうかすると二回お話してくれるかも知れないですよ」
「本当か!」
「そうだよ。だからちゃんと持って帰らないとダメだよ、馬兄」
「うん分かった。そうする」
「ありがとう、馬兄。そういうわけだから、お前、その壷は引っ込めろよ。俺たちはもう帰るからな」
 生まれたての子馬のようにプルプルと震える馬に手を貸して立たせながら、鹿は這い蹲る道人にそういい捨てた。平伏しながら歯軋りが止まらないのは道人である。そのまま立ち去ろうとする二人の前に回りこむと、道人は地面に頭をたたきつけた。
「お待ちください、大英雄さまがた!」
「まだなんかあるのか」
「お二人の事情は大変良く分かりました。お二人は母上のために実を取りにいらっしゃったわけですね」
「そうだよ」
「大変ご立派な心がけでございます。母のためなら火の中水の中というのはまさしく孝子の中の孝子、すばらしい心栄えに私も心が洗われるようでございます」
「火の中は別にいいけど水の中はちょっとやだなあ」
「馬兄は水の中で息できないですもんね。俺も火の中はちょっとやだな。服が焦げたら困る」
「あの、火の中水の中はたとえでございますので。それはそれとして、お二人のような立派な孝子をお持ちになってご母堂はさぞや鼻が高いことでしょうね」
「『ごぼどう』って何かなあ」
「きっと母上のことですよ」
「そうかあ。でも母上の鼻ってどの鼻のことかなあ。どれもそんなに高くないんだけどなあ。あ、でも左の方の鼻はそれなりかな」
「真ん中の奴も長いですけどね。高いと長いは違いますもんね」
「その、鼻が高いというのは物のたとえでございますので。あの、それで、母上様は一体どちらにいらっしゃるのでしょう?」
「ここにはいないよ?」
「それ聞いてどうする」
「はい、実はその、少々気がかりな事がございまして。ご母堂にいくつか申し上げたいことがあるのでございます。取り越し苦労ならよいのですが、どうも心配でして」
「どういうことだよ」
 道人は唇を舐めた。
「お二方、先ほどまでこの果実が生っていた森の有様を思い出されてください。どのような森でしたか?」
「なんかすごい森だったよね、鹿弟」
「敵意丸出しって感じでしたね、馬兄」
「まさしく、踏み入ったものを容赦なく殺そうとする魔の森でございます」
 言葉に実感がこもり過ぎないように注意しながらも、道人は調子を上げた。
「実はこれまでにも、森を焼くために投入された大勢の兵士たちがその餌食になってきたのでございます。お二人のご活躍により森は今では消えうせた次第ではございますが、ただ一つだけ、森の中にありながら生き残っているものがございます。その果実でございます」
 二人が金果に注目する間、道人は充分な時間を置いた。金果を見る二人の目がいぶかしげなものになっていくのを確認しながら、道人はここぞとばかりに声を張り上げた。
「いかにもその実はすばらしいもののように見えます。しかし、綺麗なものには毒があるという言葉もございます。私どもの兵士も、それによく似た偽者の実の餌食になってきたのでございます。無害そうな見た目に気を許し、思わずかぶりついてしまった兵士は体の内側から腐り果てて苦しみながら息絶えました。その有様を見ていたはずのほかの兵士もまた同じように実にかぶりついてしまう有様。まさしく、魔の森に生るのは魔の実でございます。人をたぶらかして苦しみの淵に沈めんとする卑劣な罠なのでございます」
「あー、そういやそんなのあったね、鹿弟」
 馬が手を打った。
「俺何回も引っかかってさ、そのたびに死ぬかと思ったなあ。鹿弟が助けてくれてよかったよ」
「俺がいてよかったですね、馬兄」
「流石でございます。お二人には森の卑劣な技も通用しない、これは明らかなことでございます。しかしながら」
「しかしながら?」
「しかしながら、お二人の母上はいかがでしょうか。もしこの実に毒が仕込んであり、それがご母堂の前で炸裂したならどういうことになりましょうか。私はそれが心配なのでございます」
 馬が眉をひそめた。
「大丈夫じゃないの? だって今でも別に大丈夫じゃない。俺何回か引っかかったけど、すぐ毒が回ってきたよ」
「そこがこの実の狡猾なところだとしたらいかがです? あくまで無害そうな見た目を装いながら、その裏では無力な被害者が近寄ってくるのを待っているのだとしたら? たとえばそう、子が母に実を取ってきてあげるような場面を想像してみて下さい。ニコニコ笑う母が子供から貰った実を口に含むや否や、瞬く間に全身が腐りはてるのです。しかし心配ご無用ですぞ。この魔法の壷があれば――」
 道人が言い終えぬその内に、馬の顔が見る見るくしゃくしゃになった。掌中の実をさぞ恐ろしいものであるかのように眺めやり、かと思うとその口がきっと一文字に結ばれた。
 轟風が二度巻き起こった。
 顔を背けた道人が目をぬぐってみれば、そこには馬の腕の筋肉がはちきれんばかりに脈動している。馬が金果を地面に投げつけるに当たって全力を解き放ったことは疑いようもなく、それはすなわち止める手立ても存在しないに等しいように道人には思われたが、鹿の振る舞いはいともあっさりとその予想を裏切っていた。鹿はやすやすと実を受け止めていたのである。
『師父、申し訳ありません、あわよくば途中で受け止めようかと思ったんですが……』
 視界の隅で小さく揺らめく紅索子の字に小さく手を振りながら、道人は冷や汗をぬぐった。汗は何もかもが規格外なこの二人組を相手取ることの恐ろしさを実感したせいでもあり、金果が万が一着地していたらと考えてのものでもある。
 地面すれすれのところで受け止めた金果を引き戻しながら、鹿は馬のわき腹をつついた。
「馬兄、ダメだよ投げちゃ。潰れちゃうでしょ」
「なんでだよ。だって危ないんだろそれ。早く捨てなよ、鹿弟も危ないよ」
「俺は大丈夫ですよ」
 鹿弟が胸を張った。
「ほかの奴ならいざ知らず、俺に効く毒なんかこの大地の上にも下にもありませんよ」
「そりゃそうだけどさ……」
「馬兄は心配性だなあ。この森の毒だって現に効かなかったでしょうが。あんなのたいしたことないですよ、別に」
「鹿さまは毒が効かないのですか、それは存じ上げませんでした」
「『制五毒』っていうんだよ」
 馬が誇らしげに言った。
「さそりと蛇と後なんだっけ、さそりだったかな。鹿弟にはとにかくその辺の毒が全部効かないんだよ」
「さそりだけじゃないですよ馬兄。虫毒、鉱毒、草毒、呪毒に躍毒を制して『制五毒』なんだから。ついでに酸や酒精の類も効きませんがね」
「さ、左様ですか。それはまたなんともすばらしい」
「すごいよね」
「効かないだけじゃないぜ。俺の鼻はどんな毒でも嗅ぎ分けられるんだ。この実に毒はない。断言するよ」
「左様ですか」
 ――そんなの知るか。話が違うわ。
 道人にとってはとんでもない番狂わせであった。すりとって逃げることは全く不可能であり、かといって騙して奪おうにも二人組は予想外にしぶとい。人知を超えた能力の持ち主が道人を困らせるためだけにこの場に集結しているかのような惨状である。道人はため息を押し殺した。
 金果を手放させる理屈を必死で考えながら、道人は潰えた策のダメ押しで時間を稼ぐことにした。すなわち、金果の毒を無力化することが出来るのは道人だけだと思わせて手放させる方策である。
 道人は精一杯の意気をふりおこして壷を掲げてみせた。
「あの、鹿様、気を悪くしないでいただきたいのですが、万が一ということがございます」
「万が一って何が」
「いえその、万が一、鹿さまが毒の存在を見逃しておられる可能性がございます」
「なんだと!」
 ぴしり、と音を立てて、鹿の頭に生えている角が縦に割れた。
「お前何様だ? この! 『制五毒』の! 力を! 疑おうっていうのか!」
 鹿が怒りに満ちた言葉を吐き出すたびに、角は見る見る枝分かれしていく。割れるたびに飛び散る角の破片が、道人の顔にぱらぱらと降り注いだ。あまりにも予想外の光景になかば本気で気おされながら、道人は必死に食い下がった。
「いえ、その、お許しください。私はただ心配なのでございます。お二人のご母堂が、本当に万が一毒にやられて苦しい目に合わされるのはまったくあってはならないことでして」
「そんなことありえないんだ! バカにするのか! 怒るぞ!」
 見る間に鹿の角は頭に刺さった箒のようになっていく。鋭く尖った角はだんだんと湿り気をおび、分かれ目からはどす黒い滴りが染み出して全体を芳しからぬ色合いに染めていく。異形は紛れもなく鹿の身中に渦巻く神力によるものである。道人が仙人でなかったならば気絶も免れないような禍々しい光景であり、流石の道人もこれには大いに意気をそがれた。
「ですから、お聞きください。私は鹿さまのお力を疑っているわけではなくて」
「疑ってるじゃないか!」
「――やめなよ、鹿弟」
 いきり立つ鹿の肩に、馬がそっと手を置いた。思わぬところからやってきた救援に、道人は思わずあっけに取られた。
「この人はなんにも悪いこと言ってないよ。母上のことを心配してくれてるだけだよ」
「でも馬兄――」
「俺も心配になって来たよ。母上が毒にやられてぐわーってなるの、俺は見たくないよ」
「だから、そんな心配はしなくていいんですってば」
「でもさあ、そうなったらいやだよ、俺。それに、この森がいやな感じだったのは鹿弟だって知ってるはずだよ」
「それはそうですけど」
「なんかさ、そのいやな森がさ、最後にもう一つだけ俺たちを騙そうとしてるのかもしれないだろ。おれはバカだから騙されるのもしょうがないし、鹿弟はバカじゃないけど心はすごく綺麗だって母上がいつも言ってるよ。心の綺麗なやつは、悪い奴に騙されちゃうもんだってこともいつも言ってるだろ。それで、この森はすごく悪い奴だとおもう。この人が言いたいのはきっとそういうことだよ、鹿弟」
「馬兄……」
 ぱきぱきと音を立てて、鹿の角が再び一本にまとまっていく。馬に頭をなでさすられて、鹿はくすぐったげに首をすくめる。まさしく仲のよい兄弟そのものといった無邪気な光景である。
『師父、あの……この人たちひょっとしてすごくいい人たちなんじゃ……』
 吐月壷の言葉を掌の一振りでかき消すと、道人はつとめてすまし顔を作った。
「なんともお美しい愛でございました。この私感動いたしました。それでは、私にその実をお任せいただけますね、鹿さま?」
「任せるつったってどうするつもりだよ。俺でもかぎつけられないような毒をお前がどうにかできるってのか」
「出来ます。この魔法の壷があれば、いかなる毒もたちまちの上に無力化されるのです。効果は折り紙つきでございます。なんとこの壷は、かの腐神の神力がこめられた代物。全ての毒を酒精に変えてのける恵みの壷なのでございます」
 道人は鹿に向かって壷をさしだした。鹿は壷と金果とを見比べた末に顔をしかめた。
「俺そんなの聞いたことないぞ」
「まこと確かなことでございます。馬さまからもどうかお口添えをお願い申し上げます」
「『おくちぞえ』って何かなあ」
「――ちぇ、いいさ、わかったよ。任せてみようじゃないか」
「ありがとうございます。では早速」
「ただし、その前に一つ試させてもらうからな!」
 鹿の角が内部から弾けた。角の割れ目からは周囲に黒い飛沫が飛び散り、そのいくたりかが道人の衣にかかると、衣は見る間に焼け焦げて大穴が開いた。地にこぼれた滴が地面にしみこむや否や、土の色が見る間にどす黒く染まっていく。そこから立ち上る死と腐敗のにおいに、道人は思わず鼻を覆った。
 首をコキコキと鳴らすと、己の角に茶碗をつけて毒を注いだ。なみなみと注がれた黒い液体を無造作に道人に向かって突き出し、鹿は挑発するように牙をむき出した。
「もし、お前の壷がお前の言っているとおりにどんな毒でもかき消すことが出来るというんなら、この俺の毒を試してみろ。そしたら信用してやる」
 一歩も引かぬという剣幕である。道人の手の中で吐月壷がわずかに震えた。馬は吐月壷に目を瞠り、鹿にむかって声を掛けた。
「なあ鹿弟、やっぱり止めたほうがいいんじゃないかな。だってなんかこの壷怖がってるみたいだよ。震えてるもん。いじめてることにならないかなあ」
「何言ってるんですか。壷が怖がったり震えたりなんてするもんですか。おいお前、やるのか、やらないのか」
 道人はしばし瞑目した。吐月壷の表面をなでさすり、深いため息をついて首を振る。空を見上げては鼻をならし、袖口を弄ってはまたため息をつく。耳をかき、鼻を擦り、やがて鹿に向き直ったとき、道人の目には静かな決意がこめられていた。
「結構です。では早速やりましょう」
 そういうが早いか、道人は鹿から茶碗を奪い取ると、そのまま中身を吐月壷の中にぶちまけた。
 甲高い悲鳴が、壷の中からほとばしり出た。



 吐月壷は道人の手の中でぐいぐいと動き回り、ついにはその手の中から飛び出して辺りを跳ね回った。軟らかな玉壌に中ほどまでもぐりこみ、かと思えば回転して土くれをあたりに撒き散らす。しばらくの間もがいた末、吐月壷はその動きをぱたりと止めた。
「なんだよ」と鹿がぼそりと言った。「やっぱり大したことないじゃないか」
 茫然自失に陥っていた道人の口がぱくぱくと開閉した末、ついに言葉を取り戻した。
「な、な、なんてことをしてくれるんだ貴様ら!」
 道人の口から飛び出した怒声は馬をして耳を押さえさせるほどの大音声であり、鹿すらも気おされて視線を彷徨わせた。その間にも道人の怒りは留まるところを知らず、まさに奔流のように罵り文句が口をついて出た。
「確かに試してみろとは言った! 言ったが! だが本当に壊してしまう奴があるか! こっちはそちらを信じて大事な壷を差し出したのだぞ! だというのにこの始末だ! 一体どう落とし前を付けてくれるというんだ! ああああ信じられない!! 全く信じられない!」
 はらはらと涙を流し、道人は地に転がる吐月壷を拾い上げてかき抱いた。体を丸めおいおいと泣き叫んでいた天目道人が、ふと声を止める。目を見開いて馬と鹿に向き直ってみれば、そこには壷の姿はなく、たださらさらと崩れた欠片があるばかりである。言葉を失った二人組の前で、道人は再び地に伏せると泣きじゃくった。
「ああ!! なんとわしは愚かだったことか! こんな道理の分かっておらん輩に先祖代々伝わってきた宝を預けてしまうとは!! ご先祖様になんと顔向けしたものやら! ああああああああ!!!」
「お、俺は悪くないぞ。だって試してみろって言ったのはそっちじゃな――」
「本当に試す奴があるかと言っているのが分からんのか! この間抜けが!!」
「なっ……」
「そもそもだな、わが壷がお前の毒を無力化できんかったからと言ってそれが一体なんだというのだ! お前の毒を注ごうが注ぐまいが、果実の毒を除くこととは何の関係もないではないか!! 単に面倒が増えるだけのことだ!」
「だ、だって、どんな毒でも除いてみせるって」
「確かにそう言った! だがそれはただの売り文句ではないか! わざわざこの壷を遺してくれたご先祖様のことを思えば、ちょっと大げさに効能を吹聴して何が悪い! こういうのはな、聞くほうだって話半分で聞いておるのが普通なのだ! それを言葉通り取る奴があるか!! 『制五毒』というのはこんな壷ごときとでも本気で張り合わねばならんほど薄っぺらい看板なのか? ちょっとでも傷がつくかもしれんその恐れだけでもう耐えられなんだとそういうことか、あ?」
 道人の声から怒りが抜け落ち、しんみりとした声音になった。道人は憮然とする鹿に見せ付けるように壷の欠片を振りまきながら、切々と言葉を搾り出した。
「なあ、誰もお前さんをバカになんかしとりゃせんじゃないか。お前さんが壷を試したいというならいいさ、こちらは喜んで負けを認める用意があったさ。さすがは『制五毒』さま、参りました。いやいやそちらこそ中々がんばったなとお互いねぎらいあって不朽の友情が育まれ、そうすればいよいよ本題に入ってわしは壷で実の毒を抜き、お二人は美酒をご母堂の元に持ち帰って全ては丸く収まっておった。そのはずだったのじゃ……」
「いや、それはおかしいだろ。だってお前の壷が負けてたらそれは結局俺の見立てが正しくて、実には毒がないってことになるはずで――」
「だまらっしゃい!!!!!」
 道人の大声に、馬がおびえて首をすくめた。鹿ですら、金果を帯に耳を押さえて顔を背けた。
「とにかく! お前らが余計な事をしたせいで我が家の家宝が粉みじんだ!! 一体どう落とし前を付けてくれるつもりだ!? 返せ!! 家宝を返せこの野郎!!」
 涙ながらにすがりつく道人を振り払うことも出来ず、鹿は助けを求めるように馬を仰ぎ見た。馬もまた困ったように顎をぽりぽりとかいている。すでに日はほとんど地平線に沈み、空の色も赤から深い青へと変じつつある。その空の色を打ち眺めていた馬が、ぽんと手を打った
「そういえば、あのさ、俺たち夕飯の時間に遅れるからそろそろ帰らないといけないんだ。そうだよな、鹿弟」
「へ……あ、そうです。そうでした、馬兄」
「母上の晩御飯楽しみだなあ、ねえ鹿弟」
「楽しみですねぇ、馬兄」
「おいこら、逃げるのか!」
「いや、別に逃げるわけじゃないよ。ただちょっと夕飯に間に合わなかったらいやだなって思って」
「そういうことだ。じゃあな。壷の事は残念だったけど、あんまり気に病むなよな」
「なんだその言い草!!! おい、待て! 待たんか!!!! 逃げるな!!」
 首をすくめた馬が、いかにもすまなそうに首をすくめると、鹿を肩に担ぎ上げた。鹿は金果を小脇に挟み、馬の肩に跨って耳を押さえてやっている。道人のわめき声に顔をしかめると、鹿はしぶしぶといった調子で頭を下げた
「この償いはいつかしてやる。また今度な」
「今しろ!!! 逃げるな!! 今逃げたらためにならんぞ!」
「ごめんね」
 そういい捨てるが早いか、馬は大地を蹴って駆け出した。その俊足ぶりはまさしく宙を翔るがごとく、瞬く間に稜線の彼方に消えうせる。始めのうちこそ怒鳴り散らしていた道人であったが、馬のあまりの逃げ足にため息を漏らした。
 そうして、馬の気配が完全に消えうせたのを確認したところで、道人は袖口から果実を取り出した。まさしく、本物の金果である。


「よしよしよしよしよしよし! やれば出来るのう、天目よ!」
 空中からにじみ出るようにして現れた小さな影が、道人の横っ腹に体当たりした。うめき声には構うことなく、金果を奪い取って惚れ惚れと眺める。すっかり日の落ちて暗くなった周囲にあって、娘々の全身は青白く発光している。娘々がパチンと指を鳴らすと、周囲に昼間のような光が満ちた。
「師叔」
 腹をさすりながら、道人は娘々に拝礼した。娘々の幻を描く能力を持ってすれば、己の姿を隠すことなど造作もないことを道人はよく知っていた。
「あのくっさい演技で泣きついたときのすり替えっぷりといったら、間近で見ておったが見事なものじゃった。詐欺の腕前は師兄の薫陶あらたかというわけじゃ。わしが力添えをするまでもなかったのう」
「師叔、今後お力をお貸しくださるというときにはぜひとも最初からお願いします。さっきのように、ここ一番というときを狙ってその辺りから顔を出すのだけはおやめください。連中に見つかったらどうするおつもりだったのですか」
「そんなヘマはせん。苦し紛れに吐月壷を生贄にしようとしとったから少し手伝ってやろうかと思っただけじゃ。いらん心配だったようじゃがな」
「分別を発揮していただいてありがとうございます。それと、別に生贄になどしておりません。ほら」
 道人が袖から取り出したのは吐月壷である。小さく震えた吐月壷は、娘々に抱えられて初めて気恥ずかしげに言葉を発した。
「ヒヤヒヤしましたぜ、ヒヤヒヤ」
「すまんな、吐月壷。お前には本当に申し訳なくおもっとる。弟子に危ない橋を渡らせるなんてわしゃ最低だ」
「いいんですよ、師父。いいんです」
「すまん」
『吐月壷!』
 天から降りてきた糸を伝って紅索子が姿を現した。あたふたと形にならない文字を描く紅索子に娘々が吐月壷を手渡すと、紅索子は吐月壷を抱きしめて肩を落とした。安堵のため息をつく紅索子の頭をやさしくなでてやりながら、娘々は道人を見上げた。
「天目よ、吐月壷がいつの間にか袖口に滑り込んでおったのはお前の手わざとでかい声での耳くらましのおかげじゃろうし、そのあとの割れたふりも適当な陶片を出してごまかしただけじゃろ。だが毒はどうやって耐えたのじゃ? 吐月壷にも毒は効かんのか?」
「別に耐えてませんぜ。別に」
「どういうことじゃ」
「私が毒を注いだとき、吐月壷は単に中で他の容器に受け止めたというだけのことですよ。あの毒は何でも害するようですが、茶碗には効かぬようでしたからな。準備を整える時間を稼げばあとはもう簡単な事でした。くれぐれもこぼすなよ、吐月壷」
「大丈夫でさあ、大丈夫」
「よし。用も済んだし、じゃあ帰るとするか。もう日も沈んだしな」
「お言葉ですがダメです」
「なんでじゃ」
「なぜなら、もうそろそろ奴らがすりかえられたことに気付く頃合だからです」
 道人の言葉に応ずるように、はるか遠くで轟音が鳴り響いた。再びあがった轟音はより大きく、三度上がればそのもとは明らかに近づいている。にわかにあたりに満ち始めた殺気にうろたえる娘々や弟子たちを他所に、道人は涼しい顔で娘々に頭を下げてみせた。
「師叔、ところでちょっとしたお願いがございます。なに、簡単な事ですよ。金果を手に入れるための、最後の一押しです」




 二人組みは空から飛来した。そのまま落ち着き払った道人のすぐそばに着地し、巻き上がる土ぼこりを腕の一振りで振り払うと、馬と鹿は道人に詰め寄った。馬は道人の襟を掴むと片手で持ち上げ、歯をむき出して威嚇した。
「おいお前! だましたな!」
「はて? 何のことやら皆目分かりかねますが」
「とぼけるな! 実を返せ! お前がスリ替えたんだろう!」
 鹿が大声を張り上げながら、掌に握りこんでいたみかんを突き出した。
「馬兄が気付いたんだ。なんか臭いが違うって言い出すから確認してみたらこのザマだ!」
「さて、それでどうして私めが盗んだことになるのですかな」
「お前以外考えられるか! 出せ! 俺たちは盗人には容赦しないぞ!」
「しないぞ!」
 馬の筋肉ははちきれんばかりに盛り上がり、鹿の角は八つに割れて毒汁が滴っている。怒りに満ちた二人の目と空の星とを見比べた末、道人は体から力を抜いた。襟をつかまれたままで器用に肩をすくめると、道人は袖口から金果を取り出してみせた。
「さて、お二人のいうのはこの実のことでしょうかな」
「あった!」
「やっぱりお前じゃないか! ぶっ殺してやる!」
 辺りに充満する怒気はいまや目に見えるほどの濃度となっている。だが道人は動じない。心外そうに馬と鹿とを見下ろしながら、口の端をゆがめるばかりである。
「物騒じゃのう。いかにもわしはこの実を貰い受けた。だがそれはわしにその資格があるからじゃ。おぬしらと違ってな」
「なんだと!」
「資格って何のことだ! 俺たちが取った実だぞ! だから俺たちのものだ! 俺たちに資格があるんだ!」
「いかにもそうであったさ。おぬしたちがわしの壷をダメにしてしまうまではな」
「そ、それとなんの関係があるんだ」
「もちろん、壷の償いとしてこの実を貰い受けるということさ」
 馬たちが言葉に詰まった。視線を彷徨わせる二人組みに向かって、道人はさらにたたみかけた。
「お前らが先祖代々伝わる魔法の壷を破壊してしまったおかげで、わしは先祖に向ける顔がない。それもわしの愚かな振る舞いで破壊したというならともかく、まったくの善意で行ったことが裏目に出たという格好じゃ。どこかの誰かさんのせいでな。しかし過ぎたことはしょうがない、潔く諦めるべきかと思っておったのだ。最初は」
「お、おい話が違うじゃないか。あきらめたんならいいだろ」
「最初はといったじゃろうが、黙って聞け。そんな風に深い悲しみに沈んでおったわしの心に語りかけてくる声があったのじゃ」
「こ、声?」
「そうじゃ。これを見るがいい!」
 道人は金果を二人組に突き出した。気おされた二人組にぐいぐいと金果を押し付け、道人は高らかに声を張り上げた。
「この果実がわしに語りかけてきたのじゃ。『なんと可哀想な。私のためにそなたの大事な宝が失われるとは。お詫びにこの身をそなたに捧げます』とな。だから貰い受けたとこういうわけだ。どうだ、文句あるか」
 馬も鹿もあっけに取られたように、金果とお互いの顔とを見比べている。先に口を開いたのは馬である。
「じゃあしょうがないかなあ……」
「なわけないでしょうが! しっかりしてください馬兄!」
 鹿が爆発した。頭をぶんぶんと打ち振って辺りに毒汁を振りまきながら、鹿は道人に詰め寄った。その角が鼻先を掠め、道人はわずかに顔をしかめた。
「おいお前! 適当な事を言うのもいい加減にしろよ! 何が実がしゃべっただ! そんなことあるもんか!」
「え、でも鹿弟さ、うちの庭に生えてる銀血樹はしゃべるじゃない。実も。俺たちより頭いいらしいよ、あれ」
「馬兄はちょっと黙っててください! 仮にしゃべったとして、そんな声は俺たちは聞いてないぞ! お前がいい加減な事言ってるだけなんだ! 俺たちがバカだからって騙そうとしてるんだ! そうにきまってる! 返せ! 実を返せこのやろう!」
「よかろう」
「何がよかろうだこの――は?」
「返してやろう。そして己が耳でもってしっかり聞くがよかろうさ。果実の声をな」
 道人は無造作に金果を鹿に向かって放った。難なく受け止めた鹿に顎をしゃくり、耳をさして金果に近づけるように促す。馬が道人を地に下ろした。そうして二人が恐る恐る金果に耳を近づけると、不意に金果が発光しはじめた。
「わ、わわわ」
「落とすなよ。果実が機嫌を損ねるぞ」
 鹿の掌の上で、金果はなおも輝きを増していく。やがてそこから一筋の光が流れ出したかと思うと、次の瞬間には光り輝く狼人の少女の姿がそこにあった。全身を金属質の体毛で覆った狼人の少女は、目を伏せて口元を覆いながら馬と鹿に向き直ると、いかにも重々しい調子で言葉を発した。
「そなたたち……聞くがよい……わしは繊……おほん、その実の化身であるぞよ……」
「ほらしゃべった! しゃべったよ鹿弟!」
「ひ、ひぃ、ほんとだ!」
 腰を抜かさんばかりの二人組の姿に、金果の化身はわずかに身を震わせた。道人が小さく咳払いをすると、金果の化身は再び低い声で話し始めた。
「そなたたち……わしはこの熊人についていく……なんとなれば、そなたたちがこの熊人の壷をぶっこわしたその償いをせねばならんからじゃ……異論はなかろうな」
「あの、『いろん』ってなんですか?」
「うむ……そこから説明せねばならぬか……異論とはな……ようするにいちゃもんのことであって……」
「ならあるよ、異論はあるよ」
 鹿がぼそりと言った。
「だって俺たちはあんたを母上のもとに連れて帰らないといけないんだ。だって母上がそう言ってたんだ。持って帰らないと母上が悲しむんだ。悲しい母上なんて見てられないよ。こっちまで悲しくなるよ」
「鹿弟……」
 鹿がばっと地に伏せ、頭を土にこすり付けた。その角が地面をえぐり、とんだ土くれが道人の頬で砕け散ったが、道人は顔色一つ変えなかった。
「お願いだ。確かに俺は悪いことしたと思う。けど、それは俺が償うべきことだろ? わざわざあんたが壷の償いをしなくたっていいじゃないか。お願いだ、考え直して俺たちと一緒にきてくれよ。お願いします」
 地に頭をこすり付ける鹿のそばで、馬もまたおずおずと膝をついた。そのまま見よう見まねで頭を下げる。勢いよく叩きつけられた馬の頭は半ば以上土にめり込んだが、馬は頓着しない。金果を掲げながら二人組がお願いしますと連呼しながら叩頭するそのさまをみて、金果の化身は口元を隠していた手を下ろした。当惑したように道人を見返すが、道人の表情は石のように硬い。金果の化身は困ったように口を開いた。
「そうか……まあそなたたちの言うことも一理あるかもしれんが……それは許されぬ事情がな――」
「よし分かった!」
 化身の言葉をさえぎって、不意に道人が大喝した。大気がびりびりと震え、耳を押さえながら顔を上げた二人の前に道人の拳がさっと突き出された。開かれた掌の上に乗っているのは、小さなサイコロが二つである。
「たしかにお前たちにもそれなりに事情があるようだし、きちんと己の非を認めるその姿勢にも感じ入った! それに実の望んだこととは言え、このわしがお前たちから実を盗み取ったこともまた事実である。そこでだ、お互いチャラにしようではないか。そちらが壷をぶっこわしたこともとがめぬ代わりに、わしの盗みも見逃してもらう。どうだ」
 鹿が胡乱げに眉をひそめた。
「よく分からないんだが、じゃあ実は俺たちのものってことか?」
「そうとは限らん」
「どういうことだ」
「実の行き先は実に決めて戴くというわけさ。このサイコロでな」
 道人はサイコロを二人に手渡した。
「好きなだけ改めるがいい。そのサイコロを使って賭けをしよう。実がどちらの元に行くべきかを決める賭けだ」
「待ってくれ。わざわざサイコロなんて振らなくてもいいだろ? どっちにいくかは実に決めてもらえばいいじゃないか」
「いいや、賭けでなければならん。なんとなれば、我らには両方に理があるからだ。どちらも正しいが、どちらも並び立てるわけには行かぬ。だからどちらが折れるべきかを偶然にゆだねるというわけさ。もし最初に決めた目より大きな目が出れば実はわしの元へ、小さければそなたたちの元へいく。そんな簡単な賭け事さ。勝ち目は実に決めてもらう。実がわしの元へ来たいならば小さな目を言えばよい。反対にそなたたちの元へ行きたいのなら、大きな目とすればよい」
 鹿は不信感を隠そうともせず、サイコロをいたずらに弄り回すばかりである。道人は肩をすくめると、金果の化身に向き直って拝礼した。
「さて、実のご意志を伺うとしましょう。どの目がよろしいですかな?」
 金果の化身はぱっと顔を輝かせた。
「むろん天目じゃ。正直いうとわしはお前のような熊は好かん。反対に孝行する子供は好きじゃ。だから二人とともに行きたいが、熊のほうにも同情すべき点がなくはない。だから熊、お前の勝ち目は六ゾロの天目のみ、六ゾロが出なければ、わしはこの二人についていくことにする」
「結構! おい聞いたな、二人とも」
「――確かに聞いた。いいよ乗ってやる。馬兄もそれでいいですよね?」
「うん。鹿弟がいいっていうならいいよ」
「よし。じゃあ握れ。お前たちが振ればわしがイカサマすることも出来んだろう。さあ、この茶碗の中に投げ込むがいい!」
 道人の言葉に、鹿が力強く頷いた。手の中に握りこんだサイの片方を馬に渡し、馬も鹿に微笑みかけた。鹿が金果を化身に渡すと、二人はサイを握った手を突き出した。道人も金果の化身も固唾を呑んだ。
「せえの、はい!」「えい」
 道人がさっと茶碗を地に固定し、二人がいっせいにサイをそのなかに投げ込んだ。サイコロは互いにぶつかり合いながら跳ね回り、永遠とも思われる時間をかけてようやく茶碗の底で止まった。定まった目を覗き込もうとして、道人と馬とが互いに頭をぶつけた。頭をさすりながら、天目道人は大きく目を見開いた。
 出目は三の五であった。天目道人の負けである。


 鹿と馬のふたりは喜色をあらわにした。
「やったね鹿弟、俺たちの勝ちだよ」
「そうですね馬兄。化身さま、俺たちの勝ちでいいですよね」
「え? あ、ああ、うん、そうじゃのう。く、熊はそれでいいかのう」
 金果の化身――すなわち繊鏡娘々は慌てふためいて天目道人を見上げた。道人は呆然とサイコロを眺めた末、魂の抜けきった声を発した。
「話が違う」
「何言ってるんだよ。負けたからって見苦しいぞ」
「いや、本来はわしが勝つはずじゃった。何かしら手違いがおきとる。おいお前ら、勝負は無効ということでもう一回やるのはどうじゃ」
「いやだよ、何言ってるのこの人。さあ、化身さまはこちらへどうぞ。うちまで連れて帰りますので」
「え? ああ、うん、そうじゃのう。そうしてもらうことになるかのう」
 繊鏡娘々は苦笑いになった。その手がさらさらと動き、生じた幻が道人の眼球に小さな文字を描き出した。声を立てぬように会話するためである。
『おい天目、話が違うぞ、どうなっとるんじゃ。大事な賭けなら負け知らずではなかったのか! その天目という名は飾りか!』
「ですから話が違うと申し上げておりましてね」
「知らないよそんなの。じゃあ俺たち帰るね。もう日も暮れちゃったから」
「え、あ、ちょっと待て。待たんかこら」
 金果ともども馬に抱えあげられて娘々が悲鳴を上げた。いまだ混乱している道人がようやく気付いて手を伸ばしたが、割って入った鹿に阻まれ果たせない。馬の脚の筋肉が盛り上がり、今にも姿を消そうとした、まさにそのときである。
 宙からつう、と垂れた糸が、娘々と金果とを引っ掛けて吊り上げた。驚いた馬が取り返そうとするが果たせず、糸はしゅるしゅると引き戻されて夜の闇に消えていく。あっけに取られた一同の耳に、ふとどこからともなく高笑いが届いた。
「この声は……紅索子! 吐月壷! 出て来い、お前たちの師爺のお出ましだぞ」
 道人が素早く地に平伏し、空から降りてきた紅索子と吐月壷もまたそれに従った。ぼんやりと空を見上げる馬と鹿の肩をぽんぽんとたたくものがある。二人が驚いて振り返ってみれば、そこにあるのは釣竿を担ぎ、魚篭を腰に巻いて娘々を小脇に抱えた狼人の姿である。狼人は金果を抱いた娘々をぽいと投げ捨てると、馬と鹿にむかってひらひらと手を振ってみせた。
「やあ、はじめまして、お二人さん。わしは釣岳狼人という。釣りをやっとらん時は詐欺を働いて暮らしとる仙人じゃ。お前さんたちにとってはそんなに友誼を結びたい相手じゃないかもしれんが、一応よろしくな」
 親しげに馬と鹿の頭をはたき、釣岳狼人は人好きのする笑顔を浮かべた。
「このたびはわしの不肖の弟子および妹弟子が面倒をかけたようじゃのう。全くなんとわびてよいものやら。まあ、詳しくは後で話そう。おい天目よ」
「ははあ」
 道人は恐る恐る顔を上げた。その目に入るのは釣岳狼人が浮かべる満面の笑顔である。
「一応最初から見とったが、お前にしちゃまあまあじゃな。最後にしくじっとるが、まあご愛嬌というもんじゃろ」
「ありがとうございます」
「別にほめとりゃせん。だが小鏡の面倒を見てくれたわけじゃからよしとしよう。おい小鏡、お前もあんまり人の弟子をこき使ってくれるなよ」
 釣岳狼人は地面に転がっている娘々に声を掛けた。ようやくと言った様子で起き上がった娘々は釣岳狼人に礼をすると、不満げな様子で口を開いた。
「だって師兄、うちの阿灰は言うこと聞かんのです。師兄がうらやましい」
「その阿灰が嘆いておったぞ。『師父は無茶な命令を全然してくださらない。弟子として張り合いがない』とな。かわいいのは分かるが、少しぐらいは無茶させてやれ」
「はい、師兄」
「さて、ではお前らのがんばりに敬意を表して、この場はどうにか畳んでやろう」
 釣岳狼人は娘々から金果を受け取ると、馬と鹿とに示した。
「おいお前たち、これがほしいか?」
「ほしいよ」
「というか俺たちのものだよそれは」
 馬と鹿が口々に唾を飛ばした。釣岳狼人は深々とうなずき、しかし首を横に振った。
「残念だがこれはお前たちのものではない。どうしても持っていくのなら、それは盗みと言うことになるのじゃ」
「なんでだよ! いきなり出てきて勝手なこと言うな!」
「まあいきなり出てきたのは間違いないが、本当にお前たちのものではないのだからしょうがない。まあ、わしのものでもないのだがな」
「じゃあ誰のものなんだよ!」
「私よ」
 大気が震え、虚空の一点が振動したかと思うとそこから炎があふれ出した。尋常の火ではない、神威のこもった金色の炎である。金炎はやがてゆるゆるとまとまり、金毛九尾の狐人の姿を取った。
 これこそは、大延国の主神・金羅である。


 ふわりと地に降り立つと、金羅は釣岳狼人が捧げ持つ金果を受け取り、場の一同に微笑みかけた。
「ごめんなさいね。本当はもっと早く取りに来る予定だったんだけど、誰かさんが言うこと聞いてくれなくて」
 いいながら釣岳狼人を指でつつく。言葉は責めるような調子ながら、その笑みは柔らかである。
「申し訳ありません、聖母よ。『ご自分で金果を取りに行って苦労をされれば、得られた金果の味もまた格別となる』という拙案のすばらしさをお知らせするのに必要以上の時間を掛けてしまいました。まったく、私の不徳の致すところです」
「ほんとよね。面倒だから釣岳ちゃんに取ってきてもらおうと思ってたのに、なぜか自分で来ることになっちゃったの。後から思い出すとものすごい屁理屈なのに、聞いてるときはいい考えみたいにしか思えないのよ。流石よね」
「あの、師父」
「なんじゃ」
「どういうことなのか事情を伺ってもよろしいですか」
「いや事情もクソも、金羅様が唐突に気まぐれ起こして金果を取って来いなんておっしゃったとき、わしがたまたま手近におった。で、手を尽くして逃げようとしたとこういうわけじゃ」
「気まぐれってもうちょっと言い方あるでしょ。食べたくなったんだからしょうがないじゃない。それに、結局逃げられなかったでしょ」
「全く恐れ入りました。とまあそういうことじゃ。お前に留守番頼んだじゃろ、あれは逃げておったからじゃ。青湖にまで逃げてみたが追いつかれたもんじゃから、釣りがてらご自分でやっていただくよう口車に乗せようとしてそれはまあ上手くいったんじゃが、ついでにわしも否応なくこの地まで引きずってこられる羽目になった。盗みを働くときは裏口を空けておけという教訓どおりになったというわけじゃ。来てみたらなにやら面白いことになっておったから眺めておった。結構な見ものだったぞハハハ」
「はあ? しかし金果を取ってくるよう命じられたのは師叔では」
「別にそんなことはない。そうじゃろ、小鏡?」
 金羅は平伏する娘々のもとに歩み寄ると、その手をとって助け起こした。しばしためらっていた娘々は金羅の腕の中に飛び込んだかとおもうと、すがり付いて泣き出した。
「ごめんなさい金羅さま。金果を取ってきて差し上げようと思ったのです」
「あらそうなの、ありがとう。がんばって取ってきてくれようとしたのよね。その気持ちだけでも嬉しいわ」
「金羅さま~」
 頭をやさしくなでさすられて泣きじゃくる娘々の姿に、道人は呆れたように目をむいた。
「師父、ひょっとしてこれは私の考えが正しかったりするのですか」
「お前の考えとやらが、『小鏡が命じられてもおらんのに勝手に気を利かせて金果を取りに行こうとした挙句、面倒になってお前に押し付けた』というものであるなら、そうじゃな、八割がた合っておる。より詳しくは後で阿灰に聞くがいい」
「なんということだ。師叔! なんとかおっしゃったらいかがですか!」
「いいじゃない、かわいくて」
「しかし金羅様!」
「いいのよ。こういうのは気持ちの問題なんだから。ねぇ小鏡ちゃん」
「はい、金羅さま」
 道人は口をつぐみ、そっぽを向くと地にどっかと腰を下ろした。
「あのさ、ねえ、ちょっと」
 所在なげにたたずんでいた二人組みのうち、馬が声を上げた。
「俺ぜんぜん事情がわかんないんだけど、その実は結局俺たちのものってことでいいの? もって帰るよ?」
「違うわ、悪いけど」
 金羅が馬に微笑んで見せた。
世界樹の実を最初にエリスタリアから取ってきたのは私だし、種を取ってここに埋めたのも私。だから、ここに茂ってた森に生ったこの実も私のものよ。あなたたちのものにはならないの」
「そうなんだ……」
「本当かよ……」
「本当よ。なんだったらエリスタリアに行ったときの話を聞かせてあげてもいいわ。なんだったら今からでも」
「二日はかかりますからお薦めはしかねますがな。古参の仙人連中全員が恐るべき思い出に心を焼かれながら、葬式みたいな面を引っさげて集まってくる時間を計算に入れないでということですが」
「そうなの。でも、私は嘘はついてないのよ」
「確かに、あんたからは嘘ついてるにおいがしないや」
 馬がしぶしぶうなずいた。
「もちろん、あなたたちが無理に持っていくというなら別よ? 本当は私のものだけど、そうと知ってて盗んでいけばいいの。そういうやり方は好きかしら?」
 馬が首を振った。
「俺たちは盗みはやらないんだ。だって悪いことだから」
「いいの? お母様がお待ちなんでしょ」
「うぅ」
「困るよ」
 鹿がぼそりとつぶやいた。
「おれたち母上に叱られちまうよ……お話抜きだよ……どうしよう馬兄」
「どうしようね鹿弟」
 馬と鹿の目に涙が浮かび、二人は世も人もなくおいおいと泣き出した。金羅はそんな二人のそばにかがみこむと、二人をやさしく抱きしめた。
「あらあら、母上の言いつけをちゃんと守ろうとするなんて御利口さんね。あなたたちの母上がうらやましいわ」
「ううぅ」
「そうね。じゃあこうしましょう。金果はあげられないけど、代わりになるものをあげるわ。釣岳ちゃん、お願いね」
「お任せを」
 そういうと、釣岳狼人は小さな魚篭から実に大人の体ほどもある魚を片手で取り出すと馬に渡した。目を白黒させながら受け取る馬の様子に、釣岳狼人は満足げにうなずいていせた。
「よかったらもってっておくれ。青湖でつれた洞居魚の大物じゃよ。みりゃ分かると思うが、千年に一度取れるかとれんかという逸品じゃ。金果には流石に劣るが、きっとお母上もご満足いただけることじゃろうと思う」
「ごめんなさいね」
 魚を担ぎ上げた馬が涙をぬぐった。鹿もまた、頭を垂れて唇をかんでいる。
「でもさあ、やっぱり怒られたらどうしよう」
「言うなよ、鹿弟。だって盗みはダメだろ。母上だって分かってくれるよ」
 二人はあくまでも不安な様子を隠せない。そのようすを見て取った金羅が、馬の抱える洞居魚に歩み寄ると手をかざした。閃いた金炎が洞居魚のヒレを焦がし、金羅を表す躍字を刻み込んだ。手を伸ばして馬の顎を取り、躍字を指して見せると、金羅は暖かく微笑んだ。
「もし、母上がご不満なようだったら私のところへいらっしゃるように言ってちょうだい。これをご覧になれば、母上もあなたたちを責めたりしないわ」
「そうかなあ」
「そうよ。約束するわ」
「うん……鹿弟もそれでいいかな」
「馬兄がいいなら」
「ありがとう、二人とも」
 馬が鹿を担ぎ上げ、ぺこりと頭を下げた。その脚が大地を一けりすると、その姿はすでにはるか彼方へと飛び去っている。ひらひらと手を振って二人を見送っていた金羅が、道人たちに向き直った。
「さて、じゃあ早速いただこうかしらね。――なんかいつもと感じが違うわね。あんまりおいしくなさそう」
 怪訝そうな顔をしていた金羅はぽんと手を叩くと、しゃがみこんで辺りに転がっていた陶片を拾い上げ、それで地面を引っかき始めた。その様子を見守っていた天目道人が口を開いた。
「聖母よ、一体全体何をされておられるのですか」
「なんでもね、この地方ではこういう風にしてお酒を造るんですって。生じゃ口にあわなそうだからお酒にしようと思って」
「金羅様、それは黒亜酒というのだそうです。サルの真似をして見つかった製法だとかで。金羅様のお口にも合うと思います」
「あらそうなの? よく知ってるわね繊鏡ちゃん。まあそれじゃ、ひとつサルの真似でもしてみましょ」
 言うが早いか、金羅は掘り終わった穴の中に金果を落とすと埋め戻し、パンパンと地面をはたいた。
 娘々と道人が顔を見合わせ、直後に声にならない悲鳴を上げた。ひとり怪訝そうにしているのは金羅である。
「どうしたの、二人とも。大丈夫よ、この土は玉壌っていって特別な土なの。きっと普通の土よりいいお酒になるはずよ」
「いやそうではなくて!」
「だって金果を玉壌に埋めたら!」
「大延国が森で埋まってしまいます!」
「天目落ち着け、あれは森ではないぞ! ああでも埋まるのは間違いないのう! どうしよう!」
「どうもなりゃせんよ。落ち着け二人とも」
「しかし師父!」「師兄!」
 落ち着き払っていた釣岳狼人が肩をすくめた。
「確かに金果を玉壌に埋めればおおごとになるさ。『熟した金果』を埋めればな。この実は未熟じゃから別にどうと言うことはない。金果のほうも準備が出来ておらんのじゃ」
「へ?」
「は?」
「ついでに聖母に申し上げますと、そのように埋めても金果からは酒など造れませんし、大して旨くもなりません。熟するまで枝に付けておいて、自然に任せるのが一番よろしいのです。なにより、取るのに苦労もいりませんしな」
「苦労って、そんなに苦労しないでしょ。ただ森に入って取ってくるだけじゃない」
「熟しておればその通りですな。しかし実が熟しておらん場合は森そのものが武装し、実を取りにいくことはエリスタリアを再び訪ねるも同然となります。金羅様が未だにあのときのことを夢に見て夜中に飛び起きておられないとすれば驚きですが、いかがですかな?」
 金羅は驚いたように小さく身を震わせると、やおら娘々を抱きしめた。
「繊鏡ちゃん、私を喜ばせようとするのはいいけど、危ないことはしちゃダメよ」
「ごめんなさい、金羅様~」
「聖母も師叔もお忘れのようですが、森に入って危ない目にあったのは主に私でしてね」
「ハハハ、金羅様、わしが逃げ回っておった理由はまさしくわが弟子を襲った危険にもありましてな。金果が未熟なれば、取るのも面倒な上に、取ったところでまずいだけといいこと無しなのです」
「つまり、わしが散々苦しめられたのも無駄だったということか」
 天目道人がぶすりとつぶやいた。釣岳狼人がその背中をどやしつけた。
「気にするな。修行の一環だったとでも思えばよいさ。それによい話のネタになるじゃろう。お前のサイがここ一番で天目を出しそこなったくだりなんか大盛り上がりとなるはずじゃよ」
「そういえば珍しかったわね。ああいう時ってイカサマでも何でもして自分の勝ち目をだすのが天目ちゃんのやり方じゃないの?」
「そうじゃよ天目。あの時は何事かと思ったぞ」
「はっはっは、あまり弟子を責めんどいてくだされ。何しろわしがこの釣り糸でひそかに細工しておらなんだら、天目が出ておったはずなのですからな」
 道人が釣岳狼人に信じられないという目を向けた。
「師父! 一体何をされておるのですか! あのまま賭けに勝っておれば奪い取れていたはずなのですよ?」
「あの賭けそのものがお前のでかい声と小細工でごり押ししただけの無理筋じゃからな。あの場では勝ち取れても、いつか騙されたことに気が付くときが来るじゃろ。その時に安全なところに逃げおおせていられるならそれもよい。だが仙人と悪仙同士ならまたどこかで出会うことがないとも言えん。後を引く嘘は下策じゃ。それにな、わしゃ利口ぶった悪党を騙すのは好きじゃが、善人を騙すのは好かん。特に悪仙には珍しい金の心の持ち主ともなればなおさらじゃ」
「そうよね」と金羅がしたり顔でうなずき、娘々もまた同調した。
「聞き分けのいい子たちだったわね。盗みもダメだってちゃんとわかってたし。天目ちゃん、ああいう子を騙しちゃダメよ」
「しかし――」
「確かに盗みがありなら、天目のほうこそひとたまりもなかったはずじゃのう。すり取ったのがばれたあのときに、あっという間に取り返されておしまいになっておったはずじゃのう。ぼこぼこにされるのは言うまでもなく」
 何事かいいかけた天目道人は歯を食いしばって言葉を飲み込んだ。そっぽを向いて黙り込んで目を伏せる道人の背中に、ふと暖かな感触が生じた。道人が振り返ってみれば、そこにあるのは金羅の笑顔である。
「それでも、今回は天目ちゃんが一番がんばったのよね。偉いわ」
 どぎまぎして言葉を失う天目道人を他所に、金羅は道人に身をすりよせて嬉しげである。と、金羅はぱっと顔を輝かせた。
「そうだわ、ご褒美あげようかしら」
 応じた釣岳狼人の釣竿がさっと振るわれ、地中に埋まっていた金果を釣り上げて金羅の手の中に落とした。金羅は土を払って満面の笑みを浮かべると、金果を天目道人にむかって差し出した。
「さあどうぞ。一番苦労した天目ちゃんにあげるわ。きっとおいしいわよ」
「――さっきご自分で『なんかまずそう』とおっしゃっていたではありませんか」
「そんなことはないわ。さあ、召し上がれ。なんなら食べさせてあげましょうか?」
「わが不肖の弟子には過ぎた幸福ですな。おい天目、ありがたく受け取るんじゃぞ」
「いいのう、天目は」
『師父』「師父、ごほうびですぜ、ごほうび」
 口々に言われて顔をしかめた天目道人は、金羅から金果を受け取ると恐る恐る臭いをかいだ。そうして皮ごとかぶりつき、しばらく咀嚼して飲み込む。ひたすらに笑顔の金羅とは対照的に、道人の表情は巌のように硬い。
「どう? おいしいでしょ?」
「――まっずうございます。なにやら砂のような味がいたします」
「だから申し上げたでしょう、聖母。未熟な金果はまずいと」
「そうよねえ。そんな感じはしてたのよねぇ。なんだか悪いわね。よしよし、じゃあこれから場所を移して宴会にしましょう。天目ちゃんにはお口直しで、ほかの皆もご苦労さまということで」
「よろしいんですか!」
「じゃ、わしもご相伴にあずかるということで。おい天目、文句はないな。お前たちも行くぞ」
『はい』「へぇ」
 金炎に照らしだされて和やかに笑う輪の中で、道人だけがぶすりとしかめっ面である。渦巻く金炎の中に消えうせ、あるいは釣り糸や赤綱に吊り上げられてその場を後にする一同の中で、道人だけはその場を離れようとはしない。もう一口だけ金果をかじり、大儀そうに咀嚼する。道人は不意に苦笑を漏らして金果を投げ捨て、地面をどんと踏みしめると土煙の中に姿を消した。
 地に転がっていく金果が、ふと止まった。地に投げ捨てられた陶片にぶつかったためである。と、その陶片を押しのけるようにして地面から何かが顔を出した。小さな芽である。芽はかじられた金果に寄り添い、人にはわからぬ速度でその身を伸ばしていく。玉壌の宿す豊かな栄養を貪り、やがてこの地に満ちていく草木の最初の一葉である。


 (了)

 但し書き
 文中における誤りは全て筆者に責任があります。
 独自設定についてはこちらからご覧ください。


  • 送るべき言葉はただの一つ。「天目さん乙」 -- (としあき) 2012-12-08 01:28:51
  • キャラ間の関係が楽しいのと笑いぼおかげですごいんだかすごくないんだか分からなくなっちゃってる面々吹く -- (とっしー) 2012-12-16 18:49:34
  • いやー人生を謳歌している連中ばかりで賑やか至極 -- (としあき) 2012-12-16 20:39:43
  • 一進一退の上手くかみ合わないも途方も無い相手を前にしての交渉戦ははらはらのしっぱなしでした。純真な馬と鹿がちょっと可哀想と思った矢先のどんでん返しからの金羅様方の登場の流れに「最初から金羅一人で十分じゃないですか」とつっこんでしまいました。最後はやがて神の森は再び生い茂り…と? -- (名無しさん) 2015-06-21 19:24:29
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最終更新:2012年12月07日 22:56