クルスベルグからグーテンターク
ドイツ新聞Berliner Morgenpost
クルスベルグ駐在記者 ヨハン・ゲーレン発
第13回 『ドワーフの守り刀』
皆さんこんにちは。
前回
ノームの風習について紹介したので今回は
ドワーフの興味深い風習についてお話しましたいと思います。
ノームが繊細な細工を得意とするならドワーフは力強い鍛冶を得意とします。
ノームが新しく生まれる命の健やかな成長を願って人形を作るようにドワーフも新しく生まれる命を守る守り刀を作る習慣が古くからあります。
守り刀と言っても大きさは短剣程度、造りとしては質実剛健をモットーとすることの多いドワーフの考えを反映してか片刃の簡素な造りで、唯一刀身にドワーフに古くから伝わるまじないの言葉が銀や場合によってはミスリル(クルスベルグでも滅多に産出されない精霊銀とも呼ばれる希少金属です)で刻まれ、刻まれたまじないの言葉と刃が病魔や災いを退けてくれると信じられているのです。
ドワーフの守り刀造りは一族の者でという習わしが今でも守られ、出来た守り刀も身内以外には見せる物ではないとされています。
それでも好奇心には勝てず、クルスベルグにやってきた当時から親しくさせてもらっているドワーフの友人に頼み込んで渋々(今考えると彼は私がいかに高い酒と酒の肴を用意できるかを値踏みしていたように思えますが・・・)見せてもらったことがありますが、守り刀と言っても儀礼的な物ではなく充分に実用に耐えられる物でした。
この守り刀を持ち主となる赤ちゃんと一緒に揺り籠の中に入れて育て、そして人生を終える時には棺桶の中に収めて死後の平穏が守られるよう願うのだそうです
またこの守り刀にはいろいろと面白い話があり、代表的なものとしては夫婦となるドワーフの男女はそれぞれの守り刀を見せ合い、それぞれの刃を外側に向けて合わせて刃のない部分がピッタリと合うほどその男女は夫婦喧嘩をせず仲良く結婚生活を送れるとされていたりします。
ただ、私に守り刀を見せてくれた友人に言わせれば『俺と嫁さんの守り刀は剃刀の刃も通さないくらいピッタリだが毎日どうでもいいことで喧嘩をするから言い伝えは嘘だな』だそうです。
もちろん言い伝え通り仲の良い夫婦もいるだろうと一応は付け加えておくこととしましょう。
しかし、このドワーフの守り刀の風習も一時期は途絶えかけた時期がありました。
神聖クルスベルグ帝国時代、クルスベルグで産出されるあらゆる鉱物資源は国家の重要物資として管理され、人々が自由に使うことは許されなかった時代が長く続きました。
そんな中でも我が子の健やかな成長を願う親心は鍋や食器などを鋳潰して守り刀の材料にし、厳しい時代の中でも古くからの文化風習は途絶えることなく受け継がれていったのです。
このようにクルスベルグにはまだまだ面白い風習や文化がありますので、これからも折りを見て(またはネタに詰まった時に)ご紹介したいと思います。
それでは皆さんまた次回
Berliner Morgenpost ネット配信版 20011年9月17日号より
- 真剣な話、お待ちしておりました。いいですね、こういう伝統 -- (名無しさん) 2012-12-15 22:39:58
- 仮想の風習なのに説明での説得力がドシンとくる -- (とっしー) 2012-12-16 17:59:46
- 意味と伝統をもって連綿と続く慣わしと人生と共にある刀への親しみがとてもよく伝わってきます。あくまで日常での風景に重点をおいたシリーズなので情景が浮かんできやすいのが楽しいですね -- (名無しさん) 2015-07-12 19:27:48
最終更新:2014年04月02日 16:07