【オルニトの種蒔き】

じりじりと太陽に焼かれている。
雲は見えない。島々と飛鳥人だけが今日の空を飛んでいる。

まばらに草が生え石が転がるばかりの荒野、そこを一列になって行くものたち。
素朴な歌が聞こえる。
這い鳥人たち100人ばかしが、歌い、袋を背負い歩く。
人と同じくらいの重さの袋には、種籾がぎっしりと詰められていた。

袋が積んである場所。
そこへ先頭を行く這い鳥人が背負った袋を下ろし、「おぅい、おろせよぅ」と声を出す。
後ろに続く這い鳥人たちが袋を下ろしていく。
「よっこらせ」「重いわーーー」「あれなんだっけあれ」「鍛え方が足りんなあ」「ふぅ…」「腰いてえ」
息と気を抜いて、雑談が漏れ出る。

「お、」

一人の這い鳥人が、上を見上げた。


天空から歌声が落ちてくる。


ラ♪
ラ・ラ・ラ♪
ラ・ラ・ラ―――ララ――ラララララララ♪

十人の飛鳥人がくるくるくると複雑に螺旋を描いて地上に墜落する、
直前にひらり舞い上がる。歌声のリズムが変化する。

瞬間、ズドーンと土柱が上がった。一塊になって舞う飛鳥人たちを捕まえようと。
轟っ、円陣を組む飛鳥人の中心で風が爆発する。歌いながら吹き飛ぶ。
土柱はぷるぷると震え、諦めて、崩れ落ちる。大音が響き、もうもうと土煙が舞う。
飛鳥人たちの歌声は途切れない。集まり拡散し、跳ねるように舞飛ぶ。
土柱がいくつも爆音と立ち昇る。吹きすさぶ風は竜巻に。
飛鳥人たちはその災害から逃げては寄り添い、歌い踊る。
次々に昇る土柱の轟音が歌に合わせてリズムをとっていた。
竜巻が飛鳥人たちと踊り、歌を拡大して広げている。
飛鳥人たちがひときわ高く昇り、ひときわ高く鳴いた。
四方八方から土柱が登り、崩れた。
竜巻が這い鳥たちが積んだ袋を巻き上げる。這い鳥たちはすでに遠く離れたところにいる。
うなる竜巻の中に袋は千切れ、種籾が中空に舞う。
竜巻が弾けた。種籾がよく耕された大地にふりそそいだ。

これにて、種まきは終わりである。
今後、這い鳥たちは石取りや雑草取りや収穫などを行い、
飛鳥人たちは大水を中空で弾けさせたり轟風で脱穀を行う。


飛鳥が切り出し這い鳥が整える。オルニトの基本的な産業の姿だ。


  • オルニトはやっぱり歌だなー。手足が作業に向いていない種族は精霊に手伝い頼むのがセオリーなのかな -- (としあき) 2013-05-28 16:37:47
  • 種蒔きにそこまでやるんですか!?と突っ込みたくなるほどファンタスティック -- (名無しさん) 2014-05-13 22:44:16
  • 豪快で大雑把で終わりよかろうなのでとりあえずよし。オルニトのスタンダードが垣間見えた -- (名無しさん) 2014-07-24 22:15:17
  • 古き良き昔の農作業の風景に異世界が合わさったようなやさしい活力を感じました -- (名無しさん) 2016-11-06 17:48:31
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最終更新:2013年05月28日 16:36