世の中いろんな男がいる。
女と見れば見境なくなる元気すぎる奴もいれば若いくせにまったく元気のない奴もいる。
いつの時代だってそういう問題は男にとって繊細かつ重大だ。
そうした繊細かつ重大な問題に悩む男達がもしかすると足を向けるかもしれない店がある。
ニシューネンの中央十字路をツドーヴァ広場のほうへ曲がると「極楽瓶」という看板を掲げた店がある。
外観は簡素で一見すると何を商っている店かよくわからない。
『営業中』と書かれた回転看板が出ていれば中に入れるし『接客中』となっていれば大体一刻ほどすればまた『営業中』になるはずだ。
扉を開けて店の中に入れば薬草や薬品特有のツンとした匂いが鼻をつく
店の中には何に薬効があるのか陶器やガラスで作られた瓶に入った薬がいくつも棚に並べられている。
しかし、カウンターには店主の姿はない。
『奥にいるので鳴らしてください』
そう書かれたプレートと呼鈴がカウンターの上に置かれている。
呼鈴を鳴らして少し待つと奥からスルスルと衣擦れの音が聞こえてくる。
「やぁやぁいらっしゃい!おや?お兄さん元気のない顔してるね?え?元気がないのは息子のほうだって?」
奥から出てきたのは
エルフの年配者の特徴である紅葉したように赤い髪をした快活そうなエルフの女主人、胸元が大きく開き全体的に体のラインが浮き出るなんとも扇情的なデザインのローブを身に着けている。
「それで?とりあえずどういうご要望か聞こうか?え?なんだやっぱりナニの調子が悪いんじゃないか・・・」
カウンターの上に上半身を預け、客の視線からはちょうど女主人の大きく開いた豊満な胸についつい視線が向くような姿勢で来店理由を聞きながら女店主は含みのある笑みを浮かべ、改めてまるで舐るようにカウンター越しに客を上から下まで眺める。
「普通なら女のほうが根負けしそうな感じなのにかわいそうだねぇ・・・」
まるで母親が子を愛おしむような響きで女店主はそう言うと、カウンターから歩み出ると棚に置かれた様々な瓶を手に取りはじめる。
「じゃあ何がいいかな・・・これなんかどうだろ?海馬のチン(ピー)を粉にしてレレルの花の蜜で固めた丸薬、これで大抵の男のナニは一発でそそり立つ塔のように元気になるよ?それともこっちのニナ茸の胞子とカラブーの睾丸から取った油を練り合わせた軟膏かね?」
エルフは下の話に関して比較的大らかだが、彼女はとくにそういうことに大らかというか大ざっぱすぎるのかもしれない、女性が口にするには少々眉をひそめるような単語を連発しながら薬の成分や薬効を説明していく。
そんな彼女のある種軽妙な売り文句を聞いていた客が薬の薬効についての疑問の声を口にすると、それを聞いた彼女の耳がピクリと震える。
「え?本当に効果があるのかって?なんだお客さん疑ってるのかい?仕方ないねぇ・・・じゃあちょっとお試ししてみようか?」
彼女はそう言うと、有無を言わせぬ手慣れた動きで客の手を取り店の奥へ、まるで引きずり込むようにして引き入れながら客の手を取る手とは反対の手はスルリとカウンターの下に伸び、その動きに連動するようにカタンと何かの動く音が表のほうで聞こえる。
「さて、これでしばらくはお客さんの接客に専念できるね・・・・私の店の薬はどれも効果は折り紙付きだってすぐにわかるさ・・・」
そう言った女主人の顔と声はなんとも妖艶だった。
「毎度アリ~♪また必要になったら来ておくれ♪」
女主人と客が店の奥に消えてから大体一刻ほど、店を訪れた時の陰気さと情けなさはどこへ吹き飛んだのかというような晴れやかな顔をして、薬の入った袋を手に店を出ていく客とそれを見送るやや紅潮した顔に胸元がやや着崩れたローブの女店主。
カタンと音がして再び表の回転看板は『接客中』から『営業中』に変る。
極楽瓶とはニシューネンの街ではそこそこ知られた店である。
気さくな女主人が一人で切り盛りしている薬屋で、取り扱っている物の効果は折り紙つき。
しかし、なかなか店に入るのが難しいそんな店である。
- 未成年お断りのお店吹いた -- (とっしー) 2013-06-24 23:13:23
- 商品とそれに合わせた実演販売。これは売れない方がおかしい -- (としあき) 2013-06-25 12:34:00
- なんと過激なサービス!と思ったけども、これがその界隈では普通なのかなと賢者顔 -- (名無しさん) 2013-09-07 12:08:41
最終更新:2013年06月24日 23:12