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【とある風鬼霊王を語る】

「さてさて・・・それではこの大延国の国体の根幹とも言えることについて話すとしようか・・・」
とある気まぐれで散歩がてら訪れた霊廟で、俺はこの前遭遇した国史学者とは別の言を宿した風鬼と遭遇することとなった。
犬も歩けば棒に当たるというが、俺はどうやら風鬼に遭遇しやすい性質であるらしい。

【偉大なる精霊使いとしての大延国皇帝】
我らが偉大なる大延国は主神金羅と契り、そして数多の精霊と交流を深めた偉大なる精霊使いである延帝によって国祖リホウより代々統治されてきた。
延帝は絶大な権限を有し、時にはその一声で大延全土のすべての臣民財産を徴用することもできるが、これは理を司る神と万象を司る精霊双方の代理人であり仲裁者であるというのがその権威の拠り所となっている。
そして大延国皇帝には神の後見を受け、その類まれな精霊使いとしての力を振るって大延国に降りかかるあらゆる禍を退けることが責務となっている。
古来より大延国には戦乱絶えぬ時代には白王朱王が立ち、その武をもって世を平らげ、戦乱の世が終わる頃蒼王玄王が立ち世に平安の時代をもたらすという言い伝えのようなものがまことしやかに伝えられてきた。
白王や朱王は武皇などと呼ばれることもある武に長けた資質を有することが多く、その武力によって多少荒々しくも世を動かすとされ、蒼王や玄王は文皇などと呼ばれ智と和によって世を治め導くとされている。
また火の霊質に長けた朱王位を得た皇帝は武の才能に長け、その力によって大延を拡大させ繁栄をもたらすと言われる一方、第十二代皇帝シャオも朱王位をもつ皇帝であったがシャオの時代は大いに世が乱れることとなり、そのことから朱王位をもつ皇帝が現れる時代というのは良くも悪くもおおいに世がざわめくとされている。
当代皇帝であるところの朱王クウリが皇帝選議で選ばれた際も少なからぬ騒ぎとなった。
しかし、即位当時は不安や期待で騒がれたものの、クウリが即位してからの四十年ほどはおよそ朱王の時代とは思えぬほど延の長き歴史を紐解いても他に例がないほど凪いだ時代となった。
南都のほうでは散発的な南蛮の襲来があるにはあったものの、南都が危機的な状況になるほどのものではなく、他国との関係も比較的良好であった。
しかし、やはりクウリは朱王であったというべきか、突如として主神金羅が聖断を下し異界とをつなぐ門を大都の目と鼻の先に立ちあがらせた。
それからのしばらくは、それまでの凪いだ時代はこの時のための小休止だったのかと思うように騒がしいこととなったが、それはまた別の機会に語ることとしよう。
【霊質】
人は生まれながらに霊質というものを宿している。
霊質を宿しているのは人だけではなく、この世界の万物がそうであると言って良いだろう。
風が移ろうのも火が盛るのも岩が不動であるのもこの霊質に由来し、精霊はその最たる存在と言える。
身の内に宿す霊質が強ければ強いほど、その霊質は体のほうにも色濃く反映され、またその者の気質にも影響を与えるとされている。
火の気が強ければ喧嘩っ早い、水の気が強ければ執念深いなどなど
あくまでも極端な例であり、その他にも様々なものが複雑に絡み合うわけであるから人にせよ土地にせよ六霊でのその物の性質を測ることは容易ではない。
【霊障】
俗に障りと呼ばれる霊質の変調のことである。
霊障とは人や物、果ては土地でも起こる広義な呼称である。
本来霊質とは多少の偏りはあるものの、万物の中で一定の均衡を保つものであるが、何らかの外的内的原因によってその均衡が崩れた場合に起こるのが霊障である。
人が障りに罹ると病を罹患しやすくなるなど主に健康面を害するなどの肉体的な影響や
温厚な者がまるで別人のように気性が荒くなり暴れる、あるいは陽気だった者が悲観的になって引き籠るようになるなど心の変調などを来す。
また障りがひどくなると均衡を失った霊質が体の中を暴れ狂いその者の命を奪うということもありえる。
軽度の障りであるなら偏った霊質の均衡を取り戻すために逆位の霊質を持つ物を身近に置くことや食事として体に取り込むなどの治療法があり、転地療法なども有効である。
これらの霊障治療の多くは療聖として今でも称えられるタイカクが記した〈万霊物辞〉に基づくものである。
タイカクは大延国中を旅し、その土地土地の風土と産物を事細かに記録し、それらがその土地の者にいかなる影響を与えているかということを調べ上げ、それらは今日に至るまで霊障治療のもっとも確かな知見とされている。

【大霊十八家】
大霊十八家と言えば大延国における貴族の代表的な名門の家柄の総称である。
元々は大延が時に戦で時に外交によって併合してきた、現在は州となっているかつての国々の王や有力者であった者が多い。
そして、彼らが今日に至るも大延で無視できぬ発言力を持っているのは彼らの家それぞれと深く固く契る大精霊の存在と、彼らが現在に至るまでの長い年月の中で大延の安寧のために払ってきた犠牲について欠くことはできないだろう。
大延国の貴族には家柄や格という物がある。
大霊十八家のように古くは国祖リホウの時代から続く歴史を持つ大貴族と大延国中興期に貴族に取り立てられた中堅貴族、そして何かしらの貢献に対する恩賞として与えられる一代限りのものまで様々だ。
一般的に貴族と呼ばれる多くは中堅貴族などで、その主な勤めは代官などとして州に赴き骨を埋めることだ。
大延の制度として代官は一部の例外を除いてその土地では一代限りとされている。
つまり、その代の者が亡くなったり、あるいは皇帝が代替わりすると代官は一斉に配置換えされることとなる。
これは権力者がその土地の権益と深く関係することでの腐敗を防ぐという目的が大きい。
では大延国で最も影響力のある大霊十八家はどのような勤めを課せられているかと言うと、それは戦時における戦力の供出と人身御供である。
戦において精霊の力は絶大である。それは有力な精霊であればあるほど確かなものであるが、有力な精霊ほど契る相手は限られ、そしてその絆は血より濃い。
大霊十八家がそれぞれ契る精霊は長い年月の間の懐柔にも一切靡くことなくその家の血の連なる者にのみ助力してきた者達であり、その全てが恐るべき力をもっている。
こうした精霊をどうにか大延の脅威とならぬようにと苦慮した結果が彼らの契る者を貴族として大延国に抱え込むというものだった。
貴族の地位と政治への発言力と引き換えに戦争においてはその絶大な力を大延国のために振るわせるというのが戦力の供出。
そしてもう一つの人身御供というのは精霊の夫や妻となることを意味している。
なぜそうなのかはいまだにわかっていないことが多いが、精霊は時として人の真似ごととして自らの眷属に人の夫や妻を求めることがある。
得に大延国の湖や川の主である龍精や河伯はその傾向が強く、そのような場合に、真っ先に白羽の矢が立つのが大霊十八家の血の者ということが多い。
彼らは要求が通らなければしばしば河を氾濫させるなど実力行使に打って出て無理強いをしてくることもあり、こうした災害を防ぐ意味でも人身御供は必要となってくる。
大霊十八家側からすれば損ばかりのように思われるかもしれないが、戦力供出にせよ人身御供にせよ、契った精霊をより高みの存在にすることや、有力な精霊と所縁を結ぶという点では充分な利がある。
こうした 大霊十八家との関係を大延皇帝はうまく采配することも大延国をより良く栄えさせることに必要不可欠なのである。

【霊王位の興り】
いかに優れた精霊使いであったとしても、いや、優れた精霊使いであればあるほどその偏りは激しいと言える。
歴史を紐解いても六霊全てを御することが出来たのは〈六合霊皇〉だけと言われている。
しかし、その〈六合霊皇〉もその有り余る力に振り回され、最期は恐るべき魔獣となって破滅を振りまいた末に主神金羅の手によって撃ち滅ぼされたとされている。
しかし、無理であることわかっていても世を平らに治めるためには延国皇帝はできるだけその偏りをなくさなければならない、そのために考え出されたのが霊王という称号である。
霊王の称号が生まれたのは〈六合霊皇〉の時代の後に訪れた混乱期、今日に至るも霊術研究の大家と評価されるカクフが三書を編纂した時代に重なる。
〈六合霊皇〉の時代の拡張に次ぐ拡張の反動から大延は国土も人心も、そして精霊さえ大いに乱れた暗黒時代が長く続くこととなった。
国祖リホウの子であった〈六合霊皇〉が恐ろしき魔獣に堕ち、主神金羅によって打ち滅ぼされた後の大延の皇帝には〈六合霊皇〉の弟ハクリの子であるリセイが就くこととなった。
しかし、このリセイは国祖リホウや〈六合霊皇〉のような精霊使いの器量はなく、結果長くそのことに苦慮することとなる。
しかし、リセイは精霊使いとしての器ではなかったものの、現実的な文官肌であり、〈六合霊皇〉時代に作られた大街道の整備によって分断された各地を再び統合することで政治経済の復興を行うなどの多くの内政的な事業を成し、混乱期からの脱却に尽力することとなる。
そして、リセイが晩年に行った彼の最大の大事業こそが霊王位の創設である。
これは大延国皇帝にかかる負担の軽減であり、また安全保障対策でもあった。
一人の精霊使いによって保たれる国家の安定というのは薄氷の上で演舞を舞うようなものだとリセイは評し、六つの霊質に応じて六人の精霊使いを選出し、その者に霊王の称号とそれに付随した権限を与え、精霊との交渉や国家保安を任せるという考えを示した。

これには当然のように異論や危惧の声が上がったのは言うまでもなく、金羅と精霊の信任を一身に受けるからこそ大延の主であるという権威が得られているにも関わらず、帝自らがそれを手放すとはどういうことかというようなものである。
これに対してリセイは己の余生全てを費やして根気強く反対する者一人一人に語りかけと働きかけを続け、その命の灯が消える寸でのところで霊王制度は生まれることとなった。
その後様々な紆余曲折や不幸な出来事もありつつ、大延国皇帝と霊王という霊的な守護者を擁することでこの国は今日までの繁栄を続けることができたというわけである。

【霊王位の選定】
霊王位の選議は主に精霊達だけで行われる。
霊王位は大延国皇帝の崩御によって更新されるのが通例で、大延国における最高の精霊使いと認められた者ということを意味する。
霊王位は皇帝在位の間は選ばれた霊王が死亡するか何らかの理由で選んだ精霊の信任を失うか自ら霊王位を返上するかしなければ不動である。
現皇帝であるクウリは朱王の霊王位を持っているが、その他の霊王位は玄王ドウハン 白王シュリ 蒼王チラク 麒王ナルカ 渾王ラシャとなっている。
クウリの在位期間は六十年を超えているため、その間に玄王ドウハンを除く四王は代替わりをしており、現在の霊王の中で一番年若いのは白王シュリということになる。
また、麒王ナルカと渾王ラシャは双子でありながら真逆の霊質の霊王に選ばれるという歴史上例のないことでも知られている。

【六人の霊王】
現在在位している六人の霊王について少し触れてみよう。
朱王の霊王位を持つクウリは言わずもがな当代大延国皇帝である。
歴史的に朱王を襲名した者が帝位に在位する時代というのは戦が絶えぬという定説があるが、クウリが朱王を襲名し帝位に就いてから今日に至るまで、小さな衝突などはあったものの国全体としては極めて安定した状態である
伴とするのは炎州にある大延国最大の火山である炎烙大山の主ラクヨウ

玄王ドウハンは現在の霊王の中では最年長の霊王であり、霊王に指名された時点での齢は百を超えていたという泥州出身の豚人である。
現在は南都を終の住処と決め、よほど重大な呼び出しがない限りはそこから動こうとはしない。
伴とするのは大延最大の州であり、現在南都が置かれた轟州全土を掌握する大地精ゴンコウ

蒼王チラクは泉州出身の雲ひとつない蒼天のごとき鮮やかな蒼い鱗をもった蜥蜴人の美丈夫であり、剣聖位を持つ霊王である。
永代剣聖スイメイと七十五代皇帝シキョウの伝説収集を何よりの目的とし、二人の比武伝説があると聞けばあらゆる場所に出向いているため、極めて連絡がつきにくい
伴とするのは無数の支流をもつ大延最長の河である万頭大河の主シィファンファン

白王シュリは蕩州出身の狐人であり、現在の霊王の中では最年少の霊王である。
まだ少女と評してよいだろう年若さではあるが、四百年以上大延の沿岸部の民を苦しめてきた鳴嵐を鎮めた功績は皆が認めるところだろう。
伴とするのは〈勝風〉稀鴉将軍と彼女によって鎮められた長年名前すら明かすことがなかったため鳴嵐と呼ばれた風精

麒王ナルカと混王ラシャは大延沿岸部を中心に大きな影響力を持つ神言衆の巫女も兼任する蛇人の双子の霊王である。
神言衆は古き神ルガナンを信奉し、大延国沿岸部やミズハミシマなど西大陸の沿岸部などを中心に蛇言宮という宗教施設を建設するなど強い影響力を持っている。
伴とするのは大光精トーダと大闇精ジョハ


  • 分かりやすく読みやすくとこれだけ独自色のある要素を盛り込みながらも属性やスレの題材などをふんだんにちりばめて想像が捗るようになっているのが素晴らしいですね。大延国の仕組みのみならず太古の神やミズハミシマなどにも繋がっているのも興味が促進されました -- (名無しさん) 2016-12-11 18:42:13
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最終更新:2016年12月11日 18:39