【一映画誌のコラムより】

最近では異世界ロケをうたい文句にした邦画を見かけるようになった。
まだ宣伝には至ってないが中には全編異世界ロケを看板にしているものもある。
門が開いて早や二十数年。
本来、この潮流はもっと早く訪れるべきだった。
何故か?
答えは簡単、かつての先人が愚かな過ちを犯したからである。
今回取り上げるのは外世界映画会社制作、「異界剣風録 天地返し」。
そう、映画マニアなら誰もが知っている邦画の汚点だ。
なお、残念ながら諸々の情報開示拒否及び天地返しの発行禁止により今回は内容には触れられないのであしからず。

さて天地返しと言えば、我が国初の異世界映画にして、初の両世界上映禁止となった殺陣とアクションを主題に置いた映画なのは周知の事実。
ではいったい何がその原因となったか?
まず一般的なものが、「ミズハミジマ争乱のタブーに触れてしまった」説だろう。
ほとんどの読者諸兄はご存知なので説明を省かせてもらうが、一部資料によれば脚本に問題があった。
要約すればミズハミジマ争乱で悪玉とされていた鬼族を善、善玉とされていた鱗人を悪として描いたためにミズハミジマ幕府により封殺されてしまったのだ。
そもそもこのようなデリケートな問題に踏み込んだ首脳陣はどうかしている。
歴史の反証と言えばなんでも許されるとでも思っていたのだろうか。
当時、まったくもっての埒外より現れた門と門の向こうの異世界。
普通なら気遣いがあるばずだ。
だか、外映はお構いなしに土足で上がり込んだに違いない。


次に「撮影中の事故」説を取り上げてみる。
これは先述の通り、天地返しがチャンバラ映画であったため、端役の一人が現地の刀を扱うことになった。
ところがその扱いを誤り、メインどころの俳優を殺してしまったというものだ。
だがこの説にはオカルトじみた背鰭尾鰭がつくことが多く、ミズハ側からの報告書の一部にいたっては
『刀の神力にあてられた未熟な武芸者もどきが殆どの同行者を斬り殺し、現地の鱗人にまで手をかけた』
というにわかには信じられない一文が存在するのだとか。
果たしてこれは信用に足りうるのか?

そして三つ目の説として、「異世界に殺陣が受け入れられなかった」という説だ。
マイノリティのサブカル気取りがよく口にするので聡明な読者諸兄は気をつけていただきたい。
この説の根拠はかつて第二次大戦後にあまりにもリアルな特撮映像を撮ったために占領軍に排斥された監督がいたというものに起因しているというのだ。
確かに異世界演芸史を紐解いてみると異世界の芝居は戦うシチュエーションも多々ある。
だがそのすべてが延劇に見られる剣舞やあくまで「そのようなやりとり」があったことを匂わせるものにとどまっている。
そもそも彼ら彼女らの世界からしてみれば未だ世界には戦禍が残り、多くの武人、軍人が命を投げだしているのだ。
そこに現れた平和ボケした殺陣師と大手のバックを持たない、アナーキー気取りの中途半端なスタッフたち。
彼らの間違った情熱がこれまた間違った結果を呼び、なんの偶然か出来上がった殺陣が真に迫ったものだったとしても、その踏み台にされた現地の人々はどう思うだろう。
「戦に泥を塗るな」
「こんな危険なものを見世物にするな」
「不謹慎だ」と思ったに違いない。
だからこそ事の重大さを感じたミズハミジマ幕府はこの映画を弾圧した。
もっともらしいが結局はこの説は眉唾の可能性もある。
そもそもミズハミジマ幕府を擁護ならともかく、実績もないような外映に何の責もないような考えはいただけない。


現在も上映禁止処分の続く、外映の天地返し。
スタッフは業界から追放され、中には逮捕者も出た。
多くの資料も闇に消えた今、その真相を知る術はない。
だがどんな理由があったにせよ、日本映画がゲート解放後の世界に後塵を拝したこと、ひいては日本と異世界との交流にしこりを残すことになったことを考えると外世界映画会社が犯した罪はあまりにも大きい。

  • 事件はホラーで裏側にはサスペンスが見えるような話。デリケートな時期にデリケートな内容に触れて偶然にも突いてはいけない何かを突いたような他にも何か裏がありそうな -- (とっしー) 2013-08-21 01:30:21
  • 天地返し関連で拝見。罪の部分でミズハミシマ側が日本サイドに何かしら指示があったように思えなくもない -- (名無しさん) 2013-09-03 22:46:37
  • どれもあり得そうな仮説だけど真相は意外やそれら以外だったりするのだろうか -- (名無しさん) 2014-10-03 23:34:26
  • スレでも長く話題になっている外映事件への談ですが今となっては世に公表される情報の真偽と質は一体誰の意思によって差配されているのだろうかと思います。その場にいた当事者以外が知り得る情報は既に何かしらの思惑や意向が介在しているのでしょうか -- (名無しさん) 2017-02-19 19:06:36
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最終更新:2013年08月18日 16:51