アットウィキロゴ

【性態学者と怪獣映画】

何時の頃だっただろうか。

この世界に宇宙人がいると信じていたのは。


俺がガキの頃、ゲートと呼ばれる異世界の扉が開き、架空の存在と思われてきた人種が次々と現れた。

彼らは地球人と共存し、数十年もの月日を経てその生活圏を広めていった。

このまま平和な時が続くと誰もが思っていた矢先に、事件は起きた。


太平洋の奥深くに次元の歪みが現れ、そこから翼のない竜のような巨大生物が出てきたのだ。

異世界人ですら知らない、12番目のゲートだ。


その竜が最初に目撃されたのはアメリカだった。

まるで巨大ハリケーンのように街を破壊し、多くの人命を奪っていった。

これに対し米軍は陸・空軍の全兵力を集中させ、五つの街を巻き込む激戦の末、竜の撃退に成功した。

そこでこの事件は終わったと思われた。


数ヵ月後、竜の血液による深刻な土壌汚染の処理に追われ、誰もがあの事件を忘れかけた時、奴は再び出現した。

今度はイギリスに出現、かつての再現の如く破壊と殺戮をもたらした。

更に2ヶ月後にはオーストラリア、日本、ペルー。竜の目撃情報は次々と増えていった。

そこで人類は悟った。これは始まりに過ぎない。長い戦いの幕開けでしかない事を。

そして、竜の目指す先が、異世界へのゲートであるという事も。


人類は結束した。地球、異世界問わず。

人種や宗教、あらゆる対立関係を忘れ、『怪獣』と名付けられた竜に対抗する為の兵器を開発する為に。

そして人類は、怪獣を倒す為、もうひとつの怪物を生み出したのだった。

マキナ計画の始動である──。





「…何度見れば気が済むのですか、サツキ様」
ソファで寝転がるあたしの横で、クーリエがぼやいた。
「え~、いいじゃんトゥエルブ・ゲート。怪獣対マキナの熱いバトル!男の子のハートにずっきゅ~んだよ!?」
リモコン片手に力説するあたし。自分でもよくわからないが、何故かこの話になると胸の奥が熱くこみあげてくる。
ひょっとしたら、女の子と交わる時か、それ以上かも知れない。
休日の朝から自室で映画鑑賞というのはやはりいいものだ。地球の技術や文化には、いくら感謝しても足りないくらいだ。
特に、眼鏡を掛けるだけで映像が立体的に見えるという発明には感銘を受けたものだ。
コンピュータで描かれたロボットや怪獣も素晴らしい。まるで実在するかのように見えるそれらは、想像力を掻き立てられる。
「去年の8月に10回以上も観た上に、今度は年末に購入したブルーレイで100回以上。よくもまぁ飽きないものですね」
そんなあたしとは対照的─と言っても普段とあまり変わらないが─な冷めた口調でクーリエが返す。
だがそれに構わず、あたしは瞳を輝かせながら続けた。
「だってさ、ロボットだよロボット!最初はでっかいリビングメイルみたいだな~って思ってたけど、見れば見るほどカッコよく思えてさ!あぁ、オトコノコに産まれてよかった…ありがとう世界樹様…!」
「私は血噴き肉散る生身の戦闘が良いと思いますが」
不満そうに嘆息しながら呟くクーリエを無視し、あたしは再びテレビに視線を戻した。
「そこだー!いけーリンク、ブチのめせー!!」
何時の間にかクーリエの姿が見えなくなったが、目の前に繰り広げられる怪獣と巨大ロボットの戦いに夢中になっていたあたしは全く気付く事はなかった。
数時間後、休憩しようと部屋を出た時、自室の扉越しにクーリエが切ない声を上げていたのを聞いてしまった。
その時激しい罪悪感を覚え、あたしはなんとか機嫌を取ろうと必死になったが、それはまた別の機会に語るとしよう。


  • 題材問わずの性態学者シリーズに思わず冒頭から新事実誕生?!とまんまと乗せられてしまった!映画がやってきたようなイレヴン地球では逆に異種族の方がファンタジーを感じているのかも -- (名無しさん) 2014-01-07 23:19:53
  • 意外な男の子ハートだサツキ君。12番目のゲートはあるかないかと言われたらあるんじゃないんですかね? -- (名無しさん) 2014-01-10 23:14:20
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

h
+ タグ編集
  • タグ:
  • h
最終更新:2014年01月05日 00:58