クルスベルグからグーテンターク
ドイツ新聞Berliner Morgenpost
クルスベルグ駐在記者 ヨハン・ゲーレン発
第15回『クルスベルグの郷土料理』
みなさんこんにちは。
このコラムを読んでいる読者の皆さん、皆さんの地元の郷土料理は好きですか?
郷土料理、いろいろありますよね、隠れた絶品料理から「え……それはちょっと……」と思わず言いたくなるようなものまで。
ベルリンならアイスバインでしょうか?付け合わせにザワークラフトとゆでポテトと豆のピュレー、私はけっこう好きなんですが聞くところによると最近の若い人は頼まなくなってるとか……。
そのほかにもドイツには様々な郷土料理や名物料理があると思いますが、私の暮らすクルスベルグにも同じようにそうした郷土料理や名物料理があります。
今回はそうした物の中から
ドワーフと
ノームの比較的庶民的なものと高級なものを一品ずつご紹介したいと思います。
数種類のハーブや香辛料と塩で味付けしたクァームの肉団子をパン生地に包んで焼いたものです。
大きさはテニスボールほどの大きさで、一個でかなりの食べごたえがあります。
ホーンベルク周辺では古くからある郷土料理で、鍛冶神祭ではこのポウロの大食い大会なども行われます。
これまでの大会最高記録は185個、この記録を打ち立てたのは飛び入りで参加した狐人の女性だったそうですが、当日用意したポウロをペロリと食べ尽くしてしまったという逸話が残っています。
ちなみに例年の優勝者の平均個数は50前後ということですからどれだけおかしな数字かはおわかりいただけることでしょう。
クァームのモモ肉の生ハムです。
ドワーフにとっては手間暇のかかる贅沢な肉料理で、特別な客を持成す時などに出されることが多いようです。
クルスベルグではクァームの肉は多種多様な加工肉にされていますが、その中でもクシケはその手間暇に見合った非常に美味しいことで知られています。
大体の加工方法は地球の生ハムと同じですが、熟成方法が少々特殊です。
クァームのモモ肉に十分調味液が浸みこむと、それらは酒蔵の中に吊るされるのです。
クルスベルグでは酒蔵は廃坑跡に造られ、酒樽と一緒にクシケも熟成の時を重ねます。
表面にびっしりと白い酒精(正体はよくわかっていませんが、酒の神様の使いと言われています)が覆い、それから半年涼しい酒蔵の中で熟成させることでクシケは出来上がります。
熟成の場所となった酒蔵ごとに香りが違うため、良い酒を作る酒蔵で熟成されたクシケほど素晴らしいとされています。
出来上がったクシケは薄くスライスし、パンに挟んだり、そのまま酒の肴にしたりします。
クァームのミンチとキノコの甘いパイです。
中に入れるキノコはその日その季節に取れるものを使い、黒砂糖とハーブを加えながら作られるメインというよりはデザートに近い料理です。
ノームは老若男女このパイが好きです。嫌いという人を少なくとも私は知りません。
産卵期前の最も脂の乗ったメスのエーベルとニニ茸を使ったスープです。
エーベルとニニ茸は高級食材なので、クルスベルグでは比較的高級料理として知られています。
お祝いの席で振舞われることの多い料理で、ノームの場合は結婚祝いにこの料理を食べることで丈夫な子供に恵まれるという言い伝えがあるなど、縁起の良い料理とされています。
いかがだったでしょうか?
このほかにもクルスベルグには地球とよく似た料理や、まったく違う料理などたくさんの料理があります。
今後機会があれば、そうした料理などについてもご紹介できればと思っています。
それではみなさんまた次回。
Berliner Morgenpost ネット配信版 2011年10月4日号より
- 20011年…!?2011年の間違いですよね…?? -- (名無しさん) 2014-03-08 18:27:45
- やった!新しいグーテンタークだ! -- (名無しさん) 2014-03-08 19:57:44
- 描写が丁寧で調理の過程や皿の上が目に浮かぶ。 自然な異世界語りは週刊誌の料理枠を読んでいる様な気分に浸れる -- (名無しさん) 2014-03-28 23:08:18
- 金羅様が大食い記録ホルダーなんかい。ピュリップ食べたいわー -- (名無しさん) 2014-03-30 19:55:15
- ネーミングセンスがほどよく異世界っぽくていいな -- (名無しさん) 2014-04-18 22:19:58
最終更新:2014年04月02日 16:10