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【籠の中の小勇卿】

屍人達が住まう国、スラヴィア
そこでは何時終わるとも知れぬ夜の闘争劇「饗宴」が行われ、統治者達はこれによって領地拡大を図っている。
しかしそんな饗宴の中には、一風変わったものも存在する。
それが“こどものきょうえん”である。

とある紳士とその友人達が始めたそれは、文字通り屍人化した少年少女を戦わせるという特異極まりないものだった。
単純な殺し合いではなく、子供達が互いの衣装を脱がし合うそれは、特殊な嗜好を持つ紳士淑女に好評となり、今もなお行われている。
これは、そんな遊戯中の遊戯である競技に身を投じる羽目になった一人の貴族の逸話である。


(また、コレが始まるのか……)
三つ編みにした長い黒髪を片手で弄りながら、ダークエルフ型の少年は心中でつぶやく。
今、彼が立っているのは"こどものきょうえん”の会場。この為だけにとある貴族が建てた闘技場である。
そのグラウンドの向こう側に見える扉から、同じ背丈の少年が出てくるのが見えた。
見た目からして、おそらく竜人の屍人。伝統的な衣装を着崩しており、胸元が露わになっている。

「おっと、ここで挑戦者のご登場か。衣装から覗かせるあの青白い肌は実に美しい……加点しておこう」

グラウンドの隅にある審判席から、審判役の貴族が票に何やら書き込んでいる。
彼は、それが何なのか嫌な位知っている。ここでは参加する子供達のファッションの評価があり、薄着であるほど、脱がせやすいほど点数が加算されていくのだ。
そんな彼の衣装はというと、上は黒のスーツを着てはいるが……。

「でも、あの子の格好もなかなかのものよ。下にあんなピッチリとしたものを穿いてくるなんて、大胆で結構よ!」

審判の隣で、ノームの貴族が彼の服装について熱く語りだす。
彼が下に穿いているのは、地球から持ち込まれたというスパッツ。それも丈が非常に短く、殆ど下着のように見える。
「スパッツは直に穿く物」と教えられたのでそうしているが、正直落ち着かない。穿くのは初めてではないが、未だに慣れないでいるのだ。
それでも、こんな格好をしてまでこの競技に挑まなければならない。
──何故なら、彼にはこうするより他に道はなかったからである。



彼の名は、セシル・ヴィエルディア。
外見こそ少年だが、比較的小さな地方を統治するれっきとした貴族である。
彼の配下は殆どが少年少女となっており、その様は「スラヴィアの託児所」と称される程だ。
貴族だけあって戦闘能力はズバ抜けて高いが、上記の事情により、その総戦力は心許ない。
そのせいか他の貴族達によく狙われており、彼の領地は年々縮小傾向にあった。
そんな時、ある条件と引き換えにこれ以上の侵攻を行わないという申し出を貴族達に突き付けられ、渋々これを承諾した。

その条件こそが、「自身を含めた戦士の“こどものきょうえん”への出場」である。



「いくら領民を守る為とは言え、見世物みたいな扱いを受ける羽目になるなんてな……」
虚空を見上げながら、ため息をつくセシル。
しかしこうしなければ、領民や配下がどうなっていたか。それを考えると、今は耐えるしかない。
そう自分に言い聞かせながら、地面に突き刺していた大剣を構えて向こう側の少年に対峙する。

「今回もまた、あの子の乱れる姿が拝めるといいですな」
「あれで貴族だって言うんだから、たまらないわよねぇ~」
「おら、今こちらを見ましたわね。私に気があるというのでしょうか」

観客席にいる貴族達の下心満載な歓声に色々思う事はあるが、今は眼前の敵を倒す……もとい脱がすのみ。
そう思った直後、セシルは目標まで一気に詰め寄ると、構えた大剣を振り回した。
刹那、目標の少年の衣装は瞬時に破れていったが、素早く後方に飛び退いた事で何とか下着姿を晒す事だけは避けたようだ。

「見ろ、あんな大物でああも見事に引き裂いていったぞ!」
「まぁ……見てくださいあの子の肌。あんな所もこんな所も青白くてとってキュートよ」
「やっぱり大きな得物を持った小さな子ってギャップ萌えだよね」

少年達の殺陣に、更に沸き立つ観客達。一方、その少年達は距離を置いた後、睨み合いが続いていた。
普通、この競技において大剣は不向きとされている。
「相手を脱がす」のがルールとされている“こどものきょうえん”において、その攻撃力は過剰の一言に尽きるからである。
貴族であるセシルがこれを得物としているのは、相手に対するハンデであるのは言うまでもないだろう。
(相変わらず加減するのに精一杯だ……。また一発で仕留め損なったよ)
胸中で愚痴るセシルを尻目に、今度は少年が薙刀を振りかぶりながら襲い掛かる。
薙刀の刃が次々とセシルに向かうが、大検を手放せないせいで思うように回避できず、スーツが徐々に引き裂かれていく。

「こりゃ、流石に連勝記録ストップかねぇ……」
「それでも構わないわ! セシルちゃんの恥ずかしい姿が拝めるなら!!」
「貴方……何時少年愛者になったんですの?」

相変わらず子供達のじゃれ合いに狂喜する観客達。
しかしここで避けるだけでは勝機は見えない。そう判断したセシルは思い切って少年に密着し、腰に巻きついた帯を力いっぱい掴み……。
「「「おおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」
観客達が、今回最も凄まじいボリュームで一斉に歓声を上げる。
その後、グラウンドに残ったのは──
スパッツ以外ボロボロになりながらも衣装の原型が留まっているセシルと、度重なるダメージと先程帯を解かれた事で衣装が破れ、下着姿となった少年の姿だった。

「まさに服を切らせて服を断つ。あそこで脱げない程度にズタズタにしてから一気にバラけさせるとは、流石“小勇卿”だけの事はあるな!」
「見て見て、心なしか下の方がムクムクしてるように見えない?」
「あの逆転劇の後なんだ、きっと興奮してるに違いない……ハァハァ」

勝敗は決した。
敗北感と恥辱から泣きじゃくる少年に背を向け、セシルはグラウンドの扉の奥へと向かう。
「今に見てろよ、あいつらめ……」
下心丸出しな目線を送りつける観客を見ながら、ぼそりと呟く。
「僕は絶対、ここから舞い戻ってやるからな」


  • なんて爛れたきょうえんなんでしょう!しかしこの先セシルが領地を守るには助っ人が欲しいところ -- (名無しさん) 2014-05-07 00:15:54
  • スラヴィア饗宴製作委員会はエンターテイメントの何たるかを知っておる!知っておるわ -- (名無しさん) 2014-05-09 22:36:39
  • ルール制限があるからただ倒すよりも難しそうだ -- (名無しさん) 2014-05-23 10:54:36
  • 出演する者よりも観覧する側の欲求を満たすような内容が多いんだろうか饗宴 -- (名無しさん) 2015-02-03 23:47:03
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最終更新:2014年05月06日 01:50