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【盗人の物語】


 気になりますか。

 失礼。
先ほどからずっとご覧になっていたもので。
ついからかいたくなりましてね。
とはいえ、ほかでは見られないものですから無理もないかもしれませんね。

 あれは天窓です。
明かりとりの。
雨が降った後、ああして水がたまるのです。
あの窓をくぐると、雨はそこで落ちるのを止めます。
今のあなたや私と同じように。
その場で留まって池になるのです。
生活用水として利用されて、そのうち無くなります。
それまでは、日がさすととても美しい明かりで照らしてくれますよ。

 申し遅れました。
私はここの司書をしております。
あなたは――なるほど、地球から。
飛べない者の国ですね。
飛べないというものがどんなことなのか、よくご存じなのでしょうね。
私はこうなるまで想像もできませんでしたよ。

 足ですか。
向こうに飾ってあります。
翼もね。
ほら、あの注意書きの周りにある飾りがそうです。
ほとんどは足や翼ですね。
中にはろっ骨などもあります。
皆、注意書きに従わず、蔵書を勝手に持ち出した者たちです。

 そうですよ。
私もかつてここの本を盗んだのです。
食い詰めていたものでね。
お恥ずかしい話です。

 簡単でした。
ここは出入り口には不自由しませんからね。
手あたり次第つかんで持ち去ったものです。

 その後ですか? 戻ってきて、本を返し、そのまま捕まって翼と足を切断されました。
首も落とすか、ここで働くかを選ぶように言われましてね。
それで今に至ります。
私のような者は多いのだそうですよ。
ここでは翼がなくても飛べますからね。
あまり不自由は感じません。
表層に出ることもほとんどなく、専用の宿舎で寝泊まりしています。

 どうして戻ったか、ですか。

 いいえ、知っていましたよ。
何しろあんなに目立つところに書いてありますからね。
ただの脅しだろうと思っていたのですよ。
それでも戻ったのです。
手足を断たれることがわかっていても。

 さあ、それはお話しかねます。
とても信じてもらえないでしょう。
ただ、これだけは言えます。
あれから逃れるためなら、手足を捨て去ることなど造作もないことでした。

 そういうわけですから、どうしてもご自身で経験なさりたいとお考えでも、お勧めはしかねます。
すでに翼を持たぬあなたが、あれから逃れるために何を捨て去らねばならないか、私には想像もつきませんのでね。

 通常の閲覧室はあちらですのでどうぞ。
この図書館の中であるなら、資料の移動は自由ですよ。
大図書館の中でさえあれば、ね。



 但し書き
 文中における誤り等は全て筆者に責任があります。
 千文字。

  • 貧富というよりも食える食えないの格差がひどかったのだろうかオルニトで納得してしまう盗みからはじまる禁忌破り。しかし何故だろうその者らの悟りを開いたような心の穏やかさ -- (名無しさん) 2014-09-19 01:45:36
  • いやすごい落ち着いてませんか元盗賊さん -- (名無しさん) 2014-09-21 09:04:30
  • そして捨て去った者の運命の行く末はどうなる? -- (名無しさん) 2014-09-26 23:40:00
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最終更新:2014年09月17日 23:28