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【陽揚塵】

そうと思えばそう感じ、ないと思えば消えている
異世界の自然の中に溢れる精霊の悪戯か、はたまたそれは別異の力の囁きか


陽揚塵


 朝に舞う風は陽を起こす
 昼に舞う風は陽を昇らせる
 地より舞い上がる塵は煌めき踊る
 降り注ぐ光は恵みの印
 降り注ぐ熱は幸せの証


ここは新天地の真ん中あたりの名も無き小さな村。
「起きろ!起きろーっ!」
陽の差し込むボロボロの板屋根の下、激しく金バケツを叩き鳴らす人間の青年が吠える。
煤と埃まみれのシャツはほつれて破け、その下にある肌を、奴隷の証である紋や刺青を無数に露出させている。
何かの作業途中で寝てしまっていたのだろうか、馬車の周辺でむくむくの人影が起き上がってくる。
「あら?」
青年は朝陽注ぐ中で煌々と燃えるランタンの灯に気付く。
夜通しで馬車を改装していた時は点灯させていたが、もう寝る寝てしまうとギブアップした時に消したのはぼんやり覚えている。
「油だってタダじゃねンだぞっと…」
 ひゅっ… …しゅぼぼっ
「あら?」
足元から風が吹き上がると今消したばかりのランタンに火が灯る。
それから何度も何度も消しては火が灯りを繰り返す。
何をやっているのかと起きた者からぞろぞろと集まってくるが、状況は変わらず。
「ふぁーあ… にーちゃん、そいつは陽揚塵(ひのようじん)って言う精霊の悪戯なんだぜ?
太陽を喜ぶだか崇めるだかで火精霊が空に昇るのと一緒に所構わず灯りを付けていくんだ」
まだ鼻ちょうちんを膨らませている二頭のハイエスの背中の上で猫人の少年が背伸びをしながら言う。
「精霊ねぇ… 今から油を抜くのも手間だしなぁ…諦めるか」
「おいおい、そいつは幸運の兆しってやつなんだぜ?」
ひょいとハイエスから飛び降りた少年はケープを羽織って朝行灯を指す。
「俺の村だと太陽神の作った明かりの道を精霊が昇って行くっていうありがたーい御業とか言って喜ばれるもんなんだ。
それが消しても消しても何度も付くって相当な幸運じゃないか?」
一晩作業を手伝ってくれたお礼を吊り袋に詰め込みながら、昨晩の残りの干し肉を食む。
『そろそろ出立の頃合いで御座いますれば』
「あー…また飛ばされるってか?」
「良い情報をありがとよ!今すぐ出発だ! 全員早く準備完了しろよ!」
ぱぁっと笑顔になった青年がハイエスの鼻ちょうちんを割る。いそいそと他の者も集まってくる。
「じゃあ俺はここで」
「あぁ!試練とやら、頑張ってくれよ! さぁ、ドゥラゴン酒場出発だ!」

二頭のハイエスが牽く大型の馬車が砂塵を巻き上げ勢いよく村を出て行く。
「ありゃまーもう出てったんべかーあの人ら」
「まだ村のまわりで野盗だのが争ってるんじゃねーべか?でくわしちまうぞ」
「…よき試練にならんことを」


夜行く颪の逆はどうなる?と思って書きました
すれ違う縁は次にどんな縁を導くのだろうか

  • 異世界のげんかつぎは偶然ではなく種もしかけもご利益もある出来事なんだろうか -- (名無しさん) 2014-11-30 21:38:12
  • 精霊が何かすると運気に影響が出る?知らず知らずのうちに色んなフラグを重ねながら生活してそう -- (名無しさん) 2014-12-06 06:20:11
  • 何か起こった後にイイコトがあれば縁起がイイと言われるようになるのは世界共通やな -- (名無しさん) 2015-05-08 23:35:17
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最終更新:2014年11月30日 02:14