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【毛の村】

大延国の芯に聳え立つ山脈の高い位置。凡そ人の住まうに適さない実り少ない過酷な地にそれはひっそりと佇んでいる。

 【 毛之村 】
村の起こりは遠い昔、まだ大延国が若かった頃の南蛮との往来が本格的に塞がれる前、山と森を越えて二つの種族がやってきた。
一つは豊かな毛を蓄える羊人。一つは力強い脚を持つ山羊人。
大延国に入った彼らは何の寄り道もせず、近辺境の湖畔で寝そべり酒を愉しんでいる金羅に謁見し一つ請うた。
「私達の“力”がこの先の世で争いに使われるのを危惧してやってきました。 許されるのであればこの地で暮らすことを望みます」
その願いを聞き入れた金羅は彼らを高峰へと導いた。 彼らは厳しい土地にも拘わらず感謝し根をおろしたのである。
彼らは山の反対側にそれぞれ分かれ、一年の後にお互いの住む場所を交換し山の資を使い切らない様にしているという。
何故金羅はこの地を彼らに?という点については、彼らの持つ“力”に気づいた者が彼らに害を成さないようにと仙人の多く住まう山脈を選んだとも言われている。
しかし、穏やかに細々と暮らす彼らに大きな災厄がやってきた。
時の皇が災いと化し暴れ、その余波が大延国各地へと飛散したのである。
天変脅威の荒ぶる精霊災は仙人の出払っていた山脈にも空より降り注いだ。
暗雲を突き破り大岩が巨雹が鉄雨が村に襲いかかろうとした時、更に一つの大きな白い雲が空を割り彼らの上へと舞い降りたのだ。
白く柔らかい光を放つ綿雲の如き巨大な毛は降り注ぐ厄災を全て受け止めても尚ふわふわと浮かんでいたのである。
「鳴恵鳴恵」とのんびりした声で鳴く雲は巨大な“毛竜”。それが彼らの窮地を救ったのである。
だが、毛竜にはそのような気持ちがあったのかどうかはさて置き、山には毛竜の大好物である鈴鳴草が多く生えているのは確かである。
それから羊人山羊人は毛竜を天からの護者として崇め奉る風習を持ち、今にまで至るのである。

それからその村に一つの噂が起つのであるが、それは彼らの力ではなく
「毛竜の恵みにより毛の絶えたるところに毛が生える」というものであった。
彼らと一年から山で共に生活することで抜けて生えず絶望の荒野と化した頭皮などから毛の芽が息吹くというもので、
婚姻前にひと勝負した際に髪をズバっと剃り切ってしまった皇帝が仙人に助力を求め山を登りこの村に逗留した後、むくむくと毛が伸びた逸話が発祥と言われている。
今でも山は毛生え祈願や毛再逗留に訪れる者は多いが、自力で山を登らねばならないという試練もあるので準備と気構えが必要である。


「出張中に企画が立ち上がって支店長自ら現地調査に行ったと聞いて変だなと思ってましたけど… 試パンフ読んで納得しましたよ。
ところでこの“彼らの力”というのは毛を生やすことじゃないんです?」
「大延国の古い伝承に、“世の流れの地平線の先を見通す眼を持つ”とあるらしいのですけども。今は全くそのような力は持っていないとも聞いています」
ふうんと相槌をうつ男が異世界では貴重とされる地球製煙草の箱を無意識に取り出すが、それをそっと魚人が制する。
「支店内での喫煙は禁止になったんですよ?社のイメージ戦略とか何かで」
隣席で無言で外を指差したのはゴブリンの事務員。 窓の外、支店の裏手に灰皿がひっそりと佇んでいる。
「男性の方はそんなに毛の有無を気にされるんですか? こちらには毛のない種族も多いのでぴんと来ませんけども」
「いやまぁ、最初から無い人と失った人とでは心持ちが違うと言うか…」
「地球でも人気のあるお禿げさんは多いでしょう? 何度もピンチになるけど悪党を懲らしめるお禿げさんとか私好きな映画です」
「人それぞれ、人生色々ってやつですよ」
 ミズハミシマの空は青く、心地良い風が吹いていた。

大延国の名所などを考えるついでにちょっと色を添えてみました

  • もうりゅうつよい。異世界には不思議な生き物がもっといてもいいな -- (名無しさん) 2014-12-15 21:05:59
  • 南蛮にいると危険だからと予見して逃げてきた?交流するのに何が南蛮には足りないんだろう -- (名無しさん) 2014-12-16 23:08:25
  • これは福豊かな観光地として地球側に人気が出そう -- (名無しさん) 2015-10-10 12:44:25
  • 毛の生えるパワースポットは絶対に人気出る -- (名無しさん) 2018-01-06 08:54:23
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最終更新:2014年12月14日 19:38
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