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【刀追いし者】

「鞄持った?ハンカチは? ほら、ちゃんとタイ締めて」
「鎖帷子にほつれはないか?苦無は落ちないか? ほら、鬼骨手甲がずれてるぞ」
流れるようなしっとりとした蒼鱗に麗しい睫毛をなびかせる流線の眼。 女子ブレザーが少し窮屈にも見える蜥蜴身の鱗人と
六手を器用に絡まることなく動かす黒黄縞模様の殻とふわっとした白毛を巻く首が目立つ男子ブレザーから少し体がはみ出る蜘蛛人に
あれやこれやと格好を正され、無表情なままでこくりこくり頷いている女子セーラーの青鬼人。
「ゆずちゃんどう?欠片は何か言ってる?」
「ユズしか欠片の声を聞けないんだからな。頼りにしてるぞ」
青鬼人は無表情のまま手甲に目を落とす、向き直る。
「近くにいるって」
それを聞くや否や鱗人と蜘蛛人が小さくガッツポーズ。 もう一度ガッツポーズ。
「刀二振りが斬り合ってるとこに行ったまでは良かったのにね。 …まさかどちらも押さえることができず仕舞いだなんて。大目玉もいいとこよね」
「それでも一本の刀の先が折れたのを回収できたのは収穫だった。 しかもその欠片が刀の持ち主まで案内してくれるとは」
「回収じゃないでしょ。ゆずちゃんが体を張って手に入れたんじゃない。 あんたは最初の斬り結びで吹き飛ばされてたじゃないのさ」
「うぅ…それを言われると申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 よくやったぞユズ」
「飛んできた欠片で切り傷。 少し痛いけどそれから刀の声が聞こえるようになったから」
“柚鬼”と書かれた名札を胸に留める腕に装着する無骨な手甲。 その甲に収まる刀の切っ先。
「これからいよいよ潜入調査ね! いい?中で会ったら“ナガミ先輩”って呼ぶのよ」
「私のことは“ドウヌキ先輩”だぞ、いいな?」
こくこくと頷く。
一連の流れを足を止めずに早歩きでやってのけるこの三人。見た目は変でも只者ではないことは確かだろう。

「反応、近いって」
「ええぇっ?!あたしまだ心の準備ができてないわよ!」
「いや何でナガがそんなに緊張するんだ。 確かに任務成功すれば捜索子(ね)班は大金星間違いなしだが」
「段取りは理解してる。行ってくる」
「ゆずちゃん!立派になったわねぇ…」
「よっしゃ!行ってこい!任せたぞ!」
柚鬼は見た目に短いだろうと分かるスカートをひらひらさせながら物音を立てずに走る。
十津那学園へと向かう途中の住宅街の片隅、曲がり角。
「どーん」
「ってぇ!今どーんって言わなかったか?言ったろ!」
角の向こう側から走ってきた人間男子学生に見事なショルダーチャージをかましこかせた柚鬼がワンテンポ遅れてわざとらしくこけてみせる。
「運命の出会い。 ぽっ」
無表情で頬を抑える柚鬼に呆れた眼差しで一瞥。 慌て拾いあげた鞄を抱えて走り出す男子。
「出席日数と遅刻のペナがヤベーんだってのに無駄な時間を! あぁっ!クソもう全力ダッシュだ!」
怒涛の駆け足でその場を後にするも、平然とそれに並走する柚鬼。
「私、柚鬼。これはもう運命の出会い。 あなたの名前をまず教えて欲しい」
「なんっ!?速ぇ!ってか何だそりゃ、名前?俺のか?丈児だよじょうじ!」
「ふるねーむで頼む。後から探し易い」
「…春先ってホントに変なのがわくんだな… 元原だよ、も!と!は!ら! 元原丈児だ分かったか!」
「うん分かった。 また後で」
跳んだと思った一瞬で消え去る柚鬼。 周囲にもう気配はない。
「後でって何だ後でって。…ってうぉおお!時間がぁーーっ!」


「名前確認した」
「ゆずちゃんやったね! これで彼を追って“刀”の在り処を突き止めるのよ!」
「よし、ここからはそれぞれ別行動だ。 拠点に帰らない日も出てくるかも知れないが…それぞれ上手くやってくれ。
ユズ、鬼骨手甲の手入れは怠るなよ?只でさえミズハミシマとは違う土地で何かと不便だからな、不備が出てもすぐに直せないのは確実だ。頼むぞ」
「分かってる。任せて」
三人が頷くと影は三方へと伸び消える。
彼らが探す“刀”とは?元原丈児という男子生徒との関係は?
十津那学園を舞台に何が始まろうとしているのか!?


 「神は仰った…【刀を集めよ】と」
 「神は仰っている…【古の威光を知らしめる戦いは近い】と」
 「…神は二言しか仰られなかった…」
  学園を見下ろす不穏な影三つ。
  それらは学園へと飛び急ぐ柚鬼の姿をはっきりと捉えていた…


エイプリルフールに乗って勝手にフールな一話を想像ー

  • 明るいというかギャグっぽい。こういうのもいいんじゃないか? -- (名無しさん) 2015-04-01 22:29:13
  • スレネタにちょい味付けして面白い展開 -- (名無しさん) 2015-04-02 23:37:32
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最終更新:2015年04月01日 05:07