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【青鬼師匠と忍者と少女のむかし】

 ドゴァッッ
山中のそう大きくはない村の中、藁葺き屋根の家が激しく揺れると土壁が破壊される。
「いました!くそっ、もう犠牲者が出たのかぁっ!」
散乱する土くれと共に躍り出てきたのは鈎爪が折り重なる如し歪な形状の刀を持った狸人。
乱暴に刀を振り刃に乗った血を払う。家の者の血であろうか。
阿鼻叫喚が巻き起こる村、原因は明らかに狸人。
素早い身のこなしの集団に囲まれても全く怯える素振りも身構える風もなく、異様な光を揺らめかせる双眸がぐるぐると円を描く。
「ムラマ様!あの刀、まさしく五年前に現れ街道で凶行をはたらいたものでございます!」
「あぁ、あの刀は私もよく知っている。 我が隊も討伐任務に参じていた。 …そして逃した。
あの刀は二振りにて攻防一体。大勢で同時に攻めても崩せなかったのだが… もう一振りはどうしたというのだ?」
だらりと両腕を垂れ下げた狸人が持つのは一本の刀のみ。 それはゆらゆらと徐々に振れ幅を大きくしていく。
「奴が動きます!」
けたたましく奇声を発したかと思うと、狸人は何を思ったのか側面跳びで再度家の中に飛び込んだのだ。
全員がその方向に注視すると、家の中には倒れ込む男女がもぞもぞと動く子に覆い被さっていた。
青鬼の家族。父と母は狂刃から子を守ろうとその身を犠牲にしたのだろう。
しかし狂刃は再び襲い掛からんとする。残った一つの命を切り裂かんとし。
「させるかッ!」
後ろ手から放たれた苦無は手から離れるも糸で繋がっている。それを高速で前方に振り抜き放つ。
刃が青鬼の子を襲う寸でで苦無は刀を弾いた。
「いいぞドウヌキ!そのまま私と一緒に切り込むぞ!」
忍装束の囲みから黒鬼人と蜘蛛人が飛び出すと、その戦気を察したのか狸人がぐるり首を向き直る。
 ギンッ ギギンッ
二人同時の斬撃。受けるか避けるかするであろう予想に反して狸人は踊る様に斬りかかってきた。
ほぼ同時に振り下ろされた刀、それをほぼ同時に振り弾いた斬速。
「攻防一体の内の…【攻】の刀か!」


  峠に人斬りが出没する ───
 そのような報せが多く奉行所に寄せられたことから竜宮城直下の部隊が動いた
 ある夜、旅人に偽装した忍が峠を通過せんとした時襲い掛かる影あり
 それはひどくぼろぼろになった着物をざんばらに羽織る鱗人であった
 歪な刃が重なる刀、先端が鋭角ではなく四角張る幅広の刀
 両腕で二振りを激しく素早く振り回すその鱗人は百人からなる合同部隊の嵐の如く攻撃を防ぎきり
 その半数である五十を再起不能に追いやった
 結果は崖際まで追い詰められた鱗人が足場崩れに巻き込まれ落下して終わる
 二振りの刀は発見されることはなかった


「これが争乱で竜宮城の脅威となった刀! まさかここまでとは!」
複腕で雨霰の斬り筋を叩き込むも、それ以上の手数と複雑怪奇な角度から押し寄せる刃が逆に攻める蜘蛛人を斬り刻んでいくのだ。
「ムラマ様!子供を確保しました!退きますっ!」
「よし!ナガミはそのまま安全な場所まで子を運ぶのだ! あと二人…来い!四方囲むぞ!」
鱗人忍者が小太刀を構え囲みに加わるも、狸人は更に首を激しく擡げまるで歓喜するかの様に両腕を振り上げた。
四方同時から突き出される攻撃に自ら突撃した狸人はまず鱗一人目を脇腹からそのまま斜め上に斬り裂く。
追いついた三人に対して弧月を描く様に右手から左手、そこから更に左足へと刀を持ち替え斬り飛ばす。
遠心力をそのまま体に沁み込ませたかの様に狸人の胴が伸びれば、飛び退き間合いを取らんとした鱗二人目を突き貫いた。
歪な刃は一つの刺し傷を無尽蔵に広げ悶絶を巻き起こす。
後ろを一瞥もせず両手に持ち直した刀を地から引き抜く如く後方へ振り落とせば、背の中心を狙った黒鬼の太刀を噛み砕く。
砕けた太刀を投げ捨て蹴りで狸人を吹き飛ばし難を逃れた。
蜘蛛人は合わせて攻撃するのを諦め斬られた二人を担ぎ離れるので精一杯であった。
「ムラマ様、もっと大勢で囲めば…」
「駄目だ!数を増やしても的確な攻撃を繰り出す奴には意味が薄い、斬られるだけなのだ!」
「しかしこのままでは犠牲者が増えるばかり ──

 「なぁにをやっとるんじゃぁあああっっ!!」

木々を揺らす程の怒号は最も高い樹の上から。
狂刀を含む全員が一瞬止まり見上げると、そこには ──
八尺あろうか越えようかと思しき巨体。細身ながらも長い手足は力強く筋が絞られている。
長い髪に長い髭、覗く眼は左が眼帯で隠されている。 青鬼。
「道場で気持ちよく酒かっくらって寝てたら問答無用で鳥駕籠に乗せられ運ばれて見れば狂人。
半日やりあったがやたら防ぎが上手く決着がつかなんだから人ごと刀を握って【次はあちらへ】と言われた先にやってきたらば…
一人相手に決着もまだとはッ!」
言の通り、青鬼の手には幅広な刀の柄を握るぐったりとして動かない狐人の腕ごと握られている。
樹を揺らし凄まじい勢いで降下したそのまま、地表を抉り飛ばし着地する。
「真打ちでもない刀如きに遅れを取るようでは先が思いやられるわっ!
常在戦場!心持が弛んどる証拠だ!鍛えて出直せっっ!!」
人の上背はある長い脚で一気に狸人へと駆け寄れば、腹を狙った斬撃など気にもせず刀と狐人を叩きつけたのだ。
歪な刀と幅広の刀が火花を散らして衝突すると無数の亀裂が互いの刀身を走った。
二振りの刀は共鳴する如き高高音を響かせ砕け散った。
後には生気も失せて気絶したままの狸人と狐人だけが残ったのであった。

「あれくらい己らで始末つけんかい!事あるごとに俺が出張ってカタつけてるようだと十二本壊し終わるまで何十、何百年かかるんじゃい」
「師匠殿、申し訳ない。少しは腕が上がったと思っていた私が恥ずかしい限りです」
「応、分かってるなら今の倍は励めよ。何なら俺の道場にくれば弟子と一緒にしごき倒してやるからな」
「この御方が刀破壊の懐刀と言われている…何と凄まじい剣筋であった」
「まだまだ己らにミズハミシマを任せるには心細いわ。よいか?真打ちと遭遇したら絶対にどうにかしてやろうとは思わんことだ
俺を呼ぶか、そうでなければどこぞで遊び呆けている将軍でも呼べ!」
「しょっ、将軍をですか? 真打ちとはそこまでのものなのでしょうか?」
「おい黒鬼の、己はどんな教えを部下にしとるんじゃ?こやつら全く分かっとらんぞ
よいか?真打ち一本砕くのに百の精鋭と俺の左目が犠牲になったのだぞ。 どうだ?それでもまだどうにかなると思うのか?」
周囲一同が静まり返る。
と、そこに鳥駕籠がやってくる。 一人の竜人が降りてきた。
「じっさんよ、そろそろ切れる頃だと思っていたが…刀は無事破壊したようだな」
「なんじゃお前か。今更のこのこやってきても遅い…おそ…おそいんじゃわいのぅ。ふがふが」
先程まで精気溢れさせていた青鬼は急に力なくへたり込んだのだ。 老いて縁側で日向ぼっこをするかの如く。
「じっさんを道場までお運びして差し上げろ。 あと、土産の酒は目の届かない場所か弟子に預けるかするんだぞ。
また急に元気になっても、その、困る」
「わしの晩飯はまだかいのぅ」
「まだおてんと様は真上だぞ」


「君の両親を助けれずに申し訳ない。私達が至らないばかりに」
青鬼の少女はムラマの言葉に対して無言で首を横に振った。
「この子、本当に強いわ。一度も泣いてないもの…」
じっと忍達を見上げる少女の目は哀しむものではなく、とても力強い眼差し。
「ムラマ様!この女子、隊で引き取れないでしょうか?」
「ドウヌキ、何を?!」

 青鬼曰く、ミズハミシマを脅かした十二の刀は武器にあって武器にあらず
 戦う意思こそ力の源、その刀は心そのもの
 人の想像も及ばぬほどの憎悪が造り出した【武気】
 力だけでは勝てる筈もなく、何より心が勝らねば斬られて終わるのみ

「この女子が秘める心の強さ…この先、ミズハミシマの未来にてきっと刀を討ち倒す力となりましょう!」
「世話は私とドウヌキでします!決して足手まといなどにはしませんので!」
小さな手がしっかりと装束を握って離さない。少女も意に賛しているのだろう。
「分かった…この子はきっと強くなろう。 任せたぞ、ドウヌキ、ナガミ」
「ははっ!」
「ありがとう御座います!」
平穏の戻った村から一人の青鬼の少女が起った。 心の中に確かな想いを抱いて。

「そうだ、この子は何と呼べばいいんだ?」
「そうようっかりしてたわ。 えぇと、名前、名前は言える?」
ドウヌキに背負われた子を覗き問うたナガミ。 少女はゆっくりと口を開く。
「ゆずき… わたしの名は柚鬼」


柚鬼が忍者部隊に入った経緯や青鬼師匠を想像しスレネタを参考にして一本
あくまで想像なので詳細はスレや生み元に委ねます

  • メイン12本とそれ以外の試作刀とではそんなに差があるもの? -- (名無しさん) 2015-08-25 00:09:05
  • ミズハに今なお漂う暗雲みたいな感じだな>刀による事件 やっぱり黒幕とかいるんかね -- (名無しさん) 2015-08-25 01:24:30
  • 真の十二本以外もあるので色んな事件がおこっちゃうってのは上手い設定。青鬼師匠を常時酔わせていたら最強なのでは -- (名無しさん) 2015-08-27 22:18:42
  • 現代ミズハミシマに残る凶事の芽とそれを摘み取る組織というところかな -- (名無しさん) 2015-09-08 23:06:38
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最終更新:2015年08月24日 04:14