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【レシエ様はドワーフです】

最古の貴族にして“傀儡侯女”と呼ばれるレシエ=バーバルディア。
彼女を剣の師匠とするアデーレ・パルファンドゥール女伯爵は久方振りの稽古と近況報告のために恋人である緋沢優衣を連れてレシエ邸にやってきた。
武具に限らず魅力を感じたものを蒐集するのがレシエの趣味ではあるが、邸はがらくた倉庫にならず美しいままなのは
彼女が擁するリビングンメイルと仕える家人達のおかげとも言えなくもない。

「レシエ様ってドワーフなんですよね?」
「何をやぶからぼうに…」
邸前の庭での軽い稽古の後、用意されたテーブルでささやかなティータイム。
それまで見ているだけで退屈であった優衣がここぞとばかりにレシエに問いてきた。
溜息一つでそれをかわしたレシエが席を畳み邸へと誘う。近況報告のために。
「ドワーフってもっとヒゲもじゃですよね? ラケル牧場にやってくる農具屋さんのドワーフ夫妻はどっちもヒゲもっさもさですよ?」
邸の正面玄関入って大広間。そして二階へと登る大階段の踊り場にかけられている大きな大きなレシエの肖像画を背にして優衣がジェスチャーで両手を大きく回した。
「優衣、レシエ様に失礼よ」
「えぇ~、だって気になるんだもん。ドワーフなのにレシエ様ってお人形みたいだもん」
巨大な肖像画は真紅の鎧を纏ったレシエがボリュームのある髪を背にすまし顔で鎮座している。
その顔にはヒゲの一切はなく、毛深いドワーフならではの産毛なども見受けられない。実際のレシエも小さい体ながら美しい出で立ちである。
「私にも色々あったのよ」
「ふ~ん… あれ?隣にも何か掛かってる」
明るさが抑えられた邸内で大きな画のとなり故に意識していなければ見つけることはできないであろう小さな画。
それも小さな肖像画であったが、所々燃え焦げてはいるが描かれている姿は視認できる。
豊かな頭髪を湛え立派なひげで顔半分と体を覆うドワーフの女性。大きなハンマーを肩に担ぎ悠然と立つ。
「え?これもレシエ様?全然違う」
「…そうよ、よく分かったわね」
「だって目が同じなんだもん」
素で応える優衣とレシエに後から階段を登るアデーレが驚きの表情を隠せずにいる。
「私がスラヴィアンになった時の所持品の一つ。私がレシエ様の美しさに近づくために時間と密度を超越した鍛錬を行う前の姿」
「何故前の姿の肖像画を飾ってるんです?折角変わったのに」
レシエはここではないどこか遠くを見つめてゆっくりと語り始めた。

「私は私をスラヴィアンと化し救って下さったサミュラ様の美しさに惹かれドワーフである身を作り変えた…
そして私はそれまでの私と決別するために関連する品を燃やしたの…
しかしそれを見たサミュラ様が炎の中にくべられた私の肖像画を…」
「えっ!?飛び込んで拾ったんです?」
「いえ、腕がぱかっと開いて地獄蟲がひゅっと出てきてサクっと肖像画を炎の中から回収されたのよ。
そして「思い出せないでも、過去を大切にして下さい」という御言葉を…」
レシエが頬を紅潮させながら遠くを見つめる。
「成程~。でもドワーフがそんなに変化できるんですね」
「愛よ!」
「さっすがレシエ様!」
「愛の力よ!」

この後、アデーレの近況報告がレシエのサミュラ様は美しい素晴らしいスラヴィアの女神という熱弁に変更になったのは言うまでもない。


  • そんなに髭生えてたのか… -- (名無しさん) 2015-09-23 10:14:09
  • レシエ様はスラヴィアンだったから人体改造に成功した特殊なドワーフ例だろうな -- (名無しさん) 2015-09-23 12:35:10
  • スラヴィアンの存在は心の持ち様に大きく左右されるんやな -- (名無しさん) 2015-10-04 19:39:09
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最終更新:2015年09月22日 22:34