【学園生徒会会議】

「とりあえず第一次催し物希望届けの確認が終わったわけだが…」
生徒会長の赤鬼人、九鬼姫瑠柁(クキヒルダ)女史が少し困った顔で立つ。
「はい。希望の実に七割が喫茶店もしくや屋台でした、はい。残り一割がおばけ屋敷。残りの二割が研究発表や演劇などです、はい」
書記の蟻人、メドハモ=アリ女史が多腕を器用に使い瞬時に内訳をカカッと黒板に書き並べた。
「少々、偏り過ぎていると思うのですが。これを全て了承したとして学園祭は成立するのでしょうか?」
生活・厚生委員長のエルフ、ブラウニーバンナーゴールが透き通る声で促す。
「売り上げという明確な数字を求めて各々向上心を持って臨む。分かり易くていいんじゃないか?まぁ客は取り合いになるだろうけど」
学園祭実行委員長のノーム、ウアルドマインの求める文化祭の目的が金銭的数字であるのはほぼ間違いない。
「いやいや。学生の領分で余り金金金とあくせくするのはどうかと思いますニャ。それに同じ出し物だと競争が過熱して無用に経費が嵩むかもニャ」
財形管理委員長の猫人、大判小判(オバンコハン)が学生の本分にそぐわないのではと異を唱えた。
「学園側としては各クラスに配布する経費を抑えて後に発生するであろう案件に回す方向なので…」
財形管理副委員長のゴブリン、ソロ=ハン女史が去年学園祭にて発生した後始末に要した金額を提示する。
「飲食店が増えると衛生、サービス面や客の応対上からくる問題への巡回や取り締まりの強化も当然、お化け屋敷などは騒動なども起き易いでしょう。
風紀委員としては勿論全面的に学園祭の安全維持に努める所存ですが」
風紀委員長の人間、滑川久慈は表情筋を微動だにせず淡々と風紀委員としての活動見通しを述べる。

「同業種が増えるとサービス合戦やダンピング競争になりやすいニャ」
「前年もいかがわしいサービスを行った喫茶店もありましたね。数件摘発がありました」
「お化け屋敷は種族ごとに感じる恐怖感の調査などにも役立つように思えるのだけど…数が多ければいいというものでもないか」
「以前、お化け屋敷と称していかがわしいサービスを行っていた事例もありますね」
「はい。異種族が同一同シチュエーションに会することで発生する心理変化は興味があります、はい」
「これまでの例も考慮して適切な数で絞るのが妥当と思うのだが、どうだろうか?」
生徒会長の鬼の一声で場は静まり一考。 全員頷いた後に手が挙がる。
「より質の高い学園祭を目指すということで、条件を付けて厳選するのはどうだろう」
「喫茶店や屋台であればどのような種族に対しても満足を得られる品を出すのが望ましいですわね」
「あくまで学生の出し物だから一品あたり最高500円までにするのがいいと思うニャ」
「制限があれば工夫もするでしょうし」
「できればエルフは給仕など表に出てサービスする役には就かせないでもらえれば風紀委員としては助かるのですが」
「そんなエルフが皆不純行為を行うような言い方はどうでしょうか」
「では行いませんか?」
「学園の全エルフに徹底させます」
「ではここらで意見をまとめましょう」
滑川の冷たい語気がブラウニーを押すのを察したのか、九鬼が場を切りまとめる。
「後日、飲食店とお化け屋敷を出店するクラスに対して審査を行うということで、各クラスに通達しておきます。ではこれにて生徒会学園祭準備会議終了」

会議室から続々と委員が出て行く。そんな中で九鬼は滑川を呼び止める。
「滑川。君をもう少し柔らかい考えや態度で他種族と接してみないか?」
「それはどういう意味でしょうか?当然のことを発言したまでですが…と言いたいところですが確かに私の思慮が足りない面もありました。
後で厚生委員長に謝っておきます。 それでは私は今後の風紀委員の動きを取り決めますのでこれで失礼します」
誠実を絵に描いたような返しであったが、当の滑川は一切の機微を見せなかった。
足音にさえも冷たい空気を漂わせるのを感じた九鬼は溜め息と共に肩を竦める。
「同じ世界に住むようになっても、種族の違いは早々埋まるものではないか…」


十津那学園生徒会の面々を想像して短いのを一本

  • 文化祭の華とは言え喫茶店希望多すぎ問題笑った。滑川の冷たい雰囲気はスレに出てくるネタを体現している -- (名無しさん) 2015-10-13 23:31:21
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

j
+ タグ編集
  • タグ:
  • j
最終更新:2015年10月12日 00:19