異世界の11月に相当する死月、
スラヴィアではヴェネチアの仮面祭を彷彿とさえる祭が行われる。
カチュラ(素顔を隠す)の祭は死月の期間、スラヴィア各地で夕暮れから夜更け、最大で夜明け近くまで行われる祭であり、篝火を灯した薄明かりの中、村や町の広場では様々な意匠を凝らした仮面や服装でヴァリオーサ(誰でもない者)と呼ばれる姿に扮した人々が歌い踊る。
この祭の原型はスラヴィア建国以前のスラフ時代にはすでにあったと言われるが、スラフ時代のカチュラは昼間に行われる祭であり、夜の祭となったのはスラヴィア建国以後である。
カチュラの祭では領民も貴族も関係ない、祭に参加する皆が仮面と衣装で素性を隠しただのヴァリオーサ(誰でもない者)となって肩を寄せ合い歌い踊る。
カチュラの祭は死月の間にスラヴィア各地で行われるが、もっとも賑やかかつ華やかなのは11月最後にスラヴィアの首都カビセラ・ポノミレスで行われるカチュラの大祭だろう。
カチュラの大祭の為に首都には無数の灯火台が設けられ、その灯火台一つ一つが精緻な芸術品のような美しさを誇り、その美しさに引き寄せられた火精や光精によって首都は美しくも妖しい光と影によって彩られる。
宵闇の中、揺らめく灯火のもとで、歌おう、踊ろう。
薄明かりの中、仮面と衣服で我を隠し、歌と踊りで我を忘れ、やがて誰でもない者となって誰でもない者達と共に今を楽しもう。
今は瞬く間に過ぎ去り過去となるが、将来に思いをはせるのはまだ早い。
今は歌おう、今は踊ろう、今この時を祝おう、誰でもない者にとっては今こそが全て、誰でもない者達にとって今宵こそが全て。
― カチュラの祭で歌われる定番曲 作者不詳 ―
- 仮面かぶって正体隠せることもあって祭りの観光目的以外の来訪者もいそう。刺客とか -- (名無しさん) 2015-12-15 10:57:05
- 無礼講お祭面白いかも。スラヴィアって領主と領民が近いイメージある -- (名無しさん) 2015-12-20 16:43:02
- 誰でもないのでハメを外しても大丈夫!と言いつつ領民はそれなりに節度を持ってそうだけど領主はどうだろうか? -- (名無しさん) 2015-12-27 17:02:54
最終更新:2015年12月15日 10:56