アットウィキロゴ

【旅系掌編】20110606-s.oPxmjU

「旅路」

 雲ひとつない、抜けるような青空の下、広がる草原を自転車でのんびり走っていると、
突然、辺りが真っ暗になった。
 見上げると、巨大な竜が翼を広げ、低く滑空していた。
 羽ばたきもせず、あっという間に僕の頭上を飛び去ってゆく。
 彼が通り抜けた後を追って、風が吹き抜けた。
 日差しがまた僕に注ぎ、草原がさざめく。
 日が落ちるまでには、どこかの村に辿り着けるといいんだけど。
 心許なくなってきている食料と水を補給しなければ。
 草原は気持ちいいけれど、草の上を自転車で走るのはちょっとつらい。
 僕も彼のように飛べればいいのになあ。


ドワーフのおっちゃん」

 とあるドワーフの村で、職人らしきおっちゃんたちに声をかけられた。
 「その絡繰りをみせてくれんか」というので、自転車をみせてあげた。
 おっちゃん曰く、
 「ほうほうなるほど。こいつはよくできとるな」
 「おまえさんたちの世界はもっと複雑なもんもあるそうだな」
 「なるほど身体が弱くなる訳だて。便利にすぎる道具は身を滅ぼすぞ」
 ということだった。うほっほっほって笑ってたよ。


ゲートの神様」

 僕がゲートをくぐったとき、面接…面接でいいか、面接をしてくれたのは
 言葉の神様だった。
 「おぬしは旅人の相じゃな。あらゆるものと言葉を交わす力を貸しておこう」
 白いヒゲを長く蓄えた、いかにもおじいちゃんという感じの神様は、
 僕を見るなりそう言った。

 「あの、もっと僕について聞いたりはしなくてもいいんですか?」
 と僕が聞くと、

 「これでも神じゃからの。見ればわかることを聞いたりはせんよ。」
 って言われた。

 「我らが世界で新たな見聞を得て、汝の世界に広めるがよい!」
 神様がそう宣言すると、僕はもうゲートの向こう側にいた。

 目の前に広がるのはバザールで、僕は広場に自転車とともに立っていた。

  • 途中からスレ参加してたので最初の方のSSも読んでみました。 静かな空気が独特だけど気持ち良い。 上のコメントと同じく題名の意味が気になる -- (名無しさん) 2012-04-21 02:41:19
  • 6/6にID:s.oPxmjUが投下したよ、っていう意味だったと思う -- (名無しさん) 2012-04-21 21:59:37
  • 灯台下暗しな真実吹いた -- (としあき) 2012-04-21 23:30:59
  • 新規には最初の方のSSがお勧めということなので読んでみました。字幕とスライド映像だけの無声無音映画のような温かみのある懐かしさを感じました。 -- (名無しさん) 2012-05-05 19:07:07
  • 旅人が見たのは本物の竜だったのか… -- (名無しさん) 2012-06-02 23:04:42
  • 静かな雰囲気の中ですれ違う異世界の風景が心地良いです -- (ROM) 2013-02-11 18:46:05
  • 旅路は一枚の絵のように感じた。青い空と白い雲、自転車の色は赤 -- (名無しさん) 2013-03-09 19:17:16
  • 精霊、異世界の生物、文化文明の違い、神…短い中にも異世界の土台がしっかり表現されている。ドラゴンを追って風精霊が飛んでいくような表現が素晴らしい -- (名無しさん) 2016-08-17 15:32:56
  • 異世界への旅、異種族との交流は記念すべき一作目から根っこができているのはやはり感慨深いものがありますよね -- (名無しさん) 2020-04-30 03:20:40
  • すっと自然に想像できるわかる。OPみたいなSS -- (名無しさん) 2020-05-01 01:12:58
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る


タグ:

ss
+ タグ編集
  • タグ:
  • ss
最終更新:2013年08月06日 23:19