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【夜明けまで】

強固な砦を攻略するにはどうすれば良いか?武力?それは当然だが、東西共に天井知らずに求めるために兵は疲弊していく。
その様な状況で戦いは『武』から『知』へと移り変わっていくのだった。
イストモスの地の中央に位置するラタ砦は星神のもたらす遺物と合わせて覇権の象徴とされていた。
東西の間で幾度となく占有権を行き交った砦、そして戦い。
『抜け道』からの急襲による鮮やかな占拠、『空城の計』からの大転換反攻での大勝利。
一連の勝利の立役者は一騎当千の猛者ではなく剣技弓技もおぼつかないが頭脳は明晰であった一介の槍持ち狗人従者と小兵ケンタウロス
力押しだけが戦闘ではないのだと鮮烈に周知されたのである。
現在、埋められた抜け道は再び掘り開通され観光通路『黒鼻の細道』となり、空城に意気揚々と入った西方騎士団の目を釘付けにした囮の食糧庫『麦の山』は大休憩所になっている。

そんなイストモス戦闘の転換期の中で人知れず繰り広げられた影の戦いがあった。
負傷者は一人も出なかったのだが、結果砦に侵攻し占有権を争っていた東西の戦団は一夜にして双方の拠点へと退却したという。
その内容はと言うと、戦闘中の東西から放たれた諜報員による情報収集は戦闘の落ち着き始めた夕刻から激しさを増し、夜半にはそれぞれが集めた情報の断片が砦のあちこちに隠し置かれた。
相手の泣き所、自軍の窮状、攻守のタイミング、後方からの伝達など調べるを第一とし伝えるを第二としたために後続の諜報員が発見できるであろう場所場所にである。
狙い通りに自軍からの後続諜報員達は先兵が隠した情報を入手していくのだが、両軍余りにも多量に隠蔽したために自軍だけではなく敵軍の情報まで入手してしまったのである。
複雑に分解された情報は相手方の情報が加わることにより変異し、予定されていた効果から大きく離れ両軍の指揮系統の上層に多大な危機感を起こし夜明けには双方撤退、砦は空になったのであった。
どのような情報に変異してしまったのかは記録には残っていないが、当時の失敗を繰り返さないために町や森などを舞台とし様々な情報を隠す。
そして、その中から正確に必要な情報のみを入手し本陣まで帰投する早さを競う諜報訓練が確立されたのである。
訓練の発端となったラタ砦、それを占拠した軍は挙って砦でその訓練を実施し情報戦力を鍛えたのである。

そして来る大ゲート祭の最中に東西イストモスだけでなく観光で訪れた中からの有志も参加しての一大競技として実施される運びとなった。
競技の名は『夜明けまで』、日中と夜の二部開催となる予定である。
相手を負傷させるのは禁止であるが攻撃自体は許可されており、相手が入手した情報を奪うのも良し、気付かぬ間に情報を取り換えるも良し。
見事勝利した側は観覧される東西の王からの賛辞、そして最大の成果を上げた者にはかつて聖騎士ラタがその腕に持ったという『皆護の盾』が贈られるという。
今では星神の力が失せた遺物であるが、その古物的価値は方々に大きな魅力であり、その報せが発布されるや名うての諜報員や工作員、影士忍者などに依頼が来たという。
最大の栄光は唯一人の手に… 暫し待て!

  • 味方同士でもしっかり協力しないと断片ばかりでゴールできなさそうよな -- (名無しさん) 2018-05-29 20:03:55
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最終更新:2018年05月25日 23:03