【イストアーツ】

イストモスには大きく分けて三つの勢力があった。と言っても覇権を争っていたのは東西陣営であり、獣人達はその戦火の中で確固とした独立を守るために戦った。
平原においては四脚という他の種にはない特徴により凄まじい速度を出すケンタウロスが無双を発揮するため、獣人達は拠点を走るに難い森や山に作ったのである。
しかしそんな獣人達へも恭順の圧力は迫ってくるのであった。
生存圏に迫るケンタウロスの戦力を退けなければやがては飲み込まれてしまうのは明白。遂に獣人はケンタウロスとの戦いを決断するのであった。
戦列、陣形、武器…獣人は他国や他種族の力も技も貪欲に取り込み練り上げていった。
そのほとんどは中~遠距離から接近せずに戦うものであったが、東西は徐々にそれらに対して対策を生み出していく。
そして遂に獣人はケンタウロスと接近戦闘を余儀なくされるのだった。
体格も能力も様々な獣人達はそれぞれが格闘術、アーツ、と呼ばれる戦闘技術体系を生み出した。
それらは多くの獣人勢力の術となるべく単純化、効率化され一つの結論へと辿り着く。
 『ケンタウロスを転倒させる』
ケンタウロスの強力な武器である脚力を封じると共に、その体躯のため起き上がるに手間を要する大きな隙を作りそこを仕留める。
これを極めし者は多対一であっても並みのケンタウロスであれば確実に倒すほどの強さと恐れられた。
これを倒すに研鑽したのは西方イストモス、そしてその術の発展に協力することで対策を練ったのが東方イストモスであった。
東はアーツの修練にケンタウロス自ら協力する中でそれを打ち破る術を模索したのだった。
獣人側も戦うべき相手が想定ではなく実際に練習相手になるということでデメリットを承知でメリットに賭けたという。
やがてイストモスの戦乱は落ち着くが、獣人と東方イストモスは先人の血と汗と努力の結晶を後世へ活かすためにアーツを競技化したのである。
 『相手の膝から上を地に着ければ勝ち』
単純明快なルールながらも一対一、多対多、大将を倒せば勝利など多くのアレンジが加わることで多様性を持ち、より競技性を増しアンチオストモスアーツ改めイストアーツとして広まった。

そして今年の大ゲート祭、ラタで催される大競技会にて多種多様な参加者を募り猛者を決定しようとなったのである。

名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

l
+ タグ編集
  • タグ:
  • l
最終更新:2018年05月29日 19:43