1991年1月16日。新年を迎えた気分も落ち着いた頃にそれは出現した。
コンゴ自然公園の開けた草原の只中に突如出現した空、天まで伸びる光の柱。
公園内のどこからでも見えた柱はそこにいる全ての存在の注目を集めた後に無数の光塵となって消える。
そして柱が伸び立っていた場所にはぼんやりと光るやんわり星型のもやが残った。
「近くの木と対比して…大きさは凡そ5か4m四方、星型の光。発光源は何だ?」
夕刻の草原。遠目から双眼鏡で様子を伺う監視員二人は意を決しジープを発進させる。
光の柱が出現してから通信がノイズで乱されているため応援も求められず、自身で現状を把握するしかなかったのである。
光を前にして10m、降車し慎重に近付く。熱は感じないがどこか温かい光。
二人は話合った末に一人が光の中へ入ることになった。
東西
イストモスの中間地、緩やかな丘陵の上に立つラタ城塞都市。その名の由来はかつての星騎士の名。
かつては東西の覇権争いの中で何度も主が変わった激戦地であり数多くの逸話を残した。
休戦協定締結からは星境界の仲立ちもあり東西交易の中継地、イストモスの星巡りでも多くの巡礼者が集まる星地となった。
だがしかし、街が広がる中でも東西による様々な“違い”は常に衝突の可能性を残すところとなっている。
東西分割管理となっている城塞でも空気が張り詰めているのは当然であり、そこに突如光の柱が発生すれば騒動になるのは必然である。
砦であった頃に中心にて建てられた丘陵を全周囲見渡せる見張り塔、最上階の大鐘を突き抜け天空まで伸びる光の柱。
久方ぶりに東西の間に起こった争乱の種は、星教会が周囲を立ち入り禁止にする前に東西からの駐留団の中でも血気盛んな者達を焚き付けて我先にと飛び込んでしまったのだ。
折しもイストモスから地球へと渡った最初の一団はコンゴの地で野営をしているところを後に発見されたという。
光の柱が発生した夜、一筋の流れ星がラタへと落ちた。
星教会はこれ正に星神からの御使いと察し早急に対応するのだが、外殻の町へと落ちた星の光は何やら慌てふためくようにそそくさと動き出し中央の見張り塔へと向かう。
塔へと到着した光は東西と教会の見守る中で宙に浮き、その姿を
ケンタウロスの女性へと変貌させていく。
『私は星神様よりの御使い、星の巫女。この光の柱は別異の世界への扉です。神々が取り決めた世界と世界の交流のために、皆々様方は理解と友好を持って接するようにお願いします』
星の巫女の何処までも通る透明感と芯のある声はラタ全ての人々へ届き、驚愕の真実を星の巫女という説得力で認識させたのであった。
『本当は光の柱の立つ前にお伝えするつもりが色々と手間取り遅れたこと、すみませんでした。それと、いつも私の像を綺麗にして下さってありがとう御座います』
星の巫女は深々と頭を下げて光の砂塵を蹄のひと鳴らしで巻き上げ夜の空へと駆け上って行ったのであった。
その後、無事に大
ゲートを通過してきた監視員は初めての異世界に戸惑いながらも翻訳加護と星の巫女の言により友好的に接してきたケンタウロスと狗人との交流で得た様々な情報を地球へと伝えたのである。
特に厳重な警備も敷かれずとも平穏を保っているコンゴゲートは国連の維持管理になっており、立地と移動手段の便から地球からの往来は少ないもののイストモスからの地球体験などの来訪者は割とあるという。
国連も自然公園内での活動を認め、火の始末と大規模な狩りの禁止を徹底させている。
最終更新:2018年05月29日 23:57