【チョコを作ろう教室】

ありとあらゆる女子にとって重要で大切な一大イベントを前にした2月13日。
十津那学園では地球文化を楽しんでもらおうと学園側が家庭科教室を開放し調理指導も付けてバレンタインチョコ教室が催される。
年齢や学部の制限なしの放課後イベントであるためか集まる人も様々である。が、やはり主な参加者は学生。
「はいはい皆さーん、材料は沢山用意してありますので自由に使って下さいね。 火加減には重々注意して下さいね。焦がしてはダメですよー」
「何か分からないことがあれば挙手、もしくは呼び鈴を鳴らして下さい」
今年の指導担当は蛸人の夕子先生と黒鬼人のホヅマ先生である。 両名ともエプロン着用で準備万端。
黄色い歓声飛び交う家庭科教室はすぐに甘い甘い空気が立ち込める。
「ジュリエさんがいらっしゃるなんてちょっと驚きました。御自宅などでコック方とお作りなるものと思ってました」
「ふふふ、分かってないですわイスガさん。学園の女王たる私が皆と同じ食材、同じ場で調理するのは何もおかしいことではありませんことよ。
その上で至高のチョコを作りバレンタインにて最後まで勝ち抜いた志に贈るのです。嗚呼、これも女王である私の役目ですわ! さぁ婆や、煮立せたチョコをかき混ぜますわよ」
「はい御嬢様、どうぞおたまでございます」
凛としたケルピーと優雅なエルフが並び手鍋を揺らす横から老ホビットのメイドが恭しくおたまを差し出す。

トントントントン トントントントン
俎板の上のチョコを高速かつ一定のリズムで刻み叩くのは蟷螂人の小指から延びる殻刃。
「トゥーロ先輩すごいっス!何で刃でまな板が切れないんですかっ?!」
「刃先は全て寝かせているので切れることはないです。包丁を使うよりもやり易いので。 それよりも永遠野、コンロに火を点けないのです?」
「うーんと、チョコを効率よく味を損なわずに溶かせる温度を計算しているんス」
鍋を凝視するドワーフの表情が一段と険しくなる。
「ふむ。殻刃に生え並ぶ小刃列を筋肉で動かしているのか。 君はとても興味深い成長を重ねていくね」
ドワーフの背後でにゅっと現れた影は触覚を揺らす蟲人。
「戦闘型であろう君がどんどん戦闘向きでない身体に変化していくのが気になってはいたが…中々どうして今はとてもバランスが取れている。さてはてその原動力は何なのか…教授願いたいものだ」
「あっ!不思議先輩の36さんっス!どんなチョコを作るんですかっ?」
「ふふ、私は専ら食べる方で参加だ。君達もちょこっと作り損ねたチョコがあれば頂かせてもらうよ」
「ちょっと今集中してますので話しかけないで下さい。万遍なく熱を行き渡らせるのが大切なのです」
「成程、それが“愛”というものなのかな?」

様々な思い想いが交錯する家庭科教室も終了である下校時刻が近づくにつれ熱気に包まれる。
果たしてどの様なチョコが出来上がるのか?そこには味を越えた魅力が詰まっているのは間違いない。

ちょっと遅れてバレンタインイベント

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最終更新:2019年02月17日 23:46