『アシャーアシャー』
板張りの屋根上に作られている餌場で
告時鳥が空目掛けて鳴く。
遠くの水平線より陽が昇った合図である。
「ふぁああぁ~」
先日買い替えた豆穀を詰め込んだ枕の具合が良くて目覚めも爽やか。
次の給料で布団を買い替えるかなど考えながら炭籠より細いのを三本取り出す。
「汁を温めるなら、これくらいで良いだろう」
一部屋が連なる長屋、部屋の中央に作られている簡素な囲炉裏に炭を突き立てると灰砂の中からもぞもぞと火土竜が顔を出す。
『モキュキュッ』
もぞもぞと炭をかじり出すと薪木に火土竜の火が燃え移るのを確認して外へ。
広場を長屋が三方囲む。共有井戸と洗い場には同じく顔を洗いに住人がいるので挨拶を交わす。
『よっ、おはよーさん。今週はちょいと水脈が細ってるから節約してなっ』
滴顔の井戸憑き水精霊がひょいと手を振る。
水精霊の言うことなら間違いない。桶に少し水を張り手拭いを濡らして顔を拭く。
共に
ミズハミシマに出向している食糧調査担当の同僚はもう働きに出ている。
会社と提携している仲買に勤めているため朝市の買い出しに行っている。
自分はと言うと住居研究と生活実態の実地体験であり、町の大工屋で働いている。
「今日は直接現場に集合だったっけかな」
飯屋の持ち帰り汁に冷え飯を放り込む。朝はこれが一番手っ取り早くてお世話になっている。
「んじゃまぁ行くか。ほら、帰ってくるまでの分だぞ」
まだ炭を食んでいる隣に一際固い豆炭を転がす。
着替えの下着と手拭いを鞄に入れて、水筒に井戸水を汲み入れて出発。
「昨日から引き続きだから…お、来た来た」
どすどすどす。軽快な調子に重い地響きで鱗獣車がやって来る。
目的地近くの町の名が入った看板が車にかかっているのを確認する。
駅札に近づくと鱗獣がスピードを落とす。その間に客車に飛び乗るのが無料巡回車のスタイル。降車はいつでも可能だが、走っている際の降車は余りお勧めしない。
「今日の弁当屋台はどんなラインナップかなぁ」
楽しみである昼飯に思いを馳せる。
さぁ今日も真面目に働きますかっと。
最終更新:2019年09月03日 02:54