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【ウルサ喧嘩祭り!】

「おいこら手前ぇ!そんなザマだと隊長降ろすぞ!」
「まぁまぁ落ち着いて下さいオルチさん。ウルサ様相手ではしょうがないんじゃないんですか?」
「そういは言うがな嬢ちゃん、わざわざこっちに合わせて手加減して下さってるお優しい戦神様のために一回でも地べたに這いつくばらせでもしねぇと面子が立たねぇんだよ?!」
「まぁまぁ落ち着いて下さいオルチさん。でも正直なところウルサ様はどれくらい手加減してくれてるんでしょうか?アグール様」
「そうですね。ウルサもここ数年はずっと試行錯誤していましたからね。実際今年はまだリングも破壊されていないところを見る限り相手毎にそれなりに“力”を合わせられているんじゃないでしょうか」
「それは凄いですね。神様ってそんな器用なこともできちゃうんですね」
「他の神々のことは良く分かりませんけど、あの人はこと“戦いの楽しみ”を求めることに関してはどこまでも力を入れますからね」
「おい!もうヘバってんじゃねぇ!立って戦え突撃一番艦隊長!」
リングサイドの解説席から風精霊も声を配るのを遠慮するほどの怒号が飛ぶが、リング上で巨漢のシャチ男はうつ伏したままぴくぴくと痙攣するだけであった。
「そこそこ楽しめたが…まだまだ満足には程遠いぞ! さぁ、我こそはと思う者はリングに上がって来い!」

ドニー・ドニーの年末年越しの一大イベントとしてやっと定着した感のある“ウルサ喧嘩祭り”もどんどんボルテージが上昇していく。
何せ去年までは年越しを待たずにウルサの繰り出す攻撃に舞台がもたずに破壊されて終わっていたのも不完全燃焼(主にウルサが)になっていたであろうだけに、今年の盛り上がりは凄いことになっている。
ドニーの代表格である各海賊団の団長こそ出場規制はあるものの、腕に覚えのある海の者達や噂を聞いてやってきた猛者達が次々とウルサへと挑戦し、倒されていく。
勝負のルールは至極単純であり、ウルサに対して挑戦者は一人、武器使用は許可されているがそれら含めて挑戦者に合わせてウルサが力にハンデを付ける。
勝負の流れで力を増していきながら闘いを楽しむウルサを一度でもダウンさせれば挑戦者の勝利であるが、現状挑戦者が気絶するか降参するかで決している。
武器を使えば何とかなるのでは?と思うのは当然であるが、筆頭海賊団でドニー警備隊隊長を務めるバルバンクールの双剣は剣技を繰り出すその途中でウルサの肉体に弾かれ折れてしまった。
怪獣島の暴獣を叩き伏せた黒鬼頭鎚の一撃も、その呪力すら意に介さず受け留め放り投げた。
結論、武器を使わずに体一つで挑むのが渡り合うのに最適と判断した挑戦者達は続々とリングに上がった。
そして今に至る。

「もう我慢ならん!俺がやる!」
「まぁまぁ落ち着いて下さいオルチさん。隊長さん方が全部のされたお気持ちは察しますけど決まり事を団長さん自ら破るのはいけないことだと思いますよ」
「ぐっ、ぐぬぬぬぬぬぅっっ!!」
ウルサがそれなりに楽しんでいるところを見れば、挑戦者の皆も実力ありとみてよろしいかと。闘うに値しなければ最初の一合でリング外に弾き飛ばされていますから」
集まった猛者の中でも主だった者が一通り挑戦し終わったところで少し中休みの空気が出始めた頃に一人の挑戦者がリングに飛び入る。
「ほう、次は人間か」
「俺の名は武力(たけのりき)!戦の神に挑戦できると聞いてやって来た!」
既に上半身は裸でリングトランクス着用の臨戦態勢で現れた格闘家風体の人間男性。
並みいる巨漢や筋骨隆々、山の様な異種族がいる中では些か見劣りするのは仕方がなく、ウルサも若干複雑な表情である。
しかし、何かを感じたのか少し笑みを浮かべ構えを取り手招きする。
「勝算無しで挑む様な馬鹿には見えん。よかろう、何を企んでいるか分からんがやってみろ!」
 カァァーーーンッッ
高らかにゴングが鳴り響くと同時にウルサへ全力で駆けるながら拳を構える武力。
ウルサはそれを見て同じく駆け出し、拳に力を込めて真っ直進してくる武力の顔面に向けて風圧す剛腕を振り抜く。
「今までの勝負を見て、初っ端は全力の一発が来るのは読んだッ!」
体が交錯するが拳撃を打ち出したのはウルサだけで、武力は勢いそのまま低く身を翻し剛腕へ飛びつくとそのまま回転する。
ウルサ自身の勢いを利用した回転に思わずたたらを踏むが、すぐさまリングを揺らし両足を踏ん張ると体勢を直した。が、眼前に武力はおらず背後にその気配を感じ取る。
「行くぜッ!ハァッ!!」
「はっ!やってみろ!」
前にスラヴァンオーガのプロレスラーの繰り出したジャーマンスープレックスによりあわやマットに肩をつきかけたのを思い出したウルサは巨岩が座すが如く全身に力を込めた。
しかし、次に繰り出された一撃はウルサの予想のどれにも当てはまらないものであった。
「ぐわっ!?」
ウルサの膝裏に武力の膝曲げが刺さると全身の硬直が一瞬で解けてしまう。
瞬間を逃さず、緩んだ膝裏にすぐさま超低空ドロップキックを打ち付けるすぐさま転がり、思わず体幹を崩したウルサの前に位置すると足裏から全身のバネに力を込め爆発させタックルを仰け反る顎へと見舞った。
上半身に受けた衝撃を地に散らすことも満足に出来ないウルサはそのまま背よりマットに落ちる、かと思われた。
「面白いっ!」
双眸を光らせたウルサはマットへ後数サンチのところで全身を硬直させ脚筋だけで体勢を維持して見せる。
思わず力のギアを一段上げたウルサは思いもしなかった負け寸前の状況に歓喜にし、そのまま立ち上がると再度駆け出そうとする武力に大気を揺らすダッシュで寄ったそのままの勢いで頬に肘を打った。
流石にこの一撃に人間が耐えれるはずもなく、勢いよく宙に飛ばされた武力は港の先の海まで到達し、墜ちた。
「また来年挑戦して来い!」
ウルサが勝ち名乗りをあげたところで大歓声が沸き上がる。
それはウルサの強さを讃えるもの、男の健闘を讃えるものでもあったが、新たな年を迎えたことがより大きかっただろう。
「素晴らしい勝負でした!やはりウルサ様は強かったということですね!そして新年あけました!おめでとうございます!」
「意識の外からの攻撃、と言うは容易いですがあの百戦錬磨も百戦錬磨の裏をかくというのは良かったと思います。そして新年おめでとうございます」
「戦いは力押しだけじゃねぇってことをうちのモンも習うべきだな!お前ら、新年おめでとう!」
新年迎えた勢いで、ウルサへの挑戦も一休み。ドニー・ドニーの港町は盛大に沸き立ち誰かれ構わず酒だ食い物だと配られ堪能した。

アグール!そろそろ頃合いだろう。帰るぞ」
「はい。楽しめましたか、ウルサ
「ははっ!今年の末も来るぞと思うくらいにはな!」
リングから天空へ駆け翔がっていく戦神と鬼神を見送るドニー・ドニーは、これから新年の祭りに突入するのであった。

新年あけましておめでとうございます。
ドニーの年末イベントを想像して一本

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最終更新:2020年01月03日 21:48