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【30No.S】

地球と異世界を繋ぐ大ゲートが発生してから二十余年、国ごとの差はあれど地球に暮らし働く異種族というのもそう珍しいものでもなくなってきた。
その中でも早くから交流に取り組んできた日本では、交流特区ポートアイランドに多くの異種族向け職業職場が設けられ実践されている。
人間とは違う異種族の能力が認知・理解されるようになり、民間のみならず公的な機関でも異種族の活動が広まっている。

 神戸市警・ポートアイランド署
年々世界で発生件数が増加しているサイバー犯罪において、日本はその対策が遅れていると評されていることから事態を変える一手を模索していた。
法令などの都合により海外に比べて大胆な治安行動が取れないのと、サイバー方面への理解不足から抜本的な解決を一先ず置いて現場の人材を変えることを進めることとなった。
そういった経緯から署内で作られたのが蟲人を主軸に構成された【30No.S(サーティーンナンバーズ)】、通称【サンジュウ】である。
異種族の中でも神経・脳・身体構造などで特異な蟲人は、こと電子機器方面に強い種が多く人間とは比べ物にならない速度で解析分析などの作業が可能なのである。
マセ・バズークとの交渉により地球研修として派遣された三人の蟲人と古株警部が今日も課室からネットの世界を捜査する。

「皆、そろそろ休憩にしないかね?30(スリーオウ)君、今日全く休んでいないじゃないか?」
茶黒のスーツに白髪頭の好々爺が湯飲みに茶を注ぎながら問いかける。 が、三人の婦警は黙々とキーボード、タッチパネルを操作し続けている。
「…」
蟻人、白色の甲殻。電子機能特化型試作体。静と全く動じず画面から視点を逸らさず作業を止めようとしない。
33(ミンミ)君、朝からどんどん手が早くなってないかい?あまり根詰めると腱鞘炎になってしまうよ?休憩しないかい?」
「かちょう さぎょうこうりつ わるいです」
蟻人、青色の甲殻。電子汎用型第二世代。言語野に割くソースが少ないせいか、若干コミュニケーションがたどたどしいのは御愛嬌。
「うーん、働き者は良いんだけども流石にこれはやり過ぎでしょう。37(サナ)君、ここはまとめ役としてびしっと言ってくれないか?」
「お言葉ですが課長、私達の役割は事前に一つでも多くの犯罪の芽を摘むことです。まだ休憩は必要ありません」
蟻人、黒色の甲殻。電子技能種架橋型。明らかに不満げな表情を作り丁寧に断りながら全く指を止める気配を見せない。
「いやいや、三人ともいいかい?自分自身が分からないことが他人の目から分かることもあるんだよ?」
「自身の状態は自身が最も理解しているのではありませんか?それに私達は共感覚で逐一お互いの状態を把握しています。問題があればすぐに気付きます」
「え~?本当に~?ひょっとしたら疲れてるかも知れないよ~?年寄りの言うことは聞いた方が良いこともあるかも知れないよ~?」
「ありません。ないです」
「よし、じゃあこうしよう。一人づつ交替で休憩しようじゃないか。そうすれば作業を止めずに済む」
「課長、本当に ───
「おおっと!手が滑ったぞ?」
これでもかとわざとらしいアクションに前振りを付けて37のPC電源をOFFにしてしまう課長。
「ちょっ、ちょっと!何をするんですか?!」
「まぁまぁ、スイッチ切る前にバックアップは取ったんだろう?では37君から休憩しよう、食堂でも行こう行こう」
「バックアップは取りましたが…、何故私から…。詰めておきたいこともあるのですが」
「37君が一番疲れてる様に見えるからね。自分の仕事をしながらもずっと二人の様子も見ていたでしょ?」
椅子から立ち上がる時、一瞬立ち眩んだ37がはっとすると30と33が頷く。
「仕方ありませんね、十分くらいなら良いです」
「良々、じゃあ行こうか。37君の次は30君だからね。ちょっと眉間にシワが寄り過ぎてるよ」
「…」
「こうかく しわできない」
「はっはっは。そんな不思議な顔をしなくてもいいよ。私がそう見えるってだけだよ」
首を傾げて見合わせる白と青を部屋に残し、課長は黒の肩を押して食堂へ向かうのであった。
「しかし共感能力とは便利なものだね。“わいふぁい”とか言うのと同じかい?」
「いえ、どちらかと言うと“Bluetooth”ですね」

多種族起用に適材適所。異世界交流時代はまだまだ模索の歩みの途中であった。


異種族混ざり合う職場を想像して

  • 外骨格の異世界人によって構成される「甲殻」機動隊!あると思います -- (名無しさん) 2020-03-26 20:27:50
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最終更新:2020年03月25日 07:52