【産まれた二つの命】

ニシューネン市フタバ亭前に砂埃が舞い上がる。
ハクテンの助力で思いっきり加速して飛んできたワナヴァンのダイナミック着陸である。
「お待ちしてました!中へ!」
到着を察したのか、フタバ亭からシィが飛び出して来てワナヴァンよりふわりと降りたハクテンに寄り礼をする。
シィに導かれ寝室では陣痛で苦しんでいるナマラが産婆と補助に囲まれていた。
「さっきから急に苦しみ出したんです!」
「赤子が出てこようとしとるんじゃ!遂にきおったか!」
老狗人シスター長がいよいよかと周りに指示を飛ばすも、ナマラの表情からその痛み辛さは相当なものと判断した。
「どれ、ちょいと診せてもらおうかの」
にゅっと人の間よりナマラの側に立ったハクテンが手を腹へとかざすと、いくらかその痛みが和らいだよう。
「今しがた筋肉の動きを調整して産道を拡げてみたんじゃがの、そもそも鬼人の筋力であれば旦那のオーガの子であっても出産はそう難しくはないんじゃが」
「難しくはないなら何故こんなに苦しんでいる?赤子が腹の中で暴れている分けでもなさそうじゃが」
老シスター長に見た目子供の長老鬼が説明を続ける。
「ちょいと胎内を調べたんじゃが…こりゃ大変じゃ」
「えぇい!勿体ぶらずにはよ教えてくれんか?!何とかせんとそこの旦那が不安で弾けてしまうわ」
シスター長の指す先には小さくしゃがみ丸まった巨漢のシメイが泡を吹いている。
「双子じゃ!鬼人とオーガの双子じゃ!」
「なんと!」
「ええええっ?!」
「それは確かに産道が辛いことになる…」
場が突如として大わらわとなるが、重ねた歳の経験からかハクテンは冷静にナマラに耳元で言葉を送る。
「子を二人も成すとは見事じゃ、よう頑張ったの。今からワシが助力する、おぬしは呼吸を整え子を産み出すことだけに集中するのじゃ」
ハクテンの白鬼人としての鬼力により、血液筋力内臓と赤子を産み出すのに最適な状況に保つと、ここで立たないでかとナマラの側に寄って言葉を送るシメイ、シスター長とシィはじめ全員が慌ただしく作業を進める。
ハクテンの力によって産道を通る赤子の角は胎内に引っかかることなく通過していく。
いよいよとなると鉄血と呼ばれる鬼人の血と共に破水、素早く湯と布を整えナマラを支える。

新天地、ニシューネン市。
陽が地平に隠れ始める夕刻の空に大きな二つの産声が響き立つ。
窓から差し込む夕陽に照らされ二人の赤子を抱くナマラの姿は、誰もが心安らぐ光を感じるものであった。

スレでシメイとナマラの子は双子案あったのでオーガと鬼人の赤子に

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最終更新:2020年09月21日 00:41