「大ハーン!今年も贈られてきました!」
外に吹く寒風と共に慌ただしく陣幕に入って来たのは若き近衛騎団長。その手には文を添えた小箱を持っている。
「来たか…」
全身鎧のままで座して肘掛けに持たれつつも周囲をたじろかせる程の重圧を発するのは東
イストモスの長、スヴォーロフ。
ゆっくりと立ち上がり、何か意を決した様子で歩を進める。
「大
ゲートが開いてから、起こった時勢を掴み武力だけではない覇を拡げつつある東…。今日ここで西を完全に平らげて見せよう」
「東岸沿いの海馬港も盛況にて、都として確立するのも近いでしょう。そして、大ハーンはその富から世界数多の甘味を取り寄せ修練を重ねて参りました…」
スヴォーロフは幕の向こう側、星空を見上げながら感慨にふける。
「最初は得体の知れなさに手を触れるに留まり、次は口に入れるも体験したことのない甘味に卒倒。次いで噛み砕くも鼻血を噴いて屈した。遂には食べきることが出来る様になったものの十日も要した…だが今は違う!」
「大ハーン!」
「お前達を不安にさせてしまったな、許せ」
「大ハーン!!」
差し出された小箱を受け取ったスヴォーロフは兜の隙間から鋭い眼光をそのままに破り開くと思われたが、すっと丁寧に器用に包装を解いて封を開いた。
宝物箱に包み紙と箱を収め、いよいよ中身、チョコを摘まみ上げる。
「マリアンヌよ、今年は去年よりも素晴らしい物を贈り返してやるぞ!未だ土いじりに精を出す西とは違うと思い知らせてやろう!」
一口に全てを放り込み一気に食い平らげたスヴォーロフ。しかし、ワンテンポ遅れて噎せ返り膝を付く。
「大ハーンっ!?」
「あっ、甘くない…だと…!?」
薄れゆく意識の中で、遠のいて行くマリアンヌの笑顔を掴もうと足掻くも、味の不意打ちにより気絶するスヴォーロフであった。
「大ハーンっっ!!」
添えられた文
今年もバレンタインがやってまいりました。 両
イストモスの友好の証として私が作りましたチョコを贈らせてもらいます。
西方も緩やかではありますが他国、地球とのつながりを広げ人の営みも広がっています。
話は変わりますが、噂で貴方が甘いのを苦手としていると聞きましたので今年は趣向を変えてビター、苦味のあるものに仕上げましたのでお口に合うかお試し下さい。
ホワイトデーの返贈はチョコの感想だけでよろしいのでお気を使うことなく正直な言葉をお待ちしております。
チョコなんてなかったイェア!
- ホワイトデーにスヴォーロフが何を贈っているのか気になる -- (名無しさん) 2021-02-23 14:16:52
最終更新:2021年02月21日 20:08