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【真夜中の小道で】

僕は恐ろしい化け物に出会ってしまった!逃げないといけない!
しかし、先にどうやって逃げるかと逃げる先を決めておかないといけないことは昔の経験からわかっている。
 昔、学校帰りに犬に追いかけられて30キロ先の橋の欄干の上で警察に発見された時は両親から頭の上にダブルでゲンコツを頂いた。後で、鏡を見ると版権的にマズそうなコブが2つ頭に引っ付いていて、ねずみの国から怖い人が来て連れ去られるんじゃないかとビクビクしてた事を思いだして、しばし懐かしさに浸った…
…いや、今はそんな事をしてる暇はない。逃げないと行けないんだ!僕は走りだした。

ソレは逃げても逃げても追いかけてくる。そろそろ逃げる以外の事も考えないといけないな…と思って、では他の人に助けを求めればいいんじゃないかと思いついた。
素晴らしい!流石、みんなからどどめ色の脳細胞を持っていると賞賛されている僕だ。
こんな闇夜で周りに誰もいないのにどうやって助けを求めるんだよ?

かなり走った所で先に人が歩いて来るのに気がついた。僕はツいている。早速助けを求めよう!
その人はいきなり逃げてきた僕にビクリしていたが僕の話を聞いてくれた。カウボーイみたいな変な格好をしているが緊急事態だし割と可愛いのでこの際文句は言わない。
僕は恐ろしい化け物に出会って今、逃亡中であることを昔の経験も交えて懇切丁寧にカウボーイに伝えた。
「…えーと、つまり貴方は僕に救いを求めていると?」
そうです。話が早くて助かります。
「…それなりの代償を求めますけどいいですか?」
すみません。あげられそうなモノは何もありません。

僕は次に助けてくれそうな人を探して走りだす。後ろで呼び止める声が聞こえたけど支払いができないんだから仕方ない。世知辛い世の中だ。月賦でピザの窯を買った時もそうだった…

そのまま走り続けると、何かもこもこした銀河鉄道の夜のアニメに出てきそうな猫人間に出会った。僕が息せき切ってその猫人間の前に転がり、そのまま自分の窮状を伝える。懇切丁寧に!
「ああ、取り敢えず落ち着け!アンタが怖がる化物は俺が倒しといてやるからアンタは先に逃げな」
良い人だ猫人間!肩に妖精と変な毛玉生物と透けてるエジプトっぽい変な人が憑いてるけどとても良い人だ。人は見かけに寄らないなそういえば昔…と思い出していると「ぼーっとしてないでさっさと行け」という猫人間の声が聞こえてきたのでさっさと逃げることにする。

逃げる、逃げる、まだ逃げる。
だが、まだあの化け物は僕の後ろを付いて来る!猫人間さんはアレに食われてしまったのだろうか?
そういえば、おじいちゃんから猫の肉って泡ばっかり出て食えたもんじゃないって聞いたな…じゃあ、殺されちゃったんだろうか?

かなり走った所で、また前方から人が走ってくるのが見えた。
僕はなりふり構わず「助けてください!悪い奴に追われているんです!」と叫んだ。
すると、その黒いロングコートを着てカウボーイハットをかぶった男は
「あ、ごめ~ん!俺も今、悪い奴らに追われてるんだ!」
なんとご同輩だったのか!取り敢えず、こうなれば助けあいの精神で一緒に化け物と戦おうと思った時、彼の後ろに黒い津波が見えた。
「いやー!ちょっと獲物失敬したくらいなのにアイツら一族全部呼んで来たみたいでさー…はは!困っちゃうよな?」
彼の後ろの巨大トカゲの群れを見た瞬間、僕は彼の手を引いて元きた道を全力疾走した。

途中、見たことのある毛玉人間達に合った気がしたがそれどころでは無いので一気に走り抜けた。後ろの方で大きな声や悲鳴や争うような音が聞こえていたがそんな事を気にしている暇はないことは、向こうでのんびり屋さんと言われていた僕でも分かった。


走って走ってやっと最初に出会ったカウボーイ風の女性の所まで来ることができた。
僕は男の手を離すと訝しげに振り返った女性の手を握った。誰だってむさい男の手を握り続けていたら変なカッコでも女性の手を握りたくなるに決まってる。
が、至福の時は長くは続かなかった。詳しく言うと0.1秒も持たなかった。

なぜなら、くるりと天地が反転して僕はベシャリと地面に叩きつけられたからだ。
土の味を存分に味わってから僕は「すみません。少し調子に乗ったかもしれません」と正直に懺悔した。

「で、結局何があったんです?」
「あっはっっは!師匠!俺、またやっちまいました!」
男の股間でグシャリと音がしてその巨体を地面に沈める。
僕はその光景に追われていたことさえ忘れ、股間を押さえてガタガタとふるえる子羊になった。
「それで、貴方を追ってきていた化け物は、まだ貴方を追ってきているのですか?」
はい、今も僕を追っています。まるでしつこい油汚れみたいに…油汚れといえば前に僕のふるさとで…
「…貴方を追ってきていたモノはどこにいるのですか?」
僕はその問いかけにひょいとソイツの方向へ指を差した。
「なるほど…それではこういうのは如何でしょう?」
指の先を見たカウガールはそういってどこからか手品の様に長細いモノを取り出した。今、体から生えてきてなかったか?

「あー、酷い目に遭ったわ…」
猫人の少年が巨大トカゲを引きずりながら、焚き火に当たって休んでいる三人の異世界人の所にたどり着く。
「懐かしいお客さんですね。おみやげ付きなら大歓迎しますよ?」
ん、と言ってトカゲを放る少年、カウボーイ風の女性は手際よくそれを解体して焚き火の近くに並べて焼き始める。
「アンタ、女だったんだな。前は髪も短くしてたから分からなかったわ」
「女だと分かると面倒な事もありますからね…」
「じゃあ、今は?」
「Trouble is My Business」
何がおかしかったのかケラケラ笑い出す少年。
「アンタらしいよ。親分さんの方は?」
「そっちも変わりなく、今度新しく電信だったか報道だったかの事業を立ち上げるらしいので、僕も一度新天地に戻ろうかと思っています」
みんなでちびりちびりと焼けた肉を食べながら近況を話し合う。

「所で、あの妙な傘被って寝てる兄ちゃんは一体何を怖がってたんだ?方向からして、この焼き肉のことじゃないだろ?」
ああ、と言って女性は空に向かって指を差した。そこには妖しく紅く光る冷たい夜の女王が鎮座していた。
「……月?」
訝しがる少年、後ろの人は「ああ…」という表情をして、毛玉にじゃれつかれながらソレを説明しだした。少年と肩の妖精はふんふんとその話を聞いている。
「んー…つまりあの兄ちゃんは、何かよく分からんモノに好かれる体質なんだな?」
「そんな感じなんでしょうね…」
彼の方を見ると、今は大きな日傘(用途的に月傘かもしれない)で月光を遮って安心した様に眠っている。

「しかし、難儀な事になってる奴ばっかり集まってるな…」
「みんな貴方ほどではないですよ。猫の王様」
「そうかぁ…?あ、所でそこで半分ほど土に埋まってる異人の兄ちゃんは?格好がアンタに似てるけど…」
「知らない人です。埋めておいて問題有りません。そんな事より早く故郷に帰って彼女さんを安心させてあげて下さい」
「彼女じゃないって!!」
その大声で、寝ていた男が起きだして話に加わってくる。埋められた男も混ぜて欲しそうな視線をみんなに送っている。
旅人たちの楽しい夜話はまだまだ続きそうだ。

夜は永い、紅い月に見つめられながら焚き火に当たる旅人たちは、それぞれ明日のためにしばしの休息をとる。
難儀な運命を背負った彼らに、これからどんな困難があるのかは神々すらも分からないのだから…



蛇足、使わせて頂いたキャラの作者様に御礼を。GDも未来王シリーズも大好きです。
今回、嵐神さまと月神さまから書けという電波を頂きましたので書きました。


  • 短い間の中でのすれ違いと合流に腐れ縁という言葉が浮かびました。今回は逃亡者が巻き込んだ形ですがこのキャラ達はこの先でも何かと顔を合わしそうですね -- (名無しさん) 2013-09-16 17:39:38
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最終更新:2013年09月16日 17:29