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【珍しいキノコと美味しいキノコ】

クルスベルグからグーテンターク

ドイツ新聞Berliner Morgenpost クルスベルグ駐在記者 ヨハン・ゲーレン発

第6回 『珍しいキノコと美味しいキノコ』

皆さんこんにちは。
皆さんはキノコは好きですか?私は私の意志に関係なく食べざるを得ない生活を日々送っています。
以前にも少しお話したと思いますがノームは無類のキノコ好きです。
キノコ料理のレシピは無数に存在し、中には猛毒キノコを複雑な工程を通して食べられるように調理するなんてものも数多くあります。
そんな中でもノームが一生で一度は食べてみたいと口にする幻のキノコがあります。
その名はパラカルと言い、本当に希少なキノコです。
このキノコは特殊な条件が揃わないと発生せず、また常に同じ場所で採れるというわけではありません。
パラカルは昔からその貴重さから信じられないほどの金額で取引され、権力者の富と権威の象徴とされてきました。
今でもノームの由緒ある家柄の家紋にはこのパラカルを記号化したものが使われていたりするほどです。
このキノコは一説では運気を吸って育つとされ、このキノコを見つけた者は一生分の運を吸い取られてしまうとも言われています。

私の妻はリアリストなのでパラカルを食べてみたいなどと言うことはありませんが、結婚記念日など特別な日に必ず食べたいというキノコならあります。
それは妻の誕生日の時期がちょうど最盛期にあたるニニ茸と呼ばれる肉厚なキノコで、地球のエリンギによく似ていますが嵩の部分が赤く、香りがとても強くソテーにすると上品な甘味もあってとてもおいしいキノコです。
このニニ茸はパラカルほど希少ではありませんし、人工的に栽培することもできるキノコですが、栽培したものより野生に生えているもののほうが圧倒的に香りも味もよいのは言うまでもありません。
しかし、美味しい物というのは野生動物もよく知っているもので、毎年ニニ茸が採れる季節はキノコ採り名人と野生動物の過酷な競争がクルスベルグ各地で繰り広げられます。
ニニ茸は動物に食べられることで繁殖域を広げる性質があり、一晩で地中から発生すると朝日の光を合図に周囲にもっとも強い香りを発して野生動物を引き付けます
ニニ茸の収穫はこの明け方から早朝の前後がもっとも重要で、そのタイミングで収穫するニニ茸はもっとも香りと味が良いのです。
キノコ採り名人と自他ともに認める義理の母も、近くの森で野生のニニ茸を収穫することに成功したのは数えるほどしかないと話していますし、野生のニニ茸を野生動物より早く収穫するのはそれほど難しいことなのです。

自力での入手が難しい以上、妻の誕生日などには市場で買うほかないわけですが、天然物のニニ茸は市場でビックリするくらいの高値で売られていたりします。
さすがに完全に手が出せないほどの値段ではないのですが、特別な日の妻へのプレゼントとして割り切らない限り、なかなか購入の決断ができない金額です。
ちなみに栽培されたニニ茸はその10分の1の値段で横に積まれているので、ついつい「これでもバレないんじゃ・・・」と邪な思いに駆られることがありますが、天然物と栽培物では私でも味の違いがわかるほどなので私は覚悟を決めて天然物を購入します。

結婚して十数年になりますが、妻は常々「一生に一度でいいから天然物のニニ茸と最高級のチーズのフルコースをおなかいっぱい食べたい」と私と私の手渡す給料袋を見比べて言います。
ノームは常日頃工芸品や宝飾品に触れているためか自らを着飾るアクセサリーなどを欲しがるということがあまりないように思います。
しかし、その代わり彼らの欲求はキノコとチーズに向かっているらしく、その方面での要求はかなりシビアです。
これを読んでいる読者の皆様の中でノームと恋人になりたいという夢をお持ちの方はキノコ図鑑で知識を蓄え、彼らにおなかいっぱいキノコとチーズを食べさせられるだけの財力をもつことをお勧めします。
それではみなさんまた次回

Berliner Morgenpost ネット配信版 20011年7月30日号より


  • 想像するドワーフの食卓とキノコが合っていた。山脈や洞窟の国ならキノコも豊富なんだろうなと。レア茸ゲットの最大のライバルは山に生きる動物とは手ごわい -- (名無しさん) 2013-07-16 23:51:50
  • 運を吸い取るキノコを食べれば運もお腹に入ってくるのでは?とふと思う。幻よりも手の届く美味しい方がいいですね -- (名無しさん) 2014-03-30 18:28:53
  • 美味けりゃいいんだよ!美味けりゃ!と思いつつも廉価なものが出回れば出回るほど稀少なものの価値が上がる? -- (名無しさん) 2014-05-13 22:49:34
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最終更新:2014年04月02日 14:22