クルスベルグからグーテンターク
ドイツ新聞Berliner Morgenpost
クルスベルグ駐在記者 ヨハン・ゲーレン発
第7回 『私の家には○○があります』
皆さんこんにちは。
突然ですが貴方の家の応接間には何が飾られていますか?
多くの人は家族の写真だったり絵画だったりするでしょうし、一部の懐古趣味の人は中世の城のように実用できるわけではない剣と盾のイミテーションを飾っているかもしれませんね。
そう言う私の家は何かですか?私の家の応接間にも実は剣と盾が飾られています。
今でも充分に使用できる本物が。
なぜそんな物が極々ありふれた一般家庭にあるのか?それについてお話する前にクルスベルグの国防事情について少しお話しましょう。
クルスベルグの常設の軍隊というのは本当にごく僅かしかありません。
革命以前の帝国時代には強大な軍隊がありましたが現在はそのほとんどが解体され、国境警備などをするごく一部の正規軍だけが活動している状況です。
しかし、そんな少数では国を守ることができないのでは?という疑問は当然出てくるでしょうが、そこで登場するのが我が家の応接間に飾られている盾と剣です。
実際は壁の盾と剣に加えてロッカーの中にすぐに組み立てられる状態に分解されたクロスボウと矢筒があり、これがこの国の国防の答えとなります。
クルスベルグは地球のスイスのような有事の際は全ての国民が戦闘に参加する義務を負う国民皆兵の国です。
もちろん戦闘の最前線に立つのは正規軍と退役軍人や予備役などで、一般人は後方支援などが主な役割となりますが、成人を迎えた男女は一年に一度訓練に参加する義務があります。
私は厳密にはクルスベルグの国民ではありませんが、この地に暮らしている事と、妻と子供のため一家を預かる主としてこの訓練に欠かさず参加しています。
訓練の内容としては武器の使用方法や整備の仕方などの講習や有事の際の行動確認などがほとんどですが、全体的に見ると地域運動会のようなそこまで堅苦しさを感じるようなものではなかったりします。
それでも、実際に動いたりするので私なんかはその翌日などは酷い筋肉痛に悩まされます(妻はなぜか同じ訓練を受けているのに元気なのが納得できません)
何気にこの訓練の日は地域の御年配の方々が無駄に元気になったりするので高齢者の怪我が多い一日になったりします。(翌日の街のパブには包帯を巻いた御年配の方々の姿が散見されたり)
このように定期的な訓練を受けた各家庭には国から適性のある装備が支給され、我が家は妻がボウガンの適性が高いということでボウガンが支給され、応接間の壁に飾られている盾と剣は、今は亡き妻の父の物を形見として許可を得て譲り受けて飾っているというわけです。
過去、強大な軍事力を持ち、その軍事力で外敵を排除するだけではなく国民さえ虐げる歴史を経験したクルスベルグでは、その反省から強大すぎる軍備を整理し自分達の国はそこに暮らすひとりひとりの手で守るというのが国風となっています。
今回は少々固い話になってしまったので次回は柔らかい話をしようと思います。
それでは皆さんまた次回
Berliner Morgenpost ネット配信版 20011年8月6日号より
- 言われてみれば正規の軍隊がいるよりも戦闘可能能力を持つ国民が臨戦態勢でいる方が他への圧力(防衛面での)は大きいかも -- (名無しさん) 2012-05-15 12:16:25
- 国民総防衛とクルスベルグの人口事情など面白い解釈です。使えなければ意味がないというのはとても職人らしいですね -- (名無しさん) 2014-03-30 18:32:47
最終更新:2014年04月02日 14:30