「皆さんご覧ください!」
日本でその映像がテレビに最初に映し出されたのは1991年1月16日早朝5時過ぎ、当時その映像をリアルタイムで見ていたのは極々限られた人間だけだっただろう。
「なんだよこれ・・・」
出社準備のために起き出しパジャマのまま歯を磨きつつ、一月ほど前から騒がしくなり、今日にもイラクへの空爆が行われると言われていたイラク情勢が気になり、テレビをつけたサラリーマンがテレビの中の光景に思わず声を漏らす。
「これは現在の神戸放送局屋上からの映像です!現在神戸沖淡路島沿岸の海上で謎の発光現象が発生しています!」
緊張した男性アナウンサーの声と共に日の出前の暗闇の中に光の柱が立ち上っている映像が映し出される。
「あなた・・・ちょっと朝からテレビうるさい・・・」
「おい!なんかすごいこと起きてるからお前も見てみろ!」
「何よ・・・何これ映画の宣伝?」
こんな光景がその時刻日本各地で、いや世界各地で起きていた。
「こちらは1月15日の国連でのイラクのクェート撤退期限を過ぎたことで緊張が高まるサウジアラビア空軍基地です。先程からイラクバグダット方向に突然光の柱のようなものが出現し、次々と状況を確認するため偵察機が飛び立っていったところです。あれはいったいなんなのでしょうか?」
夕方7時アメリカCNNが予定の放送を急遽変更してイラクからの中継を流しているまさに同時刻、ABCではノースダコタのデヴィルズ湖でも同じような発光現象が発生していると報じ、付近住民との電話取材の音声が流されていた。
「マイクさん、そちらはどういう様子ですか?」
スタジオの初老の男性キャスターが真剣な表情で問いかける。
「すごいですよ!突然湖から光の柱が現れたんです!もう何がなんだか」
興奮した声の付近に住む青年がキャスターの問いに答える。
「光の柱はいつから現れたんですか?」
「一時間くらい前からです。本当に突然でした」
「このような現象はこれまで経験したり聞いたりということはありますか?」
「いえ、ありません。」
「何か危険な感じはありますか?付近の皆さんは怯えていたりとかしてるでしょうか?」
「怖いってのはたしかにありますが、とても美しい光景です。でも、一部の人は車での避難を始めています」
「そうですか、わかりました。また何かあればよろしくお願いします」
「わかりました」
電話音声は一旦切られ、カメラはスタジオのキャスターにズームされる。
「現在アメリカ政府からの正式な発表はまだありませんが、このような現象はアメリカ国内だけでなく世界各地で同時刻に発生しているということです。また詳しいことがわかり次第お伝えしたいと思います」
キャスターがそう一旦締めくくると番組はCMに入る。
同じ頃、大西洋を隔てたイギリスでは午後10時のBBCがこれを臨時ニュースとして伝えていた。
「現在ヨーロッパではこの謎の発光現象が我が国とドイツで確認されており、ドイツでは首都ベルリン中心部でこの光の柱が出現し軍が出動する状況となっています。ベルリン取材のエマ・ワトソン記者と電話が繋がっています。エマさんお願いします」
スタジオの女性キャスターがそう言うとノイズの混ざった電話回線からと思われる声が聞こえてくる。
「はい、先程ドイツ首相が非常事態宣言を発令しベルリン市内は現在外出禁止の状態です。私の家の窓から見える大通りには現在ドイツ陸軍の車輌が次々と中心部へと向かっており、光の柱が出現したブランデンベルグ門周辺には相当数の兵力が集結していると思われ」
ブツッという音と共に電話が途切れる
「・・・エマさん?」
スタジオの女性キャスターが問いかけるが応答はない。
「ベルリンは現在電話回線の状況が逼迫しているとのことで電話回線が途切れたようです。再度繋がり次第取材をしてもらおうと思います。そして、わが国のソールズベりー郊外の観光名所ストーンヘンジで発生している光の柱についての続報です・・・」
女性キャスターは冷静に対応し国内の状況について話題を変えていくが
刻々と世界各地でそれが一箇所だけではなく複数箇所で発生しているということが判明していく。
日本でアメリカでイギリスでドイツでイラクでオーストラリアでペルーで中国でコンゴでロシアで南極で
「どういうことだ・・・」
アメリカとソ連の軍事司令部は地球の衛星軌道に打ち上げた偵察衛星からの映像に目を疑った。
世界各地11箇所に光の柱が出現している。
そして、世界を核の炎で焼き尽くす未来も有り得た冷戦を経験した両国は、疑念の果てにまったく同じ考えに辿り着く
「「こんなことがあの国にできるわけがない」」
お互いがお互いを敵視し危険視し研究してきた結果の共通認識、自分たちに不可能なことが相手にも出来るわけがないという圧倒的な確信
当時の両大国のリーダーがホットラインでの極秘会談を開始したのはそれから20分後のことだった。
後に「
ゲート」と呼ばれることになるこの光の柱のような超常現象は、異世界との前代未聞の接触の象徴として一部の人間以外にはその真意を示すことなく何の前触れもなく世界各地に現われた。
この超常現象の出現は世界各地で観測され、この情報を知り得た人類は騒然となり一部は狂喜した。
しかし、これらはまだこれから起きる様々なことのほんの序章に過ぎず小さな変化のさざ波のようなものでしかなかった。
- 大ゲートが出現した日はまさに映画の中に現実が飛び込んだようなものだったのだろうなと分かりやすい中にもゲートの姿が見える作中から想像しました -- (名無しさん) 2014-04-27 17:41:22
- >「皆さんご覧ください!」 って一行目から引き込まれた。報道と現場が行き来しつつ説明が入って分かりやすい。こうして世界が繋がった -- (名無しさん) 2014-05-29 22:42:26
最終更新:2012年04月09日 23:15