彼を見た他国の人々は、口を揃えて「まるで暗殺者だ」と言った。
蟻人の背後に近寄り、麻酔も毒も使わず一刺しで行動不能にさせる技術は他の虫には見られない。彼らの種は本能で蟲人たちを行動不能になせる急所を察する事ができる。
特に個体名を持たない彼だが、便宜上、ピアスドと呼ぶ。
ピアスドは暗殺者などと呼ばれるが、その行為は多くの生物がそうであるように、全てが捕食であり殺すことが目的ではない。
口吻を突き刺し、体液を啜りとる。マセ・バズークでは有り触れた食事風景だ。
しかし、ピアスドが他の蟲人と違う点といえば、食後の風景である。
ピアスドは、蟲人だろうと動物だろうとその体液を啜るが、特に蟻人を狙う。これは見つけ出すのが容易なほど、蟻人が多いからだけではない。
ピアスドは蟻人の体液を啜ると、その殻を解体して自分の外殻に貼り付ける。さながら鎧の様に纏い、身体の大きさまで偽装して身を守る。
大型の捕食者への威嚇と、攻撃を受けたとき蟻人の外殻を鎧変わりにするためだ。
そんな生活をしていたある時、個体ピアスドは人物に出会い、他の個体と違った人生を歩む事となる。
地球人との出会いだ。
地球人は個体ピアスドにこう申し出た。
「You! そのarmor! イカしてるね! 良かったMeがbuyするからsaleしてくれない?」
ピアスドは集めて身に付けた蟻人の外殻が、地球人との物物交換に利用出来ることに気がついた。
以来、彼は余分な蟻人の外殻を集め、地球人の体型に合うように加工して売り渡す事にした。
ゲート付近にいる怪しい地球人の商人は、不器用に作られた外殻の鎧に文句を付けながらも交換に応じた。
地球産の物質で作られた外殻だ。
黒く柔軟性にとんだ丸い工業製品で、真ん中には大きな穴がある。そのまま身体に通してもいいが、ピアスドは加工して関節部分を覆う外殻に利用した。
剛性はキチン質には敵わないが、稼働部分を覆い、その上に外殻を貼る事が出来た。
これによってピアスドは、高い防御と機動性を得た。
次々に蟻人以外の襲い、時には捕食ではなく外殻狙いで蟲人たちを襲った。
様々な地球人用の鎧を造り、商人に売り渡し、いろいろな鉱物や工業製品で出来た外骨格を手に入れ始めた。
やがて、彼はそれらを組み合わせた、まったく新しい鎧も創作し始める。
ピアスドの生活は製作が目的となったが、材料の供給が追いつかない。他の同種個体に地球産の物質を組み合わせた新しい外骨格を用意し、日々の食料と材料の外殻を得始めた。
以来、マセ・バズークの捕食者達は新しい外骨格を得て、さらに獰猛さを発揮する。
一人の蟲人が始めた職業が、マセ・バズークに新たなる動乱を生み出した。
- 目的が第一の行動はマセ・バズークでは当然なのだろうけども、そこに他国他の観念が働いて起こった動乱の発端と感じた。 この動乱で得た進化が国にどんな影響を与えるのかに興味が沸いた -- (名無しさん) 2013-07-26 23:08:14
- 何もないところに何かがやってきて何かが起こる。新しい流れの起こりがとても純粋で面白い -- (名無しさん) 2014-02-06 23:31:25
- 任務達成には己の強さが必要という本能があれど器用なのが面白いですね。他人と交渉するプレデターみたいなものでしょうか -- (名無しさん) 2014-06-29 17:48:12
- 人間との交流の結果が動乱だったというのは神の予想した範疇なのかどうか。 しかし富み発展すれば戦いが起こるというのは人間の歴史と同じではなかろうか -- (名無しさん) 2014-08-24 01:31:31
最終更新:2013年01月01日 18:26