「お帰りなさいませ、星神様。 お話の方はどうでしたか?」
宙に戻ってきた星神を迎えたのは、かつて星の語り部と呼ばれた
ケンタウロスの女性。
星の加護の契約により、魂が天に昇った今は亜神となり星神に仕える存在となっている。
次なる契約者が天に昇り来るまで。
『良い流れとは…言い辛いですね』
《白夜の布》で目を覆っているが、星神の表情が曇ったのを亜神は察する。
大
ゲート間の移動解放。
死神の提案した神々全員によるゲートへの神力作用により、それを実現させた。
『確かに事は成り、世界に新たな変化が訪れるでしょう。
が、これは早過ぎたのではないでしょうか…』
「星神様?」
亜神の問いかけで我に返る星神。
『件は私も納得した上での行いですが、世界への影響は計り知れません。
…調べておいた方が良さそうですね』
徐に星神が手を宙に翳すと、それに呼応するかの様に全方位へ世界が広がる。
今の異世界、其の物の上に立つ星神と亜神。
『貴女には未踏破領域周辺の変化を調査してもらいます。 早急に』
「私は、星神様が死神様の提案を承諾するとは思いませんでした…
大ゲートの全開放など前代未聞の ──
思わず漏れた苦言に、ただほんの少し宙を見上げる星神。
「…はっ! 口が過ぎました…」
亜神は深々と一礼し、宙闇のヴェールに包まれる。
一瞬見えたヴェールの《向こう側》には、地脈や海流、大気の流れまでもが視認されていた。
『私は、理解したいのかも知れませんね…』
自らの魂の半分を分け与え
突如自身の国を持つと力を奮う
創るだけ創り、その後は奔放に振舞う
知らぬ内に世界に関わる
常に変化を求める
「星神様、未踏破領域周辺に…」
調査を終えて再度ヴェールより出でた亜神が次々と告げる世界の変化。
北々海にてかの《大海獣》を縛っていた海流は緩み
北方暗黒大森林から飛び出そうとする《異物》を押さえ込んでいた風壁は溶け
南方にて牢獄を成していた地脈は精霊力を半減させていた
「…降りられますか?」
『まだ《人の世》でありましょう。 人の世は人により創り守られるのが正しき姿。
しかし、その時は近いのかも知れませんが…』
死神、貴女はこうなる事が分っていたのでしょう?
ようやくと、ですが、私にも見えてきた様な気がします。
両手を左右に悠然と広げた星神の周辺が一面星の瞬きで埋まる。
異世界の宙と繋がった星神の口が、少し緩んだ様に見えた。
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今更一周年の流れに乗って大ゲート祭レポートなどを参考にして色を付けてみました。
星の加護の契約は存在も内容(昇天後に星神に仕える)も生前の語り部は知らない設定ということで。
- 珍しい星神様のSS。これは今後星神様を登場させる時参考になりそうですね。未踏破地域の異変もネタとして美味しそうです -- (としあき) 2012-06-23 22:34:14
- 神々の良心と言われるテミランは異変に気づいてもすぐに関与しなさそうなのは同意 -- (名無しさん) 2012-06-23 22:46:34
- 祭りが終わったら元のゲートに戻されるとか星神じゃないと把握できないよね -- (名無しさん) 2014-06-03 22:46:47
- 厳かな雰囲気が漂う星神ですね。神々の中でも一番話が通じそうな神です -- (名無しさん) 2014-08-31 17:02:43
最終更新:2012年06月23日 01:52