オルニトの町を歩く。
左手に抱えた袋からの熱は、香辛料をまぶした蒸かし芋。
ぱくぱくと、左手には芋がある。
歩く石橋は平均台とまでは言わないが細い。落ちないように気をつけることが必要。
足下に集中する顔をあげると、鳥人の少女に行く手を防がれていた。
少女の顔は真正面で、だけど目は右に泳いでいる。
「そこを通して貰えるかな?」
この細い高所で無茶なことを言うようだけど、そのつもりはない。
少女に両翼で少し飛んで貰いたいだけだ。
しかし、少女は首を横に振る。
「芋が欲しいとか?」
そして、歌うような声が少女口から流れた。
「東南東から天頂へカイタルの角度の位置に坐す天使からドキワクお役立ち情報のお届け♪」
「えっと?」
何を言ってるのか少し分からないけど、たぶん異世界の占いか何かだろうか。
少女が首をキリキリと傾けた。
「明日は雨だよ♪」
「そうなんだ、傘を用意しとかなきゃな」
空はどこまでも青い。鷹人さんが螺旋を描いている。
雨の気配はないけれどしかし、用心して損はないはずだ。
この娘は天気予報の仕事をしてるのかもしれない。
「南の大ムカデさんの三千五百六十の翡翠色の体節が日光を七色に分解飛行中♪」
「……???」
「貴方のインドラジッドを眠らせない♪」
「芋あげようか?」
よくわからなくなってきたので、芋を渡す。
満腹はたぶん三千世界共通の善行だ。芋よ、世界を結ぶ架け橋となれ。
芋を手にした少女は、数秒フリーズした。
唐突に喜色をあらわにした。
芋にかぶりついた。太陽に薄雲がかかり陰をつくる。
芋のかけらが、少し石橋にこぼれ落ちた。
また、少女が口を開いた。
「トクガワマイゾウキンの呼び声が畑に響く♪」
「徳川って言った?」
「来週の天気は蜂蜜の雨♪」
「マジでか」
「その声は嬰児のよう、好んで人を食う♪」
「………、芋食べる?」
少女がバンザイのポーズを取った。
芋にむしゃぶりついた。
「転落の感覚を散策♪」
「そうかそうか」
「明日は雨だよ♪」
「うん、知ってる」
「助けてよ溶解した鉄さんを浴びてる気分♪」
「ああ、芋は旨いよな」
「ギュウギュウに貴方を詰め込んだ壺を探してね♪」
「もう一個あげよう」
少女がバンザイのポーズを取った。
芋にむしゃぶりついた。
「右斜め後ろにジャンプ♪」
「落ちるわい」
「わたしと貴方の姪というべき小魚が焼かれてる♪」
「ほうほう」
「明日は雨だよ♪」
「うんうん」
突然、黒い影が横に現れた。
烏人さんが石橋の下から飛んできたようだ。
ふと、こちらを見て言った。
「やぁ旅人さん、雛鳥とお喋りだなんて不毛だねえ。で、明日の天気はなんだって?」
「はぁ、雨らしいですけど」
「なるほどなるほど」
そのまま飛び立とうとする烏人さんに、疑問をなげかける。
「ちょっと待ってください!あの、この娘ってなんなんでしょう?」
烏人さんホバリングしながら首をかしげた。
「さぁ?わかんないねえ。
ただ、明日の天気が分かって便利だよ。昨日や明後日はデタラメなんだけどねぇ」
そう言葉を残して、ついに飛び去った。
前を見ると少女は煙のように消えていた。
よくわからないが前にすすめるので、よしとしよう。
- 言葉のつなぎ方が軽妙で何か意味ありそうでなさそうな天気予報は明日以外は出鱈目か! -- (名無しさん) 2014-06-16 14:25:29
- 雛鳥って色んなのがいるんだな。芋でよければお安いものだな優しい空気がよかった -- (名無しさん) 2014-07-25 03:08:01
- なんとも不思議なやりとりと予言か妄言めいた祝詞がオルニトでした。聞くのは明日の天気だけというのも忍びないと思ったらどこまでも歌につき合わされそうでした -- (名無しさん) 2014-08-31 17:12:23
最終更新:2013年08月11日 10:43