遙か遙か昔、世界には空と海と果てしなく続く荒野、そして一本の木だけがあった
木は大地の全ての恩恵を与えられ、やがて天を貫く巨木と育つが
自分に寄り添うものもなく、ただ一本荒野にそびえ立つ孤独な巨木は
その枝葉からたくさんの妖精を生み出し、従者としてその身に住まわせた
自らが生み出した多種多様な妖精たちの国として
巨木はいつしか
世界樹と呼ばれるようになる
それから太陽が何万回か沈んだ静かな夜
月の光をかすめた世界樹の一本の枝に、初めて花芽が生まれた
やがて種を産み、大地を緑に包むだろう大事な蕾が無事に育つようにと
世界樹はその蕾に花の妖精ユミルムを宿し、その目覚めを見守る為
先に枝から生まれ暮らしていた兄ディオマーに守護を命じる
しかし花びらに包まれ眠る妹ユミルムの寝顔に恋に落ちてしまったディオマーは
抑えきれず唇を奪ってしまい、驚いたユミルムが目を覚まし
その弾みでまだ小さな蕾は散ってしまう
大いに嘆いた世界樹はディオマーの枝を切り落とし、ユミルム共々荒野に二人追放される形となった
生まれたばかりの愛しい妹は何日も止めどなく涙を流し続け、世界樹にも見捨てられ
眼前に広がるのは果てしなく続く命のない大地
途方に暮れたディオマーは、せめて新しい住処になればと
ユミルムの涙で湿った大地に、切り落とされた世界樹の枝を刺した
するとただの枝が根を張り、枝を伸ばし葉をつけまたたく間に立派な木へと成長する
ディオマーは罪滅ぼしにと、その木から十の枝を切りとり大地へ植えた
十の次は百、百の次は千、千の次はと木々が伸びる度にそれは繰り返され
ユミルムの涙が止まった頃、荒野は豊かな森へと姿を変えていた
全てを見ていた世界樹はディオマーの罪を許し
同時にユミルムとの関係も認め、二人はその森に
エリスタリアと名づけ王と王妃として安らかな日々を手に入れる
世界樹に住んでいた妖精達も次第にその森へと移住し、やがて世界中へと旅立っていき
今ではエリスタリアに留まっている世界樹の子供達はごくわずかな者しかいないが
生命力豊かな妖精達の森では、今日もまたどこかで新たな命が生まれている
緑深き妖精郷エリスタリア
数多くの種族が共存する神秘の森の都がいつ生まれたか、今となっては語るものはいないが
どんな前置きをもってこようが現在絶賛喧嘩中の王と王妃の間は仲裁しようがないものだというのは
新都、古都どちらともに住むエリスタリアの民ならば誰しもが知っている
エリスタリア建国経緯案です
場合によっては消去しとくので一時的に場所をお借りします
- エルフの吟遊詩人が詠う叙事詩のような神話的作品。 -- (名無しさん) 2012-03-26 23:10:58
- ふーん、って感じ -- (名無しさん) 2012-03-27 03:53:45
- しっかりと厳かに国の成り立ちを抑えつつも、やっぱり根っこはエリスらしい内容は最早因果律固定 -- (名無しさん) 2012-03-27 23:19:40
- 背徳感漂う伝説が堂々と語られるのもエリスタリアならではでしょうか?それにしても年月の例えが果てしないですね -- (ROM) 2013-02-18 18:05:11
- エリスタリア建国経緯としてイメージぴったり。ディオマーのダメっぷりもイメージぴったり -- (名無しさん) 2013-03-09 20:12:22
- 神秘と思ったら人間っぽさが吹いた -- (名無しさん) 2014-07-18 22:50:51
最終更新:2013年08月07日 23:55