遥か昔の物語
世界をば三つに分けし大神、世の終焉にて一つ言うた
新世の夜明けに集いし十二匹に国を授けよう
さて世界も終わり新たな世が明けし刻、初めの獣があらわれた
それは見るも巨きな猪のつがい
大神おおいに笑っていつから来たのか尋ねた
獣曰く七日七晩歩いてきたのだ
勤勉さを愛おしく思いし大神、獣を無数に切り分けた
その肉から、
オーク、
オーガ、鬼、トロル、累々の者が産まれいでた
海ひとつ授けよう。世界を子孫で満たすがよい
大神はこたえた
次には真白き犬の群れが後ろを振り返りながらあらわれた
大神が尋ねると犬は言う
後ろに主人と家族が待っている。我ら草分けてきたのだと
なるほど彼方に馬の群れ
ならばと大神てのひらにて犬を避け、しばし座れと命じた
そのてのひらにて狗人は産まれいで、彼らは命あるまで待ち続ける宿命をおった
次に見えしは渡り鳥
自慢げに歌声で空を満たし、嵐の夜とて翼でこえたと語ったものだ
大神は苛立ち鳥を数羽つかまえて、はるかはるか彼方へ投げ捨てた
それを見た鳥どもおとなしくなるも大神の怒りはおさまらず
あわれ鳥ども嵐の国をあてがわれ、千年隔ててなお命は軽し
鳥の後には猿が数匹、木の実を抱えて馳せ参じ
新たな世にて花を咲かせるのだという
これには大神おおいに喜び、猿をつぶして木の実とまぜてばらまいた
すくすく育った果樹からは幾多の
エルフが産まれいでた
望み通り花を咲かせ世界を子孫で満たせ。緑の全てを授けよう
大神はこたえた
次に現れしは、ずいぶんと膨れ上がった羊の群れ
望みはあるかと大神が尋ねると
我らこの毛にて幾多の物を生み出されし事は知りうるが
我らがその手にて生み出せしもの何一つなし
ならばと大神その毛を全て引き剥がすと、毛の塊から小人がわさりと落ちいでた
次はぬしらが産み出す番よと、産まれいでし小人に向かいてのたまった
次に現れしは、ようやく馬を引き連れし者共
これには大神もあきれ果て、犬をいつまで待たせる気だと尋ねた
その問いにすら者共言い争いを重ねこたえを出すのに一昼夜
大神あいわかったと手を打つと、者共すっかり馬と混ざり
ケンタウロスとなりけり
犬と共に土地を耕せ。望みのいくさもつけてやろう
大神はこたえた
次にあらわれしは賢しき蛇
千変万化の言葉をもちいて世界を名前で埋め尽くすのだという
それは神の所業ぞと大神むんずと蛇をとらえ、鱗に名前を刻んだ末に
あらたな世界にばらまいた
次にあらわれしはみすぼらしき竜
蛇への仕打ちを目の当たりにして、すっかり毒気も抜けきった
神が望みを尋ねても恐縮しきって何も言えず
ただ一言水が欲しいとつぶやいた
ならばと大神竜に手をかざすと、そこから無数の鱗人が産まれいでた
鬼のおらぬ海をやろう。そこが主らの欲した水よ
大神はこたえた
竜の影に隠れしは、小さな小さな白兎
曰く我らは食われる宿命、それでも死が恐ろしゅうてかなわぬと
大神おおいに考え込み、ならば死なぬ身となれと言う
兎は紅い目のままで、既に死せる屍人となりい出た
獣とて夜には眠ろう。永遠の夜の国を授けよう
大神はこたえた
その次にあらわれしは虎
兎を追いてここまで来て、眼前にて逃れられたと悔しがる
大神がこれまでどれほどの肉を食ろうたか尋ねると
虎は胸を張りて百獣全てを食ろうたと高笑いをする
ならばと大神、虎の身を八つ裂きにして
これまで食ろうた中身を出してみよとのたまう
虎の身からは幾多の獣が転がり出て
大神が手をかざすとそこから獣人が産まれいでた
獣人には豊穣の地を授け、それで世界を食うてみよとのたまった
その次に現れしは、大きな大きな黒き牛
働き者で名高くて、この世の全ての土地を耕したのだという
大神おおいに感心し、次の世も働くのかと尋ねると
主人に仕えて働きたいのだという
ならばと大神牛の首を刎ねると世界の果てに投げ飛ばす
その流れた血から、蟲人がわらわらと産まれいでた
働くに相応しい国を授けよう。主のために世を広げよ
大神はこたえた
これで十一のこりは一席
ところがここで団子の並び
どの獣とて大神には遠く、一体何が間に合うことか
それを見てほくそ笑むのは穴に隠れし鼠ども
昨夜のうちに大神の足下まで穴を掘り進め
獣どもが大挙せし刻に顔を出して大自慢しようとの魂胆なり
さて新世の暁がのぼる
十二匹目の獣は我よと鼠どもうかれて神の前に出れば、そこに見えしは天敵たる猫ども
猫ども笑いて鼠にむかい、地に耳を伏せはかりごとを聞いていたのよと言う
これには大神も苦笑いをし、猫どもに金貨を与えて商人とす
ただ残りしは不毛の砂漠
猫人も遊びにかまけて土地柄までは考えじ
鼠ども大いに憤慨し、新たな世とて地にもぐりて機会を待つという
奈落にはびこりし洞穴の奥、根の国をおさむるは鼠人と言う
新世も終わりのその次に、地に返り咲くのを待っているのだと
遥か昔の物語
- それっぽくて面白いな、想像が広がる -- (名無しさん) 2012-11-18 09:57:44
- 誰も知らないおおむかしはそれだけで無限の題材なんだなと実感する -- (としあき) 2012-11-22 23:12:41
- 何だかこういう伝説は一つじゃなくて国ごとに色んな形で残っていそう -- (とっしー) 2012-12-03 22:35:05
- こんな内容の歌詞の童唄とか数え唄がありそうな -- (名無しさん) 2012-12-06 20:14:46
最終更新:2014年08月31日 01:55