匿名・防弾鯖とは?
匿名・防弾鯖(ぼうだんさば)とは、
契約者の身元情報をほとんど求めず、外部からの削除要請や法的圧力に強いサーバー(ホスティングサービス)のことです。
「防弾ホスティング(Bulletproof Hosting)」とも呼ばれます。
匿名サーバーとは
通常のレンタルサーバーやクラウドサービスでは、契約時に本人確認(KYC)や電話番号、住所、支払い情報などを求められます。
一方、匿名サーバーではそれらの情報が不要か、最小限に抑えられています。
多くの場合、**仮想通貨(Bitcoin、Moneroなど)**で支払いが可能で、メールアドレスのみで契約できることもあります。
これにより、ユーザーの個人情報が運営側や第三者に知られにくく、追跡されにくい匿名性が確保されます。
防弾ホスティングとは
「防弾」とは、サーバー運営会社が法律上の削除要請や警察からの通報などに対しても、容易にデータを削除しないという意味で使われます。
例えば、著作権侵害や政治的にデリケートな内容など、通常のサーバーではすぐに停止されるようなサイトを、長期間維持できることが特徴です。
防弾サーバー業者は、多くの場合以下のような国・地域に拠点を置きます:
モルドバ
ルーマニア
ウクライナ
ロシア
オランダ
アイスランド
スイス
これらの地域は、言論の自由が比較的強く守られている、または法執行の影響が及びにくいとされています。
利用目的とリスク
防弾サーバーはもともと、報道活動・政府批判・内部告発サイトなどを守るためにも使われてきました。
しかし同時に、違法なコンテンツ配布やサイバー攻撃の踏み台など、不正利用にも使われやすい側面があります。
そのため、すべての防弾ホスティング業者が安全・合法とは限りません。
中には運営が急に停止したり、サーバーが押収されるケースもあります。
代表的な事例・業者名
掲示板や専門フォーラムでよく名前が挙がる防弾系ホスティング会社には、以下のようなものがあります。
| サービス名 |
所在地(拠点) |
支払い方法 |
特徴 |
備考 |
| AlexHost |
モルドバ共和国 |
クレジットカード、仮想通貨(BTC等) |
低価格・匿名登録可(ただし電話番号要求あり) |
データセンターは旧軍事施設跡とされる。DMCA無視対応は限定的。 |
| Novogara |
オランダ/キプロス |
仮想通貨・銀行振込 |
元Ecatel系。DMCA対応を拒否する傾向。 |
旧Ecatelの流れを汲む老舗防弾業者。 |
| Trabia Network |
モルドバ |
クレジットカード、暗号通貨 |
安定性が高く、匿名性と性能のバランスが良い |
Torノード運営にも使用されることがある。 |
| Voxility |
ルーマニア |
クレジットカード・請求書払い |
大手インフラ事業者。再販業者に防弾鯖を提供することもある |
kyun.hostなどがVoxility系として知られる。 |
| 1984 Hosting |
アイスランド |
仮想通貨、カード |
言論の自由を重視。Tor経由契約も可。 |
名称はジョージ・オーウェル『1984年』に由来。 |
| PRQ |
スウェーデン |
銀行振込 |
WikiLeaks初期が利用。表現の自由を最優先する方針 |
創業者はThe Pirate Bay運営関係者。 |
| CyberBunker |
オランダ |
仮想通貨・国際送金 |
軍用施設を改装した防弾データセンターとして有名 |
過去に警察の摘発を受け閉鎖。伝説的存在。 |
| NForce |
オランダ |
クレジットカード、仮想通貨 |
Exitノード許可で知られる。比較的安定 |
abuse報告には一定の対応あり。 |
| UrDN |
ウクライナ |
仮想通貨 |
高匿名性・DMCA無視 |
政情リスクはあるが匿名性が高い。 |
| Kyun.host |
ルーマニア(Voxility系列) |
仮想通貨(Monero等) |
メール不要・Tor経由で登録可能 |
Exitノード許可。完全匿名を重視。 |
| LibertyVPS |
オランダ |
仮想通貨(Bitcoin) |
DMCA無視・高匿名性 |
現在は活動縮小。過去にマルウェア配布報告も。 |
| CrazyRDP |
不明(旧オランダ系) |
仮想通貨 |
防弾リモートデスクトップ業者 |
過去には不正利用事例が多い。 |
これらは法的リスクに対する対応姿勢が異なり、「どこまで防弾か」には大きな差があります。
| 時期 |
主な業者・出来事 |
特徴・背景 |
備考 |
| 1990年代後半 |
PRQ(スウェーデン) |
表現の自由を重視した初期の防弾ホスティング。 |
The Pirate BayやWikiLeaksが利用。北欧リバタリアン文化の影響を受ける。 |
| 2000年代前半 |
CyberBunker(オランダ) |
元軍用地下施設を改装し「完全防弾」を標榜。 |
スパム業者・マルウェア配布・海賊版サイトなどが集中。 |
| 2000年代後半 |
Ecatel(オランダ) |
DMCAを無視し、海外クライアント中心に急成長。 |
後に法的圧力で閉鎖。後継がNovogaraへ。 |
| 2010年代前半 |
Novogara、NForce、LibertyVPSなど |
オランダ・モルドバ・ウクライナ系が主流に。 |
Tor出口ノードやオンライントラフィックの自由を掲げる。 |
| 2010年代後半 |
Voxility、Trabia Networkなど |
大手インフラが「防弾再販」を許容する形で進化。 |
Voxilityは下請け再販業者を通じた防弾提供が増加。 |
| 2019年 |
CyberBunker摘発事件 |
警察が大規模捜査を行い、オランダ防弾文化が一時衰退。 |
データ押収により多くの不正サイトが停止。 |
| 2020年代前半 |
Kyun.host、1984 Hostingなど |
Tor経由契約・仮想通貨支払い・匿名登録が標準化。 |
表現の自由や検閲回避を目的とした合法利用も拡大。 |
| 2020年代後半〜現在 |
AlexHost、Trabia Network、UrDNなど |
モルドバ・ルーマニア・ウクライナ系が中心に。 |
DMCA無視+安価VPSが人気。防弾鯖フォーラムが活発化。 |
まとめ
匿名鯖:身元確認をほとんど求めないサーバー
防弾鯖:法的要請に強く、削除されにくいサーバー
利用は合法的目的(プライバシー保護・検閲回避など)にとどめるべき
不正利用は刑事責任を問われる場合がある
最終更新:2025年10月12日 09:16