「……どういうことなのかしら。」
己の首につけられた戒めから鳴る音楽。
それがスネリを覚醒させた。
朦朧とする意識ながらも聴覚は人の名前が読み上げられていることを感じ、だんだんとそれが頭の中で意味のあるものとして認識できるようになっていく。そのスピードは彼女が人ならざる妖怪だからだろう。
そして疑問が生まれる。そんな自分を手当てしたのは誰なのかと。
それがスネリを覚醒させた。
朦朧とする意識ながらも聴覚は人の名前が読み上げられていることを感じ、だんだんとそれが頭の中で意味のあるものとして認識できるようになっていく。そのスピードは彼女が人ならざる妖怪だからだろう。
そして疑問が生まれる。そんな自分を手当てしたのは誰なのかと。
『──追加ルールは……ジャン! キルスコアレース! 6時間で一番殺した参加者は、優勝者とは別にゲームから勝った扱いになるぜぇ──』
「そうだった、殺し合わされてるんだったわね。」
「そうだった、殺し合わされてるんだったわね。」
傷の痛みと気絶する前の記憶から、己に巻かれた包帯に気が行っていたが、ようやく殺し合いという現在を思い出す。その健忘には何らかの原因がある、とまでは思い至らない。今はただ、自分が聞き逃した放送の内容が気がかりだった。
「ルナの名前が呼ばれるなら最後の方よね。たぶん呼ばれてなかったと思うけれど……」
もしルナの名前を聞けばもっと早く意識を覚醒させていた自身がスネリにはある。しかし、だからといってルナの名前が呼ばれなかった、などと断言はできない。そのことはスネリ本人が一番わかっている。
もちろん、ルナが死ぬはずなどないとは確信している。それは単なる願望では無く、伝説の子であり半妖であるルナが人間相手に負けるはずが無いというスネリにとっては当然の前提だった。とはいえ、その前提を見直さなくてはならないことを当のスネリが痛みと共に感じているわけだが。
もちろん、ルナが死ぬはずなどないとは確信している。それは単なる願望では無く、伝説の子であり半妖であるルナが人間相手に負けるはずが無いというスネリにとっては当然の前提だった。とはいえ、その前提を見直さなくてはならないことを当のスネリが痛みと共に感じているわけだが。
「時計はどこかしら……あった。このくらい寝てたなら、まあこのくらい傷も塞がるでしょうね。」
実際は歩く度に傷が開く予感をひしひしと感じるが、強がる。右前足が欠損しているのだ、まかり間違っても走れないが、そもそもスネリは他者を癒す力がある。本人には使えないのが難点だが、それでもそこいらの妖怪よりは回復能力がある。でなければ妖怪からしても高い回復能力があるルナと共に行く先々で死にかけながら旅を続けることはできない。
さて、スネリはこれからどうするかと、自分がいつの間にかいた建物を一通り調べてから悩んだ。
この建物、風変わりな妖力を感じる。恐らく妖怪の知識のある人間がいたのだろう。それを考えれば自分への手当も理解できる。ぜひ感謝の意を伝えたいところだが、争った形跡も無く無人だった。
そういえば、と気絶する前のことを思い出そうとする。たぶん銃で撃たれ殺されそうになった時にこの建物に転がり込んだ気もするししない気もするが、誰かに会ったような会わなかったような気がする。それにこの妖力的な力。どちらかといえば邪悪な感じがしないわけでもないししないかもしれない。
さて、スネリはこれからどうするかと、自分がいつの間にかいた建物を一通り調べてから悩んだ。
この建物、風変わりな妖力を感じる。恐らく妖怪の知識のある人間がいたのだろう。それを考えれば自分への手当も理解できる。ぜひ感謝の意を伝えたいところだが、争った形跡も無く無人だった。
そういえば、と気絶する前のことを思い出そうとする。たぶん銃で撃たれ殺されそうになった時にこの建物に転がり込んだ気もするししない気もするが、誰かに会ったような会わなかったような気がする。それにこの妖力的な力。どちらかといえば邪悪な感じがしないわけでもないししないかもしれない。
(なにもわからないわね、ダメージが残ってる。)
結局ろくに思い出せずにいたところで、その耳が捉えた音があった。銃声だ。回復してきた聴力は既に人間よりも鋭敏に音を捉えられる水準まで戻ってきている。
さっき撃ってきた奴か、スネリがそう判断するのを妨げるものはない。彼女はこの殺し合いに戦争を行えるだけの銃火器がばら撒かれているなど知らず、銃声と己を銃撃した者を素直に結びつけた。
妖力を脚部へと回して治癒を少しでも早めながら慎重に歩く。思い体を引きずった先に見えたのは鉄道か何かの高架だ。これはいいとスルリと駅から侵入すると、壁際を歩き出す。前のように油断しているとどこから撃たれるかわからない。そうしてしばらく警戒して歩いて彼女は見た。大きな建物の中。窓から覗くそこに動く人影を見逃さず。
桃色の髪の少女が銃を撃つところを。
さっき撃ってきた奴か、スネリがそう判断するのを妨げるものはない。彼女はこの殺し合いに戦争を行えるだけの銃火器がばら撒かれているなど知らず、銃声と己を銃撃した者を素直に結びつけた。
妖力を脚部へと回して治癒を少しでも早めながら慎重に歩く。思い体を引きずった先に見えたのは鉄道か何かの高架だ。これはいいとスルリと駅から侵入すると、壁際を歩き出す。前のように油断しているとどこから撃たれるかわからない。そうしてしばらく警戒して歩いて彼女は見た。大きな建物の中。窓から覗くそこに動く人影を見逃さず。
桃色の髪の少女が銃を撃つところを。
「なるほど、突然爆発があったんだね。」
(手榴弾がどこにでもあるんだからTrapを仕掛けるのは容易だ。だがこの爆発の仕方は、おかしい。この3人は即死していてもおかしくない、なんなら普通じゃないか。仕掛けに気づいてとっさに投げた? もっと手がかりを──)
『強くなれる理由を知った──』
「What?」
(手榴弾がどこにでもあるんだからTrapを仕掛けるのは容易だ。だがこの爆発の仕方は、おかしい。この3人は即死していてもおかしくない、なんなら普通じゃないか。仕掛けに気づいてとっさに投げた? もっと手がかりを──)
『強くなれる理由を知った──』
「What?」
灰城環ことタマは聞き出した話と現場の状況から起こったこととその意図を読み取ろうとしたところで、その首輪から音楽が鳴り出す。直ぐにそれが自分以外からも鳴っていることに気づいて、音の出処に当たりをつけた。
(首輪からJ-POP? 主催者からのアプローチか。そろそろ6時だったな。)
6時間ごとの定時放送か。あるいはキリがいいから臨時放送か。気になるところではあるが今は重要度は低い。タマはスマホを取り出すとレコーダーで録音することに決めた。そこでスマホからも鳴っていることに気づいたが、でも今はそんなことはどうだっていいんだ、重要じゃない。肝心なのはこれが首輪から流れていること。即ち隠れ潜む者がこの水族館にいれば探すチャンスだということだ。
殺し合いの主催者、つまりは誘拐犯からの接触など絶対に無視できないものであり、警察官であるタマにとってはなおさらであるが、だがそこを無視する。あえて。
顔には出さない逡巡の後、タマは放送はレコーダーで録音して後から聴くと優先順位を下げる。まずは武装していると思われる不審者を拘束するのが先だ。相手には爆発と先のタマの呼びかけにより位置は割れていると見ていい。こうしている間にも手榴弾でも投げ込まれれば対処できない。一刻も早く、周辺の安全を確保しなくては。
殺し合いの主催者、つまりは誘拐犯からの接触など絶対に無視できないものであり、警察官であるタマにとってはなおさらであるが、だがそこを無視する。あえて。
顔には出さない逡巡の後、タマは放送はレコーダーで録音して後から聴くと優先順位を下げる。まずは武装していると思われる不審者を拘束するのが先だ。相手には爆発と先のタマの呼びかけにより位置は割れていると見ていい。こうしている間にも手榴弾でも投げ込まれれば対処できない。一刻も早く、周辺の安全を確保しなくては。
(『あ』だけで9人呼ばれたぞ……)
耳を澄ませて音源を探る。だが直ぐに諦めた。よく聞けば水族館のスピーカーからも流れている。これでは無理だ。もっと早く気づくべきだったと反省して、足音を探ることに切り替える。だがこれも放送の音が大きすぎる。首輪から鳴っているのだ、喋り声程度ならなんとか聞こえても忍び足など聞こえるはずも無い。また1つ反省して、今度は即座に床に耳をつける。ビンゴだ。振動がある。
先程の子供たちは動いていない。もちろんタマもだ。ということは、第三者。状況からその人物が危険人物である可能性は無視できない。しかし。
先程の子供たちは動いていない。もちろんタマもだ。ということは、第三者。状況からその人物が危険人物である可能性は無視できない。しかし。
(止まった、放送を聞いているのか? それとも……)
なかなかに慎重な性格か。これでマーダーなら最悪だ。呼びかけに答えなかったのもそのせいで、今も虎視眈々と殺す機会を伺っているとしたら、いくらタマでも誰も死なずにこの場をおさめる手がまるで思いつかない。
『──追加ルールは……ジャン! キルスコアレース! 6時間で一番殺した参加者は、優勝者とは別にゲームから勝った扱いになるぜぇ──』
「……しかたないね。」
「……しかたないね。」
嫌でも耳に入る放送に、タマはため息をついた。どうやらポリシーを変える必要がありそうだ。このままではどうあっても状況は好転しない。ならば一か八か、試してみるとしよう。
放送が終わり、タマはスマホを取り出してレコーダーを切る。録音内容は後で聞くとしよう。今はまずはと、片手で銃をとる。
善は急げだ。
放送が終わり、タマはスマホを取り出してレコーダーを切る。録音内容は後で聞くとしよう。今はまずはと、片手で銃をとる。
善は急げだ。
パァン。
「は、灰城さん?」
困惑する声を上げるのは、橋口純子だったか。でも今はそんなことはどうだっていいんだ、重要じゃない。
「静かにしてくれるかな。」
言いながらタマは更に2発を撃つ。うめき声を弱々しく上げる純子の声が水族館に少しの間響いたあと、更に3発の銃声が轟き、後には静寂が残された。
「これでキルスコアは3か。」
小さいながらも良く響く声で呟く。タマは純子の持っていた拳銃を奪うと、薬室を確認すると歩き出した。
「悪く思わないでよ、君たちあの怪我じゃどのみち死んでたでしょ。ま、俺を生き残らせるための犠牲になったことを地獄で喜んでてよ。」
タマは慎重に廊下を歩く。これで一対一だ。
優秀な刑事である自分と、大方素人であろう危険人物。出会い頭の撃ち合いで負ける気は無い。早撃ちというものは反射神経と握力と判断力、更には体全体の筋肉を適切に連動させる総合運動だ。文武両道の己が負けるわけがないと自負している。
優秀な刑事である自分と、大方素人であろう危険人物。出会い頭の撃ち合いで負ける気は無い。早撃ちというものは反射神経と握力と判断力、更には体全体の筋肉を適切に連動させる総合運動だ。文武両道の己が負けるわけがないと自負している。
「……ここにもいないか。」
素早くクリアリングした室内を見てこぼす。事務室らしきそこに動くものといえば加湿器ぐらいだ。この水滴型の光る加湿器どこでも見るな。殺し合いの会場にまであるのかよ。会場設営する時に大量購入して安く仕入れたりしているんだろうか。
「ドン・キホーテあたりで買ってるのかな、いやまさか……」
どうでもいいことを考えつつどうでもいいことを呟いていたところに異変を感じる。
痰が絡む。息をすると喉から鼻にかけてが違和感がある。というか、苦しい。息が、できない。
痰が絡む。息をすると喉から鼻にかけてが違和感がある。というか、苦しい。息が、できない。
「ガボボゾザボアッ、ガハワッ!?」
チョークサイン、それは窒息状態にあることを示す動き。己の首を両手で締め上げるような独特な所作を、タマは拳銃を取り落として行ってしまう。
床に転がり大袈裟なほどにもんどり打つ彼の心中にあるのは1つ。なんだこれは。
床に転がり大袈裟なほどにもんどり打つ彼の心中にあるのは1つ。なんだこれは。
「チッ、3人も殺しやがって。オレが狙ってたのによぉ!」
タマには理解できない。己を苦しめているのが目の前に現れた男、片桐安十郎ことアンジェロの持つスタンドによるものだと。
アンジェロのスタンド『アクア・ネックレス』は水に溶け込み水を操る。氷も、水も、水蒸気も、水だ。
アンジェロはずっとタマを、そして水族館に来た純子たちを狙っていた。慎重なマーダー、タマが恐れた存在が正にアンジェロであった。
アンジェロのスタンド『アクア・ネックレス』は水に溶け込み水を操る。氷も、水も、水蒸気も、水だ。
アンジェロはずっとタマを、そして水族館に来た純子たちを狙っていた。慎重なマーダー、タマが恐れた存在が正にアンジェロであった。
(銃撃戦は予想していたが、なんだこれは、まるで魔法みたいな──)
「特にアイツだ! あのピンク頭! また目の前で殺してやりたかったのに! それが! お前の! せいで!」
「特にアイツだ! あのピンク頭! また目の前で殺してやりたかったのに! それが! お前の! せいで!」
命の危機だというのに我が身に起こったことを考えずにはいられないのは警察の性か。しかしそれも、アンジェロの執拗な踏みつけに中断される。
アンジェロはキレていた。ブチ切れていた。放送で示された新ルール、第一放送終了時点で5キルしていた彼は同率2位につけている。そのことを本人は知らないが、このままのペースで殺し続けていけばとっとと首輪も外せるとタマたち4人を殺すのを目論んでいたのに、3キル奪われてしまった。その中にはオモチャにしていたピンク髪の女もいたのに。
アンジェロはキレていた。ブチ切れていた。放送で示された新ルール、第一放送終了時点で5キルしていた彼は同率2位につけている。そのことを本人は知らないが、このままのペースで殺し続けていけばとっとと首輪も外せるとタマたち4人を殺すのを目論んでいたのに、3キル奪われてしまった。その中にはオモチャにしていたピンク髪の女もいたのに。
「お前も! 入れれば! 9人! 殺せたのに! 楽には殺さね」
ダァン。
「……………………あ?」
執拗に踏みつけそのムカつくイケメンを整形してやると振り上げた足がたたらを踏む。アンジェロは態勢を立て直すことができない。全く体が言うことを聞かず、そのまま倒れ込む。
「え、なんで、待て待て待て待」
ダァン。
更なる銃声が響き、アンジェロの頭部を粉砕する。
藤原千花は弾の無くなったショットガンを尚も引鉄を何度も引き、ようやく弾切れを認めると、アンジェロの死体に投げつけた。
藤原千花は弾の無くなったショットガンを尚も引鉄を何度も引き、ようやく弾切れを認めると、アンジェロの死体に投げつけた。
「は、灰城さん?」
「静かにしてくれるかな。」
『話を合わせて、死んだふりをして』
(死んだふり?)
「静かにしてくれるかな。」
『話を合わせて、死んだふりをして』
(死んだふり?)
藤原は困惑して一度純子と顔を見合わせると、頷いて撃たれたふりをして倒れた。
タマから見せられたスマホの画面に書かれた文字の意図は読めなかったが、タマが自分たちと微妙に離れた位置に銃を撃ったことから何か考えがあってのことだろうと、とりあえず乗っておく。
タマから見せられたスマホの画面に書かれた文字の意図は読めなかったが、タマが自分たちと微妙に離れた位置に銃を撃ったことから何か考えがあってのことだろうと、とりあえず乗っておく。
「これでキルスコアは3か。」
『囮になるので、音を立てないで私の後ろを離れてついてきてください』
『私が襲われたら、その間に静かにここから逃げてください』
「悪く思わないでよ、君たちあの怪我じゃどのみち死んでたでしょ。ま、俺を生き残らせるための犠牲になったことを地獄で喜んでてよ。」
『囮になるので、音を立てないで私の後ろを離れてついてきてください』
『私が襲われたら、その間に静かにここから逃げてください』
「悪く思わないでよ、君たちあの怪我じゃどのみち死んでたでしょ。ま、俺を生き残らせるための犠牲になったことを地獄で喜んでてよ。」
なるほどそう言うことかと純子と目配せしてからタマに微かに頷いてみせた。
純子は付き合いのある菊地たちがやりそうなことなので直ぐに理解が追いつくし、藤原もこういう仕掛けはよくやるタイプだ。それに彼女は知り合いの名前が呼ばれていない。そういう意味ではクラスメイトだった仲間の死を連続で告げられた純子よりも事態を受け入れられていると言えた。
純子は付き合いのある菊地たちがやりそうなことなので直ぐに理解が追いつくし、藤原もこういう仕掛けはよくやるタイプだ。それに彼女は知り合いの名前が呼ばれていない。そういう意味ではクラスメイトだった仲間の死を連続で告げられた純子よりも事態を受け入れられていると言えた。
「……ここにもいないか。」
タマはそう言いながら周囲を伺うふりをしてアイコンタクトしてくる。だんだんと水族館の奥の方へと進んでいるようだが、ああいうふうに囮になって、危険な人間も誘導する気なのだろう。
「橋口ちゃん、歩ける?」
「大丈夫です。でも……」
「……行こう。」
「大丈夫です。でも……」
「……行こう。」
純子が振り返った先に誰がいるのかは知っている。知っていて今まで見ないようにしていた。この短い間にまた1人自分と知り合った人が死ぬなんてことを、直視できない。
「放送で名前が呼ばれなかった、まだ生きてるよ。」
「……でも……どうしたらいいかわかんないよ。」
「ガボボゾザボアッ、ガハワッ!?」
「……でも……どうしたらいいかわかんないよ。」
「ガボボゾザボアッ、ガハワッ!?」
逡巡する暇など、藤原には与えられなかった。
部屋に入っていったタマが、奇声を上げるのが聞こえてくる。何かが落ちたような物音もだ。何かが起こっている。何かがタマを殺そうとしている。
部屋に入っていったタマが、奇声を上げるのが聞こえてくる。何かが落ちたような物音もだ。何かが起こっている。何かがタマを殺そうとしている。
「助けに行こう。」
「え、に、逃げるんじゃ。」
「チッ、3人も殺しやがって。オレが狙ってたのによぉ!」
「え、に、逃げるんじゃ。」
「チッ、3人も殺しやがって。オレが狙ってたのによぉ!」
純子の言葉に、戸惑う。
何が正解かわからない。
タマの言ったように純子を連れて逃げるべきなのか?
純子の言ったようにタマを助けに行くべきなのか?
そもそもさっき純子は別のことを言っていた。
状況は変わった。
何をすればいい?
何が正解かわからない。
タマの言ったように純子を連れて逃げるべきなのか?
純子の言ったようにタマを助けに行くべきなのか?
そもそもさっき純子は別のことを言っていた。
状況は変わった。
何をすればいい?
「特にアイツだ! あのピンク頭! また目の前で殺してやりたかったのに! それが! お前の! せいで!」
「…………え?」
「…………え?」
なんだ、今何と言ったのだ?
ピンク頭? 私のことか? でもまた目の前で殺してやりたかった。『また』『目の前で』『殺してやりたかった』?
意味がわからない。
どうして。
『また』。
神田あかねのように?
ピンク頭? 私のことか? でもまた目の前で殺してやりたかった。『また』『目の前で』『殺してやりたかった』?
意味がわからない。
どうして。
『また』。
神田あかねのように?
「藤原さんっ。」
「お前も! 入れれば! 9人! 殺せたのに! 楽には殺さね」
「お前も! 入れれば! 9人! 殺せたのに! 楽には殺さね」
気がつけば駆け出していた。
足音を立てずに軽やかに走れたのは、経験の賜物だろうか。
9-4=5、私たち4人。
5-3=2、喫茶店で死んでいった3人。
2-2=0、水族館で見つけた赤ちゃんとおじさん。
ダァン。
足音を立てずに軽やかに走れたのは、経験の賜物だろうか。
9-4=5、私たち4人。
5-3=2、喫茶店で死んでいった3人。
2-2=0、水族館で見つけた赤ちゃんとおじさん。
ダァン。
「……………………あ?」
なるほど、コイツは悪いやつだ、人間の屑だ。
「え、なんで、待て待て待て待」
「はいクズ確定ぶっ殺します。」
「はいクズ確定ぶっ殺します。」
ダァン。
想定が甘かった。
護身用として必要だったし、仮に取り上げたとしてもそこらじゅうに落ちていて意味が薄かっただろう。
何より、自分は生きている。
灰城環という男は藤原千花のおかげで死なずに済んだのだ。
藤原千花が殺人を犯したおかげで。
護身用として必要だったし、仮に取り上げたとしてもそこらじゅうに落ちていて意味が薄かっただろう。
何より、自分は生きている。
灰城環という男は藤原千花のおかげで死なずに済んだのだ。
藤原千花が殺人を犯したおかげで。
「ゴホッ……ゴホッ……」
「大丈夫ですか、えっと。」
「大丈夫ですか、えっと。」
まだ当分喋れそうに無い。タマは警察手帳を取り出すとそれを開こうとして、できずに床に倒れ込んだ。
「灰城環、タマさんですね。」
あまりにも時間が無かった。説明する手段も乏しかった。
未知の手段で攻撃された。どんなトリックか今でもわからない。
そんな中、自分を救ってくれた藤原千花は、間違い無く命の恩人である。
なのに、誉める気持ちが全く湧いてこなかった。
未知の手段で攻撃された。どんなトリックか今でもわからない。
そんな中、自分を救ってくれた藤原千花は、間違い無く命の恩人である。
なのに、誉める気持ちが全く湧いてこなかった。
「藤原さん。うわっ。」
「あ、ごめんね。汚いの見せちゃって。」
「……それじゃあ、もう、敵はいない……ってこと?」
「うん、そうだね。」
「……じゃあ、綾瀬くんを助けに行きましょう。血を止めないと。タマさんも怪我してるし、包帯とか探さなきゃ。」
「オレはいい……」
「あ、ごめんね。汚いの見せちゃって。」
「……それじゃあ、もう、敵はいない……ってこと?」
「うん、そうだね。」
「……じゃあ、綾瀬くんを助けに行きましょう。血を止めないと。タマさんも怪我してるし、包帯とか探さなきゃ。」
「オレはいい……」
青白い顔で話す純子の後ろから、頭部の欠けた少年が現れた。
純子も、それまで無表情だった藤原も悲鳴を上げる。しかし驚きの具合で言えば声の出ないタマも同じだ。
よたよたと少年、綾瀬留衣は部屋に入ってくると、尻餅をつくように床へと座り込んだ。その拍子にドロリと片目がこぼれ落ちそうになる。綾瀬はそれを片手で受け止めて、頭を上に向け、眼窩へと流し込むように戻した。
純子も、それまで無表情だった藤原も悲鳴を上げる。しかし驚きの具合で言えば声の出ないタマも同じだ。
よたよたと少年、綾瀬留衣は部屋に入ってくると、尻餅をつくように床へと座り込んだ。その拍子にドロリと片目がこぼれ落ちそうになる。綾瀬はそれを片手で受け止めて、頭を上に向け、眼窩へと流し込むように戻した。
「オレの……傷は……もう……ダメだ……」
「綾瀬……」
「綾瀬……」
先程までと打って変わって、藤原は恐怖をありありと顔に浮かべていた。顔には冷や汗が伝い、顔から色を失っていく。そんな状態では言葉を発せず、辛うじて純子だけが名字を呟けた。
「良かった、生きてて……あの……さっきは見捨ててゴメン。」
「いや……いい……そうしてほしくて……死んだふりしてた……」
「え……どうして……」
「オレは……足手まといに……なりたくない……それに……」
「いや……いい……そうしてほしくて……死んだふりしてた……」
「え……どうして……」
「オレは……足手まといに……なりたくない……それに……」
綾瀬は喋りながら床を這う。落ちていた拳銃に手を伸ばすと、藤原へと滑らせた。
「藤原さん……お願いがあります……蘭が……どうして死んだのか……蘭を殺した奴を……オレの代わりに……」
「え、私!?」
「追加ルール……1人殺しているあなたに……殺害数を集めた方がいい……」
「え、私!?」
「追加ルール……1人殺しているあなたに……殺害数を集めた方がいい……」
この時ほどタマは自分の声が出ないことを呪ったときは無かった。
無理矢理叫ぼうとしても、掠れた息しか出ず、下手なリコーダーのような音がして、こんな状況でなければ笑っていただろう。
無理矢理叫ぼうとしても、掠れた息しか出ず、下手なリコーダーのような音がして、こんな状況でなければ笑っていただろう。
「オレと……その人の……これも……」
そう言いながらサムズアップ。その指先で首輪も指差す。その腕が横に動き、首を搔き切る動作になる。
「サンプルに……すみません……こんな、でも、早く……」
ドサリ、と横たわる。だが綾瀬の目は爛々と藤原へと向けられ続けていた。片方の目は外れて床に転がり、残った1つの目が藤原の瞳を追う。
「そんな……憎くもない人を殺すなんて……」
靴の先の拳銃を見ながら藤原は呟く。無理だ、そう言おうとして、綾瀬を見て。
「あなたにしか……頼めません……あなたはもう……」
殺しているから。
そう言われた気がした。
そう言われた気がした。
「藤原さん。」
拳銃を手に取る。
これは自分がやらなくてはいけないことだ。
タマにも、もちろん純子にも任せられない。
これは自分がやらなくてはいけないことだ。
タマにも、もちろん純子にも任せられない。
パァン。
「やめろぉ!」
藤原千花、キルスコア保有数 2
【0609 『西部』水族館】
【スネリ@妖界ナビ・ルナ(10) 黄金に輝く月(妖界ナビ・ルナシリーズ)@フォア文庫】
【目標】
●大目標
ルナを守り、殺し合いを止める。
●中目標
ルナと合流する。
●小目標
あの少女(藤原千花)は殺し合いに乗っている……?
【目標】
●大目標
ルナを守り、殺し合いを止める。
●中目標
ルナと合流する。
●小目標
あの少女(藤原千花)は殺し合いに乗っている……?
【灰城環@天才謎解きバトラーズQ vs.大脱出! 超巨大遊園地(天才謎解きバトラーズQシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
今回の事件がリドルズによるものの可能性を考えつつ巻き込まれた人間を保護する。
●中目標
協力できる参加者を集める。
●小目標
???
【目標】
●大目標
今回の事件がリドルズによるものの可能性を考えつつ巻き込まれた人間を保護する。
●中目標
協力できる参加者を集める。
●小目標
???
【橋口純子@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】
●大目標
殺し合いから脱出する。
●中目標
仲間を探す。
●小目標
???
●大目標
殺し合いから脱出する。
●中目標
仲間を探す。
●小目標
???
【藤原千花@かぐや様は告らせたい―天才たちの恋愛頭脳戦― まんがノベライズ 恋のバトルのはじまり編@集英社みらい文庫】
【目標】
???
【目標】
???
【脱落】
【片桐安十郎@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
【綾瀬留衣@宇宙からの訪問者 テレパシー少女「蘭」事件ノート9(テレパシー少女「蘭」事件ノートシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【片桐安十郎@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
【綾瀬留衣@宇宙からの訪問者 テレパシー少女「蘭」事件ノート9(テレパシー少女「蘭」事件ノートシリーズ)@講談社青い鳥文庫】