ダーグブルーの水平線が、日の出と共に柔らかなピンク色に変わっていく。
暖かな日差しと、木々のざわめく音、優しい潮騒が砂浜に座り込む二人の人影を包みこんでいる。
しかし、普段なら心和むであろうこの光景も
今の二人の心を休ませることは出来ないらしい。
「そんな・・・アヴドゥルが死んだ?」
がっくりと膝をついた
花京院典明がそうつぶやいた。
自分よりもはるかに戦闘経験が豊富なあのアヴドゥルが?
「ねぇ、これだけ騒ぎとか起こってるんだから誰か気づいてくれるよね?
警察とか助けに来てくれるよねっ??」
花京院から距離をとって座っていた
グェスが言う。
荒木の部屋から生還してから今まで一言も口を利かなかった彼女だが、
あの不安をかきたてる放送に思わず口を開かずにはいられなかったようだ。
時間の経過というやつは、彼女の精神を話が出来るまでに回復させたらしい。
もっとも、支給品なのであろう物体は花京院に取られまいとしっかりと抱きしめたままであったが。
グェスのそんな様子をゆるゆると横目でみながら花京院は非情な現実をつきつける。
「残念ながら・・・その可能性は限りなくゼロに近いと思われます。
僕のスタンドを無効化したあの力、そして先ほどの放送、あの態度。
このゲームを邪魔されないという絶対の自信があるのでしょう。
第三者が助けにきてくれるなんていう甘い期待はしない方がいい。」
アヴドゥルの死という事実に投げやりな言い方になっていたかもしれない。
そんな花京院の言葉は、グェスを打ちのめすには十分すぎる材料だった。
「もう嫌っ!!何なのよ!わけわかんない!!」
今まで溜まりに貯めてきたストレスが花京院の言葉で爆発してしまったらしい。
ついには砂浜にへたりこんで泣きじゃくり始めた。
「殺し合いって何よ!あたしなんかが勝てるわけないじゃん!
出してよっ!ここから出してよぅ・・・!」
子供のように涙を流すグェスの姿に花京院は再び罪悪感で心が冷えてゆくのを感じた。
人間、自分よりパニックに陥った者を見ると冷静になるものである。
(さきほどの荒木の邪悪さを感じ取れなかった事といい、この反応といい、
彼女は間違いなく一般人だ・・・)
それを考えると、彼女のような人間までこの殺し合いに参加させた荒木に対する怒りが
ふつふつと沸き上がった来る。
(もし承太郎達がこの事を知ったら・・・ハッ!?
そうだ・・僕が一番にすべき事はここで打ちひしがれてる事じゃない。
承太郎達に荒木の情報を伝え、一刻も早く荒木を倒し、
彼女のような巻き込まれた人達をこの糞ったれなゲームから解放することなんじゃないか!
なんのために自分は命を賭けてまで荒木から情報を聞き出したのではなかったのか!
そ の た め に は っっ!!)
「グェスさん!!」
いきなり自分の名前を呼ばれた事と、バッ!!と振り返った花京院に気押され、
グェスは思わず後ずさった。
「ななな何よ!?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
花京院は大きく息を吸い込むんでこう言い放った。
「僕の仲間になってくれませんか!?」
バァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
という効果音が聞こえてくるんじゃないかなってなくらい堂々とした宣言であった。
「・・・・・・・・・・えええええええええええええぇ!?
ちょっ・・・おまっ・・・・それって・・・あんたと一緒に
あたしにあの荒木飛呂彦っていうおっさんと戦えってのかよォ~~~ッ!
無理無理無理無理絶対無理!死ぬって!」
ぶんぶんと首を振るグェスに、花京院はしっかりと目を見つめて言った。
「心配はいりません、貴女の事は僕が命をかけても守りますから。」
「んな大袈裟な」
「貴女のおかげで思い出せたんです。ここにみんながいたらどうするかって。
アヴドゥル・・・死んでしまった僕の仲間の名前です・・・。
もしアヴドゥルがここにいたならば、こんな殺し合いはすぐにでもやめさせて、自分の命を賭けてでも
他の参加者が生還できるような手段を考えるでしょう。
彼は・・そういう人でした。」
『Yes,I Aam!!チッチッ♪』という声が聞こえたような気がして花京院はわずかに微笑した。
一方のグェスは花京院の瞳の力強さに思わず目をそらしてしまう。
「あ・・・あたし弱いよ?能力だってあんたみたいに強くないし
ただちっちゃくするだけだし。きっと足手まといに」
「僕は戦力として貴女を仲間にしたいのではありません。
ただ、僕と一緒に行動してほしいだけなのです。
いや・・・・別に仲間じゃなくてもいい、僕と友達に・・・なって下さい。」
友達。その言葉にグェスは自分の体の震えがピタリと止まるのを感じた。
徐倫と友達になりたっくて「グーグードールズ」で人形にしたのはいいものの、おもいっきり反撃され。
わけもわからずこの変な殺し合いに参加させられ。
そして今、自分の目の前に立っているこの男は友達になってくれと言っている。
わけがわからない。今日一日で変化が多すぎる。
しかし・・・パンク寸前のグェスの頭を「友達」という言葉が埋め尽くしてゆく。
グーグードールズをつかわなくてもいい友達。
他の人と同じような普通の友達。
肩を並べて歩ける友達。
それはひょっとすると、自分がこの能力に目覚める前から
ずっと欲してきたものではないのだろうか?
殺し合いに巻き込まれた恐怖心より、「友達」という言葉の甘美さが
ゆっくりとグェスの心を傾けていく。
「うぅ・・・・わかった、友達でいいのなら・・・・。」
「ありがとうございます。」
グェスはごしごしと涙をぬぐうと
一礼を返す花京院に自分から近づいてゆき、立ち止まった。
「よろしく、えーとMr.花京院?」
と、おずおずと手を差し出したグェスに、花京院は微笑んで手を握り返した。
「花京院、でかまいません。僕も貴女の事はグェスと呼ばせていただきますので。
・・・・・友達はお互い呼び捨てにしあうものです。」
「そ・・そうよね!じゃあ、か花京院」
「グェス」
「花京院」
「グェス」
「花京院」
水平線のダークブルーはもう見えない。キラキラと輝きはじめた水面を背に
握手を交わす二人を日差しが包み込んでゆくーーー
「いや、何か恥ずかしいし!?おかしいし何この空気!?」
グェスは思わず花京院の手を振り払った。顔が真っ赤である。
「???空気?別におかしな感じは・・・まさか、新手のスタンド使いかっ!?」
「そうじゃねぇし!!あぁそうだ花京院!これ!」
この空気を変えようとグェスは今まで抱きしめていた荷物をバン!!
と花京院に突き出した。
「グェス・・・これは?」
「いやねー?ほら花京院と荒木がジャンケン?だっけ?やってる時に、
荒木のおっさんあたしの方全然注意払ってなかったみたいだったからさ、
ランプ今のうちに取り返せないかなーとか思ったわけですよ。
んでグーグードールズこっそり出して、取りに行かせたはいいんだけど、
ランプとるまで根性なかったから・・・代わりにっていったら変だけど
机の上にあったのをその・・・パチっちゃいました。
あ、でもたいしたもんじゃ無いと思うよ?開かないし。」
照れ隠しで早口になっている。
花京院はグェスの手ににぎられたその本を見つめた。
かなり古いものなのだろう、表紙は色あせ角は降り曲がっていた。
所々破れたり、濡れて乾いたかのような箇所も見られた。
もし・・・・この光景を荒木飛呂彦が見たら悲鳴を上げていたかもしれない。
その本の表紙にはこう捺印されていたからだ。
「荒木飛呂彦の日記」と。
【花京院とグェスの友達百人計画】
【D-9サルディニアの海岸/1日目/早朝】
【グェス】
【時間軸】:脱獄に失敗し徐倫にボコられた後
【状態】:落ち着いた、ちょっと恥ずかしい
【装備】:なし
【道具】:支給品一式 荒木飛呂彦の日記
【思考・状況】
1.友達として花京院に協力する
2.とにかく生き残りたい
3.ゲームに勝つ自信はない
4.徐倫には会いたくない
5. ヴァニラやばい。ヴァニラやばい。
【備考】
- グェスは、エルメェスや他の刑務所関係者は顔見知り程度だと思っています。
- 荒木飛呂彦は日記が無くなった事にまだ気づいていません。
【花京院典明】
【時間軸】:ゲブ神に目を切られる直前(目、顔に傷なし。恐怖を乗り越えていない)
【状態】:とても喉が渇いている。恐怖は乗り越えたようです。黄金の精神。
【装備】:なし
【道具】:ジョナサンのハンカチ(ジョナサンの名前入り)、ジョジョロワトランプ、支給品一式。
【思考・状況】
1.自分の得た情報を信頼できる人物に話す。(承太郎、ジョセフが望ましい)
2.仲間と合流しなければ…
3.巻き込まれた参加者の保護
4.安心して飲める水が欲しい。
5.荒木の能力を推測する
※水のスタンド(=ゲブ神)の本体が
ンドゥールだとは知りません(顔も知りません)
※ハンカチに書いてあるジョナサンの名前に気づきました。
※水や食料、肌に直接触れるものを警戒しています。
※4部のキャラ全員(トニオさん含む)を承太郎の知り合いではないかと推測しました。
※1で挙げている人物は花京院が100%信頼できて尚かつ聡明だと判断した人物です。
決してポルナレフや
イギーが信頼出来ないという訳ではありません。
※荒木から直接情報を得ました
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
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最終更新:2009年11月03日 21:32