ベッドの上で聞いたその結末に少女は泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、やがて泣き疲れて少しだけ眠り―――――




――――――……そして目を開けた。



◆ ◆ ◆



「え~DIO死んじまったのか~」
「お? DIOなんかシラネって感じですぐ興味なくすと思ってたけど案外未練あるんだな」
「おれDIOんトコ戻ったらもっかい死体集めて、でーっかい作品作りたかったんだよう。それにDIOは頭イイし、色々教えてほしかったんだよなあ」
「……」
「なら次はここから近いDIOの館ってとこに行ってみるか。お前の興味を引くものもあるかもしれんぜ」
「死体?」
「あるかもな」
「角砂糖は?」
「たぶん台所には」
「ならいこーぜ!」
「……」
「お前もいいだろ? ああ別にここで別れてもいいんだぜ、妹ちゃんを確実に探し出せるのも監視できるのも俺だけだろうがな」
「……」
「んじゃ決定な」



三人の男たちは西を目指す。



◆ ◆ ◆



どうやら眠ってしまっていたようだ。トリッシュは顔にかかった数本の髪を手で払うと傍らに置いていた時計を見て、反射的に飛び起きた。

「もう18時を過ぎちゃってるじゃない!! 放送は? どうなったの!?」
「安心しなよ、俺も玉美もちゃんと聞いてる。トリッシュこそ起きて大丈夫なのか?」
「私ならもう大丈夫よ。それより放送は……」

こちらに、と放送内容の書かれた紙をうやうやしく差し出してくる玉美。さっと目を通そうとして―――4人目の名前に視線が強張る。

(ミスタ……何てこと……)

ショックだった。あまりにも生々しいショックが身体を貫き、トリッシュは再びソファに沈み込んだ。

(彼がいつの時間から連れてこられたのか、私と同じ世界の彼だったのか、わからない……わからないけど)

誤解を恐れずに言うならばアバッキオやブチャラティは既に死んでいる人物で、ブチャラティとの再会と別離は神様が与えてくれた奇跡とでも
美しく飾る事だってできる。だがミスタは他の二人と違う、トリッシュと同じ『今』を生きている人物だったのだ。明日会いに行こうと思えば会えるはずの
人間がいつの間にか死んでしまった。もう会えない、声も聞けないのだ。トリッシュにとっては三度目の仲間との永遠の別れ。慣れる訳が、ない。

「早く読みなよ、続き」

ナランチャが硬い表情で促してくる。
急いで読み進めようとしてミスタの名前以降の筆跡が違う事に気付いた。きっと最初はナランチャが、続きは玉美が書いたのだろう。
そうだった、彼はまだここに集められた人たちの時間や時空の差異を理解しきっている訳ではない。自分以上にショックを受けていてもおかしくないだろうに
取り乱しもせず、ただぎゅっと引き締められた口元が余計痛々しい。
幸いミスタ以外の知り合いは名を呼ばれてはいなかったが、その代わりにスティーブン・スティールの死とファニー・ヴァレンタイン大統領の存在。
更に次の放送までの禁止区域が発表されなかったことと合わせて、衝撃に次ぐ衝撃に別の意味でくらくらしてくる。


「……どうでもいいんだ」
「え?」
「死んだジジイも、大統領ってやつも俺にはどうでもいいんだ」

ナランチャは俯き気味に、自らに言い聞かせるように言葉を噛みしめてゆく。

「いきなりこんな変な所に連れてこられて、いろんな奴らが現れてはどっかに消えちまって、未来だとか過去だとかもう訳わかんないことだらけでさ……
 ハハッ、俺今、本当は不安で一杯なんだ。身体のどこかしこがブルっちまってる」

気持ちを吐きだした直後、ナランチャは意を決したようにトリッシュの手を取って立ち上がらせ、そのまま視線を真っ直ぐぶつけてくる。
弱気な言葉とは裏腹に両の腕を掴んでいる手のひらは熱く、震えてはいない。 

「俺頭悪りぃから一体何がどうなってるのかさっぱりわかんねえけど、今やらなくちゃいけない事は知ってる。
 俺の任務はトリッシュ、君を守ることなんだ」

ともすれば年下の悪ガキくらいにしか思えなかったナランチャがギャングの、男の顔をしていた。同時にほんの少し高い位置に目線があるのに気付く。
ああ、彼は自分より背が高かったのだとトリッシュは初めて意識した。

「これでチームの中で生き残ってるのは俺とフーゴとジョルノ。今トリッシュの傍には(玉美もいるけど)俺しかいない。
 ブチャラティ程頼りにならないかもしれないけどさ、少しは頼りに、てか信頼して欲しいんだ。だから……今度こそ教えてくれよ。
 俺の知らない事、フーゴとトリッシュが隠してたこと、全部さ」

ナランチャは決して愚鈍な少年ではない。分かりやすく言葉にする術を持たなかっただけで、仲間が自分に隠し事をしていたことも、
自分への態度にぎこちないものがあることも感じていたのだ。もしかしたらその僅かな違和感が疎外感に変わり、彼を弱気にさせてしまったのかもしれない。
ナランチャが本来辿るはずだった結末を受け止めきれるのか計りかねて口を閉ざしていたが、今の彼ならもうその必要はなさそうだ。
フーゴもきっとそう言ってくれるだろう。

「ありがとうナランチャ、あなたの事は信頼してるし隠し事をしていたことも謝るわ。でも私どちらかというと、
 守られるよりも仲間として一緒に戦いたい気分なのよね。それでよければ……改めてよろしく」
「トリッシュ……」
「はーいはいはい! ちょっと通りますよー!!」


サラリーマンよろしく手刀を振り回しながら二人を引き離しにかかった玉美。身体が自由になったトリッシュのヒールが顔面に沈み込んでも
ヘコたれずナランチャに食って掛かる。

「てめー放送んときメッチャ落ち込んでたから人がせっかく気ぃきかせて黙っててやったのとゆーのに、
 さっそくトリッシュ様にベタベタしてんじゃねーよこのボケガキが!!」
「何だとこのクソチビ野郎! おめーなんかに気を使われなくたって俺はいつでもバッチリハイテンションだっつーの!!」
「ハン! トリッシュ様が起きるまでぽけーっと口開きっぱなしでブルってたくせに!」
「言ったなこの野郎ー!」

(この二人……意外とかみ合ってるのかしら)


それはそれで頭が痛いのだが、とりあえず取っ組み合いを始める前にナランチャに説明だけはしないといけない。
少しだけ考えたトリッシュは玉美をスタンドで殴って柔らかくしカーペットで簀巻きにして転がすと、見てはいけないものを見てしまった顔のナランチャに
手短に事情を話したのであった。



◆ ◆ ◆



――――――トリッシュ達と時を同じくして



『至急帰還しろ』という事だったが、ジョースターご一行より早く到着しろとは言われていなかったので少しばかり遠回りしながら
急いでいたムーロロの元に届いたDIOからの最後の指令は『ジョースター共が到着したようだ。奴等を片付けるまで教会に近づくな』だった。
異論はあるだろうが、ある意味ムーロロは最後までDIOに忠実に従ったと言えるだろう。DIOに預けていたジョーカーも
サン・ジョルジョマジョーレ教会内で途中まで戦闘の様子を中継していた。建物が倒壊する直前に手元に退避させたので
結末は放送で知る事となったが、あの場にいた約半数が死んだ事実も特にムーロロの心を動かしはしなかった。
むしろ生き残りの人数と面子を考えると依然油断はできないというのが結論だ。

(DIOが消えたのは相当大きいが、まだカーズ、ワムウが残っている。ジョースターの内一人しか道連れにできなかったってのも痛いな。
 そろそろ俺も本腰入れて主体的に動かないとヤバい頃合いだ、遺体の検証と、まずは現状の把握もしたいとこだが……)

館に辿り着いてから一階をざっと探索し終え、ムーロロと琢馬の二人は二階へ上がる階段の前に立っていた。
ここに来ることを提案したのはDIOに未練を残すセッコを駒として引き留めておくためでもあり、一度落ち着いて体制を整えるためでもあった。
琢馬は妹の事がよっぽど堪えたらしく、あれから一言も口を利かなくなってしまった。使い物にならないなら捨てるか処分するのがセオリーだが、
千帆が生きている限りは多少のリスクを負ってでも手駒に加えておく方がマシだと判断して、アヌビス神も持たせたままにしてある。

(面倒だが、落ち着く前に掃除が必要なようだ)

一度来た場所だし血なまぐさい戦闘の痕跡が残る場所などに腰を落ち着ける輩などいないと踏んでいたのだが、どうやら物好きな奴、
いや獣が二階のギャラリー一帯を陣取っているらしい。
抱えた亀にそこらで千切った葉っぱを与えながらのんびり待っていると場違いな声が響き渡る。

「おいスゲ~~ぜ恐竜がいた!! 」

柱の中を通って偵察に行っていたセッコが戻って来るなり突拍子もないことを言い出したのだ。

「恐竜ねえ。何匹いた?」
「でっかいのが二匹だ。あんなん噛まれたらマジ一発だぜ!」

言いながらもなんだか嬉しそうな顔をしている。念の為ウオッチタワーも一枚忍び込ませていたが、間違いないようだ。
さらにセッコは気付いていないが、恐竜たちは好き勝手に動いている訳ではなく、あるドアを守るようにのろのろと往復している。
恐竜を使うのはディエゴ・ブランドーだが、奴はDIOの傍にいたはず。教会から離れる理由があるとしたら遺体絡み。
遺体は場合によっては人体に取り込まれる。琢馬もそうだ。なら遺体を取り込んだ人物を戦闘に巻き込まぬよう移動させたのだろう。
おそらくドアの奥にいるのは――――


「あれブッ倒すのかムー……お? ムーロロどこ行った?」









世界は滑らかに一変する









(ドアの奥にいるのは―――――――――…………)


瞬きすらしていなかった。ただ思考を内側へと向けた刹那、ムーロロがいたはずの固い廊下は毛足の長い絨毯に、
目の前の階段は天蓋付きのベッドに変わっていた。あまりにも自然に変わる世界に思考が追いつかない。

「ここは……どこだ……」

それが軽率な事だと気付いた時にはもう、ベッドを挟んで奥側の端に腰かけた誰とも知れぬ少女に声を掛けてしまっていた。


「怖がらなくても大丈夫よ、私にも経験があるわ」

暗がりの中、こちらに背を向けたまま優しい声色で返してくる。
怖がってなどいるものか。と憤慨しかけて我に返り、素早く周囲を見渡す。壁の質感や内装からいってここはまだ館の中。
更に扉の向こう側から聞こえる重々しい足音も合わせると間違いない、恐竜に守られたあの扉の内側に自分はいるのだ。

「遺体は遺体と引き合おうとしているの……あなた達がこの館に向かっていた時から『感じていた』」

少女はおもむろに立ち上がると窓の方へ向かい、カーテンを開けた。
差し込む月明かりに照らされた腹部は若い身体には不釣り合いに大きく緩やかな弧を描き、どこか背徳的な淫靡ささえ感じさせる。

「遺体の全てを得るのに最もふさわしいのは私。大統領でも、他の誰でもない……私」

「ルーシー・スティール……」

ゆっくりとこちらを振り向いた少女の視線がムーロロを捕えた。
唇をうっすらと開いた表情はルノワールの描く少女のように可憐で、フェルメールのように神秘的で……
ムーロロは微笑んでいるようにも見えるルーシーの瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えながらも、その奥についぞ感情を見つける事が出来なかった。



◆ ◆ ◆



なるべくナランチャの頭から湯気が出てこないように易しい言葉を選んで話したつもりだが、チームのメンバーがそれぞれ別の時間から
連れてこられたこと、少なくともトリッシュの認識ではアバッキオだけでなくブチャラティ、そしてナランチャはボスとの戦いで命を落としている事を
納得してもらうのは何とも骨の折れる手間で、フーゴの気持ちが痛いほど理解できた。

「じゃあ俺は別に幽霊って訳じゃないんだよな。んで、大統領をぶっ殺したら全部元に戻るし俺はサルディニアに戻ると。
 こっちじゃボスが死んでるけどあっちでは死んでないからまた戦わなくちゃいけないってのは面倒だよな……うんうん」

自分の言葉だけで喋っているのでかなり分かり辛いが、内容は何とか詰め込むことに成功した模様だ。
独特の理解の仕方をしているような気がしなくもないがトリッシュはとりあえずこれで良しとすることにした。

「トリッシュ様、さすがにそろそろ移動した方がいいですぜ。19時まであまりありやせんし」
「禁止区域のことよね。でも、こればかりはどこにいたって変わらないんじゃない? 運を天に任せるより無いわ」
「それについて、あっしに考えがありやす。とりあえずついて来て下さいませ」

もう敬語についてツッコむ気は無いが、玉美が珍しくマトモな事を言いだした。確かにトリッシュ自身禁止区域への対処方なんて
考えもしなかったのは事実なので物は試しとついて行ってみる。



「で、あと5分もないけどこれで助かるの?」
「少なくとも被害は最小限に済みますよ。ほら、地図を見て下せえ」

やって来たのはとある交差点。少し歪んでいるので正確に東西南北に分かれている訳ではないが、地図と照らし合わせると
E-4・E-5・F-4・F-5、四つのエリアの丁度境目にあたる。三人は今、道で分けられたエリアにそれぞれ一人づつ立っていた。

E-4にはトリッシュ。
「なるほど、これなら万が一爆発しても犠牲はひとりで済むって訳ね。考えたじゃない」

E-5には玉美。
「ト……トリッシュ様からお褒めのお言葉! 玉美もう死んでもイイ!!」

F-4にはナランチャ。
「げ、気持ち悪ぃなーお前が爆発すりゃいいのに」

また口ゲンカが始まったが、トリッシュも止めに入らない。実際三人とも内心気が気ではないのだから。そうこうしている内に残り10秒を切った。
もうできる事は両手を合わせて祈ることだけだ。静寂の中トリッシュはギュッと目を閉じて全員の無事を祈る。


「9、8、7……」
「6、5……」

(4、3、2、1………………0!)





『禁止区域にくせ――ゴミはいらねェ――スからねェ~~~~~~~~~~どーにか処理しねーとよォ~~~~~~~~~~っ』


「あ!? あわっ、あわっ、アワワ~~~~~!!」

首輪からメッセージが響き渡り、玉美は慌ててトリッシュの方へと猛烈な勢いでダッシュする。
すると道を越えた辺りで繰り返されていた音声がぷつりと止まり、さらに勢い余った玉美が建物の壁に勢いよくぶつかった音が響き渡った後
再び辺りはしんと静まり返る。ようやく緊張から解き放たれたナランチャも急いで駆け寄ってきた。

「おい大丈夫かよ玉美! トリッシュもさあ、こういう時くらい避けずに黙って受け止めてやっても罰は当たらないんじゃないかと思うんだけど」
「だ、だって思いきり私の胸を目指してたから……それより今のってもしかして、禁止エリアに入ってもすぐには爆発しないの?」
「そういう事になりヤフね……ガクッ」

これは大きな収穫だ。これなら禁止エリアが設定される時刻毎にエリアの境界上に立ってさえいれば簡単に避けられる。
けれども良い事ばかりじゃない、と地図のE-5に大きく×をしながらナランチャが言った。

「地下に入ったらどこが境目かわかんなくなるじゃん。あと5時間は移動できる場所が地上だけ。半分になっちまったってことだぜ」
「確かに地下道で迷ってしまう可能性も考えたら地上にいるのが無難かもしれないわ。大統領が禁止区域を秘密にしたのは
 殺すためというより私達の行動範囲を抑制して出会いやすくする、なんて目論見だったりしたのかもしれないわね」
「いーや、あの野郎単純に俺らを馬鹿にしてスカッとしたかっただけだと思いやすよ」
「そうなのか? まあ怒ってはいたけど馬鹿丁寧だったし、い……インキンプレーな奴としか思わなかったけどなあ」
「慇懃無礼だろ、ホントお前って低能だよなー。いやド低能か」
「んだと玉美~お前ちょっといいアイデア出したからって調子こいてんじゃねーぞ!」

またまた何やら始まった。怒鳴りつけようかとも思ったが、爆発の恐怖から解放された安心感から余裕の出てきたトリッシュは
少しばかり微笑ましいとさえ思いながら見守ることにした。

「はっ、嫉妬かよ。まあ俺はトリッシュ様の為に何度も命を張ってるし? お前より断然トリッシュ様の護衛に相応しいけどな」
「ビビッて逃げただけのくせに命を張っただなんてよく言えるよな~俺だったらもっとヤバくなるまで堪えて制限時間を調べるくらいするぜ?」
「ビ、ビビッてねーし俺だってその位できるわ! 丁度今やろうかなーなんて思ってた所だし!」
「じゃあどっちが長く禁止エリアに入っていられるか勝負な、負けた方は護衛失格だぜ!」
「望むところだああ!!」
「やめなさあぁぁぁぁぁぁぁぁあああい!!」



そんなこんなでグダグダとしていた三人だったが、遠く聞こえる急ブレーキと再びスピードを上げてゆくエンジン音によって、弛んでいた空気が
一気に緊迫したものへと変わる。

「ナランチャ、レーダーは!?」
「さすがに遠すぎるぜ。ただ音は……南に行っちまった。ど、どうするよ?」
「どうするも何も車に追いつけるわけねーだろ! それより気付かれてないならさっさと離れるべきだぜ。ね、トリッシュ様?」
「そうだな。フーゴも探さなきゃいけねーし、一旦戻ろうぜ!」

これからの行動方針をまさに考えようとしていた所だけに面食らってしまったトリッシュだったが、やはり最優先すべきは仲間である
フーゴとの合流だ。自分たちが知り得た禁止エリアとその対処法を伝えなければ。それに彼に会えたらその頭脳で考察して欲しいこともある。

「そうね。車の事は気になるけど今はフーゴたちを探しましょう。とりあえず彼が向かったらしいサン・ジョルジョ・マジョーレ教会へ――――」

『北ヘ……』

(え、なに?)

『教会カラ北ヘ…………DIOノ館ヘ、私ヲ助ケテ…………トリッシュ!!』


ナランチャと玉美の方を見るが何も変わりがない。この声はトリッシュだけに、トリッシュの脳内に直接響いたのだ。
地図を取り出して確認する。DIOの館といえば先刻トリッシュが倒れた際にカーペットに現れた地図上で星が『4個』固まっていた場所だ。
そして星よりも重大な事がある。あの声の主はよくわからないが、口調からしておそらく女性。そして自分に助けを求める可能性のある女性は
一人しか思い浮かばない。





(ルーシー……あなたなの?)





◆ ◆ ◆



【E-4(移動中)/一日目 夜】

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:健康
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
0.トリッシュ様のお役に立てた!バンザーイ!!
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)
    不明支給品1~2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.誰も爆発しなかったぜ、ラッキー~
1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう
2.玉美は気に入らないけど 、まあ一緒でもいいか

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:健康
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体
[道具]:基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.今の声……ルーシー!?
2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき?
3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく

[備考]
※19時に設定された禁止エリアはE-5でした。
※トリッシュを中心とした地図は他の遺体の点在箇所を示しています。部位は記されておらず、持っている地図に書き写されました。
  DIOの館以外に星が記されているかどうかは以降の書き手さんにお任せします。



◆ ◆ ◆




(そうよ……あの男がやっていたのと同じ。私にだってできて当然だったのよ)

ベッドの上で少女は腹部を一撫ですると、いとし子に語りかけるように口を開いた。





『心が迷ったなら……やめなさい。ここで立ち止まるのは……カーズ、貴方にとって敗北ではない』




(あの化け物は神なんて信じてなさそうだけど、どんな声で聞こえているのかしら)

自分の時は大統領の仕業だと会うまでわからなかった。まあ、いかにも『それらしい』声で聞こえるのだろうと勝手に解釈して
手に持っていた『右眼球』を両手で包み込む。開いた時には先程までシーツの上に映っていた映像は消え、ただの干からびた遺体の一部に戻っていた。

「ありがとう。お返しした方が良いのかしら?」
「いや、俺はどうやら遺体に嫌われてるみたいなんでね。お前が持っていろ」

そう、トリッシュの遺体が生み出した地図は間違っていなかった。この場には遺体の部位が『4つ』あったのだ。

(DIOへの交渉カードとして隠し持っていた右眼球だったが、あっさり見破られちまった。この女、一度遺体の全てを取り込んだというのも頷けるな)



扉の外で足音が増えた



時刻は19時を少し回ったところ。
ムーロロは少し前から館周辺を数枚のカードに警戒させると参加者への監視を一旦全て解き、可能な限りのエリアにカードを飛ばして
次の禁止エリアを探っていた。会場の端から追い込んでゆくこれまでのエリア設定からして、このC-3が設定されている可能性はかなり低いと見ていたが、
結果はE-5と少し内側に食い込んできた。これを踏まえ今後の予測に脳内で修正を加えてゆく。

早くも回避策を編み出したグループがいたが、ここまで生き残った人間なら何ら不思議な事でもない。
むしろトリッシュ・カーズという二人の遺体所有者が新たに判明したことの方が重要だ。だが彼等の顛末を見届けたのは
薄っぺらいトランプの目ではない。ルーシーが右眼球を通して『見て』『話しかけた』のだ。

「お前が俺に大統領についての情報を洗いざらい吐いたのはこの為か」
「そうでもしなきゃ右眼球を渡して貰えそうになかったもの。でも、これでわかってくれたでしょう?」
「ああ。しかし犠牲を出し過ぎたな。もう少し早くカーズを見つけていれば良かったが、残りが逃げたなら良しとするか」
「片方だけだからかしら、視界が悪くて見辛かったわ……あの化け物は邪魔以外の何物でもないわ。どこか遠くへ誘導できたらいいのだけど」
「同感だ。まあおいおい考えればいい」



ステップを踏んで飛び回る足音と、重厚な足音、時折唸るような咆哮が混じる



途切れていた会話は新たな情報を得たムーロロから再開した。

「ジョニィとディエゴを捉えた。偵察用の恐竜を想定して遠巻きに追跡しているから会話は聞き取れないが、おそらくこちらに向かっている。
 まああの辺りは随分崩落しているし、真っ直ぐ来ようと思ってもそれなりに時間がかかるだろうがな」

禁止エリアの確認と同時にトランプたちを再度参加者たちの追跡へと戻すと早速と言おうか、案の定近くにいたディエゴが一番に補足できた。
ジョニィが同行している理由は不明だが、一度は大統領を倒した男と大統領の後継たる器を認められた男の組み合わせは中々に面倒だ。

「それは大変ね。ねえムーロロ、あなたはこれから私をどうするつもりかしら」
「無意味な質問はよせ。今のところ俺達の利害は一致している、利用でも協力でも名目は何でも構わん」



咆哮は次第に甲高く、苦しそうなものへと変わる。時折金属音も響く。



どうやら自分は思った以上に今回のゲームの真相に近づいているのかもしれない。
遺体と深く関わり合った以上、最悪対大統領も視野に入れてディエゴとジョニィ、どちらかと協力関係を築きたくはあるが、
敵対している二人と同時に交渉するとなると必ずその場でどちらかと決裂しなければならない。
できれば一人とだけ交渉したい。どちらかが死んだ後ならなお望ましい。ならば今はルーシーを連れて奴らを避け、遠くから時に誘導しつつ
つぶし合いを眺めるのが最上と言えるだろう。
ディエゴから離れるという選択はルーシーも同じはずだ。既に彼女の行動が全てを物語っている。

「お前、トリッシュをディエゴに差し出す気だな」
「彼女は遺体を所有しているんですもの、出会ってくれればあの男の気を十分引いてくれるはずだわ。殺されはしないでしょう」
「餌を与えて時間稼ぎ、奴からより遠ざかる寸法か。大したタマだな」

一時は交流し、同世代の女同士通じるものもあっただろうに。何も知らない者を躊躇なく利用する姿は悪と呼べるかもしれないが
三人がこちらに来るならジョースターやフーゴ達に近づくことにもなるし、何気に後でカーズと鉢合わせしないルートをもう一度伝えていた。
仲間との合流のチャンスを作ってやったという点では善と呼べなくもない。



「ムーロロ、『幸福』とは何だと思います? 『天国』とはどこにあるのかしら?」




ひときわ大きな断末魔が響き、巨体が倒れ伏す音が聞こえてきた



◆ ◆ ◆



唐突な質問にムーロロが答える事は無かった。代わりに切り裂かれた扉が音を立てて倒れ、
血塗られた洋刀を持った男と、口元を真っ赤に染め上げた男が二人の眼前に立ちはだかった。

「ムーロロみ~つけた! おめー迷子かよダッセ~な~」
「……」

二人の後ろに恐竜の姿は無い。ただ血の海の中、身体を何か所も食いちぎられた白人男性と輪切りにされた黒人男性の二人が転がっていた。

「聞いてくれよ~こいつら死んだら恐竜じゃなかったんだぜ! これってカラスだろ―……? インコ? スズメ?」
「サギだろ」
「そうサギだぜサギ! あれ、その女の子なんだー!?」
「私はルーシーよ。セッコ……よね。DIOから話は聞いていたわ」
「おーDIOの! じゃあ殺しちゃだめだよな。あれ、何でだったっけ?」

がぜん騒がしくなった。角砂糖は……ここに来るまでに無くなったんだった。
その面倒くさそうな顔を見て琢馬が無言で新しい角砂糖の袋を差し出してくる。とりあえず放り投げてセッコを黙らせた。
わざわざ探してきたらしい。なら琢馬の精神もまだ別の世界に逝ってしまった訳ではないようだ。

「これじゃあなた達、まるで東方の三賢者ね」
「まだ産まれていないだろ。お前から産まれると決まった訳でもない」
「いいえ、遠からず産まれるわ。今に私の元に全てが集まり、産まれて……そして……―――」



(狂った訳でも自棄になった訳でもなさそうだが……危ういな。次の一手はしまっておくか)

遠くを見つめるルーシーの瞳は善と悪、聖と邪、それらの境界を越えた遥か遠くを見据えているようで、未だ捕えどころが無い。
それがムーロロには不可解で、彼女を確実に揺さぶるだろう『スティーブン・スティール』について追及するのは避けた。

「ここの恐竜が死んだことはディエゴにもすぐ伝わるはずだ。早速だが移動するぞ。セッコ、また頼む」
「どこ行くんだ?」
「さて、どこへ行こうか……」



血まみれの歯をむき出しにして笑うセッコ
ルーシーの口から出た『幸福』『天国』というキーワード



(やれやれDIOめ、遺体だけでなく面倒なものまで遺してくれたもんだぜ)



◆ ◆ ◆



【C-3 DIOの館/一日目 夜】


【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:処女懐胎
[装備]:遺体の頭部
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド 、遺体の右眼
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.ディエゴから離れる
1.ムーロロ達を利用し遺体を集める

※遺体の右眼をムーロロから譲渡されました。(サンタナの不明支給品でした)
※遺体を通してトリッシュ・カーズに声をかけています。(カーズに対しては『あの方』を装っています)
 トリッシュをディエゴの元まで誘導し、二人が出会うよう目論んでいます
※その他の遺体所有者を把握しているか、話しかけられるかは不明です

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中
[状態]:健康、精神的動揺(大)
[装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神
[道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、
不明支給品2~3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。
0.??
1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。
2.ムーロロ、セッコと行動。隙があれば始末する?

【備考】
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。

また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
拳銃はポコロコに支給された「紙化された拳銃」です。ミスタの手を経て、琢馬が所持しています。
※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。
 琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖、
    不明支給品(2~12、全て確認済み、遺体はありません)
[思考・状況]
基本行動方針:自分が有利になるよう動く
0.遺体を揃えるためルーシーと行動。ただし警戒は怠らない
1.ディエゴに気付かれる前にこの場を離れる
2.セッコ、琢馬を手駒として引き留めておきたい

【備考】
現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。


【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、血まみれ、興奮状態(小)
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.角砂糖うめえ
1.DIOが死んでしまって残念
2.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい。
3.吉良吉影をブッ殺す

【備考】
『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。

※扉を守っていた恐竜はポコロコとスループ・ジョン・Bの遺体でした。ディエゴが本来監視に付けていた恐竜は現在ディエゴの元に向かっています。



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前話 登場キャラクター 次話
181:男の地図とダイヤモンドガール 小林玉美 202:引力
181:男の地図とダイヤモンドガール ナランチャ・ギルガ 202:引力
181:男の地図とダイヤモンドガール トリッシュ・ウナ 202:引力
174:されど聖なるものは罪と踊る ルーシー・スティール 194:キングとクイーンとジャックとジョーカー
174:されど聖なるものは罪と踊る カンノーロ・ムーロロ 194:キングとクイーンとジャックとジョーカー
174:されど聖なるものは罪と踊る 蓮見琢馬 194:キングとクイーンとジャックとジョーカー
174:されど聖なるものは罪と踊る セッコ 194:キングとクイーンとジャックとジョーカー

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最終更新:2017年12月06日 09:53