第041話 ハガキは盗んだ ◆JI0DYaB8oI


「おーい!ピヨ彦~~!ぴ~よ~ひ~こ~!出てこーい!」
妙な形に破れた服を着た男、ジャガーは、デスノートを振り回しながら道を歩いていた。
歩きながら、ピヨ彦の名前を大声で叫んでいる。
「出てこないとデスノートに名前書いちゃうぞー!」
鉛筆を取り出して、デスノートに名前を書く振りをするジャガー。
そのまましばし動かなくなると、辺りをキョロキョロと見回す。
「……やっぱり出てこないか…ふぅ」
ずっと叫び続けていて喉が渇いたジャガーは、水を取り出して一口飲む。
そして、今さっき周囲を見回した時に見つけた、郵便局の入り口を示す看板に向かって行った。
「郵便局……使えるな」

『ピヨ彦へ
 平瀬村へ向かう。
 このハガキを読んだらピヨ彦も平瀬村へ来てくれ。
 ハマーには知らせなくていいぞ。
                            ジャガーより』

ジャガーは、郵便局にたくさんあったハガキに、ピヨ彦へのメッセージを書き残した。
「よし、これを郵便局の周辺にたくさん貼っておこう」 
自分の居場所を無差別に知らせる危険はあるが、それでもピヨ彦にこちらの居場所を伝えたい。
いつもふざけてるようなジャガーだが、いつも彼なりに真面目に行動しているのだ。

しばらくして、郵便局の周囲にハガキを貼り終えたジャガー。
「よし、平瀬村へ向かうとしよう」
ピューピューと口笛を吹きながら、ジャガーはノンキに歩き始める。

そこへ、横からヌッと巨大な影が現われた。
「おい」
「ん?なんだ、キミは…随分と大きいな」
現われたのは、2メートルを越す大男。
手には鉈が握られているが、後ろ手に持っていて、交戦する意志がないことを示しているつもりらしい。
「でかいのは元々だ、ほっといてくれ」
出会い頭に「でかい」と言われてちょっとムッとしたのか、大男はややぶっきらぼうにそう言い返す。
ジャガーはそんな大男の顔をまじまじと見つめると、不意に小さく笑った。
「(人間離れした風貌だなー…ボス猿って感じだ)プススス」
「? なんだ、笑ったりして。そんなことより口笛なんか吹いたりして、場所を教えてるようなもんだぞ。
 危険だと思わないのか?」
「大丈夫さ、ボス郎!お前のこと、信じてたぜ!」
ジャガーは親指をグッと立てて突き出すと、にっこり笑ってみせる。
その意味不明な言動に大男は、あっけにとられて固まった。
「(何を言ってるんだ、コイツは。だいたい俺はボス郎じゃない。桜木の奴にはボス猿とか呼ばれてるが…
 いや、そんなことはどうでもいい。『俺のことを信じてた』だと?俺を知ってるのか?)」
混乱する大男。
辛うじて口から出たのは、名前の訂正だけだった。
「いや…俺はボス郎じゃなくて魚住だ」
「まぁ、それはどうでもいいけどさ」
「(…よくねぇ)」

ジャガーはふと魚住を見上げると、その顔を見て眉をしかめた。
「それよりお前、顔に何かついてるぞ、汚ねぇなぁ…」
「ん…?」
魚住が自分の顔に触ってみると、乾きかけた血が手のひらにこびり付いた。
「うおっ!な、なんだこりゃあ!」
「おいおいボス郎、よく見るとおでこに怪我してるじゃないか。自分で気づかなかったのか?」
「なに?…っ、本当だ…血は止まってるみたいだが……あ、あの時か!」
傷口を触りながら、魚住は観音堂でのことを思い出す。
興奮していた魚住は木に頭突きを繰り返したのであった。
「そうだ、いや、心配させて悪かった。これは自分でやったんだ」
「自分で……?」
ジャガーの脳裏に、喜々として自分のおでこに傷をつける魚住の姿が浮かぶ。
「なんか気味悪いなお前…」
「おい!変な誤解するな!これはな…」
魚住は慌てて事情を説明し始めようとした。

…が、ジャガーにさえぎられてしまった。
「それは別にいいんだ。別にボス郎が変態でも俺には関係ないことだからな。
 …そんなことより、ピヨ彦を知らないか?」
「いや待て、俺は変態なんかじゃ」
「いいんだよ、誰でも人に言いたくない部分はあるさ。…もう聞いちゃったけどな」
「だから違うと言ってるだろう!」
魚住は息も声も荒げてジャガーに掴みかかるが、ジャガーはそれをするりとかわす。
「まぁまぁ、細かいこと気にしてると立派な大人になれないぞ」
「…わかったよ」
別にジャガーの言うことに納得したわけではない。
これ以上言い合っても無駄だと判断したようだ。
「それで、ピヨ彦を探してるんだが、知らないか?」
なんだそれはと思う魚住。名前にしては変だ。
「ピヨヒコってのはあだ名か?変な名前だが…」
「なんだと!ピヨ彦のどこが変なんだ!そんなこと言ったらピヨ彦が可哀想だろう!」
「…あ、あぁスマン」
とっさに謝る魚住。
もうジャガーには逆らわないことにしたようだ。
「いいか、ピヨ彦ってのはな……」

ジャガーはピヨ彦についての情報、大雑把な外見などを魚住に話した。
「なるほど、大体分かったよ」
「あ、それと白川高菜君という女性も見なかったかな。髪はこのくらいで、ここにホクロがあって」
ハマーのことを言う気はないようだ。哀れハマー。
「…二人ともあんたの大事な友人ってとこか」
「あぁ、ピヨ彦と高菜君も大事なふえ科の生徒だ」
「そうか…大事な……」
魚住は仙道や池上のことを思い出す。(彼らがこの殺し合いに参加させられていないのは幸いだった)
そして、赤木のことも。
「どうした、ボス郎?」
「あ?……いや、なんでもない。スマンがその二人には会っていない」
「…使えねえな(ボソッ」
「(名前も聞いてない人に使えないとか言われたー!)」(ガビーン)
思わずガビーンとなってしまう魚住であった。

――5分後
互いにきちんと自己紹介した後、魚住は自分が探している湘北のメンバーのことを、ジャガーに説明していた。
「そうだったのか、体育館で死んでたのはボス郎の友人だったのか…」
「あぁ、だから今言った湘北のメンバーを探して力になりたいんだ。知らないか?」
だがジャガーは小さく首を横に振る。
「そう言われても、ボス郎の前には誰にも会ってないぞ」
「そうか…なら仕方ないな」
魚住は一つ息をつくと、ジャガーに背を向ける。
「行くのか?」
「さっき言った二人に会ったら、ちゃんとあんたのことは伝えておくよ。じゃあな」
「あばよ…ボス郎。こっちもショーホクの人たちに会ったらお前のことを伝えておくよ」
ジャガーも魚住を見送ると、平瀬村へ向かって歩き始めた。


【C-03/鎌石村道路/1日目・午前2時半ごろ】
【男子17番 ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー】
状態:健康
装備:なし
道具:支給品一式 DEATH NOTE ハガキ20枚
思考:1.ピヨ彦と高菜を探す
    2.湘北メンバーに会ったら魚住のことを伝える

【男子4番 魚住純@SLAM DUNK】
状態:額に怪我(血は止まった) 興奮もだいぶ治まった
装備:大きめの鉈
道具:支給品一式
思考:1.赤木に代わって湘北メンバーの手助けをする
    2.ピヨ彦と高菜に会ったらジャガーのことを伝える


投下順
Back:ブタ忍者 Next:覗き小平次

時間順
Back:少女と少年と Next:序曲

アンニュイな男 ジャガージュン市 会合 × ボス郎 × DEATH NOTE ~そして対主催へ
彷徨い人 魚住純 会合 × ボス郎 × DEATH NOTE ~そして対主催へ

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最終更新:2008年02月13日 13:33