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あさがおの思いやり

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だれでも歓迎! 編集
「あはは、そうですよね。暑いとよけに臭いですよね」
「なんかもー臭いのか良い香りなのかわっかんなくなるよなー、ははっ」

他愛もない会話がテンポよく交わされる。
最初はイマイチつかめなかった距離感もなんとなくわかってきて、すっかり打ちとけた感じだ。
いやー楽しい。
一人じゃこの楽しさは味わえないよな。
「孤独を愛する」とかって生き方にもたまーに憧れたりすることもあるけど、
やっぱ私にはこっちの方が合ってるね。

そんな私は、日下部みさお。
会話の相手、小早川ゆたかとは、今日がほとんど初めてだ。
学校が同じで、ついでに知り合いの従妹だったりもするからお互いに顔ぐらいは知ってたけど、
直接話したのは二十分ぐらい前が最初。
聞くと友だちの家まで行くところだってんで、こうしてお送りさせてもらってるってわけ。
まぁ正確には、無理言ってついてってるんだけどな。めちゃくちゃヒマだったから。
さすがにその友だちの家にまで上がりこむつもりはないけど。

「あ」

ふと見ると、道行く先の信号が点滅を始めていた。
確かあれ渡るって言ってたよな。

「やべ。行くぞ」

会話を中断して一つ呼びかけ、返事は待たずに走り出す。
あっという間に小早川を置き去りにして、赤に変わる直前に渡りきることができた。

「……って、置き去り?」

振り返る。
横断歩道の手前で立ち止まっている小早川が、道路と車の向こうに見えた。

「――めんなさーぃ」

謝罪と思われる声がかろうじて届く。
あちゃー、出遅れちまったのか。何やってんだ……って、悪いのは私か。私だな。
ちょっと反省。
とりあえず手をぶんぶか振って謝意を伝えた。
そしてなんとなく周囲を見渡す。わりと緑が多くて、高い建物が少ない。が、別の意味で高そうな
大きくて立派な家が余裕たっぷりに並んでいる。あんまり馴染みのない風景だ。
車の数も少なくて……って全然いないじゃん。

「どーしたんだよー! 来いよー!」
「…………、……だ赤ですー」

呼びかけると、戸惑ったような仕草と返事。
いやま、そりゃそうだけどさ。時間いいのか?

「車来てないってー!」

再度呼びかけるも、やっぱり動く様子はなく、代わりに小さなお辞儀が一つ返ってきた。
ヘンなところで頑固だな。
やがて信号が変わり、ようやく小早川は歩き出す。いや、小走りか。
左右を不安そうに確認しながら、歩くのと大して変わらない速さで駆けてくる。

「なんだよー。足遅いなー」
「あうっ」
「まー、ちっこいもんな。あ、でもちびっ子――」

って、紛らわしいな。
それにたぶん失礼だし。ちびっ子本人じゃなく小早川に対してなっ。

「泉は、速よな」
「はうー……で、でもー、危ないですよ」
「マジメだなー、小早川は」

……ん?
あれ、なんだろこの感じ? なんかすごいよく知ってる気がするんだけど。

「そんな、だって……それに、その。走ったら、また気分が悪くなっちゃう気が……」
「あ、そか。さっき倒れたもんな。わりぃ、忘れてた」
「いえ、大丈夫ですから」

む、でもちょっと違うな。
いつもならもっと、こう……「もう、みさちゃんは」みたいな感じで……って、そっか。
ちょっとだけ似てんだ、あいつに。
幼馴染の、峰岸あやのに。

「じゃ、行こうぜ。道こっちでいいんだよな?」
「はい」

でも今のじゃなくて、もっとずっと小さいころの。
大人しくって泣き虫で、そのくせ頑固な正直者だった。
周りから言われたことをいつも守って、私が手を引かなかったら知らない場所に行こうとはしなかった。
ずっと妹みたいに思ってた。
だけどいつの間にか追い抜かれて「お姉さん」になっちまったんだよなー。
わりと誰とでも仲良くできる代わりに、誰とも深い関係になることがほとんどない、
そんな「広く浅く」タイプな私の、唯一の例外。
――いや、唯一じゃないか。

柊かがみ。
中学になってからできた、今じゃあやのと同じぐらい大切な、二人目の親友。
最初は口やかましいヤなヤツだと思ったけど、実は優しくて面倒見のいいヤツだってすぐにわかった。
あやのとは別の意味で頼りになる「姉ちゃん」だ。
でも最近冷たいんだよなー。
なにかってゆーと隣のクラスのちびっ子のとこに行っちまうし。昼休みとか、下校のときとか。
最後に一緒に帰ったのっていつだっけ? やっぱ強引にでも陸上部に誘えばよかったかな。
いや、違う。
悪いのはあのちびっ子だ。
どうにかして排除――いやいや、排除は言いすぎ。もうちょっと遠慮させる方法はないものか……

ちらり、と隣を歩く人物を盗み見る。
そうだ。こいつに、小早川に訊いてみよう。
なにしろ従妹なんだから、親兄弟ほどじゃないにしろ、色々と知ってるはず。
よし、やっぱ今日の私は冴えてるぜ。

「なあ、小早……かわ?」

あれ?
そういえばさっきから一度も喋ってなかった小早川が、なんかわたわたしてる。
てゆーかパニくってる。なんで?
今回は別に何もおかしなこと言ってないよな。てゆーか喋ってないし。

「おーい、小早川。小早川? おい、どした?」
「えっ!? あ、いえ! 大丈夫です!」

おう、帰ってきた帰ってきた。

「ごめんなさい……ちょっと、ぼーっとしてました」
「ふぅん。別にいいけど……なんてぇか、元気だよなあ」
「はい」

訊こうとしたことも忘れて、思わず笑いがこみ上げる。
やっぱ似てないかな。あやのはこんなに面白くないってゆーか、わりと無表情だし。
なんて思っていると、不意に、

「――……え? 今、なんて……」

驚いたような声。
見ると、驚いたってゆーよりは理解できないって顔。

「んぁ? 何が」
「元気って……わたしがですか?」
「? そーだけど……?」

信じられないものを見るような目を向けられて、さすがに戸惑う。
まだちょっと距離感が掴みきれてないのかな。行動が、読めそうで読めない。

「え、と……ど、どこが、ですか?」

真剣な、期待と不安が入り混じったような声。
どこがって、えーと、「どこが元気なのか」ってことだよな。そんなの……んん?
そうだな、身体弱いらしいしな。さっきも倒れかけたし。言われてみれば変か。

「……さあ? でもなんとなくそう思った」

そうとしか言えない。
当然だけど満足できなかったんだろう。小早川は見るからにガッカリと肩を落とした。

「…………そうですか」

むう。
しかし落ち込んでいるところを悪いけど、今はそれよりも確認しなきゃいけないことがある。

「んでさ、道ってまだこっちでいーの?」
「あ、はい。……あ、向こうのあの、レンガの家のところで、右です」
「りょーかい」

よし、これで一安心。
それにしても、どこが元気か、か。
まあそれは追い追い考えるとして、もう一つ。メインの質問をしなくては。

「でさぁ。泉とは、イトコなんだよな? 家近かったりすんの?」
「へ? えっと……家、は、近いっていうほど近くはないですけど……今は、一緒に住んでます」
「へぇー?」

それは嬉しい情報ですよ。
思ってたよりも詳しい話が聞けそうじゃん。

「そーなんだ?」
「はい。春から。わたしの実家からだと今の学校は少し遠くて、だから居候させてもらってるんです」
「ふぅん……」

四月からってことだろうな。
ということは四ヶ月か。そりゃいいや。それだけ一緒にいれば裏も表も十分見えてるだろう。

「お姉ちゃんがどうかしたんですか?」

おっと、やばいやばい。気取られないようにしなくては。
いやいや、別に騙そうとか思ってるわけじゃねえぞ? 
ただ正直に話すのが恥ずかしいだけで。
だって親友を横取りされて寂しいんです、なんて、なあ? 年長者としてどうよって思うだろ。
ともかくここは、慎重に。

「うん。んじゃあさ、アイツって家だとどんな感じ?」
「家だと……? う~ん……」

こめかみに人差し指を当てて考え込む小早川の姿に、嫌がおうにも期待が高まる。
何が出るかな♪ 何が出るかな♪

「たぶん、学校にいるときと変わらないと思いますけど……」

って何も出ねーのかよ!
……いや待て、落ちつけ。
考えてみれば、こいつは愚痴とか悪口とかを簡単に言いそうなタイプじゃないんだし、
私の方からもっと具体的な質問を――

「……って言っても、 そういえばわたし、学校でのお姉ちゃんって、まだよく知らないかもです。
 どんな感じなんですか?」
「え!?」

ってオイ! 訊き返されるとは思ってなかったぞ!
やっべ、どうする? どうするよ、私?

「や、えぇっと…………」

いや待て。大丈夫だ落ちつけ。小早川に疑ってるような様子はない。だから落ちつけ。
ただの普通の質問だ。だから普通に返せばいいんだ。

「ん~~……いゃあ、よっくわっかんねぇんだよ。話するようになってまだそんな経ってないし。
 話してても、なんかよくわかんねぇことばっか言うし。だからどんなヤツなのかなって」

よぉし、上手いぞ。声の調子も内容も不自然じゃない。
まあウソは言ってないしな。最後のところ以外は100%本心だ。
小早川も思案モードに戻ったようだし、一安心。

「そうですね……」

うんうん。

「えっと、すごい人です」
「なんだそれ」
「あう……」

しまった本音が漏れた。しっかりしろ私。
とりあえずその口、ぎゅっと閉じとけ。
小早川は「ええっと」と前置きするように呟くと、考え考えって感じで話し始める。

「色々なことを知ってて、教えてくれるし……」

そうかぁ?
確かに偏った知識の持ち主ではあるっぽいけども。

「体の大きさはそんなに違わないのに、わたしと違ってスポーツも得意だし……」

ああ、それは知ってる。足なんかめちゃくちゃ速いし。
たぶん空気抵抗が少ないんだ。

「いつも明るくて前向きで……」

ふぅん? どっちかっていうとヤル気なさそうなイメージだったんだけど。
まぁだいたいいつも笑ってるかな。

「あ、あとお料理も上手なんですよ?」

なんですって?
料理? アイツが?
それはちょっと、かなり予想外。てゆーか信じられない。

「マジで?」

思わず尋ねていた。
小早川は、どこか怯えたように戸惑いながらも肯定を返す。

「え、えとその……本当です。少なくともわたしにとっては……」
「……そーなんだ」

ふぅむ……試しにシミュレーションしてみよう。
あのちっこい身体にエプロンと三角巾を着けさせて、台所に置く。
包丁を手に取った。ニヤリと笑ってこっちを向いた。うわぁ追っかけてきた。

――って違うだろ。
まあ、とにかく想像もつかないってことはハッキリした。
しかし小早川にウソをついてる様子はない。てことはちびっ子の方が見栄でも張ってるのか?
そーゆーの気にしないタイプだと思ってたんだけどな。
でも、もしそうだとしても、一緒に住んでるんだ。どっかでボロが出てるはず。
もう直球で訊いてみるか?

「なあ、だったら例えば――」

あれ? 小早川が立ち止まってる。……って私か。止まったのは。
思ったより考え込んじまってたみたいだ。

「あ、と。ごめん。行こ」

歩みを再開し、さっき言われた角を曲がったところで、
小首をかしげながら小早川の方から訊いてきた。

「例えば、なんです?」
「うん、いやさ。例えば、弱点とかってないのか?」

って直球すぎだろ!
やっちまった。一拍空いて油断した上に向こうから来られたせいだ。
ううっ、怪訝な顔してるよ。

「弱点? ……ですか?」
「あ、あー、いやぁ……今言ったのって良いとこばっかだろ? だから弱点とか苦手なモノとか、
 逆はどーなのかなぁ、って。あはは。そゆのってなんか気にならねぇ?」

く、苦しい……!
一見筋が通ってるけど明らかに言い訳くさい。
小早川は「はあ」とか曖昧にうなずくと、そのまま考え込んでしまった。
私の言ったことを信じて返答を考えているのか、それとも発言の内容そのものを吟味しているのか。
……後者だろうな。

いや、いいよ小早川。別にそんな真剣に考えてくれなくて。ちょっと訊いただけなんだって。
それにそういうの、考えてみれば本人のいないところで言ったら陰口みたいじゃん。イヤだろ?
だからさ、こんど泉に直接聞いてみるよ。あはは。ところでこれから行く友だちってどんなヤツ?

って口に出して言えよ私! 思ってるだけじゃ伝わんねーよ!
余計なことはいくらでも滑らせるくせに、なんで言わなきゃいけないときに動かないんだよこの口は。

「――ヤキュウチュウケイ、かな?」

唐突に。
まるで脈絡のない言葉が聞こえた。

「はぇ?」
「野球中継です。テレビの。えっと……試合が延長して放送時間が延びると、深夜番組の時間がずれて、
 ビデオの予約録画が大変になって困るって、ときどき言ってます」

…………ええと。
なんてゆーか、それはつまり。

「だ、ダメですか?」
「ダメってぇか……」

信じたのか。そして納得したのか、さっきの苦しい言い訳を。
そしてその答えをあんなにも真剣に考えてくれてたのか。
そして今もまた、さらに考え続けてくれているのか。
……なんかどっと疲れた。
悶々とした感じが消えて、代わりにだんだん罪悪感がわいてきた。

「あのっ」
「んー?」

我ながら気のない返事だなあ。しっかりしろよ。本当に悪いと思ってるのか?
てゆーか早くこの話を終わらせようぜ。

「お姉ちゃんは、たぶん、わたしには弱いところは見せないようにしてると思うんです。
 前に風邪をひいて学校を休んだときも、わたしにはずっと大丈夫だって言ってましたから」

ほら。
ちびっ子は、私にとってはアレなヤツでも、小早川にとっては良いお姉さんなんだ。
そして小早川自身も良いヤツなんだ。

「だから、わたしにはわからないんですけど、」

だからな、ほら。今話してるのをちゃんと聞いて、終わったらお礼を言って。
それから変な話を振っちまったことを謝って――



「かがみさんなら、何か知ってると思います」



……
…………は?

ちょ……と、待てよ。
小早川、何を、今、おまえ。かがみ? 柊? なんで名前で――じゃなくて、
それは別に良くて――いや良くは――ああ、違う違う。
ってゆーか、なに、なんで――え、あれ? 
待てって――柊が――柊?
――いや、待て。待て待て待て。
待てって。
なんで。

「なんでおまえ……そこでひいらぎが出てくんだよぉ~~……」

視界がゆがんでる。ひどく情けない声が口から漏れた。足に力が入らない。へたり込んじまった。
小早川、今なんて言った?
なんでそこで柊の名前が出てくんの?
なんでそんな、ちびっ子といえば柊、みたいな発想すんの?

「ど、どうしたんですか?!」
「うぅ……だってさぁ~~……」

どうしたじゃねぇよ。
泣いてるよ、私。なんで泣いてんだよ。泣くほどかよ。ああ泣くほどだよ。
不意打ちもいいとこだよ。

「あの、ごっ、ごめんなさい!」

なんで謝るんだよ。
いやそりゃ謝るか。いきなり泣き出されたらな。でも謝るなよ。
悪いのは私なんだから。

「わたし、何も知らないのにいいかげんなこと言っちゃって……だからその、とにかくごめんなさいっ!」

だから、おい。
そんなぺこぺこ頭下げるなよ。気分悪くするぞ。
って、ほら。おまえまでへたり込んじまった。顔青いし。ごめんな。私のせいだよ。

「本当に、ごめんなさい。わたし、ばかだから、何もわからないんですけど、
 でも、悪気はなくて……だからって許してほしいとは言えませんけど、えっと……」

話聞けよ。私のせいなんだって。
てゆーか。
声出てねーよ私。えぐえぐ言ってるだけだよ。何語だよ。いいかげんにしろよ。
ここで声出さないでいつ出すっていうんだよ!

「ゔぅ~~……違う、違うんだよぉ」

げぇ、ノド痛ってぇ。
でも出た、声。

「え……?」
「悪いのは、私なんだよぅ……」



そして私は、主に恥ずかしさでつっかえつっかえになりながら、全部話した。
柊がちびっ子の方ばっかり行っちまって、寂しかったこと。
私の方が長く友だちやってるのにって、悔しく思ってたこと。
どうにかしてこっちに戻せないかと悩んでたこと。
そして、ちびっ子の近くにいる小早川から上手い情報でもゲットできないかと思ったこと。
(あとついでに、「柊」が姉の方だってこと。言ってなかったっけ?)

小早川は、笑わなかったし、怒らなかった。
それどころか、すっげぇ優しい声で「わかる」とまで言ってくれた。

「えっと……わたし、昔から身体が弱くて、いつも周りの人に迷惑かけてばっかりで」

優しい声で。
優しい顔で。

「ずっとそんなだから……たぶん疲れたり呆れちゃったりしたんでしょうね。
 最初は頑張ってお世話してくれてた友だちも、他の元気な子の方に行っちゃった、なんてこと、
 今まで何度もありましたから」

つらい話のはずなのに、そんな様子は一切見えない。場違いな照れ笑いすら浮かべてる。
なんでだ?
おまえはわかるって言うけど、私には全然わからない。
身体だけ無駄に健康で、へらへらとテキトーに生きてきた私には、
それだけの目に逢いながらも笑顔で人に優しくできる、その強さの理由が。

「でも、先輩はすごいです」
「へ? な、何が?」

すごいって、なんで? どうしてそうなる?
こんなに情けなく泣きじゃくっている私を、こんなに強くてまっすぐな小早川が、
どこをどうすごいなんて言う?

「だって、元に戻そうとしたんでしょう? 私は、全部諦めちゃったから……だからすごいと思います」

ああ……こいつは……
そんなんじゃない。そんなんじゃないって。
そんな目で見るなって。ますます自分が情けなくなっちまうから。

「わたし、応援します。先輩のこと。だから頑張ってください」

いや、だから。

「こばやかわ……」
「そうだっ。わたしの方からお姉ちゃんに言ってみましょうか。
 かがみさんを独り占めしすぎないようにって……なーんて」

……もう駄目。限界。
なんかもう情けなさとか申し訳なさとか嬉しさとか、あとよくわかんないけど他にもいろいろ。

「こばやかわぁ~~!!」

とにかくわけわかんなくなって、我慢できなくて。
もはや抱きつく以外になかった。

「ひあっ!?」

さすがに驚いたようで、小早川が悲鳴を上げる。
あ、ヒザ擦ったかも。座り込んだまま急に動いちまったから。小早川は大丈夫かな。
確認したいけど、今は無理。

「ごめんな~! ありがと~! ありがとぉ~! こばやかわあ~~!」
「せ、先輩、あの、落ち着いて――」

ごめん、それも無理。
もうちょっと待ってくれ。あともうちょっとだけ――



「――ゆたか!」



「へ?」「えっ」

突然、すごい声がした。
驚いて顔を上げると、目に入ったのはスラリと背の高い女の子。
どこか見覚えのある顔で、けど見たこともないような恐ろしい目で私を睨んでいて。
なんでそんな目で、ってゆーか、

「……だれ?」

ぽろっとこぼれた私の声は、その子の眉をますます高く吊り上げた。
こわっ。













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  • 最初は、「いくら何でも、このカップリングは飛躍しすぎだろw」と思っていたが、
    なるほど、こういった展開はアリだな。。。
    続き(というか、みなみの反応)に期待。 -- 名無しさん (2007-11-27 23:24:41)

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