kairakunoza @ ウィキ

春夏秋冬

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
冬―――
風が冷たい。身体が切れるようだ。
凍死と言うのは綺麗な死に姿と聞いたことがある。このまま寒さで死んでしまっても良いだろう。
そう、思った。私は生きていることに実感がわかない。
この世に生まれて15年しか経過していないのに、私はすでにこの世界に嫌気が差していた。
自分に責任がある。そう、私もそう思う。
上手く喋れない。上手く気持ちを伝えられない。
あんなに伝えたいことがたくさんあったのに、今は何も感じない。
周りからの嘲笑や蔑みの声にも動揺しなくなった。
私は私であることをやめた。私であり続けるには、私は弱すぎる。
この世界で一番嫌いなもの、それは私。

寒いな。早くお家に帰らないとまた風邪ひいちゃう。
お母さんにもお父さんにも迷惑をかけちゃう。
大好きなお姉ちゃんにも心配かけちゃう。
早く帰らなきゃ。でも、私は走るのが苦手ですぐに息切れしちゃう。
遠足も運動会もいつもそう。友だちは私に気を使ってそういうことには誘わない。
気がついたら誰も私を誘わない。
鳴らない携帯。使わないままの古いアルバム。
ダメだな。身体の調子が悪くなると気分まで悪くなる。
早く春が来るといいな。いつか、元気に外を走りたいな。


春―――
一年の中で一番憂鬱な季節がまたやってきた。
暖かい陽光、柔らかな風、明るく眩い景色。
その全てが私の全てと正反対のもの。
当て付けの様に咲き乱れる桜の花びらが嫌い。
そんなことを考えている私がもっと嫌い。

一年中で一番大好きな季節がまたやってきた。
暖かい陽光、柔らかな風、明るく眩い景色。
その全てが私を元気にしてくれる。病は気からだね。
毎年、毎年ほんの少しだけ姿を変えるあの桜の大きな木が大好き。
大きくなりたい、元気になりたい、自分をもっと好きになりたい。

何も考えてはいなかった。

また迷惑をかけちゃう。

目の前の女の子に自然と手を差し伸べた。いや、自然と手が伸びていった。

優しくされるとうれしいな。迷惑をかけると悲しいよ。私に優しくしてくれるの?

春の暖かさ、ううん、違う。もっと、もっと暖かい、そして優しい。
だから、自然に手が伸びていった。

悲しいのかな。寂しいのかな。こんなに優しくしてくれるのに、とても辛そう。
こんなに暖かい日なのに、なんで凍えてるの?

私は考える、差し出した両手の理由を。

私は考える、差し出された両手の理由を。


夏―――
”楽しい”と心の底から思えたのはいつ以来だろう?
この子といるだけで私は”楽しい”気分になれる!
これはなんていうんだろう?うまく言葉で表せない。
生まれてから一度も感じたことのなかった感覚。
これは何だろう?

”楽しい”!大切な人と一緒にすごせる時間は”楽しい”!
この人といるだけで私は”楽しい”気分になれる!
これはなんていうのかな?頭で考えても出てこないよ。
生まれてから何度かすれ違い、何度も通り過ぎていってしまった感覚。
これは何だろう?

―――ともだち―――

そうか、これがともだち・・・。

そうだよ!ともだちだよ!


秋―――
もう怖くない。何も恐れない。唯一つあるとすれば、あなたとの別れ。
だから、あなたに贈っておきたい詩がある。受け取って。

「強い、強い風が吹いていた。
 ずっと、ずっと吹いていた。
 私は飛ばされぬよう、必死で足に力を入れ、
 上着を身体に巻きつけるように両腕でしっかりと掴んだ。
 理由は分からないが進まなくてはならない。
 何も教えられないまま進まねばならない。
 休むことも許されず、ただ、ただ進まねばならなかった。

 疲れていた。あらゆることに。
 強い風にこのまま飛ばされてどこかへ飛ばされてもいいと思った。

 ふと顔を見上げると少しだけど太陽の光が差し始めていた。
 力強く、清らかな、暖かな光。
 次第に風は弱まり、上がる体温に上着は要らなくなった。
 進むことが楽しい。もっとこの光を受け続けていたい。
 私が進む理由はただ一つ、この光を浴び続ける為だけに進む。

 出会えたことに感謝する。ありがとう、ゆたか。」

 みなみ


私にも出来ることがある。こんなに小さくて、弱い私でも出来ることがある!
だから、あなたに贈っておきたい詩を作ったの。私の気持ちを詰め込んで!

「ずっと待っていた。
 その日が来るのを待っていた。
 長い長い、悠久の呪縛から解き放たれるその日を待っていた。
 誰かが迎えに来るのを待っていた。
 深い深い海の底から見上げる世界はどんな世界なの?
 私がいる世界と何が違うの?
 光り輝いて、眩しくて見えないけれど、とてもきれいな世界が広がってたら素敵。

 太陽があるって、空があるって、果てなく広がる大地があるって。
 海の底からでは決して見れない世界があるって聞いた。
 誰か私に二本の足を下さい!
 眩き太陽の下を歩ける足を!清清しき空の下を歩ける足を!暖かい大地を踏みしめる足を!

 私に足をくれたのはあなた?
 ありがとう!私はずっと付いて行く。あなたにずっと付いて行く。
 私に二本の足をくれたあなたに。私に世界をくれたあなたに。

 迎えに来てくれたんだね!ありがとう!みなみちゃん!」

 ゆたか


冬―――

「ねえ、雪だよ!」
「うん」
「きれいだね!ふふふ、いっぱい着てるから、顔に当たると気持ちいいなー」
「うん。私もそう思う。でも、寒くなったら無理しないで」
「えへへ、寒くないよ、みなみちゃん」
「うん」
肩を並べて歩く公園の並木道が見る見るうちに白く染まり、
太陽の光を反射する雪がモノクロな景色に輝きを与えた。
「冬も・・・いいね、ゆたか」
「うん!」















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • ネ申... がハッ... -- ひより (2010-04-19 04:11:46)
  • 上手いな〜……GJな作品、大変おいしゅうございました -- 名無しさん (2008-08-20 08:35:36)
  • 二人の心理描写に心温まりました。 -- 斉 (2008-02-04 18:29:21)
  • ええ話や……。・゚・(ノД`)・゚・。
    -- 名無しさん (2007-11-25 23:51:22)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー