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黄昏の貴女

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『こなた』

電話越しから聞こえてきたかがみの声は、いつもよりちょっとだけ恥かしいそうで、いつもよりちょっとだけ優しかった。



―――黄昏の貴女―――


好きなるのに理由はいらない、なんてよく聞く言葉だけど…
理由はいらなくても、きっかけは必ずあると思う。
私の場合、かがみを好きになったきっかけは、一年生の時夏休みだった。

柊家に遊びに行ったある日、珍しくかがみがいなくて、某ロボット大戦をしながら何気なくつかさに尋ねた。

「そーいえば、今日かがみは?」

「同じクラスの友達と出掛けてるよ」

クラスの友達、誰だろう。
いや、誰だろうとか考える前にかがみのクラスメイトを全く知らないや。
日常茶飯のようにかがみは私達のクラスに遊びに来るけれど、私がかがみのクラスに行った記憶はほとんどない。

「そっか…」

と、返事をするも胸の奥らへんがモヤモヤする。
なんだろう、この感じ。
胸の中に膨張剤でも含まれているのだろうか?

「なんか、こう悔しいというかもの足りないというか…」

例えるなら、気に入って隠してた保存用の特典DVDを友達に見つけられて成り行きで貸してしまったような…
じゃがいもが入ってないカレーのような…
コレって結構ショックだよね。ルーに深みがないってゆーか、コクがないってゆーか…

「寂しいんだね」

苦笑しながら呟かれたつかさからの言葉。

寂しい…
確かに、寂しいという言葉があっているのかもしれない。
高校に入ってからというもの、社交性0だった私にもつかさやかがみやみゆきさんという友達が出来た。
特にかがみとはほぼ毎日一緒にいるわけで、かがみが傍にいることが当たり前になっていた。
そのかがみが私の知らない友達と遊びに行っている。

なんか嫌だ。


……って、え?
別にかがみが誰と遊びに行ってもいいじゃん。

「???」
自分の中で疑問が生じる。
今、私は何て思っていた?
かがみが他の友達と遊びにいくことを……嫌だと思った?

いやいや、なんで?

自問自答しているせいで集中力が切れたのか、手元が狂ってしまい、いつの間にかYOU LOSEという画面になっているTVを見つめる。

「珍しいね。こなちゃんが負けるなんて」

ほら、とTV画面を指しながら意外そうな顔をしている。

まさかかがみの事を考えてたから負けました、なんて言えるはずもなく「熱いから集中力切れたかなぁ」なんてとぼけてみせる。

「あれ?」

横にいるつかさを伺い見ると、ん~?と首をかしげている。

「どったの?つかさ」

「ん~っと…」

「?」

「う~ん、なんていうんだっけ?前にも似たようなことを体験した記憶があるーみたいなこと」

「デジャブ?」

「そうそう、ソレ!」

「デジャブがどうしたの?」

「いや、なんかね。前にもおんなじ状況でおんなじ事言われた気がしたなーって思って」

いつだっけ?と記憶を辿り始めたつかさから視線を離し、夏真っ盛りで雲一つない空を見上げる。

かがみは今何をしているんだろう…

って、だからなんでかがみの事がそんなに気になるのだろうか?
大事な友達が他の友達と仲良くしてたら少し嫌な気持ちにはなる、なんて漫画やアニメの世界じゃ有り余る位ありがちなデフォだけど、私はそんなキャラじゃないし、そんな一般的感情を抱く程、女の子女の子した性格ではない。

じゃあ、この落ち着かないようなでも少しイラつくような感情はなんなのだろう。


「あっ!!!」

探していた本が見つかったような声を出したつかさの方を向くと、満面の笑みでこっちを見ているつかさと目があった。

「思い出したよ!この前、えっと…こなちゃんが風邪で休んだ時、お姉ちゃんもおんなじ事言ってたんだよ」

「同じ事?」

「うん、『アイツがいないと静かだけど、なんていうか、少し物足りないわね…』って」

私には『どうせズル休みだろ』とか『なんとかは風邪ひなかないって言うのにねぇ』とか言ってたのに…
さすがツンデレ、可愛いのぉ。

「それにその日、お姉ちゃん珍しく小テストの点が悪かったらしくて…どうしたの?って聞いたら慌てながら『最近熱くなってきたから、集中力が切れたのよ』って言ってたんだよ~」

真っ赤になって反論しただろうかがみを想像して思わずニヤニヤしてしまう顔を片手で隠すと、ニコニコと笑うつかさと目が合った。

「こなちゃんって、お姉ちゃんの事好きでしょ?」

「んなっ?!!!えっ、えぇ…?!」

いきなりの爆弾発言を繰り出すつかさ。
その爆弾発言に思わず落としてしまったコントローラーを拾うことも出来ず、あははと笑うつかさを見る。

「こなちゃん分かりやすすぎ」

はい、と落としたコントローラーを渡される。
いや、もはやゲームところではないんですが…
というか、分かりやすすぎって、何を分かってしまったのですか、つかささん?!

「つ、つかさ?…え、あの…えっ?」

状況を理解出来ず、かといって何て聞いていいのか分からずにつかさを見ると、心底楽しそうな笑顔で答えられた。

「こなちゃん、気付いてないかもしれないけど…さっきからずーっと玄関の方、見てるでしょ?」

「え?」

気付かなかった。
確かに、かがみ帰って来ないかなぁとかは心の隅の方で思っていたけど…

「それにお姉ちゃんがクラスの友達と遊びに行ったって言った時からちょっと変だし」

「うっ…」

普段のつかさからは想像もつかない程の洞察力に図星の私は言葉がつまる。

え、図星?何が?どれが?
私がかがみの事を好き?
まぁ、そりゃ好きだよ。友達として。
……友達?なんだろ、なんかひっかかる。

あーとかうーとか言葉にならない声を出した後、意を決して目の前で仏の如く笑顔が絶えない友達に向かって聞いてみる。

「えっと、私はかがみが…その、どの…好き、なのかな」

なんかよく分かんない質問だけど、自分でも分からない感情の行方を知りたくて、つかさに尋ねるとつかさは首をかしげた。

「どの?」

「う、うん…」

やっぱり伝わらないか、えっと…なんて言えばいいんだろ。
友達的の好きなのか、恋愛的の好きなのか、かな。

「こなちゃんは、お姉ちゃんといつも一緒にいたいって思わない?」

「え、あ、うん。思う」

リアルツンデレだし、なんだかんだ言って面倒見いいし、ツッコミするどいし、一緒にいて飽きないし…

「多分、それが答えなんじゃないかな?って私も人のこと言えないんだけどね」

「え?」

人の事言えないって…?
もう一度聞き返そうと口を開くと「何か冷たい物持ってくるよ」と席を立てて部屋から出て行ってしまった。

「はぁ…」
一人残された部屋でモヤモヤする気分を晴らすように溜め息をつくけど、晴れるところかますますモヤモヤが増す気がする。

「かがみ…」

外でせわしなく鳴いている蝉の声でかき消される程小さな声で脳裏から離れないかがみの名前を呟いた。



『あの答えだけど…』

過去に意識を飛ばしていた私を現実にもどしたのは受話器から聞こえるかがみの声。
落ち着くんだけどドキドキする声。

あの答えとは一昨日出た宿題の答えではなくて、私が告げたかがみへの告白の返事なのだろう。


『私、かがみのこと…好きかも』

好きかもなんて曖昧な告白があるかー、なんて脳内でつっこみを入れてしまうほど余裕がない告白だった。
いや、告白するのに余裕ある人なんているのだろうか。

『かがみと一緒にいたい』
ただその気持ちだけが日に日に膨張していく中、私の気持ちを確証する事件が起きた。
名付けて《またかがみとクラスが離れちゃったよ事件》
二年生になった春、モヤモヤとしたスッキリしない感情を持ちながら迎えたクラス変え。
黒井先生にネトゲ内でレアアイテムをたくさん上げてそれとなーく「かがみと一緒のクラスになりたい」ということを伝えていたのだが、やはり私とかがみは別々のクラスになってしまった。

その時のかがみの寂しそうな顔がどうしても脳裏から離れなかった。


一昨日の帰り道、ステーキの焼き加減について話していた時、傾きかけた夕日に照らされるかがみが不意にその日と同じ、少し寂しそうな顔を私に向けた。

その表情に胸の奥のモヤモヤが肥大していって喉のあたりまで上昇して息が出来ない。
かがみが好き、ただ6文字だけの言葉の羅列が私の頭に浮かび上がる。

寂しそうなかがみを抱き締めたい、笑っていて欲しい。
だめだ、止められない。


『私は、アンタの事…』


自分の弱い理性に嫌気がさす、かがみから少し考えてさせて、と言われた時から答えは出ていた。

かがみは優しい。
だから私を傷付けないように断るのだろう。

『好き』

あぁ、ついに幻聴まで聞こえてきたよ。しかも恥かしさを押し殺したようなかがみの声。幻聴のくせにやけにリアルな…。

『……こなた?』

「ふぇ、へっ?!」

『な、なんか反応しなさいよ!!』

「へっ、え、うん…これからも今まで通りともだちで…って、え?」

あれ、なんか現実と妄想の区別が出来ない。今かがみ、何て言った?

『なっ、に、二回も言わせるなっ!!!』

ん?二回?
さっきの『好き』が一回目ってことは、次が二回……って、ええぇぇっ?!

「な、なんで?」

『なんでって…元々アンタから言ってきた事だろ』

いや、まさか好きなんて言われるなんて思ってなかったよ…
え、やばい、すんごい嬉しい。

「かがみ…」

『ん~?』

前に呟いたようにかがみの名前を呼ぶと、間延びしたいつもの声で返される。
それが嬉しくて何度も何度もかがみを呼んでしまう。

「かーがみん」

『な、何よ』

「かーがーみー」

『だから何よ』

えへへと自然に笑みが零れる。
少し呆れているように溜め息をするかがみさえも愛しくて、電話していることが焦れったく感じてしまう。

「かがみ様ー」

『ソレはやめろ』

「好きだよ」

『……知ってるわよ』

冷静に言葉を紡ごうとしているかがみの声に少しの優しさが含まれていた。

それが私の存在を認めていてくれているようで、満足感と幸福感が胸を占める。

フと耳から携帯を離すと電池が2から1へ変わっていた。

気分を紛らわすためにやっていた宿題をチラっと見て、まぁ明日かがみに写させてもらおうと思いながら、携帯に充電器を繋げる。

さぁ、何から話そうか。



黄昏のように綺麗な貴女と。












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コメント:
  • ---脳内補完の準備はできたか、皆の衆・・・… -- 名無しさん (2009-03-06 13:35:13)
  • うわぁぁぁぁぁぁぁ!GJッッッッ! -- 名無しさん (2008-08-22 07:15:25)
  • 学校で違うかもですけど、クラス替えって先生は干渉できないんですよ~~♪

    とにかく面白い作品でした♪♪
    -- フウリ (2008-04-26 23:50:59)
  • 萌えますた、GJ -- ハルヒ@ (2008-04-25 01:53:01)
  • やっぱうまい人が書く文章は違いますね! -- 名無しさん (2008-04-01 13:56:34)
  • あなたは新世界の神だwww最高です!!! -- 名無しさん (2007-11-26 01:55:27)
  • こなた萌えw
    続編にwktk -- 名無しさん (2007-11-25 10:47:53)
  • 神よ…まさかこう来るとは思いますせんでした。
    嬉しそうに電話するこなたが頭に浮かびました、GJです!
    まだ続編お考えであれば次も必ず読ませていただきます。 -- 名無しさん (2007-11-24 16:05:00)

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