kairakunoza @ ウィキ

優しさ

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 私は隣のクラスの教室の前に立ち、かがみを呼ぶ。
 かがみは私に気付いて教室の入り口まで来た。
「なに?」
「いやぁ、最近こっちにこないから元気にしてるか気になってネ」
「別になんともないわよ」
「うん、いつもと変わってないね」
「どういう意味よ?」
「特に深い意味はないよ。それよりさ、なんか忙しい用事があってこっちにこれないみたいだけど、
 どんな用事なの?よかったら私も手伝うよ」
「……話せないわ。それに…一人でやることだから」
 む、なんだかとても冷たくなってるような気がする。
 簡単に言えばツン分が大きい。デレ分はー?
「ま、私も根掘り葉掘り聞かないけどさ。それとさ、黒井先生の宿題の答え教えて欲しいんだけど……」
「………」
 かがみはなぜか黙ってしまう。
「お~い?」
「悪いけど、うちのクラスには出てないわ」
「そっか……じゃあみゆきさんに見せてもらおっと」
「ねぇ、こなた……」
「ん~?」
「あんたはさ、一人になる自覚ってある?」
「どうだろ……そんなこと考えたこともなかったかな…。でも、急にどうしたの?」
「そう……別になんでもないわよ。まだなんか用件あるの?」
「とくにないかな。んじゃね」
 それだけ言ってかがみは元居た場所へ、私は元の教室へ戻った。
「――――――――ね」

 かがみが私に向かって最後になにかを言っていたが、聞き取れなかった。

「こなちゃん」
「うぉっ」
 教室に戻るとつかさが何も脈絡もなく話しかけてきた。

「あっ、ごめんね」
「大丈夫大丈夫。私が勝手に驚いただけだから」
「えっと、お姉ちゃんのとこ行ってたの?」
「うん、そだよ」
「えぇっと………ぁぅぅ……いいや……ありがと。なんでもないよ」
「変なつかさだねぇ……それより、宿題やってきた?」
「うん!お姉ちゃんに昨日ギリギリで見せてもらったよ」
 つかさの言葉になにかひっかかりを感じた。
 …あ………れ?矛盾?かがみが言ってたことはなんだっけ……?
『宿題は出ていない』
 ……どっちか嘘吐いてる?
 う~ん……どうしよ。ここは様子見で。
「みゆきさ~ん、宿題見せて~!」
「あぅっ!!こなちゃん、そんなに私は頼りにならないかなぁ?」
「ごめんね、今日はみゆきさんの番。次はつかさの番にするから」
「う……ん」
 なんかショックだったみたい。
 つかさのリボンが垂れてきそうな感じがする。
「泉さん、はい。これですよね?」
「おぉっ、さすがみゆきさん。よく分かったね」
「えぇ、今日提出すると言うのはこれしかないですし…」
「ありがとー、次の休み時間に返すね」
「はい、頑張って下さいね」
 宿題を写すのにがんばるもなにもあるのか疑問だったけど小さいことは気にしない。

 その後、席に座ったタイミングで丁度チャイムの音が。
 授業中は真面目に受けてるふりをして、少しずつ、着実にみゆきさんに借りたプリントを使って写していく。
 授業が終了したらみゆきさんに感謝の言葉と同時にプリントも返す。
 しかし、黒井先生の授業は宿題が多いなぁと思った。
 いじめかなにか……なのかな?よく分かんないけどね。
 それはないはずだろう。

 そしてもう昼休み。通称お弁当の時間。
 いつもの場所に三人は集まってある箱を並べる。
 そして、やっぱりかがみは来ない。
 三人で一緒にその箱の蓋を開けて、いまさら気付いたこと。
 つかさ……もしかして毎日作ってる………?
 先週からずっとつかさが作っていたみたいだった。
 かがみが作ったような、質素なものじゃない。
 とても美味しそうで、手がかかってそうで、身体によさそうで、
 何かいろいろなものが込められていそうなものが、先週からずっとそれに入っていた。
 肝心のつかさはやはり、弁当箱の蓋を開けたところで悲しそうな感情を混ぜた顔でそれを見つめていた。

 ここで……気付いたこと。やっぱり二人の間になにかあった。それだけは確信した。
「ねぇ、つかさ。かがみとなんかあった…?」
「……………」
 無言でうつむいたまま。本当に、何か……事情があるのかな?
 なにかがあったのかは言ってくれないと何も分からない状態。
 どうすればいいんだろ…?
 つかさが嘘言ってるのか、本当のこと言ってるのか良くわかんなくなってしまった。
 何かを掴まないと、前に進めない。そんな気がした。
「そ……それより、早く食べましょう。泉さん、つかささん。時間がなくなってしまいます」
「うん、そうだね。つかさ、食べよ?」
「うん………」
 それから私たちはどこか気まずい雰囲気が残ったまま昼をすごしていた。
 一体、二人になにがあったんだろ……。
 かがみを見ても、ほんとになにか用事があるみたいで、
 そして、つかさが嘘を吐いてるようには思えないし。
 それでも必ず、どちらかが違うこと、嘘を言っているんだろう。

 昼休み中、そして終わった後も何があったかをずっと考えていた。
 しかし、どれほど考えても答えは出なかった。あとは―――
「おい、泉!」
「はっ、はい、なんでしょ!」
「授業始めんやけど、その前に宿題持って来い」
 あぁ、またか……ど忘れ…考え中に大声で呼ばれるとさっきまでのことを忘れちゃうよねぇ……。
「はい、分かりました」

 とにかく授業だ授業。乗り越えなきゃ。
 だけど、先生の声はまったくと言っていいほど耳に入らなかった。
 二人のことがずっと気になっていたせいだろうか。
 二人になにが起こったかを、また考えていた。

 そして、今日が全部終わっても、私たち三人は集まることはなかった。

 ……そうだ、今日はバイトがあるんだ……どうしよ…なんかやる気が起きない。
 パティにがんばってもらおっかな……。
 とにかく私はバイト先へと向かった。

―――

 いつもは楽しくやっていたバイトがようやく終わって帰路についたけど…、
 ……バイト中、パティにあのハイテンションで元気を分けてもらったりもしたけど、いまいちな気分だった。
 はぁ……なんで私はこんな状態なんだろ。
 終わったとき、パティが『コレカラアキバをタンサクシマショウ!』と誘ってくれたけど、気が乗らなくて誘いを断った。
 いつもの私なら喜んでイエスと答えただろうに。
 パティは、『ンー、それデハ、マタコンドデスネ』とまた誘ってくれるらしい。
 あの、パティの悩みもなんもないような、なにも気にしないテンションが欲しかった。

 家に帰ってもまだ二人が気がかりで、ご飯を食べても喉を通らない。
 そんな私のことをゆーちゃんとお父さんが心配してくれるが、なんでもないよの一言で済ます。

 食べ終わった後は自室に戻り、何をするか考えるが、この答えだけはすぐに出た。
「気分転換にゲームをするか……」
 そう思い、積んでいたゲームの山を一つ崩す。
 その中から適当に一つのソフトを取り出して、説明書もなんも見ないでゲームを開始する。
 簡単に言えばギャルゲもののゲームを引き当てた。
 そして最初のお約束、主人公の自己紹介。そしてヒロインの登場。
 さらに出てくるいろいろな女ヒロインたち。悪友など。
 最後に出て来た双子……の姉妹。
 ……あの二人が脳内に鮮明な映像として出てきた。双子と聞いたらもう身近にいるあの二人しか浮かんでこない。
 どうして……どうして家の中でも二人のことを考えなきゃいけないんだろう……。
 少しでも気分転換しようと思ってたところなのにね……。
 このゲームはすぐに止めた。また、忘れた頃にでもやろうと思う。

 はぁ……なんかもうやる気がなくなっちゃった……。
 もう寝よう………。




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