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0から始めよう! 1話

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だれでも歓迎! 編集
  • 1.まともに始めよう!


 ききーっ

 ぐしゃどさっ

 がしゃん

 ばきっ

 どくどくどく

 ざわざわ

 うぅーうぅー

 オネエチャン

 オネエチャン


 そんな、幼稚な音符の羅列。
 最初のが確か、耳を切り裂くようなブレーキの音。
 あとは何だっけ?
 そうそう、なんか重い荷物が壁に叩きつけられたような音。
 周りを取り囲む雑踏の話し声が、妙に耳に付いた気もする。
 あとドップラー効果のない、乱暴なサイレンの音も。
 それとそう……つかさの、叫び声。
 その音の羅列と一緒に世界がゆっくりと360度回転して、何かが視界に入った。
 そう、赤よ赤。
 目の前が真っ赤になってそれで……。
 それで、世界が……終わりを告げたんだ。


「おはようございます」
 はい、おはよう。
「こんにちわ」
 はい、こんにちわ。
「こんばんわ」
 はい、こんばんわ……って何なのよ、いきなり。
「あんた誰?」
「ええとその、何といいましょうか」
 目の前に現れた女性が、困った顔で首を傾げる。
 首を傾げたいのはこっちよ。
 気がつけば、こんなとこに居て。気がつけば、こんな女性が目の前に居て。
「まず、自分の名前が言えますか?」
 何よぶしつけに。
 そういうのはまず自分から名乗るもんでしょ。ふんっ、まぁいいわ。
「柊かがみ、それが何?」
「ええと、かがみ」
 呼び捨てなんて馴れ馴れしいわね。まぁ口を挟まないでおこう。
「では次に、自分の状況が分かりますか?」
 状況? この部屋に居ること?
 大分狭い部屋よね。
 狭くはないんだけど、色んな機材の所為で狭く感じるのかな。
 あとは部屋に居る人数。
 つかさもいれば、姉さんたちも居る。お父さんやお母さんだって。
 五人も居ればそりゃ狭いわね。
 おっと、私と目の前の女性を居れれば七人か。すし詰め状態とはこのことか。
 その皆でベッドを囲んでるわけで……おっと、ベッドにもう一人。
 ……あら? 見覚えのある顔だわ。
「あ……」
 その顔が誰かを思い出し、私の視界が歪んだ。
「お姉ちゃん……お姉ちゃぁん!」
 泣きじゃくるつかさの声が頭の奥で蘇る。
 ベッドに寝ているのは、私。ここに居るのも、私。
「そっか私……事故に、あったんだっけ」
 記憶の糸が次第に集まって、纏まっていく。
 あれはそう、つかさと一緒に下校してたんだっけ。
 それで轢かれたんだ……5tは軽く超えるトラックに。
 そういや二回転半を華麗に決めた記憶があるわ。
「私……死ぬの?」
 この狭い部屋はそう、病室。様々な機材に繋がれているのは、ベッドに眠る私。
 その周りを囲む皆の表情は……暗かった。
「このままでは、そうなります」
 ピッ、ピッと規則的に刻む音が私の耳に響く。
 それが今にも止まりそうな不安にかられ、汗が落ちる。
「じゃああんた……天使、とか?」
 ベッドの上に居るのは今にも命を灯を消しそうな私。そして、今ここに居るのも私。
 その姿は誰にも見えることはなくて、少し心細い。
 所謂そう……幽霊って奴。
 でも、目の前の女性は違う。そんな私を見て、そんな私に問いかけている。
 それはやっぱり……人間のそれとは、少し違うわけよね。
「……残念ながら、そうなります」
 と、残念そうにため息を漏らす。
 本当に、残念そうに。
「つまり、お迎えってわけね」
「いえ、少し違います」
 残念そうな表情のまま、言葉を続ける。
 違う?
 じゃあ一体何の用なのよ。
「……えーと、ちょっと待ってください」
「?」
 もう一度首を傾げる女性。
 そして何か分厚い本を取り出し、めくる。
「えっと、あ、あったあった。『残念ながら貴方はこのままでは死んでしまいます』」
 それは今聞いたわよ。
 私の意識が今ここにあるわけだから、そりゃ目も覚めないわよね。
「『ですが、貴方には生き続けるチャンスがあります』」
「はぁ?」
 また私が首を傾げる。
 いきなり何を言いだすわけよこの天使様は。
「『貴方がもう一度生き続けるためには、10000TPが必要です』」
 一万はまぁ、分かるわよ。数字よ数字。
 その次がなんだって? 何の単位だそれは。
「『TPの説明は108ページ』、えーと108108……」
 ペラペラとページをめくっていく。
 くぅ、まどろっこしい。
「『TPは天使ポイント。善行を積むと溜まり、蛮行を働くと減っていきます』」
 そう、淡々と読み上げていく。
 そしてまた先ほどのページまで戻す。
「『以上を相手に告げる。要チェック! 暗唱できるようにしておくこ……』あ、ここ読まなくていいんだった」
 暗唱出来てねーじゃねーか!
 な、何なんだこいつは。
 天使、というわりには随分抜けてる気がする。
「す、すいません。何分まだ勘が取り戻せなくて」
 勘とかあんのかよ! こちとら死にかけてんだぞ!
「いやー、ちょっと前はもうちょっと偉かったんですけどね。ちょっとヘマやらかしまして」
 と、照れながら本を閉じる。
 何よ、地球でも壊しかけた? え? そんなレベルじゃねーぞ?
「こうやってまた下積みで頑張らないといけないなんて……はぁ、辞めちゃおっかなー。でも時給いいんだよなー」
 ……。
 ああ、えっと。
 そうね。
 息を整えて、抉り込むように……打つべし!
「ふごふぅっ!」
 お、当たった。
 良かったわ、触れないかと思った。
「うぅ、少しは敬ってくださいよぅ」
「あんたの身の上話はどうでもいいから、進めなさいよ。ようはまだ死ななくてすむんでしょ?」
 そのTPだっけ? それを一万貯めろって?
「ええ、このままだと貴方の意識は戻りません。そのまま衰弱して死んでしまいます」
 まだ非現実すぎてついていけないけど、それだけは分かったわ。
 所謂これはあれでしょ? 臨死体験というか、なんというか……。
「まぁ、生霊ですよね」
 てめーも似たようなもんじゃろがい!
「うぅ……またぶったぁ」
「とりあえず場所変えましょ……ここじゃちょっと、話しづらいわ」
 こいつの騒がしいの声も、私の声も、この部屋の誰にも届いていない。
 部屋の中の……心配そうに見つめてる皆には。
 その顔を見るだけで、かなり辛い。
 そりゃそうよね……皆私を心配してるんだから。
 とりあえずこの間抜け天使から色々聞かないと。
 ああ、もっとシリアスな話になるはずだったのに!
 また怒られるわよ、散々詩的すぎるとかもはや別人だとかって言われてるのに。
 はぁ……ったく、まともに始めなさいよ!!

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