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えす☆えふ3 ~かさ☆ぶた~ (3)

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 ………………


 意地っ張りな冬がもたらしたあの大寒波も緩み、日の当たる場所はそれなりに暖かい。
 うっすらと雪化粧を施した鷹宮の商店街を、こなたとかがみは二人で歩いていた。

 こなつーが機能を停止したその夜、二人は知った。
 二人を仲直りさせるために、"死に至る病"を押して、奔走したこなつー。
 二人の仲違いは、彼女にとっても決して他人事ではなかったのだ、と。

 こなつーの残した形見の中にあった、数枚の写真。
 かがみの姿を捉えたその写真を見た時、二人は、初めて気づいた。

 ―― こなつーの心は、こなたのコピー。
 ―― こなたの願いは、こなつーの願い。

 二人が再び、こうして並んで歩くこと。
 ……それは、こなつーの『最後の願い』だったのだと。


《♪幸せだよ 生まれた場所が この膝小僧でよかった
  僕に 会いたくなったからって わざと 怪我するなよ》

 商店街のスピーカーから、あの歌が聞こえてくる。
 友達とケンカした子の膝小僧に生まれた、おかしな"かさぶた"の歌。
 擦り傷と心の傷を癒しながら、自らは小さくなって消えていく、
 そんな不思議な……

《♪かさぶたぶたぶかさぶた かさぶたぶたぶかさぶた》

 コミカルなリフレインに彩られた……
 ……それは、とても切ない物語。


《♪僕はかさぶた また会える日が 待ち遠しいけれど本当は
  二度と会わずに 済むのが一番 怪我には気をつけてほしいな》

「……でも、さ」
 こなたの口元から、白い吐息がふわりと上がる。
「何? こなた」

《♪でも たまには転んでもほしいな……》

「……私たちがまたケンカするようなことがあったら、目を覚ましてくれるかな? こなつー……」
 研究室の奥深く。今はもう使われることのないメンテナンスベッドで、静かに眠る彼女の姿を思い出す。

「そうね……そうだと、いいわね……」


 見上げた空は、どこまでも高く。
 真っ白に輝く世界の中で、二人はその少女に思いを馳せていた。
 二人の傷を癒して消えていった、"かさぶた"みたいな女の子に。



 ―― ありがとうね、こなつー……




 ― Fin... ―



――――――――――――――――――――――



………………


「……いやー、お熱いねぇお二人さん♪」
 突然、背後から聞きなれた声がした。

『こんにちは、かがみさん、泉さん』
 振り向いたその先には、並んで微笑む、みゆきとみつき。
 ……そして、そこから頭ひとつ低いところで、二本のアホ毛がぴょこぴょこと弾んでいる。

「やほー、姉さんにかがみん♪」
「!? ちょ、こなつーっ!? なんであんたピンピンしてんのよっ!?」
「ん、直してもらったんだよ」
 まいったね、というように頭を掻く、その手の動きにつれてアホ毛が揺れる。

「お恥ずかしながら、どうやらばた発症してしばったようでしてだばだば」
 みゆきの目の下には、立派な隈ができていた。そして鼻からは、滾々と溢れ出る赤い滝。
「おかげさばで、こなつーさんを修理することができばした。……ギリギリのところでしたが」
 鼻血こそ出していないものの、鼻声のみつき。鼻の奥の隔壁を閉鎖しているのだろう。

「……あー、まぁ結果オーライってことで、……よかったわ、うん」
 呆れたような素振りのかがみ。そう言いながらも、口元は嬉しそうに綻んでいる。

「……でもさ、結局こなつーは、どうして調子を崩したのさ?」
 そんなかがみとは対照的に、不安の色を浮かべながらこなたが聞いた
 初回起動からわずか数ヶ月で、自己修復不可能な障害を起こしてしまう"ガラスの身体"。
 今回こそ助かったものの、いつかは『こな☆フェチ』も完治する時が来るだろう。
 その時……こなつーやみつきは、どうなってしまうのだろうか。

「すびばせん、障害の原因は、初歩的なミスですただば」
「はぁ?」
「実は、一部のポリマーゲル蓄電池のプラスとマイナスが逆になってばして……」
「……なんとゆー凡ミス……これは間違いなく稀代のドジっ娘」
 さすがのこなたも呆れ顔だ。さもありなん、もう少しで"妹"が死んでしまうところだったのだから。

「その異常電圧が、あちこちのシステムをショートさせていたようです」
 みゆきの言葉を繋いで、みつきが言った。
「どうりで、身体が痺れると思ったよ……ドジっ子は萌えるけど、リアルで実害こうむるのはノーサンキューだよー」
 げんなりした顔で、こなつーがぼやいた。

「あれ? でも確か、こなつーの電圧って……」
「基幹部のメインケーブルで、三十七万五千とんで一.五ボルトですね」
「……よ、よくまあ三ヶ月も保ったもんだネ……メチャクチャ丈夫じゃん」
 安堵と不安がないまぜになった表情で、こなたが呟いた。
 丈夫なのはなによりだが、そのせいで気づかれないまま放置されている「とんでもないミス」が、まだあるのではないだろうか?

「ご心配は無用です。みゆきお母さんと二人がかりで、まる三日三晩かけて再チェックしましたから」
 みつきが胸を張る。その目の下の隈はそれか。
 ……てか、『明日はわが身』だからじゃないのか? と、かがみは思ったが、口には出さなかった。

「またいつこんなことがあるかわかりませんので、今度はきちんと仕様書を起こしました」
 寝不足の目をこすりながら、みゆきはA4版全千五百三十七ページ・三分冊の仕様書を引っ張り出した。スカートのポケットから。
「部分品のストックも山ほど作りましたし、各部分もモジュール構造化しましたから、PCが自作できる人なら修理できまふよだばだば」
「仕様書は一晩がかりで書き上げまひた……ふぁあぁぁぁ~……」
 一晩でですか。どこまで完璧生物なんだ、この人たちは。


「ゆきちゃんお待たせ~」
「おーす、お待たせー……って、うわ、お母さんまた鼻血?」

 ふたつの足音と、ふたつの声。
 ひとつはつかさ。そしてもうひとつは、聞きなれない声。

「まったく……科学者なら自分でなんとかできないの? それ」
 紫色の髪。額と頬のインジケーター。こなつーとお揃いの脚首のリング。


 そこに立っていたのは、つかさとかがみ
 ……正確に言えば、つかさと共に、かがみの姿をしたアンドロイドの少女が呆れ顔で立っていた。

「え、えぇぇぇぇぇっ!?」
「紹介するね、お姉ちゃん。こちら、かがりお姉ちゃんだよ」
 つかさの紹介を受けて、『かがり』と呼ばれたアンドロイドの少女は、屈託のない笑みを浮かべた。
「はじめまして……って言うべきかしらね、かがみ姉さん」
「か、かがみ姉さん!?」
「KAGAMI-02……じゃないか、ついさっき『柊かがり』になったんだっけ。……まあ、よろしくね」
「よ、よろしくって……ちょっと、みゆき! あんた、私のコピーまで作ったの!?」
 その場の勢いに飲まれていたかがみが、ようやく自分を取り戻した。

「はい、こなつーさんのたべにと思いばしてだばだば「ゆきちゃん、ずぼっ♪「ぴたっ」」」
 つかさにティッシュの栓を突っ込まれ、みゆきの鼻血が止まった。流れるような連携プレイ。
『こなつーのため? ……あっ』
 こなたとかがみの声が、綺麗にハモった。こちらの息もぴったりだ。


 こなつーの心は、こなたのコピー。

 ……そうか……こなたにかがみが必要なように、こなつーにも『かがみ』が必要だったんだ……


「目を覚ました時は、さすがにびっくりしたけどね」
 そう言いながら、つい、とこなつーに寄り添うかがり。
「開口一番、みゆきお母さんに突っ込んでたよね。『私までロボ化かよ!?』って」
 にまにまと笑いながら、こなつー。
「ちょ、おま、そんなトコまで暴露すんなっ!」
「ほほぅ、かがりはかがみよりツッコミが鋭角的だネ」
 さすがはオタクの第一人者、泉こなた。復元力と順応性はピカイチだ。
「そーなんだよねー。声も小清水さんっぽいし、テンション高めでいじると面白いんだよー♪」
 すかさずこなつーが合わせる。陵桜の小悪魔コンビ、ここにめでたく完全復活。
「人のことが言えるかっ! ってか、楽屋ネタはやめーいっ!」
 ちょっと裏返っちゃった声で、かがりが声を張り上げた。
 道ゆく人々の、好奇の視線がスリリング。でもそんなの関係ねえ。

「あー、もうなんでもいいわ……ところで、なんであんた達がこんなところにいるわけ?」
 かがみが、至極もっともな疑問を口にした。
 ここは鷹宮の商店街。こなつーはともかく、みゆきがわざわざ来るような場所ではないはずだ。

「実は先ほど、かがみさんとつかささんのご両親のところへご挨拶に行ってきたのですが、かがみさんはお出かけになったとの事でしたので……」
「えへへ、追っかけてきちゃった。ごめんねお姉ちゃん、デートの邪魔して」
「え、うちに来てたの? ……あ、行き違っちゃったのか」

 デートという単語を華麗にスルー。ケータイを開くと、確かに着信履歴が入っていた。

「……それでね、お父さんが篝火を見ながら、こっちのお姉ちゃんに『かがり』って名前をつけたんだぁ」
 ニコニコしながら、つかさ
「てっきり文句の一つも言われると思って覚悟してたんだけど……ものわかりのいい一家でよかったわ、ホント」
 同じくニコニコしながら、かがり。リボンに模したアンテナがひこひこと動く。

「はぁ……」
「みきお母さんは、『うちに住んだら?』って言ってくれたんだけど、ほら、うちは家族が多いじゃない?」
「それで、今夜からつーちゃんのお部屋で暮らすことになったんだよね」
「そーなのよ。姉さんとこなたより先に同棲始めることになっちゃったけどね」
 かがり、サラッと爆弾発言。

「ど、同せ……いっ!?」
 からかう様なかがりの言葉に、かがみの頬が真っ赤に染まる。
 他人事のようにニヤニヤ……してみせているこなただが、やはり朱に染まった頬は隠せない。

「……ま、そういうことだから、ひとつよろしくね」
 そう言いながら、こなつーの腕に手を回し、抱き寄せて頬ずり。
「うぉ!? かがりん積極的すぎっ!! また『こな☆フェチ』発症ですカっ!?」
「ざーんねん、私は素だわよ」
「えぇぇぇっ!? ちょ、そんな、かがりん自重、アッ――!!」

「……あれあれー? なんか、攻守逆転してるヨー?」
 興味津々といった様子で、こなた。
「じ、自重しないわね……かがり、あんたホントに私か?」
 ジト目を投げかける、かがみ。
「あー、なんせ生まれが生まれだからね。自重する必要ないもの。もー開き直ったわよ」
 腰に手を当てて胸をそらす、かがり。
「吹っ切りやがった!」
「ど、どんだけー……」
「あらあらうふふ」
「あらあらだばだば」


 近づく春の訪れを感じさせる、日差しの中、二人寄り沿い、幸せそうなこなつーとかがり。
 そんな二人の姿を見て、まあいいか……と思う、そんなこなたとかがみだった。



 ― True End. ―




















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  • GJ!!! -- 名無しさん (2022-12-30 21:48:13)
  • あー、彼女達の今後をみたい···誰か書いてください! -- 名無しさん (2008-05-04 23:47:27)
  • 作者GJ!!
    -- 名無しさん (2008-03-31 12:25:03)

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