- 9.話しかけよう!
「……また出た」
「人をゴキブリみたいに言わないで欲しいわね」
息を切らして戻ってきてみれば案の定、パソコンの前に座っている少女と目が合う。
画面にはまたロクでもないモザイクが並列し、色魔天使を欲情させる。
「色魔て!」
今忙しいから黙ってろ!
「何、また説得にでも来たの?」
視線を私からパソコンに戻し、またマウスをクリックしていく。
そりゃ冷たいか……昨日の私の失言を考えれば。
「やっ……えと、昨日はちょっと言い過ぎたから、謝ろうと思ってさ」
「……ふぅん」
カチ、カチッという音とともに聞こえるのは、画面から漏れる喘ぎ声。
ああもう耳障りだなぁ……いいや、とりあえず謝ろう。
「昨日はその……軽率だったわ、ごめんなさい」
「……」
頭を下げれるだけ下げる。
でも、聞こえてくるのはマウスと喘ぎ声……って人が謝ってるんだからエロゲ辞めろや!
っとと、駄目だ慌てるな。
一応非は全面的にこっちにあるんだから。
「それだけ?」
「えっ? えっ、ええ。まぁ」
こちらを見もしないまま、言葉が返ってくる。
「じゃあもういいよね、とっとと出てってよ」
不機嫌なのが感覚を通して伝わってくる。
「だ、だから言ったでしょ? あんたにとり憑いた以上、あんたと一緒に居ないといけないの!」
少し語尾を強めに。
一応こっちも生死がかかってるんだからそこは引けないわ。
「……」
間が開く。
いつのまにか、パソコンの喘ぎ声も止まっていた。
「勝手にすれば?」
「ほ、本当っ!?」
右クリックからメニューを開き、画面にSAVEの文字が現れる。
それをクリックした後にパソコンの前から立ち上がる、
こっ、これは一歩前進じゃない?
だって私の存在を認めてくれたんだもんね。
そうよ、仲良くなるんだ仲良くっ!
「ま、まだ名前言ってなかったわよね? 私……ひいら」
「別にいい」
言葉を遮られる。
……へっ?
「興味ないから」
冷たく言い放つと、唖然とする私を置いてそのまま部屋を出て行く。
それを慌てて追いかけ、少し後ろからついていく。
興味ない? い、いや考えるのは後にしよう。今は追いかけなきゃね。
そして着いたのは台所。
ヤカンに水を入れると、そのまま火につける。
これはもしかして……朝食? ってもう昼だよ!
「カップラーメン食べるの? 体に悪いわよ、そんなの」
「……」
返事もしないまま、近くの箱から取り出したカップラーメンの蓋を開ける。
ゴミ箱に突っ込まれたそれの山を見るに、どうやらそれが主食らしい。
「お父さんとは、一緒に食べないの?」
確か小説家とかって言ってたっけ? 家で仕事してるはずよね。
ああ、でもお腹が空いたら勝手に食べるって言ってたっけ。
「……」
「ね、ねぇ聞いてる?」
声が届いてないはずないわよね。
こちとら50TPも支払ってるんだから。
ん? なんだろ。
妙な感覚が体から伝わってくる。
もしかしてこの子……イライラしてる?
「五月蝿い」
「へっ?」
ようやく漏れた声に、目を丸くする。
そのまま戸惑う私をその目で、睨む。
「居るのは勝手だけど、話しかけないで」
「なっ……」
思わず言葉を失う。
「耳障りだから」
そう冷たく言い放つと、沸いたお湯を先程のカップラーメンに注ぐ。
あとはもう、声もかけられなかった。
どうやらこいつは……私の事を見て見ぬフリをするらしい。
はぁ……一歩前進どころか、予防線張られるとは。
出て行かなくても良いから話しかけるなって……そんなんじゃ、居ないのと一緒よ!
さすがに、ガードは固いみたい。
「おや、こなた?」
「!」
その時だ、私の体に稲妻が走る……と言っても私のものじゃない。
この偏屈っ子が感じたのを、私も共有しただけ。
「今から食事かい? 父さんもようやく一段落ついてね」
と、彼女の隣りにまで歩きカップラーメンを漁る。
そして一つを取り上げると、娘に笑顔を見せる。
その度に私の胸がきしむ音を感じる。
「良かったら一緒に食べ……」
「私、部屋で食べるからっ」
その言葉を最後まで聞かず、自分のお湯を注いだカップを手に取る。
ぬおっ、熱っ!
ちょっと、手にこぼしてるわよ!
「あっ、こなたっ」
そのまま部屋に戻っていく姿を呼び止めることも出来ず、そのまま肩を落とす。
はぁ……情けないわね、父親のくせに。
もっと威厳ってもんがあればねぇ……ガツンと言ってやってよ、あのひきこもりに!
「どうやら、あまり親子の仲は良くないみたいですね」
あら、あんた居たの? 喋らないから忘れてたわ。
「そうね……でも父親のほうは結構娘に甘そうに見えるけど」
肩を落としたままカップラーメンにお湯を注ぐ姿は痛々しい。
見る限りでは一方的に嫌われてるって感じよね。
「母親が死ぬまでは、あまり娘のことを好きではなかったようです」
「あー、まぁ分からないでもないわ」
男ってそうなのよね、特に父親。
母親のほうは自分がお腹を痛めて産んだ子なんだから、そりゃ大事に愛情を注ぐわよ。
でも父親のほうはそれがない。
しかもDNA鑑定でもしない限り、それが本当に自分の子供かすら分からない。
……まぁ、ちょっと極端か。
だから特に父親とその子供……特に女の子の仲ってのは、そうそう良いものじゃないわけよ。
愛情が自分より子供に注がれて、餅でも焼いたんでしょ。それが一般的よ。
「それで、奥さんが死んで娘の大事さに気がついたって?」
「まぁ、そうなりますね」
ふぅん……大分見えてきたわね、この家族が。
父親は娘に対してようやく心が開けたわけだ、皮肉にも奥さんが死んだ所為で。
時期が悪かったわね。もっと娘が幼ければ……って人の生死をそんな風に言うもんじゃないな。
となるとあとは娘のほう、か。
「やっぱり、お父さんのこと嫌ってるんでしょうか?」
「それはちょっと、違うんじゃないかしら」
確かにはたから見ればそう見える……でもさっき伝わったわ、あの子から。
そういう気持ちだって共有出来るのよ、舐めないで欲しいわね。
「あの子も本当は……父親と仲良くしたいのかも」
父親があの子の隣りに歩いてきたとき、私の胸には不思議な感情が伝わってきた。
それは多分、戸惑い。
彼女はまだ向き合えていない。母親の死に……父親に。
まぁ……ひきこもってる負い目もあるだろうけど、もう一つ。
多分慣れてないんだ……父親の愛情ってやつに。
今まで蔑ろにされてたなら尚更ね。
……ふむ。まぁ、一つの材料ではあるわね。
「ひきこもりより先に、そっちを治さないといけないみたいね」
そうよ、少しずつって決めたのは私だっけ。
やっぱり大事だものね……家族って。
私もこの体になって、初めて思い知らされたわ。その大切さを。
あの子にもそれを……。
「あの」
「ん?」
何よ人が意気込んでまとめに入ってるのに。話の最後って難しいんだから。
……って何メモしてるのよ、その紙に。
ええと何々……はて、どこかデジャビュ。
「宿主が法律を犯す……-80TP!?」
……。
同じオチかよ!
「人をゴキブリみたいに言わないで欲しいわね」
息を切らして戻ってきてみれば案の定、パソコンの前に座っている少女と目が合う。
画面にはまたロクでもないモザイクが並列し、色魔天使を欲情させる。
「色魔て!」
今忙しいから黙ってろ!
「何、また説得にでも来たの?」
視線を私からパソコンに戻し、またマウスをクリックしていく。
そりゃ冷たいか……昨日の私の失言を考えれば。
「やっ……えと、昨日はちょっと言い過ぎたから、謝ろうと思ってさ」
「……ふぅん」
カチ、カチッという音とともに聞こえるのは、画面から漏れる喘ぎ声。
ああもう耳障りだなぁ……いいや、とりあえず謝ろう。
「昨日はその……軽率だったわ、ごめんなさい」
「……」
頭を下げれるだけ下げる。
でも、聞こえてくるのはマウスと喘ぎ声……って人が謝ってるんだからエロゲ辞めろや!
っとと、駄目だ慌てるな。
一応非は全面的にこっちにあるんだから。
「それだけ?」
「えっ? えっ、ええ。まぁ」
こちらを見もしないまま、言葉が返ってくる。
「じゃあもういいよね、とっとと出てってよ」
不機嫌なのが感覚を通して伝わってくる。
「だ、だから言ったでしょ? あんたにとり憑いた以上、あんたと一緒に居ないといけないの!」
少し語尾を強めに。
一応こっちも生死がかかってるんだからそこは引けないわ。
「……」
間が開く。
いつのまにか、パソコンの喘ぎ声も止まっていた。
「勝手にすれば?」
「ほ、本当っ!?」
右クリックからメニューを開き、画面にSAVEの文字が現れる。
それをクリックした後にパソコンの前から立ち上がる、
こっ、これは一歩前進じゃない?
だって私の存在を認めてくれたんだもんね。
そうよ、仲良くなるんだ仲良くっ!
「ま、まだ名前言ってなかったわよね? 私……ひいら」
「別にいい」
言葉を遮られる。
……へっ?
「興味ないから」
冷たく言い放つと、唖然とする私を置いてそのまま部屋を出て行く。
それを慌てて追いかけ、少し後ろからついていく。
興味ない? い、いや考えるのは後にしよう。今は追いかけなきゃね。
そして着いたのは台所。
ヤカンに水を入れると、そのまま火につける。
これはもしかして……朝食? ってもう昼だよ!
「カップラーメン食べるの? 体に悪いわよ、そんなの」
「……」
返事もしないまま、近くの箱から取り出したカップラーメンの蓋を開ける。
ゴミ箱に突っ込まれたそれの山を見るに、どうやらそれが主食らしい。
「お父さんとは、一緒に食べないの?」
確か小説家とかって言ってたっけ? 家で仕事してるはずよね。
ああ、でもお腹が空いたら勝手に食べるって言ってたっけ。
「……」
「ね、ねぇ聞いてる?」
声が届いてないはずないわよね。
こちとら50TPも支払ってるんだから。
ん? なんだろ。
妙な感覚が体から伝わってくる。
もしかしてこの子……イライラしてる?
「五月蝿い」
「へっ?」
ようやく漏れた声に、目を丸くする。
そのまま戸惑う私をその目で、睨む。
「居るのは勝手だけど、話しかけないで」
「なっ……」
思わず言葉を失う。
「耳障りだから」
そう冷たく言い放つと、沸いたお湯を先程のカップラーメンに注ぐ。
あとはもう、声もかけられなかった。
どうやらこいつは……私の事を見て見ぬフリをするらしい。
はぁ……一歩前進どころか、予防線張られるとは。
出て行かなくても良いから話しかけるなって……そんなんじゃ、居ないのと一緒よ!
さすがに、ガードは固いみたい。
「おや、こなた?」
「!」
その時だ、私の体に稲妻が走る……と言っても私のものじゃない。
この偏屈っ子が感じたのを、私も共有しただけ。
「今から食事かい? 父さんもようやく一段落ついてね」
と、彼女の隣りにまで歩きカップラーメンを漁る。
そして一つを取り上げると、娘に笑顔を見せる。
その度に私の胸がきしむ音を感じる。
「良かったら一緒に食べ……」
「私、部屋で食べるからっ」
その言葉を最後まで聞かず、自分のお湯を注いだカップを手に取る。
ぬおっ、熱っ!
ちょっと、手にこぼしてるわよ!
「あっ、こなたっ」
そのまま部屋に戻っていく姿を呼び止めることも出来ず、そのまま肩を落とす。
はぁ……情けないわね、父親のくせに。
もっと威厳ってもんがあればねぇ……ガツンと言ってやってよ、あのひきこもりに!
「どうやら、あまり親子の仲は良くないみたいですね」
あら、あんた居たの? 喋らないから忘れてたわ。
「そうね……でも父親のほうは結構娘に甘そうに見えるけど」
肩を落としたままカップラーメンにお湯を注ぐ姿は痛々しい。
見る限りでは一方的に嫌われてるって感じよね。
「母親が死ぬまでは、あまり娘のことを好きではなかったようです」
「あー、まぁ分からないでもないわ」
男ってそうなのよね、特に父親。
母親のほうは自分がお腹を痛めて産んだ子なんだから、そりゃ大事に愛情を注ぐわよ。
でも父親のほうはそれがない。
しかもDNA鑑定でもしない限り、それが本当に自分の子供かすら分からない。
……まぁ、ちょっと極端か。
だから特に父親とその子供……特に女の子の仲ってのは、そうそう良いものじゃないわけよ。
愛情が自分より子供に注がれて、餅でも焼いたんでしょ。それが一般的よ。
「それで、奥さんが死んで娘の大事さに気がついたって?」
「まぁ、そうなりますね」
ふぅん……大分見えてきたわね、この家族が。
父親は娘に対してようやく心が開けたわけだ、皮肉にも奥さんが死んだ所為で。
時期が悪かったわね。もっと娘が幼ければ……って人の生死をそんな風に言うもんじゃないな。
となるとあとは娘のほう、か。
「やっぱり、お父さんのこと嫌ってるんでしょうか?」
「それはちょっと、違うんじゃないかしら」
確かにはたから見ればそう見える……でもさっき伝わったわ、あの子から。
そういう気持ちだって共有出来るのよ、舐めないで欲しいわね。
「あの子も本当は……父親と仲良くしたいのかも」
父親があの子の隣りに歩いてきたとき、私の胸には不思議な感情が伝わってきた。
それは多分、戸惑い。
彼女はまだ向き合えていない。母親の死に……父親に。
まぁ……ひきこもってる負い目もあるだろうけど、もう一つ。
多分慣れてないんだ……父親の愛情ってやつに。
今まで蔑ろにされてたなら尚更ね。
……ふむ。まぁ、一つの材料ではあるわね。
「ひきこもりより先に、そっちを治さないといけないみたいね」
そうよ、少しずつって決めたのは私だっけ。
やっぱり大事だものね……家族って。
私もこの体になって、初めて思い知らされたわ。その大切さを。
あの子にもそれを……。
「あの」
「ん?」
何よ人が意気込んでまとめに入ってるのに。話の最後って難しいんだから。
……って何メモしてるのよ、その紙に。
ええと何々……はて、どこかデジャビュ。
「宿主が法律を犯す……-80TP!?」
……。
同じオチかよ!
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