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彼女は遷移状態で恋をする-かがみside-(1)

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  • 彼女は遷移状態で恋をする かがみSide(1)


 突然だが、俺には親友と呼べる人物が二人居る。
 正確には三人だが……一人はあいにく血が繋がってるからノーカウントにしておこう。
 そこに俺を加えた四人が、所謂仲良しグループってやつだ。
 ……なんか女子みたいな言い方だな、それだと。
 その中には俺みたいな偏屈屋も居れば、男のくせにお菓子作りが趣味だという弟。
 眉目秀麗天才メガネという変わり種まで居やがったりする。
 まぁ、そこはいいさ(どうでもな)。
 問題は、最後の一人。
 なぜか。
 なぜだかそいつは……女子だったわけだ。
「最近思うんですが」
 事の発端はそう、メガネ。
 って、友人をそんな呼びかたするもんじゃないな。
 高良みゆき、馬鹿みたいに頭のいい……馬鹿。
 とか悪口を言うと皮肉の雨が返ってくるからやめとこう。
「どうかした? ゆき」
 それに俺の弟……柊つかさも、間の抜けた声でそれに反応する。
 こうやって野郎二人と飯を食うのもいいが、たまには女子とも楽しく飯を食べたいものだ。
 いやそりゃ、たまに『あいつ』も居るわけだが……女にカウントしていいのか?
 そう意識した覚えがないからよく分からん。
 今日は女友達と学食だそうで、うへぇいいご身分ですこと。
「『泉さん』って実は、可愛いですよね」
「へっ?」
「はぁ?」
 俺の口から出たのは呆れ声だ。
 今ちなみにメガネが口走ったのが、さっきから話に出してるあいつ……その噂の女子だ。
 あいつが可愛い?
 おいおい、そのメガネは伊達だったのか?
 コックローチのでももってきた方がいいぞ、あれ実は度が入ってるんだろ?
「えっ……へぇっ?!」
 だが、もう一人が過敏に反応する。
 ん、何だ? 今の素っ頓狂に輪をかけたような声は。
「なっ、なななな、何を言い出すんだよっ。ゆきっ」
「おやおや」
 茹で蛸になったつかさを見て、ため息を隠すように眼鏡の位置を治すみゆき。
「やはり敵は、一番近くに居るものですね」
「敵? お前らさっきから何を話してるんだ……俺には皆目分からん」
 みゆきが「あの子が可愛い」と言ったらつかさが動揺した。
 短い一文なのに突っ込みどころ満載だな。
 とりあえず一つずつ問題を解決してくのが俺の役目か?
「まずみゆき、何だって? 『あいつ』が可愛いとかなんとか」
 ここで『あいつ』の容姿について軽く考える。
 低い身長。
 攻撃的に天を貫くアホ毛。
 あと……オタク。
 そんなチビオタクの何処にそんな要素があるって?
「ええ、大変魅力的な女性だと思いますね」
 眼鏡の奥の眼が妖しく光る。
 な、なんか睨まれてないか?
 ああいいや、矛先を変えよう。
「ええとそれでつかさ、お前は何をそんな慌ててるんだ?」
「えっ、そりゃえっとほら……」
 顔を真っ赤にして誤魔化すようにオーバーリアクションでパントマイムをする。
 そこに壁を作って何が起きるというんだか……。
「分かってないですねぇ……かがみ君」
「だから何が、だよ!」
 強調して言ってやった。
 大体お前はいつも遠まわしにものを言うから分からんのだ!
「分りませんか? ……彼も私も」
 と、つかさの肩を叩く。
 それにビクッと反応するつかさ。
 まだ分からん。
 早く言え! ためるな鬱陶しい!
 メガネ叩き割っぞ!
「ホの字ってやつです」
 ……。
 ああうん、何ていうかな。
 手から落ちた箸を拾うのも忘れるぐらいの言葉が、脳に突き刺さる。
 あとで拾えばいいか、三秒ルール三秒ルール……ってんな場合じゃないってヴァよ!
「な、ゴホッ、なな、何だって?」
 口にしていた玉子焼きがハザードを起こし喉と鼻の間を平泳ぎして行く。
 ぐはっ、こんな所で死ねるか! 水っ、水をぉおー!
 そ、そうだつかさの飲み物を……ってギャー! ドロリ☆濃厚ーっ!!
「そのままの意味ですよ、ねぇつかさ君?」
「う……ま、まぁ」
 つかさも顔を真っ赤にしたまま頷く。
 って待てよ。ちょっと待てお前ら。
 そんなホの字だとか死語で誤魔化すな!
「じゃ、じゃあ何だ? お前ら……好きなのか? 『こなた』のこと」
 そこでようやく、名前を出す。
 泉こなた。
 俺達男子三人組に+1した、稀有な女子。
 いやいや、そりゃ俺だって好きだぞ?
 でもそりゃ、ライクってやつだろ。
 友達は友達……そういう意味ならあんな話の合うやつは嫌いなわけない。
「僕も色々考えたけど……友達としての好きとは、違う気がする」
 あの抜けまくったつかさが、俺の目を見て言う。
 おいおい、こりゃマジですぜ?
 恐る恐るその隣りのメガネを見ると……。
「ええもちろん、めがっさラブです」
 にょ○ーん! な、だから何なんだその挑戦的な眼は!
 俺に何か恨みでもあるってか?
「『かがみ君』は、それで?」
「そ、それでって?」
 そこでようやく俺の名前が呼ばれたわけだ。
 ……変な名前だよな、名字なら分かるが生憎下の名前だ。
 苗字はつかさのを参考にしておいてくれ。
 ともかく、二人の視線が俺に集中する。
 どちらも何ていうか……訝しげな眼。
「個人的……超個人的な意見を言わせてもらえば、一番の敵は貴方だと思ってます」
「僕も、そう思うな」
 んなっ、何だよその含んだ言い方は!
 ま、待てって今考えるから。
 こなただろ? こなた。
 あんなチビで、オタクで、貧乳で……胸は関係ないか。まぁでも無いようなもんだろ。
 それがええと何だっけ? 友達以上に好きかって?
 あはは、何をおっしゃるメガネさん。
 さっきも言っただろ?
 好きは好き。
 でもそりゃ……ライクってヤツだって。
「別に、あいつをそんな対象として見たことなんかない」
 言い放ってやった。
 うん、これでスッキリ……ん? 何かしないな。
「ほ、本当に? お兄ちゃん」
「ああ、嘘は言わん」
 だから安心しろ、弟よ。あとメガネよ。
 お前らの恋の邪魔はするつもりもない、勝手にラブコメでも展開してくれ! 誠○ね!
「ふむ、では最後にもう一度確認です」
「んだよ、しつこいな」
 みゆきが薄ら笑いを見せる。
「泉さんの事は、特別には想っていないと?」
 またそれかよ。
 ったく、こいつはきつく言ってやらんと分からんらしいな。
「ああ、そうだよ」
 そこで、ちょっと苛ついていたのがいけない。
 そうだよな、俺はもっとクールな……こう知的なキャラが似合うはずなんだ。
 それなのに……その場の勢いで、やってしまった。
 声を、張り上げてしまったわけだ。
「俺があいつ……こなたの事なんか、好きなわけないだろ!」
 それと同時だったかな。
 俺の、後ろの扉。
 俺達の教室の扉が……勢いよく開いたのは。
「何の話?」
 扉から聞こえた声に、俺がゆっくりと振り返る。
 まるでスローモーションのコマの一つ一つが汗に映っていくように、その光景が眼に入った。
 そこに居たのは……渦中の人物、こなただ。
「いえいえ、男同士。しみったれた世間話ですよ」
「あっ、う、うん。そうそうっ」
 みゆきが空々しく誤魔化し、つかさが慌ててフォローする。
「本当? かがみっ」
 その眼が、俺を見る。
 な、なんだよその眼は。
 何で俺にわざわざ聞きなおすんだよっ!
「あっ、やっ」
 声が上手く出て行かず、言葉が続かない。
 いやそうだよ、扉は閉まってたじゃないか。
 俺が声を張ったところで聞こえてるわけないだろ!
「あっ、ああ……また皆でカラオケでもどうかってさ」
「……」
 じっと、俺を見る。
 だ、だから何で俺を見るんだ?
 他にも見てやれよ、弟とかメガネとか!
「そっか」
 俺の願いが通じたのか、視線が外される。
 思いっきり、ぷいっと変な効果音までつきそうなくらい。
「じゃあ今日行こうよ! 私新しいの覚えたんだー、平野の新曲ーっ」
 そのまま俺の横を通り抜け、みゆきとつかさの間ではしゃぐ。
 みゆきは相変わらず飄々としていたが、つかさは顔がバーニングディバイドしてる。
 こなたはその間で、笑ってた。
 ……うん、そうだよな。やっぱり聞こえてなかったか。
 心配して損したよ、ったく。
 もういいだろこの話は。
 それより今日行く事になったカラオケのほうが心配だよ、今月は小遣いそんな残ってないってのに。
 まぁ、やるなら負けないがな!
 俺達四人は友達。
 そうだ、それでいいだろ?
 いや、それで良かったんだ。今までは……な。
 今まで……こう区切ったわけは分かるだろ?
 これからは、違うってことさ。
 ……。
 ああ分かってるって、そう責めないでくれ。
 そうだよ。
 その引き金を引いたのは……他でもない、俺だったんだ。

















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